労務

労務支援コンサルティング

一口に労務といっても、その分野は、会社内でのトラブルや従業員による犯罪など突発的な問題もあれば、就業規則の制定・改定など会社の基幹をなすもの、コンプライアンス体制の構築・改善やハラスメントに関する研修など問題を未然に防止するためのもの等々、多岐にわたります。これらについて、統一的かつ適切な対応をしていく必要があります。このことをあるセクハラの事例を使って見ていきたいと思います。

あるセクハラの事例

(1)起こってしまってからの対応

会社内で、上司からセクシャルハラスメントを受けたとの従業員からの訴えがあったとします。

この場合、企業としてはどう対応すべきでしょうか。間違った対応を取った場合、セクハラについてだけでなく、別の問題も生じかねません。

例えば、このような事例はどうでしょうか。

課長は少し異性にだらしがない部分があり、部長としては、異性の部下に対する課長の態度や言動に問題があると考えていました。また部長は、会社のマニュアルや指示を度々無視する課長の仕事のやり方を問題であると考えており、度々注意していたことから、部長と課長の関係は険悪なものとなっていました。

そのような中で、部長が、従業員から「課長からセクハラを受けました。」と報告を受けたとしましょう。

部長は課長を呼び出し、被害を受けたとする従業員の話だけをもとに、一方的にセクハラを事実として叱責し、「人間として恥ずかしくないのか。」、「社会人としての資格がない。」、「元々お前の人間性や仕事にやり方に疑問を感じていた。お前みたいな人間はこの会社にいるべきではない。」「帰れ」「もう会社に来るな。」などと言い放ちます。

憤った課長は仲のいい部下に事の顛末と部長への不満をぶちまけて帰宅し、課長から事の顛末を聞いた部下からその話が会社内に広まっていきつつあります。

では、この時点で、あなたが、部長から「部下にセクハラをしたため課長に自宅謹慎を命じました」と部長から報告を受けた、企業の経営者、あるいは法務や総務の担当者であるとして、これからどうすべきでしょうか。

ある総務の担当者は、被害を受けたとする従業員から話を聞き、課長への適切な処分を検討し、被害を受けたとする従業員のフォローをした上で、不必要にこの話がうわさとして広まらないように関係者等に注意を促し、セクハラについての社員セミナーを開くといった対応をしました。

これで十分でしょうか。確かに上記のような対応はいずれも必要な対応でしょう。

しかし、このままでは、新たな問題を生じさせてしまう可能性が高いといえます。

それではどのような対応が必要なのでしょうか。

まず、あなたが、部長からの報告を受けてすべきことは、勝手になされた課長の(事実上の)謹慎処分(実際には部長が「帰れ」「会社に来るな」といって家に帰しただけですが)を取消し、課長から事情を聴くことです。その上で、他の従業員にも話を聞き、セクハラの有無や証拠の有無を判断し、課長の処分等について検討すべきです。

何故なら、これを怠ってしまった場合、課長が、セクハラが事実無根であると主張して、謹慎やその後の懲戒処分について争ってきたり、あるいは、課長が、部長の叱責についてパワーハラスメントだと主張して、会社としての責任を追及され、会社として責任を負わざるを得ない恐れがあるからです。

セクハラが事実無根であった場合はもちろんですが、仮にセクハラが真実であったとしても、それを立証できなければ、懲戒処分等の正当性を主張することは難しくなります。課長のセクハラを裏付けるものとして被害を受けたとする従業員の話しか集めていなければ立証が難しくなるかもしれません。少なくとも課長の言い分を全く聞かないまま懲戒処分等をすれば手続き的に適切ではなかったとの指摘は免れないでしょう。

このようなことは他のトラブルや従業員による犯罪が疑われる場合にも言えるでしょう。

トラブルが起きたときにいつどのような対応をとるのか、その時点で必要な処分を下すのか、二次的な問題をどのように防ぐのかといったことには、広い視野と十分な経験、そして専門的な知識が必要なのです。

(2)事前の対策

それでは少し視点をずらして、このような問題が生じないために事前にどんな対策をとることができたのか考えてみましょう。

① 就業規則(の改訂)

まず、大事なことは、やはりハラスメント防止に対する意識を高め、ハラスメント問題自体を起こさないようにすることです。

そのために、就業規則にハラスメントの防止を目的とした規定を組み込み、周知するということが考えられます。法的義務との関係もあるのですが、就業規則の改訂等を行った上で従業員に周知し、懲戒の対象にもなることを意識させることで、ハラスメント防止の意識を高めることが考えられます。

このときにも、それぞれの会社にあった就業規則(の改訂)とする必要があります。

② 従業員向けのセミナー、通報制度の確立などのコンプライアンス体制の構築

定期的にハラスメント防止のセミナーを開くことで従業員の意識を高めるとともに、ハラスメントの被害に遭った場合に被害を訴えやすい仕組みを作ることがひいてはハラスメントの防止に役立ちます。

③ 管理職向けのセミナー

管理職向けのセミナーは3つの意味で重要です。

1つ目は、やはり管理職という立場はハラスメントの加害者になりやすいため、意識を高めこれを防止するという点です。

2つ目は、人材を管理していく中で、部下同士のハラスメント問題を生じさせないために、必要な管理をしていくスキルやメソッドを身につけさせるという点です。

そして、3つ目が見落とされがちなのですが、問題が生じた際に2次的な問題を防ぐために、適切な対処方法を身につけさせるという点です。

今回の事例も、部長が、課長からのセクハラがあったと報告を受けた時点で、一人で勝手に対処せず、はじめからきちんと課長の言い分も聞き取ることからはじめられていたなら、課長から会社の責任を追及されるという二次的な問題は起きなかったでしょう。

(3)まとめ

このように一つのセクハラ問題をとっても事前事後に様々な対策をとる必要があります。

これらはバラバラに場当たり的に対応しても効果は薄くなってしまいます。

ハラスメントを防ぐという共通の目的の下、全ての対策を連動させていく必要があります。そのためには広い視野と十分な経験、そして専門的な知識を持った弁護士がお役に立てるかと思います。

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