残業代請求対応、未払い賃金対応

取扱分野

賃金や時間外・休日・深夜の割増賃金が支払われない場合、使用者は、当該金額の支払いのみならず、遅延損害金(賃金の支払いの確保等に関する法律参照)や付加金の支払い義務を負担したり(114条)、罰則(119条)を科せられる可能性があります。そのため、未払い賃金・残業代請求をされているにも関わらず、これを無視することは非常に危険です。

従業員から、未払い賃金・残業代の請求がなされた場合には、請求を放置することなく、支払う必要がない理由を説明したり、また、支払うべき賃金が存在する場合には、正確に計算して支払いを行ったりするなどの対応をする必要があります。

また、未払い賃金・残業代が発生しないように、事前に適切な制度を整えることで対策することが、最も適切な対応です。

以下では、未払い賃金・残業代請求された場合の対応や未払い賃金・残業代が発生しない制度に関して、解説します。

未払い賃金・残業代請求のリスク

未払い賃金・残業代が支払われない場合、使用者は、未払い賃金・残業代の支払いのみならず、遅延損害金や付加金の支払い義務を負担したり(114条)、罰則(119条)を科せられる可能性があります。

上記のように、従業員からの未払い賃金・残業代請求を放置した場合には、実際に未払い賃金・残業代が存在すると、本来、支払わなければならない賃金を支払う以外にも、不利益が発生します。使用者が、未払い賃金・残業代はないと考えている事案であっても、裁判において、未払い賃金・残業代の支払いが認められることは少なくありません。そのため、従業員から未払い賃金・残業代請求がなされた場合には、これを放置することなく、必ず、対応について専門家である弁護士にご相談ください。

賃金の支払いに関する法律上の定め

(1)賃金は、通貨で支払わなければならず(労基法24条1項)、現物給与は禁止されていますので、現物で賃金を支払い済みであるとの主張は認められません。

(2)賃金は、直接労働者に支払わなければならないとされており(同法24条1項)、労働者が第三者に賃金の受領権限を与える契約を締結しても無効となります。そのため、労働者との合意で、別の人物に給与を支払い済みであるとの主張も認められません。

(3)賃金は、その全額を支払わなければならないとされている(同法24条1項)ので、法律上、控除することが認められた給与所得税、社会保険料等以外のものを賃金から控除するには、労使協定の定めが必要です。この法規制により、使用者が、賃金債権と相殺することも禁止されていますので、注意が必要です。使用者が、労働者に対して有する債権と賃金債務を相殺したとして、未払い賃金がないと考えておられるご相談を受けることがありますが、このような場合に相殺について労働者の合意がなければ、賃金の未払いが発生していることになります。また、形式的に相殺の合意を取り付けていても、労働者が自由な意思で相殺に合意する合理的理由が客観的に認められなければ、合意があっても相殺は認められませんので、ご注意ください。

(4)賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないとされていますので(同法24条1項)、給与の支払い期間が1か月を超える間隔となっている場合には、賃金の未払いの問題が生じることになります。

(5)労働者が退職後に時間外の割増賃金を請求する場合、会社は、年率14.6パーセントの遅延損害金を支払わなければならないとされています(賃金の支払いの確保等に関する法律第6条、同2条、同施行令1条)。この場合、遅延損害金は、退職日(退職日以降に支払期日が到来する場合は、その支払い期日)の翌日から起算されます(同法6条)。

なお、労働者が就業中に未払い残業代を支払う場合には、法定利率により遅延損害金を支払うことになりますが、法改正の影響により、令和2年4月1日以降発生する、労働者が未だ就業中である場合の遅延損害金は、年3パーセントとなります。それ以前に発生している遅延損害金は、年6パーセントとなります。

残業代支払いの事前対応策

・変形労働時間制の導入
変形労働時間制とは、一定の期間について、週当たりの所定労働時間の平均が週の法定労働時間を超えなければ、期間内の一部の日や週において、所定労働時間が法定労働時間を超えても、所定労働時間の限度で、法定労働時間を超えたとの取扱いをしない制度です。
この制度により、時期により業務量に差がある場合に、労働時間を柔軟化することが可能になり、残業代発生を事前に防止することができます。

 

・定額残業制の導入
定額残業代制とは、一定の金額を支払うことにより、残業代(時間外労働割増賃金、休日労働割増賃金、深夜労働割増賃金)を支払う賃金制度を言います。定額残業代については、大きく分けて、一定額の割増賃金を予め基本給に組み込むことにより支給するもの(組み込み型)と基本給とは別に手当として支給するもの(手当型)の2種類があります。
定額残業代制を導入することで、支給した金額までの残業代を支払う必要がなくなります。

・事業場外、在宅勤務のみなし労働時間制の導入
労働者が、労働時間の全部又は一部を事業場外で業務に従事した場合、所定労働時間だけ労働したものとみなす制度を言います。
当該制度を導入するためには、労働時間の算定が困難である必要があります。かかる制度を導入することで、残業代支払いを防止することが可能となります。

・裁量労働制の導入
裁量労働制とは、一定の要件を満たす場合に、実際の労働時間にかかわらず、所定労働時間だけ労働したものとみなす制度を言います。
裁量労働制には、厚生労働省で定める一定の業務について適用する専門業務型裁量労働制と、企画・立案・調査等の一定の業務につき要件を満たす場合に適用する企画業務型裁量労働制の2種類があります。
当該制度も残業代請求を防止することが可能となります。

・注意事項
上記の事前対応策については、制度を導入していても、その制度を有効とする要件を満たしていないため、制度そのものが無効となり、未払い賃金・残業代が発生すると判断されるケースも少なくありません。
したがって、労働者から未払い賃金・残業代請求がなされた場合には、制度が有効であるか否かの判断も非常に重要となります。上記の制度により、未払いが発生していないと判断して対応を決定する前に、必ず、専門家に相談をしてください。

未払い残業代の支払い義務と罰則

残業時間の立証責任

残業時間の立証責任については、請求する側である労働者にあります。

しかし、使用者が労働者の労働時間を管理する義務を負っていることから、タイムカード等で出退勤時間の管理がなされている場合、その時間内においては特段の事情がない限り、タイムカード等の打刻時間が実労働時間として認定されます。また、例えば、労働者が家族に対して、「仕事が終わったから、今から帰宅する」旨のメールやラインを送信していることや、日記を作成していることもあります。かかる場合、当該メールや日記も残業時間に関する証拠になり得ます。

また、労働者から、使用者がタイムカードの提出を求められた場合、労働契約における信義則上の義務として、タイムカード等を労働者に開示する義務があると解されています。

そのため、残業時間の立証責任が労働者にあるといっても、その主張・立証は著しく困難なものといえず、会社において、当該残業時間の主張に対して、しっかりと反論する必要があります。

未払い賃金請求の対応

未払い賃金請求がされた場合は、初動が大切です。労働者の請求があったにもかかわらず、会社が適切な対応をせずにこれを放置した場合、すでに述べたとおり、会社にとって様々な不利益が生じます。

初動対応の重要性

未払い残業代の請求については、初動が大切です。

労働者の請求が法的に正しいのであれば、会社は直ちに未払い賃金等を支払う必要があります。他方で、労働者の請求に法的な根拠がないのであれば、当然、会社はこれを支払う必要がありません。

労働者からの請求を放置した場合のリスクを考えると、労働者の請求に応ずる必要があるかどうかを、初動対応において速やかに判断する必要があります。

そのため、初動対応として、そもそも、労働者の請求どおりに支払う必要があるのか否かについて、専門家に相談して回答を得たうえで、方針を決定することが重要です。

請求を放置した場合のリスク

労働者の請求が法的に正しく、会社がこれを直ちに支払わなければならないにも関わらず、これを放置した場合、遅延損害金や罰則を被るリスクがあります。

また、労働者の請求が法的な根拠を欠いていた場合であっても、会社が労働者に対してきちんと説明することなく放置した結果、会社と労働者との間で紛争が生じてしまう可能性があります。紛争化した場合に、裁判等で本来不必要な労力や費用を会社がことになりかねません。

会社側が主張すべき反論

労働者が未払い残業代を請求した場合、会社は、適切に反論をする必要があります。そこで、残業代請求事件で主な反論について、以下で解説します。

未払い賃金・残業代は発生していない

典型的な反論として、会社は、当該時間に労働者が就業していなかった旨(怠業していた、既に帰宅をしていた等)の反論があります。

しかし、タイムカード等で出退勤の時間が立証されると、特段の事情がない限り、その時間においては実労働を行っていたと認定がされるため、労働者が主張する労働時間に関して、行うべき仕事がないことなどを主張立証していくことになります。

訴訟において、残業中に、労働者がどのような労働を行っていたかの詳細まで認定しなくとも、出退勤の時刻を基準として、概括的に実労働時間が認定されることが多いため、使用者としては、不当な残業代請求を防ぐためにも、平時から適切な労働時間の管理に努めることが必要です。

会社の許可なく残業をしていた

会社は、労働者が会社の許可を得ることなく残業をしていたため、残業代が発生しないと反論することができる場合があります。

時間外に、労働者が仕事をすれば、直ちに残業代が発生するのではなく、使用者の指揮命令の下で仕事をしたと認められて初めて残業代が発生します。労働契約が、使用者の指揮命令の下で労務を提供する契約であることから、指揮命令下になく仕事をした場合には、労働契約上の「労務の提供」とはならないからです。

会社において、残業につき許可制を採用し(労働者が時間外労働をする場合には、予め、会社の許可を取らなければならない等)、会社の許可のない残業を労働時間として認めない旨を就業規則等に記載することで、仮に、無許可の残業を労働者が行ったとしても、指揮命令下になかったと会社が主張することが可能になります。

ただし、会社が、労働者の残業を明示的に許可せず、または、労働者に残業を命じていなくとも、労働者が残業していることを黙認している状態や、所定労働時間内で処理することが明らかに困難な業務の処理を命じているような場合には、黙示の残業許可や黙示の残業命令があったとして、残業に対して残業代の支払いが命じられますので、ご注意ください。

管理監督者からの請求である

管理監督者については、労働時間・休日規制がおよびません(労基法41条2号)。そのため、管理監督者が時間外・休日労働の割増賃金を主張した場合、会社は、当該労働者が管理監督者であるから、時間外・休日労働の割増賃金が発生しない旨を主張することが可能です。

ただし、管理監督者であっても、深夜労働の割増賃金は発生するため、ご留意ください。

そして、最も重要な点は、会社において管理職としての役割を与えられている労働者であっても、直ちに、労基法上の「管理監督者」には該当しないということです。むしろ、大半の事例で、「管理監督者」該当性が否定されています。

そのため、管理職の労働者からの残業代の請求に対しても、「管理監督者」であるから支払いの義務はないと即断せず、弁護士にご相談ください。

定額残業代として支払い済みである

前記のとおり、定額残業代制とは、一定の金額を支払うことにより、残業代(時間外労働割増賃金、休日労働割増賃金、深夜労働割増賃金)を支払う賃金制度を言います。

定額残業代制を導入することで、残業代が発生したとしても、既に支払い済みである旨の反論をすることが可能になります。

この制度は、採用されている会社が多く、裁判上でその有効性が争われて無効と判断されたものもたくさん存在します。

労働者からの残業代請求に対し、定額残業代として支払い済みであるから払わなくてもよいと即断することなく、その制度が訴訟上有効と認められるものかについて、弁護士に是非、ご相談ください。

消滅時効が成立している

消滅時効を主張するためには、単に時効期間が経過するだけでは足りず、時効の援用をする必要があります。

労基法改正に伴い、令和2年4月1日以降に発生した残業代については、請求できる日から「3年間」となっています(当面の間は3年間の予定ですが、今後、5年間に延びることになります。)。

なお、令和2年4月1日以前に発生した残業代については、請求できる日から「2年間」となります。

未払い賃金請求の和解と注意点

未払い賃金請求の和解の際、和解金等の一定の金銭支払いと引き換えに労働者が賃金の一部でも放棄する場合、当該意思決定は労働者の自由な意思に基づくことが必要になります(シンガー・ソーイング・メシーン事件、最判昭和48年1月19日)。

使用者が労働者に対して賃金の全額を直接支払わなければならないという賃金全額払い原則(24条1項)からすると、労働者にとって不利益になる賃金放棄の合意をするということは、労働者に不利益なものといえます。ゆえに、自由意思に基づいて意思決定が行われたか否かは厳格に判断され、労働者の自由意思に基づかないと判断された場合、当該和解が無効になる可能性があります。

そのため、労働者と訴訟などの手続き以外で和解をする場合には、和解の経緯や和解条項の確認についても、記録をしっかりと残しておき、後に、無効であったと判断されないように備える必要があります。

付加金・遅延損害金の発生

割増賃の支払いを怠った使用者は、労基法上、労働者の請求により、付加金の支払いを義務付けられる可能性があります(労基法114条)。

付加金支払義務は、労働者の請求により、裁判所が支払いを命じる判決の確定によって初めて発生するものです。そのため、裁判所は、口頭弁論終結前に、使用者が未払い割増賃金に相当する金額を支給し、使用者の義務違反の状況が消滅した場合、付加金の支払いを命じることはできません。1審で敗訴し付加金の支払いを命じられた場合であっても、控訴を行い、判決が確定するまでに未払い賃金の支払いをおこなえば、付加金の支払い部分については支払いを免れることができます。また、前記のとおり、付加金の支払義務は裁判所の判決により命じられるものであり、労働審判において、審判委員会が付加金の支払いを命じることはできません。

また、遅延損害金については、前記のとおりです。

弁護士に依頼すべき理由

未払い賃金・残業代請求は、初動が大切であり、かつ、迅速に対応する必要があります。もっとも、そもそも残業代の支払い義務があるのか否かという点は、法的な判断をする必要があります。また、法的な根拠がない残業代請求に対しては、その旨をしっかりと伝えることが大切です。

特に、賃金・残業代の支払いに関する制度が有効と判断されるか、無効と判断されるかという点については、過去の裁判例を踏まえた詳細な検討が必要な分野です。

未払い賃金・残業代が請求された場合には、専門家である弁護士に、是非ご相談下さい。

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会社が弁護士と顧問契約を結ぶ。それにはどのようなメリットがあるのでしょうか。個別の問題について一つ一つ弁護士を依頼するか判断して、自分では対処できないものだけ依頼した方が安上がりなようにも思えます。そこで、今回は、顧問契約のメリットについてお話します。

場当たり的な対応ではなく、今後の問題を未然に防ぐための目的意識を持った対応ができる。

個別の問題について一つ一つ弁護士を依頼する場合、あくまで「当該問題の解決」が目的となります。例えば社内でセクハラが生じた際には、加害者の処分や被害者のフォローといった当該問題に対する対応が不可欠です。

しかし、企業にとって本当に重要なのは、そのセクハラの背景にある管理職のハラスメント問題に関する認識改善や会社のハラスメント問題を解決するための体制を構築することです。

個別依頼をした場合、「当該問題の解決」をすることが可能ですが、今後発生し得るリスクや会社の体制を抜本的に解決することまではできません。顧問契約であれば、継続的なお付き合いを前提とするため、企業のリスクを回避することに可能です。

予防法務の観点について

顧問契約をした場合、仮に、何らかの紛争が生じたとしても、当該問題の場当たり的な解決のみならず、抜本的な解決を行うことが可能なのは、前述のとおりです。

もっとも、企業にとって、最も大切なことは、「そもそも紛争化させない」ことです。

例えば、セクハラ問題であれば、予め就業規則にハラスメント対策を明記し、企業内でハラスメント関連に対する体制を構築することや社内でハラスメント研修を行い、ハラスメントに関する認識を共有することで、セクハラ問題を生じさせないことや紛争化させないことが可能です。その他にも、契約書のリーガルチェックを行うことで、将来的なリスクを回避するために、不利益な条項を指摘したり適切な条項を追加することの法的なアドバイスをすることが可能です。

このような行為によって、「そもそも紛争化させない」ということが可能となっていくのです。当然ながら、あらゆる問題を100%防ぐということは不可能でしょう。しかし、仮に問題が生じた場合であっても、その紛争を激化させない対応をあらかじめ取ることが可能と言えます。

以上のように、顧問契約をした場合は、場当たり的な解決ではなく、問題が生じないように抜本的な解決が可能となるのです。

それぞれの会社の事情や方針に寄り添った解決方法が提案できるようになる。

例えば、契約書のリーガルチェックを行い、企業にとって不利益な点を削除したり、有利になるよう条項を追加することで将来的な紛争を回避することや紛争になった場合にも有利に進めるための法的アドバイスを行います。しかしながら、企業間の力関係や今後の付き合いの関係上、取引先に対して契約書の変更を申し入れても、受け入れられないということも多々あります。

では、かかる場合の契約書のリーガルチェックは無意味なのでしょうか。契約書のリーガルチェックは、仮に紛争になった場合のリスクを「知る」ことに意義があります。例えば、契約書を取り交わす際に、将来的なリスクを知っていることと知らないことでは大きな違いがあります。契約を行う際に、リスクを知った上で企業判断として、当該法的リスク以上のメリットがあると判断し契約を行うこともあります。しかし、このようなリスクを知らなければ、そもそも適切な企業判断をすることさえ出来ません。したがって、リーガルチェックは企業が契約を行う上で、適切な経営判断をする上で必要不可欠なことと言えます。

以上のとおり、契約書のリーガルチェックは、不利益な点の変更、有利な条項の追加、将来の法的リスクを知るという意味で有用と言えます。そして、このような提案は、会社の事情によって異なります。つまり、会社によっては、どうしても避けなければならないリスク、得たいメリットは様々です。単に利益のみを追求すれば違うのかもしれませんが、会社の名誉、方針などによって考え方が異なるからです。顧問弁護士は、会社の事情を熟知していますので、このような会社の事情に応じてアドバイスが可能となります。

このように顧問弁護士は、それぞれの会社の事情や方針に沿った提案が可能となり、スポットで契約するだけの弁護士よりもメリットが大きいのです。

弁護士の介入のタイミングが早まり、リスクと解決のためのコストが低下する。

多くの方は、問題が顕在化する前に弁護士に相談をすることは稀です。そのため、多くの場合、弁護士が介入するのは、問題が顕在化した後になります。

しかし、上記でも記載したとおり、適切に問題に対応するには、「事前」の対応の方が重要です。我々の感覚で言うと、多くの場合、弁護士に相談をするタイミングは遅すぎるといえます。

また、弁護士への相談が遅れれば遅れるほど、通常は、問題が複雑化していきます。当初、金額の問題だけだったものが、交渉過程の発言や態度で、問題の本質とは違う部分で対立が激しくなっているということも珍しくありません。

弁護士の費用は、一般的に、どれほどの金額の事件なのかが大きな事情ですが、それ以外にも、問題の複雑性も大きな事情となります。そのため、弁護士の介入が遅くなった結果、問題が複雑になると、弁護士費用が高くなるということも珍しくありません。つまり、コストを抑えようとした結果、問題が起きるだけでなく、問題の解決にかかる費用も増えてしまうということも起きてしまうのです。

確かに顧問契約は、月々の支払いがありますので、固定的に一定の金額がかかっていきます。しかし、そもそも問題が起きにくいようにする、問題が起きても最小限に抑えるということを考えると、そのコストに見合う結果を得ることが出来ると考えております。

最後に

以上のとおり、顧問弁護士については、様々なメリットがあると言えます。一度、顧問弁護士の契約をご検討いただければと思います。

労働組合から団体交渉の申込みがあったにもかかわらず、これを正当な理由なく無視することは極めて危険です。
また、団体交渉の場において、高圧的な物言いや怒声・罵声を浴びせる、物を投げつける・机を不必要に強く叩く、資料の開示が必要であるにもかかわらず一切の説明も行わない等、企業が団体交渉に誠実に応じない場合には、違法行為と評価されます。

団体交渉の意義

団体交渉とは、労働者が労働組合を結成し、この労働組合と使用者又は使用者団体とが労働条件をはじめとする使用者と労働者との関係に関するルールについて交渉を行うものです。

労働組合法6条は、「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する」と規定しており、組合等に対して団体交渉権を付与しています。

そのため、企業は団体交渉の申出があった場合、これに対応する必要があります。

労働組合との団体交渉対策の重要性について

団体交渉は、ある日、突然、労働組合から団体交渉を求められてスタートします。当然、企業は、団体交渉に向けての準備をしておらず、突然の団体交渉に戸惑うことが多いでしょう。
しかし、団体交渉において、企業は誠実に交渉する義務が課されており、十分な準備をして対応をする必要があります。

このように、団体交渉は、突然スタートする一方、十分な準備を必要とするものです。このような状況から考えると、日ごろから十分に対応ができるように準備をしておくことが必要でしょう。
以上のとおり、労働組合との団体交渉については、日ごろから、その対応ができるように対策をしておくことが重要といえます。

企業に求められる誠実交渉義務

労働組合との団体交渉において、企業は誠実に労働組合と交渉する義務があります。
その具体的な内容は、状況によりますが、例えば、その交渉の状況に応じて資料を提示したり、労働組合からの質問に対して、具体的な根拠を示して回答したりすることが必要となるでしょう。

誠実に交渉を行わなかった場合、実質的に交渉自体を拒否したとなれば不当労働行為に当たると判断されるおそれがあります。
また、誠実交渉義務違反を理由として不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。
以上のとおり、企業には団体交渉において、誠実に交渉するという義務が課されており、資料提示や十分な回答、説明を行うことが必要となります。

団体交渉の拒否は可能か

「正当な理由」がない限り、団体交渉を拒否することは許されません。後述するとおり、仮に、「正当な理由」なく団体交渉を拒否した場合、不当労働行為(使用者が労働組合の活動に対して妨害行為をすること)と判断され、労働委員会から救済命令が発せられる可能性があります。
そして、この救済命令に違反した場合は、刑事罰が科される可能性があります。

この「正当な理由」に関しては、狭く考えられており、過去の団体交渉において労働組合が暴力的行為を行ったという事情があったとしても、それだけで直ちに団体交渉を拒否する「正当な理由」とは認められないと考えられます。
この場合において「正当な理由」が認められるためには、過去の団体交渉の経緯から次の団体交渉においても暴力的行為に及ぶ可能性が高いと判断できる状況であること、その上で、暴力的行為を行わないことを約束しないなどの事情が必要になると考えられます。

このように「正当な理由」が狭く解されている上、「正当な理由」がない拒否は刑事罰が科されることを考えると、基本的には団体交渉に応じるべきと考えます。

労働組合と団体交渉を行う際の対応

ここでは、労働組合と団体交渉を行う際の対応について解説していきます。

申入れを受ける前の対応・準備

団体交渉は、労働組合から団体交渉の申入れがなされて開始します。しかし、団体交渉の申入れがなされてから準備をしていては十分な対応をすることはできません。
そこで、企業としては、団体交渉の申入れがなされる前から対応・準備をしておくことが重要といえます。

例えば、従業員に懲戒処分をしなければならないような場合、その処分が必要なのか、従業員の行為に対して処分が重すぎないかなどを十分に検討することが必要です。
また、その検討の前提となった事項を記録に残すなどし、団体交渉を申入れがなされた場合において、十分な説明・対応ができるように準備しておくことが重要と考えられます。これは、団体交渉に対する準備にもなりますが、それ以上に、会社運営において重要なことになるでしょう。
つまり、従業員への対応について、場当たり的に決めていたら、従業員としては不公平であると感じるでしょう。そのため、過去の事例や対応と比較しながら公平に対応をしていく必要があります。そして、過去の事例や対応と正確に比較するためには、記録が必要不可欠です。

このように会社運営においても役立つと考えられますので、「どうせ会社内部のことだから」とあいまいにせず、適切に記録を残しておくべきです。

労働組合法上の労働者性の判断基準

労働関係の法律には、「労働者」という言葉が出てきます。この労働者の意味に関しては、法律によって意味が違ってきます。
「えっ、同じ言葉なのに意味が違うの?」と驚かれる方もいるかもしれませんが、法律の世界においては、その法律の目的によって言葉の意味を考えて行く必要があり、同じ言葉でも違う意味になることがあります。

では、労働組合法上の「労働者」とは、どのような者を指すのでしょうか。
これについては、労働組合法3条で「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。」と定義されています。
つまり、雇用契約のもと働いている者だけでなく、請負契約等であっても、給料に近い形で収入を得ている者も「労働者」に当たるとされています。

ここで問題となるのは、「その他これに準ずる収入によって生活する者」をどのように判断するかということです。
これについては、雇用契約がなくても、企業との関係で力関係がある結果、団体交渉によって対等に交渉できるようにするべき者がこれに当たると考えられます。
もちろん、雇用関係に近い関係性を必要としますので、①企業の業務遂行に必要な労働力になっているのか、②企業が契約内容や業務の方法を一方的・定型的に決定しているか、③報酬の計算方法等が労務の対価になっているか、④仕事の依頼を拒否できるか、⑤指揮監督下に置かれて業務をしなければならないか、⑥業務の日時・場所・方法等が指定されているかなどの要素を総合的に考慮して決定していくと考えられます。

団体交渉の流れ及び留意点

団体交渉の大まかな流れは、①労働組合の方から団体交渉の申入れ、②当該申入れに対する回答、③団体交渉の開始、④合意が成立した場合には協定書の作成といった流れになります。また、④´合意が成立しない場合には、交渉を打ち切る場合もあります。

(1)①について
まず、労働組合から組合の結成通知書と団体交渉申入書が送付されます(送付方法は様々であり、FAXや郵便のみならず、企業に組合が来訪し直接交付されることもあります。)。
申入書には協議事項や組合の担当者の氏名・連絡先等の様々な情報が記載されており、企業はこれを十分に精査する必要があります。
また、当該情報から、どのような組合なのか、交渉事項は何なのか、企業の担当者を誰にすることが適当かなどを検討し、また、必要事項の調査をすることになります。

その上で、まず、、団体交渉の申入れがあった場合、企業は最初に当該団体交渉を応じるか否かの決断をしなければなりません。
正当な理由なく団体交渉に応じないことは、不当労働行為や不法行為に該当します。
この点、任意的断行事項(純粋な経営権に関する事項であり、企業が団体交渉に応じるか否かを任意的に決定できる事項)の場合や労働組合が適法に組織されていない場合、団体交渉を拒否する正当な理由が認められる可能性があります。

しかし、義務的断交事項(企業が必要的に団体交渉に応じなければならない事項)か任意的断交事項かを峻別することは非常に難しいと言わざるを得ません。
更に、当該組合が適法に組織されたものか否かの明確に判断することも、交渉の初期段階では難しいのが実情です。
そのため、企業の基本的な方針としては、団体交渉の申し入れがあった場合、当該団体交渉に応じる方向で検討することが妥当です(仮に、任意的な断交事項に関する団体交渉の申し入れがあった場合でも、まずは団体交渉に応じ、交渉の場で組合に対し任意的断交事項に関する事項であると説明することで足ります。)。

(2)②について
回答書は、まずは、団体交渉に応じるか否かの回答をします。
また、団体交渉の日時・場所を調整し、出席者を明らかにします。更に、断交申入書に記載された断交事項が漠然としており不明確な場合、組合に対して、断交事項を明らかにするように求めることも必要です。

特に、団体交渉の日時や場所の調整は大切なポイントとなります。
組合の事務所で行う場合、企業にとってアウェーでの交渉となるため、企業の担当者が萎縮してしまう可能性があります。
また、交渉が決裂し、企業の担当者が退室しようとしたにも関わらず、組合員が企業の担当者の退室を阻害してくることもあります。他方で、企業の事務所で行う場合、交渉中は当該事務所の施設が使用できなくなったり、予定していた交渉時間が過ぎても組合員が退室せず、交渉時間が徒に延長される可能性もあります。
そのため、必要がある場合には、貸会議室等を予約し、そこで交渉を行うことも有効です(貸会議室等の場合、利用時間を指定することで、交渉時間が徒に延長することを防ぐことも可能です。)。

(3)③について
団体交渉をするにあたって、録音機器を用意すること、想定問答を行うこと、弁護士と役割分担の打合せ等の事前の準備を怠ってはいけません。
また、企業には誠実に交渉を行う義務があることから、事前に組合から資料の提出を求められていた場合には、必要な資料を持参することも忘れてはなりません。

団体交渉の当日、発言や態度には十分に留意する必要があります。 また、団体交渉の内容を明確にするために、議事録を作成することも必要です。
なお、議事録作成にあたっては、双方で認識を共有するためにも、その場で確認をすることを怠ってはいけません。

仮に、協議の継続が必要になった場合、次回の協議期日を決めることになります。

(4)④、④´について
協議がまとまり、合意が成立した場合、組合と企業との間で協定書を作成し、合意事項を書面化することが必要です。
一方、協議を続けても平行線であった場合、協議を打ち切ることを検討する必要があります。
そして、協議を打ち切るタイミングをいつにするかは非常に難しいと言わざるを得ません。十分に協議がされていないにも関わらず、企業が一方的に協議を打ち切った場合、誠実交渉義務に違反したとして、損害賠償の対象になりかねません。
他方で、組合員から企業の担当者が監禁されたり、暴行・脅迫を受けた場合には、即座に協議を打ち切る必要があります。
かかる協議の打ち切りのタイミングは、弁護士と打合せする必要があります。

団体交渉時の対応・注意点

(1)団体交渉を無視した場合のリスクについて

団体交渉は「正当な理由なく」拒否することはできません。
労働組合法7条2号は、「労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むこと」を不当労働行為と規定しています。
仮に、企業が正当な理由なく団体交渉を拒否した場合、労働組合は各都道府県労働委員会に対して、救済申し立てを行うことが可能です。そして、労働委員会において、不当労働行為に該当すると判断された場合、救済命令が発せられることになります。
使用者が確定した救済命令に違反した場合、「五十万円(当該命令が作為を命ずるものであるときは、その命令の日の翌日から起算して不履行の日数が五日を超える場合にはその超える日数一日につき十万円の割合で算定した金額を加えた金額)以下の過料に処」(労働組合法32条)されることになります。更に、救済命令が行政訴訟により確定し、使用者がその救済命令に違反した場合は、「一年以下の禁錮若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれに併科」(労働組合法28条)されることになります。
このように刑事罰があるだけでなく、民事上も、使用者による不当な団体交渉を拒否する行為が不法行為(民法709条)にあたるとして、使用者は損害賠償責任を負うことになります(東京地方裁判所平成21年3月27日判決は、「使用者が、労使間の団体交渉において、労働者の団体交渉権を尊重して誠意をもって団体交渉に当たるべき義務に違反したことが、団体交渉権の侵害に該当する場合には、使用者の労働組合に対する不法行為(民法709条)が成立し得る」と判断しています。)。

また、例えば、労働組合は、団体交渉を不当に拒否した会社につき糾弾する内容のビラを配ったり、インターネットを通じて配信することもあります。
このようなビラや記事を見た一般人からすれば、当該企業に対して偏見を持ち、結果的に企業価値を毀損することになりかねません。

(2)団体交渉の場におけるリスクについて

団体交渉の場において、交渉がヒートアップし、企業の担当者が組合員に対し、暴言や失言をしてしまったり、机を不必要に強く叩き威圧することがあります。
そして、このような企業側の団体交渉における態度は、民事訴訟において損害賠償の対象になりかねません。
特に、組合は、団体交渉の席において録音を行うことがよくあるため、使用者は発言に十分に注意する必要があります。

また、企業に誠実交渉義務があります。組合に資料等の提出を求められていたにも関わらず、正当な理由なく、これを開示しない場合には、誠実交渉義務に違反したとして、損害賠償の対象になりかねません。

義務的・任意的団交事項の条項

団体交渉において話し合いの対象となる事項には、企業が団体交渉に応じなければならない義務的断行事項と、企業が任意に応じる任意的断行事項とがあります。
義務的断行事項には、労働者の労働条件や労働者の待遇、労働組合の運営に関する事項がこれに当たると考えられます。
もちろん、企業側が対応できるものでなければならないため、企業が決めることができないもの(例えば、労働法関係の改正等)は義務的断行事項には含まれません。
一方、任意的断行事項は、どのようなものであっても企業が団体交渉に応じた場合、団体交渉の対象となり得ます。そのため、義務的断行事項のようなものに限定されることはありません。

労働組合からの不当な要求への対応法

労働組合から不当な要求を受けた場合は、これを拒否することが必要です。
企業には誠実交渉義務が課されていますが、これは、誠実に協議する義務であって、労働組合からの要求に応じる義務や労働組合に譲歩する義務ではありません。したがって、労働組合から不当な要求をされた場合に応じる必要はありません。
また、不当な要求に応じた場合、今後においても不当な要求が続く可能性がありますので、企業としては不当な要求には応じるべきではありません。
なお、これに関して、一見して不当な要求であれば企業としても容易に不当な要求と判断することが出来ますが、不当な要求か正当な要求か一見して判断できないものも多々あると考えられます。
そのため、不当要求か否かを判断に迷う場合は、そのような要求には応じられないと回答しつつ、協議を重ねて行くべきだと考えます。

交渉後の和解・決裂時の対応

上記でも記載しましたが、団体交渉がまとまった場合(和解した場合)は、協定書を作る必要があります。一方で、団体交渉がまとまらなかった場合は、団体交渉を打ち切るほかありません。以下では、団体交渉終了時の注意点、対応方法について記載します。

労働協約作成の注意点

団体交渉がまとまった場合は、その合意内容を労使協約に記載して企業、労働組合双方が納得の上で、合意が成立したことを証明する書面を作成する必要があります。

この労使協約の作成に際しては、合意内容が正確に記載されていることが必要となります。
通常、口頭での会話だとどうしてもあいまいな部分ができてしまい、双方が合意していると思っても認識が異なっていることがあったということは珍しくありません。
そこで、労使協約を作成した場合は、押印する前に、双方その内容で間違いがないか確認する必要があります。
そして、間違いがないことの確認が取れた後に、お互い労使協約に押印するなどして、書面の取り交わしを行うべきでしょう。

交渉決裂時の対応

交渉が決裂した場合は、団体交渉を打ち切るほかありません。
もっとも、企業には団体交渉を誠実に行う義務が課されていますので、十分に協議した後でないと不当な団体交渉の拒否・打ち切りなどとされかねません。
そこで、団体交渉を打ち切る際には、双方に譲歩の余地がなく団体交渉が成立する見込みがないことを確認することが必要となります。

争議行為における正当性

労働組合は、団体交渉において要求を通すために企業に圧力をかけることが認められています。
これを争議行為といい、具体的にはストライキ、ピケッティング(ストライキが行われている場所に見張りを立たせてストライキ破り等を阻止する行為)、ボイコットなどがこれに当たります。争議行為が正当である場合は、民事上の責任や刑事上の責任が免責されます。
そこで、問題となるのが、どのような場合に争議行為が正当と判断されるかです。これについては、争議行為の①主体、②目的、③手続き、④態様という4つの点から判断されると考えられています。
まず、①主体に関しては、団体交渉の主体となり得るものでなければならず、非公認スト、山猫ストといわれるような場合には正当性が認められないこととなります。
②目的に関しては、義務的断行事項であることが必要となります。
したがって、政治的主張や立法措置を要求するために行われるストライキは正当性が認められないこととなります。
③手続きに関して、争議行為は、団体交渉の要求を通すためのものであるため、原則として、団体交渉を行う必要があります。
そのため、団体交渉において企業の回答のない時点で争議行為を行った場合、正当性がないと判断されると考えられます。

最後に、④態様に関して、ストライキやスローダウン(仕事の作業効率をわざと低下させること)のように労務の提供をしない場合については、正当性が認められると考えられます。一方、職場を占領したりするなど積極的な行為がある場合について、暴力行為があれば正当性は認められません。
また、言論による説得を超えて物利的な行動を伴う場合(例えば、職場におけるストライキで職場に入れないように実力行使をするなど)は、正当性が認められないと考えられます。
以上の事項を踏まえて、争議行為の相当性を判断していくこととなります。

民事免責

正当な争議行である場合、これによって企業に損害が生じたとしても、企業は損害賠償請求をすることが出来ません。
したがって、例えば、ストライキ等によって、企業が営業活動を行うことができず、その結果、企業に損害が生じたとしても、それが正当である限り、企業はストライキを行った者に対して、賠償請求をすることが出来ないこととなります。

刑事免責

正当な争議行為である場合、たとえそれが刑法上許されない行為であっても、刑事罰を受けないことが規定されています。
例えば、ストライキやピケッティングを行った際に、強要罪(生命、財産等に害を加えることを告知等して法律上、義務のない行為を行わせること)、建造物侵入罪、威力業務妨害罪に当たる可能性がありますが、争議行為が正当なものである限り、刑事罰が科されることはありません。

労働組合との団体交渉を弁護士へ依頼するメリット

労働組合との団体交渉は、企業に誠実交渉義務が課されているなど、通常の交渉とは違った独特なものとなります。
また、団体交渉においては、厳しい言葉が使われることも多い上、団体交渉を数多くこなしている労働組合との交渉力の差がある場合も多いでしょう。企業としては、そのような状況で交渉を行わなければならないため、十分に対応ができないことも少なくありません。
弁護士は、様々な企業の団体交渉を担当し、その経験も有しており、また、法律上、労働組合の要求が適切なものなのか、過剰なものなのかを判断することが可能です。

もちろん、事実関係を把握している企業の担当者が団体交渉に臨むことは必要になりますが、弁護士が同席することによって落ち着いて対応できることも少なくないでしょう。

適切な団体交渉を行うためにも、弁護士への依頼を検討すべきと考えます。

最後に

団体交渉の申込みを不当に無視することは、前記のとおり、不当労働行為や不法行為に該当します。このような行為は、紛争を拡大するだけであり、企業にとって著しい不利益になります。そのため、企業は、団体交渉について、誠実に対応する必要があります。また、使用者が団体交渉の場において誠実に交渉を行なわない場合、損害賠償の対象や企業価値を毀損する結果になりかねません。

他方で、企業に法律上課されている義務は、団体交渉に誠実に応じる義務のみで、組合が提示した条件に応じる義務や譲歩しなければならない義務は法律上ありません。企業にとって著しい不利益な条件を組合から提示された場合、かかる条件について応じないとの決断をする必要があります。

労働組合から団体交渉を申し込まれた場合には、弊所までご相談下さい。

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会社を経営していく上で、労務管理の問題は避けては通れない問題です。社員の中には、真面目で勤勉な社員がいる一方で、無断欠勤・遅刻を繰り返す社員、セクハラ行為やパワハラ行為に及ぶ社員など、問題社員がいることが少なくありません。このような問題社員がいることによって、会社の生産性を低下させたり、他の社員の士気を下げるなど職場の雰囲気を悪くしたりする可能性があります。それだけでなく、社外での行動によっては世間での会社の評価を下げることにもなりかねません。このような問題社員の存在は、経営者にとっては悩みの種でしょう。会社として、問題社員に対して、どのように対応するか十分に考える必要があります。以下では、問題社員の対応について記載していきます。

問題社員が企業に及ぼす影響

問題社員が企業に及ぼす影響について追加執筆お願いいたします。

問題社員がいることで、会社の生産性の低下や、職場の雰囲気の悪化、会社の評価の低下などの可能性が考えられます。

例えば、無断欠席や遅刻を繰り返す社員がいる場合、当然、その社員が仕事をする時間が減ることになります。そうなれば、その社員の生産性が上がらないことに加え、他の社員がフォローに回らなければならないなど他の社員の生産性も下げることになりかねません。また、セクハラ行為やパワハラ行為に及ぶ社員がいる場合、職場の雰囲気を悪くし、最悪の場合、社員が会社から離れていくといったことも考えられます。

このように問題社員は、会社の他の社員の生産性やモチベーションの低下等、会社の様々なところに悪影響を及ぼす可能性があります。

問題社員の類型

一口に問題社員と言っても、その社員の問題行動は様々です。もっとも、その問題行動について、ある程度類型化することは可能です。以下では、問題社員の類型について、簡単に説明します。

・勤務態度不良型
正当な理由なく遅刻・欠勤したり、就業時間中に携帯でゲームをしたりするなど、社会人として最低限のルールを守ることができていない社員のことをいいます。この類型の問題社員について何ら対応を取らずに放置した場合、他の社員としては、仕事中に遊んでいるような社員と給与面等の条件が変わらないことに不満を覚えるでしょう。したがって、会社としては、他の社員の士気を下げないためにも、何らかの対応を検討すべきでしょう。

・労働能力欠如型
会社の業務を遂行するにあたり、その業務を遂行するに足りる能力を欠いている社員のことをいいます。この類型の問題社員がいる場合、他の社員は、問題社員の仕事のフォローをしなければならず、負担が大きくなります。また、会社としては、利益を追い求める以上、生産性の低い社員がいることは望ましくありせん。そのため、会社は、生産性を向上させるためにも、何らかの対策を取ることを検討すべきでしょう。

・協調性欠如型
コミュニケーション能力に難があり、他の社員から話しかけられても無視したり、一方的に責め立てたりするなど、社員間の和を乱す社員をいいます。この類型の問題社員が職場にいると、他の社員のモチベーションが下がったり、組織の指揮系統が乱れたりします。組織の根底から崩壊するおそれもあるため、会社は、何らかの対応を検討すべきでしょう。

・ハラスメント型
職場で他の社員に対して、セクハラをしたり、パワハラをしたりするなど、何らかのハラスメント行為に及ぶ社員をいいます。この類型の問題社員を野放しにしておくと、他の社員のモチベーションが低下するだけでなく、直接の被害者になる社員が休職したり、退職したりするまでに至ることもあります。このような大事になる前に、会社は、何らかの対応を取らなければなりません。

・私生活上の問題行動型
仕事以外のプライベートの時間に、酔っぱらって他人に暴力を振るうなどの非違行為に及ぶ社員のことをいいます。この類型の問題社員がいる場合、問題社員の行動によっては逮捕・勾留される場合があり、会社の名誉や信用が害されるおそれがあります。会社としては、何らかの対応を検討すべきでしょう。

・メンタル型
精神的な病気を原因として、勤務することができない社員のことをいいます。この類型の問題社員がいる場合、当該社員から、会社の職場環境が原因で精神的な病気が発症したとして、会社が訴えられることもあります。会社としては、何らかの対応を検討すべきでしょう。

問題社員への対応

すでに記載したとおり、問題社員には、様々な類型があります。会社としては、問題社員を解雇・雇止めして、会社を去ってもらうことが最もシンプルで取りたい解決策だと思います。もっとも、裁判所は、これまで長期雇用システムを前提として解雇権濫用法理を確立し、解雇及び雇止めを厳しく制限してきました。このような現状において、会社が、問題社員を解雇・雇止めした場合、問題社員が不当な解雇・雇止めであると主張して、解雇・雇止めの有効性を争われるおそれがあります。また、問題行動の違いにより、問題の程度も大きく変わるのであり、その問題行動に応じて、会社が問題社員に対して取るべき対応も異なってくるでしょう。そのため、会社は、問題社員に対して、指導・教育を取るのか、警告の対応を取るのか、退職勧奨の対応を取るのか、それとも懲戒解雇の対応を取るのかなど、どのような対応を取るのか十分に検討しなければなりません。しかし、このような検討は、労務管理に精通した法律の専門家でないと、なかなか困難でしょう。この点、当事務所では、労務管理の経験やノウハウも十分にありますので、是非、一度ご相談ください。

問題社員の解雇について

問題社員への対応として、まず考えられるのが解雇でしょう。問題社員を解雇するといっても、その解雇には2つの方法が考えられます。一つは、問題行動が会社の規律や秩序に反する場合、「懲戒解雇」することが考えられます。一方、会社の規律や秩序に反するものであっても、その程度が低い場合や、精神的な問題等で勤務ができない場合は、「普通解雇」することが考えられます。

懲戒解雇ができる場合であっても、普通解雇をすることも可能です。そのため、どちらの解雇が適切かは、問題行動の内容、その程度など事情を考慮して決める必要があります。

問題社員の雇い止め

雇い止めとは、期間の定めるのある雇用契約において、過去に有期雇用契約の更新が反復されている場合または契約が更新されると期待したことに合理的な理由がある場合において、その更新をせず、雇用契約を終了させることをいいます。問題社員との契約が有期雇用契約の場合、上記「懲戒解雇」、「普通解雇」だけでなく、契約期間満了時に、その契約を更新せずに雇用契約を終了させるという対応が考えられます。なお、本来、雇用契約の更新は、新たな契約の締結であることから、更新するか否かは自由ですが、更新しないことが雇い止めに当たる場合は、更新をしないことに合理的かつ相当な理由を必要としますので、解雇の場合と同様に慎重に判断をする必要があります。

また、有期雇用契約でも「懲戒解雇」や「普通解雇」をすることは可能です。そのため、問題社員を解雇するのか、有期雇用契約の更新をしないという対応を取るのかは、問題行動の内容や有期雇用契約の終了の時期等を考慮して決める必要があります。もっとも、有期雇用契約の場合、契約期間の途中で解雇するには、やむを得ない事情が必要となります。このように、有期雇用契約の社員については、期間の定めのない社員を解雇する場合よりも厳格な判断がなされるため、注意が必要です。

雇い止めが認められやすい問題行動

上述したとおり、有期雇用契約の更新が期待されている等の場合において、その雇用契約の更新を拒否するためには、合理的かつ相当な理由を必要とします。

では、どのような場合に、雇い止めが認められやすいでしょうか。これについては、様々な事情を考慮する必要があり、また、問題行動といってもその程度も様々なので、一律に述べることは困難です。もっとも、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメント、業務命令違反行為等、懲戒処分も考えられるような問題行動については、雇い止めが認められやすいと考えられます。

能力不足を理由とした解雇・雇い止め

能力不足の程度にもよりますが、一般的には、成績不良など能力が不十分であることを理由とした解雇・雇い止めが認めることは容易ではないと考えられます。これは、我が国においては長期雇用を前提に、様々な教育・職務を経験させ、その能力を高めていくとことが想定されていたためです。すなわち、能力不足については、教育・経験によって必要な程度にまで高められると考えられることから、直ちに解雇が認められるべきではないと考えられています。

もっとも、特定の職務、地位のために即戦力として高水準の能力を求めて採用したにも関わらず、その能力がなかった場合は、比較的容易に能力不足を理由とする解雇・雇い止めが認められると考えられます。

企業に求められる解雇回避努力

解雇・雇い止めは、社員の生活の資である給与を奪う行為であり、容易に解雇・雇い止めが認められると社員の生活を困難にする可能性があります。そのため、会社としては、解雇以外の方法で社員の問題行動に対応できるのであれば、まずその方法で対応をすべきといえます(解雇回避努力)。

例えば、遅刻・欠席を繰り返す社員に対しては、まず、遅刻・欠席をしないように指導をする必要でしょう。また、能力不足の社員に対しても、その社員と面談をして、仕事の方法・やり方の確認や成績が上がるように指導・教育するなどの対応が必要と考えられます。

このように、問題社員への対応について、安易に解雇・雇止めを選択するのではなく、まず解雇・雇止め以外の方法で対応ができないのか考える必要があります。

不当な解雇・雇い止めのリスク

解雇や雇い止めをするには、合理的な理由を必要とします。では、合理的な理由なく、つまり、不当な解雇・雇い止めをした場合、どうなるでしょうか。

これについて、不当な解雇・雇い止めについては、法律上、無効になります。その結果、解雇・雇い止めをした後についても、雇用契約が継続していることになり、その間の給料を支払わなければなりません。また、これに加え、不当に解雇・雇い止めを理由とする慰謝料を支払わなければならない可能性もあります。

通常、不当な解雇・雇い止めがあったとして、争いが生じた場合、その争いは、数か月から長いと年単位で続くことがあります。その間の給料となると、相当な金額になりますので、不当な解雇・雇止めをした場合、相当な金額を支払わなければならなくなるリスクがあります。

不当解雇による罰則

不当解雇の全てに罰則があるわけではありませんが、解雇制限中の解雇(労基法19条)、解雇予告・解雇予告手当の支払いがない解雇(労基法20条)、監督機関に申告したことを理由とした解雇(労基法104条)をした場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科せられる可能性があります(労基法119条)。また、上記のとおり、解雇・雇い止めが不当と認められた場合、解雇・雇い止め後の給料を支払う必要がありますが、この給料を支払わなかった場合、30万円以下の罰金という刑罰が科せられる可能性があります(労基法120条)。

問題社員の問題行動を理由として解雇・雇い止めをした場合においても、解雇予告・解雇予告手当を支払わなかった場合、不当解雇・雇い止めと認められた後に未払いの給料を支払わなかった場合においては、上記罰則が科せられる可能性があります。

弁護士に依頼することのメリット

本ページでは、問題社員への対応について、解雇・雇い止めという対応を中心に説明を行ってきました。しかし、解雇・雇い止めは最終手段であり、安易に解雇・雇い止めをするべきではありません。これは、最終的に解雇・雇い止めをしなければならないような状況であっても同じです。なぜならば、十分な指導・教育などの対応をすることなく、解雇・雇い止めをした場合は、不当と判断されるおそれが高いためです。

このように、問題社員への対応については、解雇・雇い止めをする前の対応が重要です。そして、どのような対応が適切かを判断するためには、法的知識と経験が重要になるでしょう、

弁護士は、このような法的知識、経験を備えており、問題社員への対応についても、必要なアドバイスができると思います。問題社員への対応について、お困りのことがありましたら、ご相談いただければと思います。

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労働審判制度の概要

労働審判は、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争(以下、「個別労働関係民事紛争」といいます。)を対象にした紛争解決手続で、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的としています(労働審判法1条参照)。

労働審判では、労働審判官(裁判官)1名と、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名で構成された労働審判委員会が事件を審理することになります(労働審判法7条)。

労働審判では、特別の事由がある場合を除き、労働審判手続の申立てがされた日から40日以内の日に労働審判手続の第1回の期日が指定されます(労働審判規則13条)。
そして、労働審判では、原則として3回以内の期日で審理し、調停(話し合い)による解決が試みられます(労働審判法15条参照)。
調停による解決ができない場合には、労働審判委員会が労働審判を行い、紛争の解決を図ります(労働審判法20条参照)。
労働審判委員会が労働審判を行い、当事者から異議の申立てがなされなかった場合には、その労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有します(労働審判法21条参照)。
他方で、当事者から異議の申立てがなされた場合には、その労働審判は効力を失い、当該労働審判手続の申立て時点で、地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます(労働審判法22条参照)。

労働審判制度の法的強制力について

労働審判では、調停が成立しなければ、労働審判委員会が労働審判を行います。
仮に、会社側が労働審判手続きを欠席して労働審判がなされ、異議の申し立てをしなかった場合、労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有するので、労働者は、労働審判に基づく強制執行を行うことができます。
このように、労働審判制度には、法的な強制力が生じうるので、当事者となった場合に、この手続きを無視して放置してはなりません。

労働審判制度の特徴

労働審判制度の特徴は、紛争の早期解決が期待できるという点に大きな特徴があります。そのため、原則として3回以内の期日で審理することとされています。
また、裁判官以外の労働審判員が手続きに関与するのも特徴といえます。労働審判員の2名は、使用者側、労働者側から各1名ずつ選ばれます。さらに、初回の期日に尋問がなされて、初回の期日で審判委員会の心証が形成されるのも大きな特徴です。

迅速かつ柔軟な紛争解決が期待できる

労働審判制度は、個別労働関係民事紛争を迅速に解決することを目的として設けられた制度です。そのため、原則として3回以内の期日で審理を行うことを予定していることから、この制度を利用することで、紛争の迅速な解決を図ることができます。
また、初回の期日の尋問で形成した心証を踏まえて、調停が試みられることから、当事者の合意形成による柔軟な紛争の解決を図ることも可能となっています。

通常訴訟との違いとは

通常訴訟との大きな違いは、初回の期日で尋問が行われ、そこで、審判委員会の心証が形成されてしまうというところです。
そのため、初回の期日までに十分な準備をすることが必要となります。 また、調停が成立せず、労働審判が下された場合に、当事者が異議申し立てをすれば、労働審判の効力は失われます。
この点も、通常訴訟との大きな違いといえるでしょう。

留意点

労働審判は、個別労働関係民事紛争について、原則として3回以内の期日で審理し、紛争に対する何らかの解決指針が示されます。この点について、3回以内の期日で審理されることからすれば、初回の期日までに主張・立証する準備が整わなかったものについては、次回以降の期日に主張・立証すれば問題ないと思われるかもしれません。
しかし、このように時間に余裕があると考えて対応することは、裁判所における労働審判の運用を踏まえれば、非常にリスクが大きいものになります。
言い換えると、労働審判においては、初回の期日(労働審判手続の申立てがされた日から40日以内)が勝負と言っても過言ではありません。これは、現在の労働審判の運用状況が関わっています。

労働審判では初回の期日に審尋(当事者から事情を聴く手続)が行われ、当事者の話を聴いた上で、同期日以降に調停による解決が試みられ、多くの事件が第2回期日までには調停が成立しています。
すなわち、現在の労働審判の運用では、第1回の期日には、労働審判委員会が争点整理と必要な証拠調べを実施し、評議をして心証を固め、当事者に調停案を示して調停を試み、第2回・第3回の期日には調停案を提示して積極的に調停を試み、調停が成立しなければ、労働審判に至るという流れになっています。
このような労働審判の運用からすれば、初回の期日には事件の内容に関する審理はほぼ終わっており、通常の民事訴訟のように次回期日があるとは思わないほうが良いでしょう。第2回期日以降になって、新たに主張・立証したとしても、労働審判委員会では既に心証形成がなされているのであり、固まってしまった心証を覆すことは困難となるでしょう。

この点、申立人のほうは、当然、入念な準備をした上で労働審判の申立てをしているはずですから、準備不足で主張・立証が漏れるということはないでしょう。他方で、会社側は、裁判所から通知が届いてから、労働審判を申立てられたことを知るわけですから、準備する時間が足りないことが容易に想像できます。
しかし、労働審判では初回の期日に心証が形成されてしまうわけですから、泣き言ばかり言っていられません。初回の期日までに申立書に記載された事実の認否を明らかにし、必要かつ十分な主張・立証を尽くした答弁書を提出する必要があります。
そのためには、会社側で、申立書に記載された事実及び証拠について精査しなければなりません。
vその上で、会社側の主張を書面にして、証拠は、提出して良い証拠か否か検討しなければならないでしょう。
また、初回期日には審尋があるため、当日いきなり審判官や審判員から質問されて、答えられないということがないように準備しておく必要もあります。

このように、労働審判では、準備するために与えられた時間が限られているにもかかわらず、初回期日までに準備しなければならないことが多くあります。
時間がない状況で、これらの手間がかかる作業を行うことは、専門的な法律知識が要求されることも考えると、会社側にとって非常に大きな負担となるでしょう。
そのため、労働審判手続の申立書が届いたら、すぐに法律の専門家である弁護士に相談したほうが良いでしょう。この点、当事務所は、労働審判の経験が豊富にありますので、是非ご相談ください。

どのようなトラブルが労働審判の対象となるのか?

労働審判の対象は、個別労働関係民事紛争です。個別労働関係民事紛争としては、残業代請求や解雇や懲戒処分の効力を争う事件、退職金請求等があります。
詳しくは、こちらをご覧ください。

労働審判の対象とならないケースとは

そもそも、個別的労働関係民事紛争でなければ、労働審判の対象となりません。
たとえば、労働関する紛争であっても、労働組合が当事者となる事件は、集団労働関係紛争であり、個別労働関係民事紛争ではないので、労働審判では取り扱われません。
公務員の雇用が問題となる事件は行政事件であるので、個別労働関係民事紛争ではなく、労働審判の対象ではありません。詳しくは、こちらをご覧ください。

労働審判を申し立てられた場合の会社側の対応

労働審判を申し立てられた場合、初回期日で審判委員会の心証が形成されるので、迅速な準備が必要です。
そのため、労働審判の呼び出し状を受領した場合には、直ちに、弁護士に相談し、対応の準備を進めてください。対応のポイントについては、こちらをご覧ください。

労働審判手続きの流れ

労働審判手続きでは、まず、裁判所から労働審判手続申立書が会社に郵送されます。
会社は、指定された期限までに、申立書に対する反論書面(答弁書)を提出し、反論の証拠も提出しなければなりません。第1回目の期日では、裁判官や労働審判員が当事者に質問する手続き(審尋)が行われ、この時点で、裁判官や労働審判員が心証を形成します。
第3回期日までに調停が成立しなければ、調停案に沿った審判がなされます。手続きの詳細については、こちらをご覧ください。

労働審判を有利に進めるにはどうすべきか?

初回期日の審尋により心証を形成するのが労働審判制度の特徴です。そのため、労働審判を有利に進めるには、初回期日までに十分な準備を行うことが必要です。対応のポイントについては、こちらをご覧ください。

会社側の初動対応が重要となる

会社は、初回期日までに、反論書面である答弁書を提出し、反論のための証拠を提出しなければなりません。
また、初回期日で裁判官などから質問をされてこれに回答するのは、会社の担当者です。そのため、答弁書の作成、証拠の提出、審尋の準備などを約1か月程度の時間で行わねばなりません(答弁書の提出は3週間程度)。
これらの対応を短期間のうちに行う必要があるので、申立書が会社に届いた場合には、速やかに労働審判の準備に取り掛かる必要があります。

弁護士に依頼することのメリット

労働審判は、従業員側が申立人となり、会社側が相手方となるのが通常です。
申立人である従業員側は、自分で準備を整えてから申立をすることができます。これにたいし、相手方である会社は、突然、労働審判の申立書が送られてきてから、迅速な準備を行うことを要求されます。
従業員側と会社側では同じ手続きであっても大きく異なりますので、会社側が労働審判を申し立てられた場合には、会社側で労働審判の経験がある弁護士を依頼されることをお勧めします。
また、会社側労働審判の経験のある弁護士に依頼すると、無駄なく準備が可能となりますので、迅速に十分な準備ができるというメリットがあります。詳しくは、こちらをご覧ください。

労働審判に必要な費用について

会社が労働審判への対応を弁護士に依頼せず、自ら行う場合には、費用は掛かりません。手続き必要な費用は申立人である従業員が裁判所に納めています。

労働審判の解決金の相場はどのくらい?

労働審判の対象は、個別労働関係民事紛争であり、その事件は様々なものです。
そのため、事件種別を無視して、解決金の相場というものを論じることはできません。
詳細はこちらをご覧ください。

弁護士に依頼する場合の費用

ALGが労働審判手続きを受任する場合には、事件を受任するにあたって頂く着手金・諸経費と事件が成功した場合に頂く成功報酬があります。
詳細はこちらをご覧ください。

労働審判制度に関する様々なご質問に、法律のプロである弁護士がお答えいたします。

労働審判制度は、初回期日までに十分な準備が必要な手続きです。そのため、従業員から労働審判を申し立てられた際には、労働審判に向けて迅速に準備を行うためには、法律のプロである弁護士にご相談されることを強くお勧めします。
労働審判に不服があれば、異議申し立てを行えばよいとお考えになられる方もいらっしゃいますが、十分な準備で挑めば有利な調停案や審判が得られる可能性があるのであれば、そのチャンスを生かすべきです。
労働審判を申し立てられた際には、ぜひ、弁護士にご相談ください。

代表的なハラスメントとしては、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメントなどが挙げられます。昨今において、職場内のハラスメント対策が重要視され、法改正等により、セクシュアルハラスメント等については、就業規則等で定めておくことが義務付けられました。このページでは、ハラスメントの意味、ハラスメント対策等について、ご説明いたします。

ハラスメントとは

一般には、「相手が嫌がることをした時点でハラスメントなのだ」などと言われることがあります。確かに、ハラスメントとは、嫌がらせのことを意味していますから、言葉の意味としては、相手が嫌がることがハラスメントといえるのでしょう。

しかし、法律上問題となるハラスメント、つまり、違法と判断されるハラスメントという意味では、単に相手が嫌がることというだけでは、足りません。例えば、「相手が嫌がること」を違法なハラスメントと考えた場合、業務上、必要な注意をしただけで、違法なハラスメントになりかねません。「相手方が嫌がること」=「違法なハラスメント」と考えることが相当ではないことは明らかでしょう。

では、どのような場合に違法なハラスメントといえるのでしょうか。上記の業務上の注意ということを例にとって考えると、ちょっとしたミスで長時間叱り続けるとか、人格批判に当たるような叱り方であれば、違法なハラスメントに当たる可能性が高いと言えます。

このように、違法なハラスメントに当たるかどうかは、状況によって変わると言え、単純に判断できないものといえます。

ハラスメント問題による企業リスク

ハラスメント問題における企業のリスクとしては、主に以下のようなものが考えられます。


  • ①企業が適切なハラスメント対策を取っていなかったであるとか、加害者に対する適切な監督・指導等を怠ったなどとして、企業自体が、被害者からハラスメントに対する責任を問われるリスク
  • ②ハラスメントの被害者等が企業をやめてしまったり、日常的なハラスメント問題があることを理由に他の従業員等が企業をやめてしまったりして人材が流失するリスク
  • ③日常的なハラスメントがあることで、従業員等の士気が下がり業務効率が低下するリスク
  • ④ハラスメント問題が表面化することで、顧客、取引先、株主、社会等からの信用を失うリスク

企業で問題となりうる代表的なハラスメント

パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメントとは、

  • ①優越的な関係を背景とした
  • ②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
  • ③職場環境を害すること

とされています。

適正な業務上の指導等であればパワーハラスメントに当たりませんが、人格否定や不必要に屈辱を与えるようなやり方をした場合にはパワーハラスメントとなる可能性があります。

一般には上司と部下、先輩と後輩など、組織上の上下関係等がある場合に起こりやすいハラスメントであるといえます。ただし、優越的地位が生じているのであれば、同僚同士や部下から上司に対するパワーハラスメントも起こり得ます。

セクシャルハラスメント(セクハラ)

職場におけるセクシャルハラスメントとは、

職場において労働者に意に反する性的な言動が行われ、

  • ①それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益をうけることや、
  • ②それによって職場の環境が不快なものとなったため、労働者が就業する上で見過ごすことのできない程度の支障が生じること

をいうとされています。

当該言動が適切な指導の範囲であるか否かが問題となるパワーハラスメントの場合とは異なり、職場における性的な言動はそもそもそれを行う必要性が認められないことが多いことに注意が必要です。また、男性から女性へのセクシャルハラスメントだけではなく、女性から男性へはもちろん、男性から男性、女性から女性へのセクシャルハラスメントについても注意が必要です。

マタニティハラスメント(マタハラ)

マタニティハラスメントとは、妊娠・出産・育児休業等を理由として、解雇・雇い止め・降格等  の不利益な取り扱いを行うことをいいます。

表向きは妊娠・出産・育児休業等を理由としていなくとも、それらを契機として不利益取り扱いを行った場合は、原則、違法となります。

その他問題となるハラスメント

パタニティハラスメント
育児のために育児休業や時短勤務を希望したり、行ったりした男性社員に対する嫌がらせ

モラルハラスメント
人格や尊厳を傷つけるような言動等によって、肉体的・精神的に相手を傷つけ、職場の雰囲気を悪くしたり、対象となった被害者が職場をやめざるを得ない状況に陥らせたりする嫌がらせ

ジェンダーハラスメント
性別を理由とする嫌がらせですが、性的な言動を伴うセクシャルハラスメントとは異なり、男性らしさや女性らしさの強要、そのような価値観に基づく役割の強要等がジェンダーハラスメントに当たります。

問題となりうるハラスメントの行為

ハラスメントの種類 ハラスメント行為
パワーハラスメント(パワハラ) 威圧的な言動、人格否定、無視、職場で孤立させる、過大な業務遂行の強要、仕事を与えなかったり過少な業務のみを与えたりすること等
セクシュアルハラスメント(セクハラ) 卑猥な言動、他者の目につくような状況で卑猥な画像等を見たり掲示したりすること、性的嗜好や性的な経験等、性的なプライバシーにかかわる内容を聞き出そうとすること等
マタニティーハラスメント(マタハラ) 妊娠したことを理由に退職等を強要する、育児休暇を取得したことを理由に降格させる等
パタニティハラスメント(パタハラ) 男性社員が育児休暇等の希望を出した際に不利益
モラルハラスメント(モラハラ) 馬鹿にしたような態度をとる、仕事上必要な情報を与えない、相手を職場から孤立させるような言動等
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ) お茶くみ等の雑用を女性にだけさせる等一方の性に性別と無関係の役割を負わせる、「男のくせに…」「女のくせに…」といった否定的な言葉を投げかける等

各種ハラスメント問題における企業の法的義務

パワーハラスメントについて

事業主は、職場におけるパワーハラスメントに関する方針の明確化、労働者に対するその方 針の周知・啓発として、次の措置を講じなければなりません。

①事業主の方針等を明確化しその周知・啓発をすること
(ア)職場におけるパワーハラスメントの内容と職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者(管理監督者を含む)に周知・啓発する
(イ)パワーハラスメントを行った者については、厳正に対処する旨の方針と実際の対処の内容を就業規則等に規定し、労働者(管理監督者を含む)に周知・啓発する

②相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること
(ア)相談窓口をあらかじめ定めた上で、労働者に周知する
(イ)相談窓口の担当者が、相談に対し、適切に対応できるようにする。また、相談窓口においては、被害者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等も踏まえて、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合についても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにする。

③パワーハラスメントに係る事後の迅速で適切な対応をすること
(ア)事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認する
(イ)パワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、速やかに被害を受けた被害者に対する配慮のための措置を適正に行う
(ウ)パワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合は、行為者に対する措置を適正に行う
(エ)改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等といった再発防止措置を行う

④①から③までの措置と併せて講ずべき措置
(ア)相談への対応又は当該パワーハラスメントに係る事後の対応において、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置をとるとともに、その旨を労働者に対して周知する(なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれます)
(イ)法の規定を踏まえ、労働者が職場におけるパワーハラスメントに関し相談をしたことや事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと又は調停の出頭の求めに応じたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定めた上で、労働者に周知・啓発する

  

セクシャルハラスメント及びマタニティハラスメントについて

セクシャルハラスメントについて、事業主が講ずべき義務は、パワーハラスメントにおける上記①から④の義務と同じです。マタニティハラスメントについても基本的には同じですが、マタニティハラスメントについては、マタニティハラスメントの原因となる要因やその背景となる要因を解消するための措置を取ることも必要です。具体的には、妊娠等した労働者や使用者等の実情に応じて、業務体制の整備等必要な措置を講じる必要があります。

企業内でハラスメントが発生した場合の対応

会社側としては、まずは、ハラスメントが生じないように適切な防止措置を講じる義務があるといえます。しかし、実際にハラスメント事例が生じてしまった場合には、適切な対処が必要です。

まずは、事案の内容を適切に把握する必要があります。

その際には、相談者と行為者の双方から事実の聞き取りをする必要があります。その際には日時・場所等を具体的に聞き取るようにすべきです。また、お互いの言い分が食い違うことも考えられますが、聞き取りの時点で、一方の言い分のみを虚偽と決めつけ、きちんと話を聞かないといったようなことが生じると、その後の懲戒処分等の適正さが損なわれることになりかねないため、まずは冷静にお互いの言い分を聞き取るという姿勢が重要です。

当事者双方の主張に不一致があり、当事者双方からの聞き取りだけでは事実が確認できない場合は、関係者等の第三者からの聞き取り等の措置も必要となってきます。

そして、事実関係を確認した上で、ハラスメントの事実が認められる場合、決して放置せず、加害者に対して懲戒処分を検討する必要があります。

この場合に行われる懲戒処分は、当該ハラスメントの内容等に応じて軽すぎることも重すぎることもない、適切な処分であることが必要となります。

また、ハラスメントの事実が認められる場合には、加害者への処分と並行して、被害者に対し、受けた被害を少しでも解消し、今後、被害者が支障なく働き続けられるためのフォロー等を行っていく必要もあるでしょう。

弁護士へハラスメント問題を依頼するメリット

上記のとおり、ハラスメント対策において重要なのは、何がハラスメントに当たるのかを知ることです。

しかし、同じような行為であっても状況によって違法なハラスメントに当たったり、適法と判断されたりと、その判断は微妙です。そして、その判断を分けた要因についても、単純ではなく、何が重要なのかは十分な知識がなければ困難でしょう。

弁護士は、幾多の労働問題を取り扱っており、ハラスメント問題についても多く扱っています。そのため、十分な知識を有しておりますので、単に社内で勉強会を開くよりも、弁護士によるセミナー等の方が、正しく知識を得ることが出来ると言えるでしょう。

また、企業内のルール作りにおいても、前提として法律知識が必要不可欠となります。上記のとおり、弁護士は、十分な知識を有していますので、企業内のルール作りをするにも適切なアドバイスが可能となります。

そして、セミナーをするにしても、企業内のルール作りについても、その企業の状況を十分に知っていることが重要と言えます。当然ながら企業ごとに、抱えている問題は様々です。それはハラスメントにおいても同じです。したがって、企業の状況を知った上で、セミナー等を行う方が適切なのであり、顧問弁護士等、その企業のことをよく知っている弁護士に依頼するのが適切と言えます。

以上のとおり、ハラスメント対策は、非常に重要なこととなっています。そして、顧問弁護士は貴社と共に対策を考えていける存在だと言えます。当事務所は、セミナー等も多数行っており、ハラスメント対策についてもお力になれると思います。ハラスメント対策という側面から考えても、顧問契約をご検討していただければと思います。