監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
目次
保険会社から治療費の支払いを打ち切られてしまうのはなぜ?
保険会社が治療費を早期に打ち切ろうとするのは、ずばり、少しでも賠償金を下げるためです。
入通院慰謝料は、入通院期間が長くなればなるほど高額になります。また、入通院期間が長くなればなるほど、治療費も高額になります。
更に、休業損害についても、入通院期間が長くなると、休業日数も増加するため、高額になります。加えて、保険会社が自賠責から回収できるのは傷害部分としては最大で120万円までとなり、それ以上は自己負担となるため、保険会社としては、自己負担金額を減らしたいと考えます。
本来、症状固定(医学上、治療の効果が期待できなくなった状態)までは、保険会社は治療費や入通院の慰謝料を支払う義務があります。
しかしながら、保険会社は、前記のとおり、賠償金を下げるため、症状固定が到来していないにもかかわらず、治療費の打ち切りを行い、一方的に症状固定の時期を定めてくることがあります。
保険会社から突如、治療費の打ち切りがされたからといって、直ちに諦める必要はありません。以下に述べる方法をとり、保険会社から適切な賠償金を獲得すべきです。
打ち切り後も治療自体は続けられる
症状固定と保険会社が一方的に決めた治療費の打ち切りと症状固定とは異なります。治療は、症状固定まで続けることができ、症状固定か否かを決めるのは医師になります。
ゆえに、保険会社が治療費を打ち切ったとしても、治療自体を行うことは可能です。
打ち切り後にかかった治療費を賠償額として受け取ることもできる
症状固定までにかかった、治療費や交通費等を受け取ることは可能です。
仮に、保険会社が治療費を打ち切ったとしても、症状固定までかかった治療費や休業損害、入通院の慰謝料を請求することができます。
打ち切られないようにするためには
保険会社は、自賠責から傷害部分として最大で120万円まで回収することができ、120万円を超えた部分については、保険会社の負担となります。
ゆえに、通院頻度が必要以上に多い等の事情から、治療費が高額になった場合、保険会社は自己負担額が生じる可能性を恐れて、減額をすることがあります。
保険会社から治療費を打ち切られないためには、通院頻度を調整したり、打ち切られそうになったら、医師の診断書をもらって延長の交渉をすることが有用です。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
打ち切り後も通院する場合の注意点
治療費の打ち切りをされた後、通院する場合には、①自身の保険の人身傷害保険を利用する、②自賠責の方に直接請求する、③自分の健康保険を利用して通院するという3つの方法があります。
①を利用する場合には、自身の加入している任意保険会社に詳しく問い合わせを行って下さい。②の場合、前記のとおり、自賠責から回収できるのは最大で120万円(相手方保険会社が支払った費用も合算されます。)になること、資料の収集を自身で行わなければならないこと、申請を自身で行わなければならないこと等のデメリットもあります。次に③について、解説します。
第三者行為による傷病届を提出すること
第三者行為による傷病届とは、名前のとおり、第三者によって傷病が生じたことを届出るものです。
これは、健康保険組合が立替払いした治療費を当該第三者に請求するために必要な書類であり、必要事項を記載して届け出る必要があります。
なお、通勤災害等の一定の場合に利用できませんので、ご留意下さい。
領収書を必ず取っておくこと
自身の健康保険を利用した場合、自己負担額について、後に加害者に請求できる可能性があります。
そこで、自己負担額を後に加害者に請求するために、領収書は必ず保管しましょう。
治療費打ち切り後の通院慰謝料・交通費が認められた事例
事故から4カ月程度で保険会社に一方的に治療費が打ち切られ、その後、2カ月間を自費で通院したケースで、保険会社と示談交渉時に、打ち切り後の通院の必要性、事故の大きさ等を主張し、自費で通院した部分の治療費・通院慰謝料・交通費についても認めさせた。
交通事故の治療費の打ち切りを打診されたら弁護士にお任せください
前記のとおり、保険会社は、自己負担を減らすために、症状固定よりも前に治療費を打ち切ることがあります。
治療費の打ち切りが打診された場合、延長交渉が必要になります。延長交渉をしても治療費を打ち切られた場合、示談交渉をするか、継続治療を行なうかの決断をする必要があります。
継続治療を行なう場合、どの方法によるかを決める必要もあります。特に第三者行為による傷病届や自賠責の方に直接請求する場合には、必要な資料を収集する必要があるため,負担が大きいです。
そこで、専門家による弁護士にお任せ下さい。
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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)