残業代の計算方法について解説

公開日:2020年8月11日
  • 残業代請求対応、未払い賃金対応

会社には従業員に対し、「賃金」を適正に支払う義務があります。かかる義務に反した場合、民事上の支払い請求をされるだけでなく、刑事上の罰則が科せられる場合があります。「賃金」には、当然、残業代も含まれます。しかし、残業代の計算には「割増率」等法律上の制限が課せられており、これを遵守し適正に計算する必要があります。以下、残業代の計算方法について解説します。

従業員の残業代を適正に計算する責務

(1)刑事上の罰則

使用者は、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額に一定の割増率を乗じた割増賃金を支払わなければなりません。これに反して適正な残業代を支払わなかった場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。また、会社そのものに対しても、30万円以下の罰金が科せられます。

(2)民事上の支払義務

  • ア 未払残業代の支払い
    上記のとおり、割増賃金の支払義務があるため、未払分を支払う必要があります。
  • イ 付加金の支払い
    裁判手続きによって未払残業代の支払請求が行われた場合、裁判所の裁量により、未払金と同一額の付加金の支払いが命じられる場合があります。
  • ウ 遅延損害金
    未払残業代と付加金には、それぞれ遅延損害金という利息が付きます。

割増賃金に該当する残業代の種類

(1)法定時間外労働
労働時間は、1週間あたり40時間まで、1日あたり8時間までと法定されています。この法定労働時間を超過した労働については割増賃金が発生します。

(2)休日労働
法定休日に働いた場合には割増賃金が発生します。

(3)深夜労働
深夜(22時から29時まで)に働いた場合には割増賃金が発生します。

残業代の計算式

残業代は、「残業代=1時間あたりの基礎賃金×残業時間数×割増率」によって算定されます。

1時間あたりの基礎賃金を算出する方法

「1時間あたりの基礎賃金」は、月給額(基本給+手当)を月における所定労働時間数で除して計算します。ただし、「手当」の中には基礎賃金に含まれないものがあります。

家族手当などの各種手当は基礎賃金に含まれるのか?

基礎賃金から除外される賃金・手当は法律上限定的に列挙されています。除外される賃金・手当は次のとおりです。

(a)家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当
ただし、実質的にみて個人的事情に関わりなく一律の額で支給される場合には、基礎賃金に含まれる場合があります。

(b)臨時に支払われた賃金
臨時的・突発的なことが起きたことによって支払われた賃金、及び、支給条件は定められているものの、その支給をする原因となる事象が不確定かつ非常に稀に発生する賃金を指します。

(c)1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
賞与や1か月を超える期間についての精勤手当、勤続手当、能率手当等を指すと解されています。

時間外・休日・深夜労働の割増率

各割増賃金における割増率は以下のとおりです。

  • (a)法定時間外労働(月60時間まで) 1.25倍
  • (b)法定時間外労働(月60時間を超えた場合) 1.5倍
  • (c)休日労働 1.35倍
  • (d)深夜労働 1.25倍
  • (e)法定時間外労働(a)+深夜労働 1.5倍
  • (f)法定時間外労働(b)+深夜労働 1.75倍
  • (g)休日労働+深夜労働 1.6倍

残業代の計算例(月給制の場合)

「1時間あたりの基礎賃金」は、時給制であれば当該時給が該当し、日給制であれば日給額を当該日の所定労働時間で除することで算定することができます。

他方、月給制の場合、月によって所定労働時間数が異なる場合があり、「1時間当たりの基礎賃金」の算定にあたり注意が必要です。

1か月あたりの平均所定労働時間

月によって所定労働時間数が異なる場合、残業代の基礎となる「1時間あたりの基礎賃金」は、月給額を「1か月あたりの平均所定労働時間」で除して計算します。

1か月あたりの平均所定労働時間は、年間所定労働時間を12で除して計算します。

手待時間や持ち帰り残業の取り扱いについて

(1)手待時間

作業の準備・整理を行う時間や作業のために待機している時間(手待時間)も、労働者が使用者の指揮監督の下にある時間であり、労働時間に含まれます。

(2)持ち帰り残業

持ち帰り残業とは、本来会社で残業して行うべき仕事を、自宅に持ち帰って行うことを言います。基本的に、持ち帰り残業は使用者の指揮監督が及ばない労働者の私的な生活の場で行われるものであるから、使用者の指揮命令下で行われたものと認めるべき事情がない限り、労働時間には含まれません。

特殊な労働形態における残業代の考え方

変形労働時間制、フレックスタイム制及び裁量労働制の場合、労働形態が特殊であり、残業代の算定にあたり注意が必要です。

変形労働時間制の場合

変形労働時間制は、一定期間内での法定労働時間の変形を認める制度です。そのため、一定期間における平均労働時間が法定労働時間を超えていなければ、期間内の特定の日や週に法定労働時間を超えた労働をしたとしても時間外労働とみなされず、残業代は発生しません。

フレックスタイム制の場合

就業規則(10人未満の事業ではこれに準ずるもの)及び労使協定にて定められた清算期間における総労働時間が、清算期間における総所定労働時間となります。したがって、清算期間を通じての総実労働時間のうち、当該総所定労働時間を超えた部分が残業代の発生する時間外労働となります。

裁量労働制の場合

裁量労働制とは、労働時間を実労働時間ではなく、一定の時間とみなす制度のことです。そのため、労使協定において定められた「みなし労働時間」が労働時間となるので、みなし労働時間が法定同労時間を超える場合にのみ残業代が生じることになります。

定額残業代制による残業代の計算

定額残業代制の場合、定額残業代に相当する時間を超えて残業している場合には、「追加の残業代」を支払わなければならない場合があります。

(1)実残業時間数が定額残業代の時間数を超えない場合
追加の残業代を支払う必要はありません。

(2)実残業時間数が定額残業代の時間数を超える場合
「1時間あたりの基礎賃金×実残業時間数×割増率」を計算し、残業代を算定します。
計算して求めた残業代が定額残業代よりも多い場合、差額を支払わなければなりません。

定額残業代制に関する重要判決と時代の変化への対応
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残業代の計算に関するQ&A

よくあるご質問について、以下回答します。

計算した残業代に端数が出ました。どのように処理すべきでしょうか?

割増賃金の計算において、1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満を切り上げます。

また、端数を一律で切り上げて処理することは、労働者の利益にかなうため認められます。

残業代の計算を30分単位で行っており、30分未満は切り捨てて計算しています。法的には問題無いでしょうか?

1か月単位で時間外労働、休日労働、深夜労働の時間を集計し、その合計値に端数が生じた場合、30分未満を切り捨てることは可能です。

なお、1日単位で残業時間の切り捨てることは認められず、残業時間分の賃金の未払いが発生します。

割増賃金の基礎となる「1時間当たりの賃金」には賞与も含まれますか?

「賞与」の実質によって異なります。

半年や1年に1度、業績等に応じて支払われるような一般的な賞与の場合には、「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」に当たるため、1時間当たりの賃金には含まれません。

他方、年度当初に年俸額を決定し、その一部を賞与として支払うという年俸制の場合には、1時間当たりの賃金に含まれます。

割増賃金の割増率について、会社が引き下げることは可能ですか?

労働基準法に定められた最低基準の割増率を下回る引き下げは認められません。

割増賃金の割増率について、会社が引き上げることは可能ですか?

可能です。

残業代に上限を設けることは可能ですか?

上限を設定したとしても、実際に残業した分の残業代の支払い義務は発生します。

給料が最低賃金を下回っている場合、残業代は賃金ベースと最低賃金のどちらで計算すべきですか?

最低賃金をベースに計算すべきです。

欠勤を残業代で相殺することは可能ですか?

欠勤と残業時間とを相殺し、残業時間を時間外労働扱いしないで割増賃金を払わないということはできません。

遅刻した時間を補うために行った残業についても、割増率が適用されるのでしょうか?

適用されます。

残業代の計算を誤り多く払い過ぎてしまいました。返してもらうことは可能でしょうか?

「残業代=時給×残業時間×割増率」となります。

時給制の残業代の計算方法について教えてください。

「残業代=時給×残業時間×割増率」となります。

日給制の残業代の計算方法について教えてください。

「残業代=(日給額-除外賃金)÷所定労働時間×残業時間×割増率」となります。

もっとも、1日の所定労働時間が明確に定められていない、日によって所定労働時間が異なるという場合もあります。その場合には、1週間の所定労働時間数から1日の平均所定労働時間数を算定し、それを基準として計算をすることになります。

出来高払制(歩合制)の残業代の計算方法について教えてください。

「残業代=1時間あたりの基礎賃金×残業時間×割増率」となります。

歩合制の場合、「1時間あたりの基礎賃金」は、基礎賃金の額を総労働時間で除して算定します。歩合給には、割増される前の賃金が含まれていると考えられるため、所定労働時間ではなく総労働時間で除することになります。

そして、残業代は、「残業代=1時間あたりの基礎賃金×残業時間×(割増率-1)」によって計算します。割増率から1を減算するのは、歩合給には割増される前の賃金が含まれていると考えられるためです。

年俸制の社員に対する残業代は、どのように計算したらいいでしょうか?

「残業代=1時間あたりの基礎賃金×残業時間×割増率」となります。

年俸制の場合、「1時間あたりの基礎賃金」は、1年間の基礎賃金の額(年俸)を1年あたりの所定労働時間で除して算定します。

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