労務

アルコールを飲みながらテレワークしている従業員への対処法

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

  • 問題社員

コロナ禍で外出が少なくなったり、仕事が減ったりといった事情から、飲酒量が増え、アルコール依存の治療を行う医療機関への相談が増加しているといわれています。
コロナ禍において、テレワークを行っている労働者は少なくありませんが、自宅で勤務をすることから、勤務中に飲酒をしてしまうという労働者もいるようです。
以下では、テレワーク中の飲酒行為等についての対処方法を説明します。

テレワークの普及で懸念されるアルコール依存の増加

テレワークは、同僚や顧客などと対面することがないため、飲酒をした場合であっても、臭いで飲酒していることが発覚することがありません。そのため、勤務中に飲酒をしてしまうという労働者がいるようです。
また、テレワークにより、通勤する必要がなくなることから、終業後すぐに飲酒を始めて長時間の飲酒をすることにより飲酒量が増えてしまうという労働者もいるようです。

テレワーク中の従業員の飲酒で生じる企業リスク

 

当然ながら、飲酒を行い酒に酔った状態で業務を行うと、アルコールの影響による注意力や集中力の低下などから業務上のミスが生じる可能性があります。このような飲酒を原因とするミスにより顧客や使用者である企業に損害が発生するリスクが生じます。
また、テレワーク中の業務においても、使用者は労働者の生命身体に対する安全配慮義務を負っているため、使用者が、労働者の飲酒等を知りながら放置して労働者の健康を損なう結果を生じさせた場合には、会社の安全配慮義務違反が生ずるリスクがあります。

テレワーク中の飲酒で懲戒処分できるのか?

テレワーク中に飲酒した場合に、これを理由として懲戒処分は可能でしょうか?

勤務時間中の飲酒は「職務専念義務」「誠実労働義務」に違反

勤務時間中に、飲酒をすることは、飲酒行為自体が職務専念義務や誠実労働義務に違反します。そのため、テレワーク中の飲酒を理由に懲戒処分を行うことは可能です。

勤務時間前や休憩時間に飲酒していた場合はどうなる?

勤務時間前や休憩時間は、労働者は使用者の指揮命令下になく自由な行動をとることができるのが原則です。もっとも、勤務時間前や休憩時間の飲酒であっても、アルコールの影響により業務の遂行に悪影響が出ることが考えられます。そのため、勤務時間前や休憩時間の飲酒行為を懲戒対象とすることはできなくとも、酒気を帯びた状態で勤務していることを対象として懲戒処分をすることは可能であると思われます。

アルコールを飲みながらテレワークしている従業員への対処法

実際に、アルコールを飲みながらテレワークをしている従業員がいた場合にはどのように対処すべきでしょうか?

懲戒処分の前にまずは注意指導を行う

まず初めに行うべきなのは、懲戒処分ではなく飲酒行為に対する適切な注意指導です。懲戒処分が無効と判断されるリスクを回避するためには、不適切な行為に対し、注意指導を行ってもこれに従わない場合に懲戒処分を行うことが望ましいといえます。もっとも、大量の飲酒で酩酊状態になっている場合などは、最初から懲戒処分を行っても問題はありません。

就業規則の懲戒事由に該当するかが問題

勤務中の飲酒行為は、懲戒処分をするに足りる不適切な行為です。しかし、会社が労働者を懲戒処分するにあたっては、就業規則の懲戒事由に該当することが必要です。
就業規則において、業務中の飲酒行為そのものを懲戒事由としていなくとも、飲酒をしながら勤務をしている場合は、職務専念義務違反等に関する懲戒事由に該当し、懲戒処分が可能です。

懲戒解雇は処分が重すぎるとして無効になる場合も

懲戒処分の中で最も重い処分には懲戒解雇があります。労働者が懲戒事由に該当する行為をした場合にまれに、いきなり懲戒解雇を選択する使用者が見受けられます。
しかし、懲戒事由に該当する場合であっても、その懲戒事由に該当する行為に比べてその処分の内容が重すぎる場合には、処分の相当性を欠くとして、懲戒処分は無効となります。
勤務中の飲酒行為であっても、過去に注意や懲戒処分を行っていないにもかかわらず、いきなり懲戒解雇を行った場合には、無効と判断される可能性は高いといえます。

テレワーク中の飲酒を防ぐために企業がすべきこと

テレワーク中に労働者が飲酒することを防ぐために企業はどのようなことをすべきでしょうか?

就業規則に規定を設ける

就業規則に業務中の飲酒を禁止する規定を設けて、労働者に明示することは有用です。明確に就業規則で禁止して、これを周知しておくことで、企業として、労働者に対し、テレワーク中の飲酒行為には厳しい対応をすることを示すことができ、規定がない場合に比して、飲酒行為を抑止する効果があると考えます。

定期的にコミュニケーションを取る

テレワークは、事業場での勤務のように同僚とのコミュニケーションがとりづらいため、孤独感を感じる労働者もいます。孤独感や業務上のストレスが飲酒を行うきっかけとなることもあるため、テレワーク中の労働者と業務中にコミュニケーションをとることは、勤務中の飲酒を抑制する効果があると考えられます。

ストレスチェックを実施する

ストレスの解消が目的で飲酒をすることも多いため、テレワークを行っている労働者のストレスチェックを行うことも有用です。労働者の精神状態を把握し、ストレスを緩和するために業務量を調整するなどの対策をとることにより、ストレスを原因とする飲酒行為を抑制することが可能となります。

勤務時間中の飲酒行為に関する裁判例

勤務時間中の飲酒行為を理由として懲戒解雇がなされたところ、これを労働者が争った裁判例をご紹介します。

事件の概要

レストランを経営する企業にシェフとして勤務していた労働者が、勤務時間中に飲酒行為をしました。当該企業においては、勤務中の飲酒行為を禁止しており、懲戒事由として、「酒気帯びの状態での就業」を定めていました。当該企業は、上記の懲戒事由のほか、当該飲酒行為は、懲戒事由の「勤務時間中の私用」、当該会社の「秩序風紀を乱す行為」、「業務とは無関係の」当該会社「所有物の使用」にも該当するとして、当該社員を、懲戒解雇しました。
懲戒解雇された労働者は、当該懲戒解雇処分が不当であるとして、当該企業を相手に、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴えを起こしました。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

裁判所(東京地裁平成27年(ワ)第5935号、平成27年(ワ)第29152号、平成〇年〇月〇日判決)は、当該労働者の勤務中の飲酒行為は、当該企業が禁止する行為であり、懲戒事由に該当するという判断をし、懲戒事由には当たらないという当該労働者の主張を退けました。
しかし、懲戒解雇は、懲戒処分の中で最も重い処分であること、処分を受けた労働者が受ける不利益が多大なものであることから、本件が有期雇用契約の期間の途中でされたものであることから本件懲戒解雇には「やむを得ない事由」(労働契約法17条)が必要であると述べました。
そして、当該飲酒行為により、調理業務に支障が生じたことを認めるに足りる証拠がないこと、当該労働者の業務評価が高いこと、懲戒歴がないこと、これまで飲酒行為について注意・指導を受けたことがないことなどから、本件懲戒解雇は不当に重い処分であり、無効であると判断しました。

ポイント・解説

判決のポイントとしては、飲酒行為が「勤務時間中の私用」等の懲戒事由にも該当すると判断されている点です。勤務中の飲酒行為そのものを懲戒事由と定めていなくとも、他の懲戒事由該当性は認められると考えてよいでしょう。
特に重要な点は、飲酒行為が業務に与えた影響や、当該労働者の業務評価、懲戒歴、これまでの注意指導の有無などを考慮して、懲戒解雇は不当に重い処分であると判断している点です。
以上の裁判例から明らかなとおり、就業規則上、懲戒事由に該当し、懲戒解雇が選択できる場合であっても、当該行為に対して、懲戒処分が相当であるかについては、極めて慎重な対応が必要です。

テレワーク中の従業員対応でお悩みなら、労務問題に詳しい弁護士にご相談下さい。

テレワークという新しい働き方のもとでは、勤務中の飲酒といった、事業場内の労務管理では生じなかったトラブルへの対応が必要となるケースもあります。
懲戒処分、解雇といった労働者に対する不利益を生じさせる行為については、裁判所において無効と判断されるリスクがある行為であることから、過去の裁判所の判断を踏まえた対応が不可欠です。
労働者に対する不利益処分などを検討されている場合には、処分前に労務問題に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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