労働審判制度の概要

労働審判制度の概要

労働審判は、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下、「個別労働関係民事紛争」といいます。)を対象にした紛争解決手続で、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的としています(労働審判法1条参照)。

労働審判では、労働審判官(裁判官)1名と、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名で構成された労働審判委員会が事件を審理することになります(労働審判法7条)。

労働審判では、特別の事由がある場合を除き、労働審判手続の申立てがされた日から40日以内の日に労働審判手続の第1回の期日が指定されます(労働審判規則13条)。
そして、労働審判では、原則として3回以内の期日で審理し、調停(話し合い)による解決が試みられます(労働審判法15条参照)。
調停による解決ができない場合には、労働審判委員会が労働審判を行い、紛争の解決を図ります(労働審判法20条参照)。
労働審判委員会が労働審判を行い、当事者から異議の申立てがなされなかった場合には、その労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有します(労働審判法21条参照)。
他方で、当事者から異議の申立てがなされた場合には、その労働審判は効力を失い、当該労働審判手続の申立て時点で、地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます(労働審判法22条参照)。

労働審判制度の法的強制力について

労働審判では、調停が成立しなければ、労働審判委員会が労働審判を行います。
仮に、会社側が労働審判手続きを欠席して労働審判がなされ、異議の申し立てをしなかった場合、労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有するので、労働者は、労働審判に基づく強制執行を行うことができます。
このように、労働審判制度には、法的な強制力が生じうるので、当事者となった場合に、この手続きを無視して放置してはなりません。

労働審判制度の特徴

労働審判制度の特徴は、紛争の早期解決が期待できるという点に大きな特徴があります。そのため、原則として3回以内の期日で審理することとされています。
また、裁判官以外の労働審判員が手続きに関与するのも特徴といえます。労働審判員の2名は、使用者側、労働者側から各1名ずつ選ばれます。さらに、初回の期日に尋問がなされて、初回の期日で審判委員会の心証が形成されるのも大きな特徴です。

迅速かつ柔軟な紛争解決が期待できる

労働審判制度は、個別労働関係民事紛争を迅速に解決することを目的として設けられた制度です。そのため、原則として3回以内の期日で審理を行うことを予定していることから、この制度を利用することで、紛争の迅速な解決を図ることができます。
また、初回の期日の尋問で形成した心証を踏まえて、調停が試みられることから、当事者の合意形成による柔軟な紛争の解決を図ることも可能となっています。

通常訴訟との違いとは

通常訴訟との大きな違いは、初回の期日で尋問が行われ、そこで、審判委員会の心証が形成されてしまうというところです。
そのため、初回の期日までに十分な準備をすることが必要となります。 また、調停が成立せず、労働審判が下された場合に、当事者が異議申し立てをすれば、労働審判の効力は失われます。
この点も、通常訴訟との大きな違いといえるでしょう。

留意点

労働審判は、個別労働関係民事紛争について、原則として3回以内の期日で審理し、紛争に対する何らかの解決指針が示されます。この点について、3回以内の期日で審理されることからすれば、初回の期日までに主張・立証する準備が整わなかったものについては、次回以降の期日に主張・立証すれば問題ないと思われるかもしれません。
しかし、このように時間に余裕があると考えて対応することは、裁判所における労働審判の運用を踏まえれば、非常にリスクが大きいものになります。
言い換えると、労働審判においては、初回の期日(労働審判手続の申立てがされた日から40日以内)が勝負と言っても過言ではありません。これは、現在の労働審判の運用状況が関わっています。

労働審判では初回の期日に審尋(当事者から事情を聴く手続)が行われ、当事者の話を聴いた上で、同期日以降に調停による解決が試みられ、多くの事件が第2回期日までには調停が成立しています。
すなわち、現在の労働審判の運用では、第1回の期日には、労働審判委員会が争点整理と必要な証拠調べを実施し、評議をして心証を固め、当事者に調停案を示して調停を試み、第2回・第3回の期日には調停案を提示して積極的に調停を試み、調停が成立しなければ、労働審判に至るという流れになっています。
このような労働審判の運用からすれば、初回の期日には事件の内容に関する審理はほぼ終わっており、通常の民事訴訟のように次回期日があるとは思わないほうが良いでしょう。第2回期日以降になって、新たに主張・立証したとしても、労働審判委員会では既に心証形成がなされているのであり、固まってしまった心証を覆すことは困難となるでしょう。

この点、申立人のほうは、当然、入念な準備をした上で労働審判の申立てをしているはずですから、準備不足で主張・立証が漏れるということはないでしょう。他方で、会社側は、裁判所から通知が届いてから、労働審判を申立てられたことを知るわけですから、準備する時間が足りないことが容易に想像できます。
しかし、労働審判では初回の期日に心証が形成されてしまうわけですから、泣き言ばかり言っていられません。初回の期日までに申立書に記載された事実の認否を明らかにし、必要かつ十分な主張・立証を尽くした答弁書を提出する必要があります。
そのためには、会社側で、申立書に記載された事実及び証拠について精査しなければなりません。
vその上で、会社側の主張を書面にして、証拠は、提出して良い証拠か否か検討しなければならないでしょう。
また、初回期日には審尋があるため、当日いきなり審判官や審判員から質問されて、答えられないということがないように準備しておく必要もあります。

このように、労働審判では、準備するために与えられた時間が限られているにもかかわらず、初回期日までに準備しなければならないことが多くあります。
時間がない状況で、これらの手間がかかる作業を行うことは、専門的な法律知識が要求されることも考えると、会社側にとって非常に大きな負担となるでしょう。
そのため、労働審判手続の申立書が届いたら、すぐに法律の専門家である弁護士に相談したほうが良いでしょう。この点、当事務所は、労働審判の経験が豊富にありますので、是非ご相談ください。

どのようなトラブルが労働審判の対象となるのか?

労働審判の対象は、個別労働関係民事紛争です。個別労働関係民事紛争としては、残業代請求や解雇や懲戒処分の効力を争う事件、退職金請求等があります。
詳しくは、こちらをご覧ください。

労働審判の対象とならないケースとは

そもそも、個別的労働関係民事紛争でなければ、労働審判の対象となりません。
たとえば、労働関する紛争であっても、労働組合が当事者となる事件は、集団労働関係紛争であり、個別労働関係民事紛争ではないので、労働審判では取り扱われません。
公務員の雇用が問題となる事件は行政事件であるので、個別労働関係民事紛争ではなく、労働審判の対象ではありません。詳しくは、こちらをご覧ください。

労働審判を申し立てられた場合の会社側の対応

労働審判を申し立てられた場合、初回期日で審判委員会の心証が形成されるので、迅速な準備が必要です。
そのため、労働審判の呼び出し状を受領した場合には、直ちに、弁護士に相談し、対応の準備を進めてください。対応のポイントについては、こちらをご覧ください。

労働審判手続きの流れ

労働審判手続きでは、まず、裁判所から労働審判手続申立書が会社に郵送されます。
会社は、指定された期限までに、申立書に対する反論書面(答弁書)を提出し、反論の証拠も提出しなければなりません。第1回目の期日では、裁判官や労働審判員が当事者に質問する手続き(審尋)が行われ、この時点で、裁判官や労働審判員が心証を形成します。
第3回期日までに調停が成立しなければ、調停案に沿った審判がなされます。手続きの詳細については、こちらをご覧ください。

労働審判を有利に進めるにはどうすべきか?

初回期日の審尋により心証を形成するのが労働審判制度の特徴です。そのため、労働審判を有利に進めるには、初回期日までに十分な準備を行うことが必要です。対応のポイントについては、こちらをご覧ください。

会社側の初動対応が重要となる

会社は、初回期日までに、反論書面である答弁書を提出し、反論のための証拠を提出しなければなりません。
また、初回期日で裁判官などから質問をされてこれに回答するのは、会社の担当者です。そのため、答弁書の作成、証拠の提出、審尋の準備などを約1か月程度の時間で行わねばなりません(答弁書の提出は3週間程度)。
これらの対応を短期間のうちに行う必要があるので、申立書が会社に届いた場合には、速やかに労働審判の準備に取り掛かる必要があります。

弁護士に依頼することのメリット

労働審判は、従業員側が申立人となり、会社側が相手方となるのが通常です。
申立人である従業員側は、自分で準備を整えてから申立をすることができます。これにたいし、相手方である会社は、突然、労働審判の申立書が送られてきてから、迅速な準備を行うことを要求されます。
従業員側と会社側では同じ手続きであっても大きく異なりますので、会社側が労働審判を申し立てられた場合には、会社側で労働審判の経験がある弁護士を依頼されることをお勧めします。
また、会社側労働審判の経験のある弁護士に依頼すると、無駄なく準備が可能となりますので、迅速に十分な準備ができるというメリットがあります。詳しくは、こちらをご覧ください。

労働審判に必要な費用について

会社が労働審判への対応を弁護士に依頼せず、自ら行う場合には、費用は掛かりません。手続き必要な費用は申立人である従業員が裁判所に納めています。

労働審判の解決金の相場はどのくらい?

労働審判の対象は、個別労働関係民事紛争であり、その事件は様々なものです。
そのため、事件種別を無視して、解決金の相場というものを論じることはできません。
詳細はこちらをご覧ください。

弁護士に依頼する場合の費用

ALGが労働審判手続きを受任する場合には、事件を受任するにあたって頂く着手金・諸経費と事件が成功した場合に頂く成功報酬があります。
詳細はこちらをご覧ください。

労働審判制度に関する様々なご質問に、法律のプロである弁護士がお答えいたします。

労働審判制度は、初回期日までに十分な準備が必要な手続きです。そのため、従業員から労働審判を申し立てられた際には、労働審判に向けて迅速に準備を行うためには、法律のプロである弁護士にご相談されることを強くお勧めします。
労働審判に不服があれば、異議申し立てを行えばよいとお考えになられる方もいらっしゃいますが、十分な準備で挑めば有利な調停案や審判が得られる可能性があるのであれば、そのチャンスを生かすべきです。
労働審判を申し立てられた際には、ぜひ、弁護士にご相談ください。

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※会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません

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