監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
- フレックスタイム
フレックスタイム制とは、労働者が1か月などの単位時間のなかで一定時間数労働することを条件として、1日の労働時間を自己の選択するときに開始し、かつ就労できる制度です。
労基法上、フレックスタイム制を採用するための要件が定められており、その要件を満たしていない場合には、フレックスタイム制が無効となってしまします。
そこで、本稿では、フレックスタイム制を実際に導入するための手続きについて解説を行います。
目次
フレックスタイム制を導入するための手続き
フレックスタイム制を導入するためには、就業規則等にフレックスタイム制に関する定めを置き、かつ、労使協定で所定の事項を定める必要があります。
就業規則の作成・変更
就業規則の作成義務がない事業場(常時10人未満の労働者しか使用しない事業場)においても、就業規則を作成することは可能ですので、フレックスタイム制導入のため、新たに就業規則を作成することも考えられます。
就業規則は、①労基法に定められた絶対的記載事項の記載し、②当該事業場の過半数労働組合または労働者の過半数代表の意見聴取することで作成できます。使用者は作成した③就業規則を労働者に周知する義務を負い、④常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合は、労基署署長に就業規則を届け出る必要があります。
就業規則を変更する際の手続きは、過半数組合または過半数代表の意見を聴取し、その後、労働者に就業規則を周知し、変更後の就業規則を労基署署長に届け出る必要があります。
就業規則に規定が必要な事項
フレックスタイム制の導入にあたって、就業規則に、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることを記載することが必要となります。
具体的には、「フレックスタイム制が適用される従業員の始業及び終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。」などと定めます。
従業員への周知義務について
就業規則が、労働者に周知されていないと労働者はその規則の内容を知ることができません。そのため、作成した就業規則が労働者に周知されていない場合には、その就業規則は効力をもちません。したがって、就業規則を作成するにとどまらず、従業員にその内容を周知することが必要です。
労使協定の締結
フレックスタイム制に関する就業規則の作成周知に加えて、フレックスタイム制に関する労使協定の締結が必要です。
協定で定めるべき内容は、①対象となる労働者の範囲、②清算期間、③清算期間における総労働時間、④標準となる1日の労働時間です。そのほか、任意で、コアタイム、フレキシブルタイムを定めることができます。
対象となる労働者の範囲
対象となる労働者の範囲を定めることは、フレックスタイム制の適用の対象となる従業員を一部に限る趣旨ではありません。したがって、「全従業員」と定めることも可能です。対象労働者が明確になればよいので、「営業部職員」という定め方や、「Aさん、Bさん」といった定め方でも構いません。
清算期間
清算期間とは、フレックスタイム制において、労働者が労働すべき時間を定める期間です。
そのかわりに、フレックスタイム制では、1か月間で所定労働時間は177時間などと定めますが、その際の1カ月という期間が清算期間です。この場合、その1か月間の法定労働時間の総枠を超えた労働が時間外労働となり、割増賃金が発生します。
清算期間における総労働時間
清算期間における総労働時間とは、フレックスタイム制で、清算期間の間に労働すべき時間として定められた所定労働時間をいいます。上記の具体例でいうと177時間が清算期間における総労働時間となります。
この総労働時間は、清算期間における法定労働時間の総枠の範囲内としなければなりません。
標準となる1日の労働時間
標準となる1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際に支払われる賃金の算定基礎となる労働時間です。清算期間における総労働時間を、期間中の所定労働日数で割った時間を基準として定めます。
フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇を1日取得した場合は、その日については、標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱う必要があります。
コアタイムとフレキシブルタイム
コアタイムとは、労働者が1日のうちで必ず働く必要がある時間帯を指します。フレックスタイム制導入にあたり定めることは義務ではありませんが、定める場合には、その開始時刻と終了時刻を協定で定める必要があります。
なお、フレックスタイム制でコアタイムを定めない場合には、実質的に労働者が出勤日を自由に決めることが可能となります。しかし、このような場合であっても、所定休日をあらかじめ設けておく必要はあります。
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