監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
交通事故に巻き込まれてしまった際に、今後の治療をどのように受けていったらよいのか、賠償金がいくら支払われるのかといった点が分からず、不安に思われる方も多いと思います。この記事では、弁護士に依頼をするタイミングについて説明していきます。
目次
交通事故で弁護士に相談・依頼するタイミングは?
交通事故に巻き込まれてしまったというのは、人生初の経験という方が大半です。そのため、これからどのような手続きをしないといけないのか、保険会社と何を話し合いすればいいのかといった様々なことに不安を感じる方も多いかと思います。
そのような場面では、弁護士に相談することで、どのように対応すればいいかという点や今後の展開の見通しについてアドバイスを受けることができます。また、交渉を依頼すれば、弁護士に保険会社の対応などを任せることもできます。
弁護士に相談するタイミングと受けられるメリット
交通事故発生から解決までの大まかな流れは、以下のとおりです。
①事故の発生
②傷病の治療(入院または通院)
③治療終了(症状固定)後、後遺障害が残ってしまった場合には後遺障害等級認定申請
④示談交渉
⑤示談が成立しなかった場合は、調停・裁判
⑥解決(示談成立、判決等)
基本的に、解決に至るまでの間であれば、どのタイミングでも弁護士に相談・依頼をすることができます。場面ごとにそれぞれ弁護士を入れるメリットがありますので、最大限、弁護士を活用していくのであれば、事故直後に相談をすることをおすすめします。
以下の項目では、場面ごとに分けて、弁護士を入れることのメリットを説明していきます。
事故直後に相談するメリット
事故直後は、ケガの痛みもまだ強く、特に治療が必要な時期かと思います。集中して治療をしなければならないときに、保険会社と自分で連絡を取らなければならない状態は、心理的・精神的な負担も大きいかと思います。
そのような場合、弁護士に事件を依頼することで、自身は治療に専念できるため、負担を大きく減らすことに繋がります。
また、治療をしていく上で、とにかく多く通院をした方が有利になるというわけではありませんが、少なすぎても慰謝料を減額されてしまうことがあります。この点、どのくらい通院をした方が良いのかという点について、早い段階でアドバイスを受けることができます。
このように、事故直後に弁護士を入れることで、ストレスを減らして必要な治療を受けつつも、最終的な解決を見据えた方針で進めていきやすいため、しっかりと賠償を受けることが実現しやすくなります。
治療中・入院中に相談するメリット
治療中、何らかの事情で転院を交通事故で負った怪我について、その治療の具体的内容は、医師と相談の上決定してもらう必要があります。このとき、弁護士を入れておけば、治療方針を実現できるように保険会社との調整を任せることができます。
さらに、治療をしばらく続けていると、保険会社から治療費の打ち切りを打診されることがあります。そのような場合に、必要に応じて延長交渉を行う際に、その交渉を弁護士に依頼することもできます。
後遺障害等級認定の際に相談するメリット
治療をしばらく続けていくと、症状の改善といった効果が薄くなってくるタイミングがあります。それを症状固定といい、その時点から治療を終了することになりますが、痛みなどが残っている場合には、後遺障害等級申請を検討することになります。
このとき、弁護士に依頼をしていれば、適切な後遺障害等級の認定を目指していくために、後遺障害診断書を医師に作成依頼する段階から、弁護士からの助言を受けることができます。また、弁護士は、申請に対する結果に不服がある場合の異議申立てのサポートも行います。
示談交渉時に相談するメリット
治療も終了し、後遺障害等級も確定すると、最終的な賠償額について示談交渉を行うことになります。このとき、保険会社の担当が提示する金額が妥当な額なのかどうか分からず、自分で進めることに不安を感じる人もいると思います。
このようなときに、弁護士に依頼すれば、法律の専門家に過失割合の主張や増額交渉を任せることができます。賠償額の算定基準には以下の3つの基準がありますが、弁護士が交渉に入った際には、被害者の受けた苦痛に見合った適切な賠償額の実現を目指して、③の基準を前提に交渉を行います。
①自賠責基準 …事故の被害者に支払われる最低限度を定めた賠償基準
②任意保険基準 …保険会社が任意で設定している基準で、①の基準を少し上回る程度が多い
③弁護士基準 …訴訟で認定される見込みのある金額をもとにした賠償基準
調停・裁判になったときに相談するメリット
交渉が決裂した場合、賠償額を確定するためには、調停又は訴訟の手続きに進むことになります。裁判所を介した手続きである調停や訴訟では、交渉と異なり、必要な主張を証拠とともに説明していく必要があります。
主張の出し方を間違えると、そのことが不利に扱われてしまうこともあります。効果的に主張・立証を行っていくためには、弁護士のサポートを受けることをお勧めします。
また、裁判所への書面の出し方や期限等は、法律で定められたルールがあります。この点も、弁護士に依頼をすれば、形式面の煩雑さを気にすることなく、手続きを進めていくことができます。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
死亡事故の場合はいつ相談・依頼すべきか?
身近な人が突然に亡くなったという心労は計り知れないものかと思います。そのような中で賠償額について保険会社とやり取りをしなければならないというのは、非常に大きな負担になり得ます。弁護士に保険会社との窓口を任せておくことで、損害賠償請求に関する負担を軽減することができます。
弁護士への相談・依頼が手遅れになってしまうタイミング
弁護士への相談・依頼が遅れることによって、取り返しがつかなくなるケースもあります。以下のような場合には、弁護士への依頼ができないケースがありますので、ご注意ください。
既に示談が成立している
既に保険会社や加害者本人との間で示談が成立し、賠償金が支払われてしまっているようなケースでは、弁護士の介入が手遅れとなっていることが多いです。最終的な賠償金の支払いの際には、この金額をもらった後はどのような理由でもこれ以上請求しないという文言が記載された書面を作成していることが多いため、覆すことは非常に困難です。
なお、例外的に、示談の際には、後遺障害が無いと考えて物損と傷害部分のみで示談をしていたようなときに、その時点では予想することができなかった後遺障害があることが後から判明したような場合には、その後遺障害について別途の請求をする余地はあり得ます。
損害賠償請求の時効が成立している
交通事故の損害賠償請求には、消滅時効があります。消滅時効が成立するまでの期間は、物的損害か人身損害でそれぞれ違います。また、具体的な事故状況によって、消滅時効の起算点は変わってきます。起算点と成立までの期間は、以下のとおりです。
・事故発生時点で加害者が分かっているとき
→事故が発生したときから、物的損害は3年、人身損害は5年
・事故発生からしばらくして加害者が判明したとき
→加害者を知ったときから、物的損害は3年、人身損害は5年(なお、警察が加害者の情報を知っている場合には、交通事故証明書に記載されます。この場合、事故発生時が、加害者を知ったときと判断される可能性があります。)
・交通事故で後遺症が残った場合(人身事故のみ)
→後遺障害による損害部分は、症状固定時から5年
なお、加害者が分からなかったとしても、交通事故発生から20年が経過したときは、除斥期間が経過したものとして、上記の時効の定めに関わらず、請求できなくなります(民法724条2号)。
相談・依頼する前に知っておきたい!弁護士の選び方
弁護士の選び方には、様々な考え方がありますが、特に、話しやすい、質問しやすいということが重要かと思います。 質問しにくい雰囲気や、質問しても答えがよく分からないといった感覚をもったままであると、弁護士とのコミュニケーションがうまく成立しません。すると、弁護士としても、ご依頼者様の実現したい利益をうまくくみ取ることができず、適切な賠償を得ることが難しくなってしまいます。
弁護士が法律の専門家であるとして、弁護士の言っている内容が分からないと感じていても言い出せないという方が一定数いらっしゃいます。しかし、適切な賠償を得ること目指していく上では、弁護士とのコミュニケーションは非常に重要です。まず法律相談の際に、ご自身が話しやすい、質問をしやすいと感じる方を選んでみてはいかがでしょうか。
弁護士法人ALGが解決した交通事故事例
弁護士に依頼した結果、運転手と同乗者の両方とも、ご相談日から約1か月で30万円増額できた事例
信号待ちで停車中に後ろから追突され、運転手と同乗者が怪我を負った事案で、既に治療も終了して、保険会社から賠償金の提示がなされている段階でご依頼を受けました。ご相談時において、保険会社から両名に対する慰謝料額の提示は、それぞれ、自賠責基準に基づく約25万円でした。弁護士が介入して弁護士基準での慰謝料額を求めて交渉を行った結果、両名とも慰謝料額が約55万円まで増額しました。書類のやり取りなどの手続きも含め、約1か月で、どちらの方も、30万円の増額となりました。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
よくある質問
早めに弁護士に依頼することで、解決までの期間を短縮することはできますか?
交渉にあたっては、過失割合や事故との因果関係というような争点が生じることがあります。このとき、主張が認められるか否かは、法的な議論が必要となってくることが多く、弁護士が介入して、当方主張の法的な根拠を示すことで、結果として、保険会社との交渉がスムーズにいくこともあります。このような意味で解決までの期間が短縮されるということはあり得ます。
示談交渉の途中からでも弁護士に依頼することは可能ですか?
示談交渉の途中から弁護士に依頼をすることも可能です。その場合、弁護士は、今までの交渉の経緯をお聞きして、争点などを把握した上で必要な主張を検討します。その時点からでも、証拠収集が可能な部分については、必要な範囲で追加調査を行うこともあります。
他方で、従前の交渉において、相手方が支払う意向を示していた部分について、弁護士を入れるのであれば厳格に主張をするとして、態度を変えてくることはあります。そのため、必ずしも従前の交渉状況が引き継がれるとは限らないため、その点は注意が必要です。
弁護士に相談・依頼するデメリットはありますか?
基本的に、弁護士に相談をすることにデメリットはないと言えます。弁護士に相談をすると、今後の見通しなどを聞くことができたり、アドバイスを受けたりすることができますが、相談をしたこと自体は相手方保険会社に伝わらないこともあるので、特に影響はないと思われます。
他方で、弁護士に事件を依頼することについて、場面によっては、デメリットが生じることもあり得ます。それは、弁護士特約に入っていない場合、ご自身で弁護士費用を支払う必要があるため、損害賠償の増額がそこまで大きくない場合には、弁護士費用を支払うことで、結果的にマイナスになるケースもあり得ます。この点は、事前に法律相談で弁護士にご確認下さい。
交通事故で後悔しないためにも、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士を入れるタイミングは、示談が成立するまでであれば、いつでも問題ありません。そのため、弁護士に相談するには遅すぎるのではないかと考える前に、まずは、弁護士にご相談をしてみてください。
どの段階で弁護士を入れたとしても、弁護士特約に入っていれば費用負担を気にする必要はありません。そのため、保険会社とのやり取りや雑多な手続きの負担を減らして、治療に専念するためにも、早い段階で弁護士に依頼をすることをお勧めします。
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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)