相続放棄したら借金は返さなくて良くなる?相続放棄後に借金の取り立てが来た場合の対処法は?

相続問題

相続放棄したら借金は返さなくて良くなる?相続放棄後に借金の取り立てが来た場合の対処法は?

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

ご両親が亡くなった後、実は借金があった、ということは珍しい話ではありません。これが資産より少なければ、相続財産から支払えば問題ないかもしれませんが、相続財産自体が無ければ、相続放棄をすることも検討しなければなりません。

では、借金を残して亡くなられてしまい、残された遺族が相続放棄をする場合どうなるのか、以下にご説明いたします。

親の借金は相続放棄すれば払う必要がなくなる?

借金は、借り入れをした本人とその保証人に返済義務があり、親族だからと言って返済義務を当然に負うものではありません。しかし、借り入れをした本人やその保証人が死亡した場合、その相続人には、借金の返済義務まで相続されてしまいます。

そこで、相続放棄をすれば、相続人ではなくなるため、借金の返済をしなくてよくなるのです。したがって、ご両親が借金を残して亡くなった場合には、相続放棄をすれば、返済義務を負うことも無くなるため、支払う必要もなくなります。

相続放棄できないケース

しかし、どのような場合でも相続放棄をすることができるわけではありません。相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければなりません(民法915条第1項)。

また、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内であったとしても、相続財産の処分等、単純承認(民法921条各号)をしてしまっていた場合には、相続放棄をしたとしても、その効果は無効となってしまう(大判昭和6年8月4日民集10巻652号)ため、実質的に相続放棄ができなくなってしまいます。

相続放棄したら借金はどうなる?誰が払うの?

既に述べたとおり、相続放棄をした相続人は、被相続人の借金を支払う必要はありません。では、残された借金はどうなるかというと、次順位の相続人が相続する場合にはその相続人が支払うことになります。

借金がある場合の相続放棄によるトラブルを防ぐための注意点

被相続人に借金がある場合、債権者は、相続人に対して、借金の返済を求めてくる可能性があります。親が残した借金であれば、と支払ってしまう方もいますが、一度でも少しでも支払ってしまった場合、単純承認(民法921条)をしたとして、相続放棄をすることができなくなり、被相続人の借金を相続せざるを得なくなってしまいます。

相続人全員が相続放棄したら借金はどうなる?

全ての相続人が相続放棄をしてしまった場合には、借金を支払う人はいなくなります。その場合には、債権者等が裁判所に対して、相続財産清算人の選任を申し立て、相続財産清算人が相続財産から借金の返済をすることになります。

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相続放棄には期限がある

相続放棄は、事故のために相続のあったことを知った時から3か月以内にしなければなりません。

この3か月の開始時点は、被相続人の死亡時点ではなく、「自己のために相続のあったことを知った時」であることに注意です。具体的には、被相続人が死亡したことを知った時や、先順位の相続人が相続放棄をして相続人となったことを知った時等になります。

借金があることを知らなかった…期限後には相続放棄できない?

既に述べたとおり、相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にすることが必要となります。したがって、被相続人が死亡したことを知ってから3か月以上が経過した後に、被相続人に借金があることを知った場合には、相続放棄ができないのが原則です。

ただし、後述の裁判例のように一定の場合には、3か月が経過してしまっていても相続放棄ができる場合があります。

熟慮期間経過後に相続放棄できた事例

相続人は、被相続人の借金があることを知らず、資産がないと考えて、相続放棄をしなかった事案において、「3か月以内に限定承認または相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人の交際状態その他諸般の状況から見て、当該相続人に対して相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには」、「熟慮期間は相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識したとき又は通常これを認識しうべき時から起算」すべきとしています。

つまり、被相続人の相続財産について調査するのが困難な事情があり、相続財産がないと信じていたことについて相当の事情がある場合には、相続財産の全部または一部の存在を認識した(しえた)時から3か月の熟慮期間を起算するとしています。

そのため、このような場合には、被相続人が死亡したことを知ってから3か月が経過してしまっていたとしても相続放棄をすることができる可能性があります。

相続放棄後に借金の取り立てを受けた場合の対処法

相続放棄をしたことは、調べないとわからないため、相続放棄をしたとしても債権者から借金の支払いを求められることはあります。

しかし、相続放棄をしている以上、借金の返済をする義務はありませんので、相続放棄をしたこと、そのために借金の返済をする義務がないことを伝えて、支払いをしないと意思表示をしてください。

借金の相続放棄に関するQ&A

亡くなった人の借金はどうやって調べたらいいですか?

どこから借金をしているか分かっている場合には、当該金融機関に相続人として問い合わせをすればよいと思われます。一方、どこから借金をしているかわからない、借金をしているかどうかもわからないという場合には、指定信用情報機関(CIC)、日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)等に相続人として被相続人の信用情報の開示を求めることが考えられます。
ただし、上記の信用情報には、個人からの借り入れやいわゆる闇金のようなところからの借り入れ等含まれない情報もありますので、全ての借金が明らかになるわけではないことについてはご注意ください。

実家の住宅ローンが残っていることが判明しました。相続放棄したらどうなりますか?

住宅ローンについては、一般的に当該住宅の土地建物に抵当権という担保が設定されており、相続放棄をしてローンを返済する人がいなくなると、抵当権の実行として土地建物を競売にかけて、ローンの回収をすることになります。
ただし、団体信用生命保険をかけている場合には、死亡による保険金でローンが完済されている可能性もありますので、相続放棄をするか否かについては、銀行に確認の上、ご判断いただくべきと考えます。

親が借金まみれなのですが、生前に相続放棄できますか?

生前に相続放棄をすることはできません。相続人同士の約束事としてであれば、遺言書の作成と遺留分の放棄等により、実質的に相続放棄をした場合と同様の結果を得ることは可能ですが、第三者に対して自分が相続人ではない法的に認められるものではありません。
そのため、被相続人が死亡した後に相続放棄の申述をする他ありません。

借金の相続放棄についてお困りでしたら、弁護士にご相談ください

被相続人に借金がある場合、余程資産がない限り、残された家族としては、相続放棄をすることになると思われます。しかし、相続放棄をすると言っても、遺族としては、遺品整理等雑事があるでしょう。

しかし、その遺品整理時の行動によっては、その相続放棄の効果が無効になってしまう可能性もあります。

せっかく手続きをした相続放棄が無効とならないよう、一度弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

また、借金があるかどうかもわからない場合には、弁護士が信用情報調査をすることも可能です。借金があるかどうかというところからお困りの方も弁護士にご依頼いただくことをお勧めいたします。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。