交通事故で通院日数が少ない場合の慰謝料への影響と適正額を受け取るための方法

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交通事故で通院日数が少ない場合の慰謝料への影響と適正額を受け取るための方法

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

交通事故の被害者が怪我を治すために通院したいと思っていても、現実には仕事や育児の都合などで十分な通院をすることが難しい場合もあるかと思います。また、骨折などの怪我の場合には、頻繁に通院して治療を行う必要は、そこまで高いとはいえません。

しかし、通院日数が少ない場合には受け取ることのできる慰謝料が減額されてしまう可能性があります。以下では、通院日数が少ない場合の慰謝料への影響と適正額を受け取るための方法について、解説していきます。

通院日数が少ないと慰謝料にどのような影響が出るのか

病院に通院する日数が少ない場合、通院慰謝料が減額されてしまう場合があります。通院日数が少ないと、なぜ、慰謝料が減額されるのかというと、適切な頻度で通院していた場合には、より早期に症状が回復し、短期間で治療が終了していたのではないかと考えることができるためです。

また、被害者の痛みは通院しなくても我慢できる程度のものであり、治療の必要性もそこまで高くなかったのではないかと考えられてしまいます。

自賠責保険基準の場合

慰謝料について、自賠責保険の基準では1日あたり4300円とされています。

慰謝料の対象となる日数について、自賠責保険の基準では、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とするとされています。具体的には、慰謝料の対象となる日数は、①通院期間、②実通院日数×2のいずれか少ない方になります。

例えば、通院期間が2か月(60日間)で、実通院日数が20日間の場合を考えてみましょう。実通院日数である20日×2である40日の方が通院期間である2か月(60日間)より少ないため、17万2000円(=4300円×40日)が自賠責保険における慰謝料とされます。

弁護士基準の場合

慰謝料について、弁護士基準では「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(以下、赤い本。)に記載された別表が参考にされることが多いかと思われます。

むち打ち症で他覚所見(診察、検査などにより確認される所見)ない場合には、赤い本の別表Ⅱが参考にされ、通院期間が2か月(60日間)で、実通院日数が20日間であるとき36万0000円が慰謝料としてひとつの目安になります。

どれくらいで通院日数が少ないと判断されるのか

あくまでひとつの目安にはなりますが、通院が週2回(月8回)を下回る場合には、通院日数が少ないと判断されることがあります。

骨折等で自然治癒を待つために通院日数が少ない場合

骨折等で自然治癒を待つために、通院日数が少ない場合には通院日数が少なくなったとしても慰謝料の算定に影響はほとんどないと思われます。

骨折などの怪我の治療のためには、通院して治療を行うよりも自宅で安静にしている方が、治療効果が高い場合もありえます。この場合には、通院日数が少ないことにについて、合理的な理由があると考えられるからです。

むちうちなど軽傷であるために通院日数が少ない場合

一方で、むちうちなど軽傷であるために、通院日数が少ない場合には慰謝料の算定に影響があると思われます。適切な頻度で通院していた場合には、より早期に症状が回復し、短期間で治療が終了していたのではないかと考えられてしまうからです。この場合には、通院日数が少ないことについて、合理的な理由があるとは考えられないからです。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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一般的な通院日数と通院日数が少ない場合の慰謝料相場の比較

通院日数が、慰謝料にどのように影響するかにについて、具体的に見ていきましょう。通院日数がそれぞれ、①20日(一般的な通院日数)と②8日(通院日数が少ない場合)を考えてみます。なお、いずれの場合もむち打ち症で他覚所見はなく、通院期間は2か月(60日間)とします。

通院日数 自賠責保険基準 弁護士基準
20日
(一般的)
17万2000円
(=4300円×40日)
36万0000円
8日
(少ない)
6万8800円
(=4300円×16日)
※36万0000円

いずれの場合でも自賠責保険の基準よりも弁護士基準の方が、慰謝料額が高くなることがわかります。

※ただし、弁護士基準でも通院が長期にわたる場合には、症状、治療内容、通院頻度を踏まえて、実通院日数の3倍程度を、慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもあります(後記の裁判例も参照)。

交通事故の通院日数に関するQ&A

通院日数が1日しかなくても慰謝料をもらえますか?

通院日数が1日のみの場合であっても、慰謝料を請求することができます。ただし、通院日数が1日であるため、請求できる慰謝料の額は大きなものにはなりません。

通院日数を多くするため、痛くないのに通院してもいいですか?

通院日数を多くするために、痛みがないにもかかわらず通院をすることはおすすめできません。
治療の必要性がないにもかかわらず、通院し、治療を行っているとして過剰診療を疑われ、治療費等について、相手方保険会社が立て替えて支払う「一括対応」を打ち切られてしまう可能性が高くなります。
そのため、通院の際にはその時点での症状などを正確に主治医に伝え、可能な限り主治医の指示どおりに通院を継続することが大切です。

リハビリでの通院も通院日数や通院期間に含まれますか?

リハビリでの通院についても、慰謝料を算定するための通院日数や通院期間に含まれます。
ただし、事故とは関係のない怪我や症状で行っていたリハビリについては、慰謝料を算定するための通院日数や通院期間に含めることはできません。

通院日数が少ないことが争われた裁判例

事案の概要

Yの運転するタクシーが、直線道路上を走行していたところ、突然前方の訴外車両に衝突し、Yの運転するタクシーに乗車していたXが、助手席の後部に顔面及び頭部を強打して、傷害を負った事故において、通院慰謝料の算定にあたって総治療期間(通院期間)と実通院日数のいずれが基準となるかが争われました。

裁判所の判断

皮膚科医であるXは、本件事故日である平成29年7月6日、A病院を受診し、頚椎捻挫と診断されています(実通院日数1日)。

Xは、Bクリニックに同年8月9日から同年9月30日まで通院し(同年8月9日、同月21日及び同年9月25日の実通院日数3日)、頚椎捻挫、左鎖骨打撲傷と診断されました。

また、Xは、Bクリニックの医師の指示に従い、平成29年8月10日から同年10月17日までの間、C整骨院に通院していました(同年8月10日、同月16日、同月22日、同月31日、同年9月12日、同月26日及び同年10月17日の実通院日数7日)。

「Xの通院については、C整骨院への通院も含めて本件事故と相当因果関係のある通院と認められる。その上で、Xの傷害の内容、治療期間、通院日数、通院の間隔が不規則である」ことなどを理由に、通院慰謝料を36万円と認定しました。

また、「…治療期間に比して実通院日数が殊更寡少であるとはい」えないことから、「Xの傷害の内容及び治療期間なども考慮するのが相当であ」るとしました。一方で、「実通院日数のみを基準として通院慰謝料を算定すること」も相当でないと判断しています。

Xが医師で多忙であったことを考慮しても、A病院を受診してから、Bを受診するまで約1か月間通院間隔が空いていることなど、通院の間隔も不規則であることを考慮すると、「総治療期間のみを基準として通院慰謝料を算定することも相当」ではないと判断しました。

判断のポイント

慰謝料について、弁護士基準によれば通院期間は平成29年7月6日から同年10月17日までの104日であるため、59万5333円と算定されることになります。一方、実通院日数は11日であるため、実通院日数の3倍を通院期間の目安とした慰謝料は20万7000円でした。

しかし、裁判所は、通院期間と比較して実通院日数が少ない場合には総治療期間(通院期間)と実通院日数のいずれかのみを基準として慰謝料額を算定することは相当ではないと判断しており、結論的には概ね妥当なものであると考えられます。

そのため、通院期間と比較して実通院日数が少ない場合には、たとえ仕事が忙しくて通院することができないなどの理由があったとしても、一定程度、弁護士基準により算定された慰謝料額から減らされてしまうことがあることに注意が必要です。

弁護士に依頼することで、適正な慰謝料額を請求できる可能性があります

保険会社から通院日数が少ないことを理由に低い慰謝料額の提示を受けた場合には弁護士に依頼することで、適正な慰謝料額を請求できる可能性があります。

そのため、相手方保険会社から提示された慰謝料額に納得することができないが、どうすれば良いのか分からないときには、まずは是非一度、弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。