従業員が退職後、同業他社へ転職したり、自ら競合事業を立ち上げたりすることは、企業にとって避けて通れない労務・企業法務上の課題です。
特に、顧客情報や技術ノウハウ、営業戦略などの重要情報に触れていた従業員が競業先へ移る場合、機密情報の漏洩、顧客の流出、従業員の引き抜きなど、事業運営に大きな影響を及ぼすおそれがあります。
もっとも、退職後の就職・独立を無制限に禁止することは、退職者の職業選択の自由との関係で認められません。
企業としては、守るべき利益を明確にしたうえで、就業規則・誓約書・秘密保持契約等を適切に整備し、万一トラブルが発生した場合には、証拠保全や差止請求、損害賠償請求などを検討する必要があります。
本記事では、退職者の再就職・独立をめぐる主な問題点と、企業が講じるべき実務上の対応策について解説します。
同業他社への再就職・独立をめぐる問題点とは?
退職者が同業他社へ再就職したり、独立して競合事業を開始したりする場合、単に人材が流出するだけでなく、在職中に得た情報や人脈が競合事業に利用されるリスクがあります。
企業が問題視すべき典型例としては、機密情報の漏洩、顧客の流出、従業員の引き抜きが挙げられます。
機密情報の漏洩
退職者が顧客リスト、価格表、取引条件、技術資料、設計図、営業マニュアルなどを持ち出し、転職先や独立後の事業で利用する場合、企業の競争力が大きく損なわれます。
不正競争防止法上の「営業秘密」として保護されるためには、①秘密として管理されていること(秘密管理性)、②事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)、③公然と知られていないこと(非公知性)という要件を満たす必要があります。
不正競争防止法2条6項は、営業秘密について「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」と定義しています。
したがって、企業が営業秘密として保護を受けるためには、日頃からアクセス権限の限定、秘密表示、持ち出し禁止ルール、ログ管理などの体制を整えておくことが重要です。
顧客の流出
退職者が在職中に担当していた顧客へ営業をかけたり、取引条件を利用して競合サービスへ誘導したりする場合、企業は売上減少や取引機会の喪失という直接的な損害を受ける可能性があります。
特に営業職や管理職など、顧客との信頼関係を形成していた従業員が退職する場合には、顧客情報の管理と退職時の誓約内容が重要になります。
従業員の引き抜き
退職者が在職中または退職後に、同僚や部下に対して競合会社への転職を働きかけるケースもあります。
従業員の転職自体は自由ですが、虚偽の説明をしたり、会社の業務を妨害する態様で組織的に引き抜いたりする場合には、不法行為として損害賠償請求の対象となる可能性があります。
同業他社への転職・独立を禁止することはできるのか
退職者に対して同業他社への転職や独立を禁止するには、就業規則、雇用契約書、退職時の誓約書などによる合意が必要です。ただし、その合意が常に有効になるわけではありません。
退職後は労働契約関係が終了しており、退職者には憲法22条1項に基づく職業選択の自由があるため、過度な制限は公序良俗に反して無効となるおそれがあります。
生涯にわたって禁止することは認められる?
生涯にわたって同業他社への転職や独立を禁止することは、通常、合理的な範囲を大きく超えるため認められないと考えられます。
競業避止義務は、企業の正当な利益を保護するために必要な範囲に限って例外的に認められるものです。したがって、期間については、保護すべき情報の性質や陳腐化の速度、従業員の地位、代償措置の有無などを踏まえて、必要最小限に設定する必要があります。
退職後の「競業避止義務」は法的に有効か?
退職後の競業避止義務は、企業側に保護すべき正当な利益があり、かつ制限内容が合理的な範囲にとどまる場合に限り、有効と判断される可能性があります。
裁判例では、守るべき企業利益、従業員の地位、地域的範囲、期間、禁止される行為の範囲、代償措置の有無などが総合的に考慮されています。
有効と判断されるための要素とは?
有効性判断では、まず企業側に保護すべき利益があるかが重要です。
営業秘密、重要な顧客情報、独自の技術・ノウハウなどが具体的に存在し、それに従業員がアクセスしていた場合には、競業避止義務を課す必要性が認められやすくなります。
一方で、一般的な経験や技能、人脈にすぎないものを保護する目的で広範な転職制限を設けることは、有効性が否定される方向に働きます。
アルバイトやパートも対象となるのか?
アルバイトやパートであっても、退職後の競業避止義務の対象になり得ます。ただし、正社員と同様に、企業の正当な利益を守るために必要かつ合理的な範囲であることが求められます。
勤務時間が短い、担当業務が限定的である、機密情報へのアクセスがないといった場合には、広範な競業禁止は有効性が否定されやすいと考えられます。
そのため、アルバイト・パートに競業避止義務を課す場合には、対象業務、禁止期間、禁止地域、禁止される行為の範囲をできる限り限定し、必要性を説明できる内容にしておくことが重要です。
特に、営業秘密や顧客情報に接する立場であったかどうかを踏まえて、個別に検討する必要があります。
競業避止義務違反が発覚した際の対処法
退職者による競業避止義務違反が疑われる場合、企業は感情的に対応するのではなく、事実関係と証拠を整理したうえで、段階的に対応することが重要です。
まず、就業規則、雇用契約書、退職時誓約書、秘密保持契約などに、どのような義務が定められているかを確認します。
次に、退職者の転職先、独立後の事業内容、営業先、顧客への接触状況、情報の持ち出しの有無などを確認し、メール、チャット、アクセスログ、顧客からの連絡、社内資料の持ち出し記録などの証拠を保全します。違反の可能性が高い場合には、警告書の送付、交渉、差止請求、損害賠償請求などを検討します。
競業を禁じる合意をしていなかった場合は?
競業を禁じる明確な合意がない場合、退職者に対して同業他社への転職や独立そのものを差し止めることは、一般に容易ではありません。
退職後は労働契約が終了しているため、個別の競業避止合意がない限り、職業選択の自由を制限する根拠が乏しいためです。
もっとも、競業避止義務の合意がない場合でも、営業秘密の不正取得・使用・開示がある場合や、顧客を違法に奪取した場合、従業員の引き抜きが社会的相当性を逸脱する場合には、不正競争防止法や不法行為に基づく請求を検討できる可能性があります。
したがって、合意の有無だけで判断せず、情報の持ち出しや利用、営業活動の態様を具体的に確認することが大切です。
退職者の再就職・独立に関するトラブルの解決策
退職者の再就職・独立に関するトラブルを防ぐには、在職中から情報管理体制と契約書・規程類を整備しておくことが不可欠です。トラブルが発生してから対応するだけでは、証拠が不足したり、差止めの実効性が失われたりするおそれがあります。
予防策としては、就業規則や誓約書による競業避止義務の明確化、秘密保持義務の徹底、営業秘密の管理体制の整備、退職時の貸与物・データ返還確認、競業先への転職が見込まれる場合の個別面談などが考えられます。
これらを総合的に運用することで、トラブルの発生を抑え、万一紛争化した場合にも企業側の主張を裏付けやすくなります。
就業規則・誓約書で競業避止義務の徹底を
競業避止義務を実効的に運用するためには、就業規則や雇用契約書に一般的な義務を定めるだけでなく、重要な情報に接する従業員については、入社時、配置転換時、昇進時、退職時などのタイミングで個別の誓約書を取得することが有効です。
誓約書では、競業避止義務の対象者、禁止される行為、禁止期間、地域、対象となる顧客・業務、秘密情報の範囲、違反時の措置などを具体的に定めます。
抽象的に「同業他社への転職を禁止する」とだけ記載すると、制限範囲が広すぎるとして無効と判断されるリスクがあるため、企業利益を守るために必要な範囲へ絞り込むことが重要です。
退職者の競業避止義務に関する判例
退職者の競業避止義務に関する裁判例では、競業禁止の合意や就業規則上の定めがある場合でも、退職者の職業選択の自由を不当に制限する内容であれば、公序良俗に反して無効と判断されることがあります。
他方で、退職後の競業避止義務が無効とされる場合でも、在職中の競業行為や営業秘密の不正使用・開示が認められるときは、別途、不正競争防止法違反や不法行為に基づく責任が問題となります。
以下では、ソフトウェア開発会社の元従業員らによる取引先からの受注行為等が問題となった裁判例を取り上げ、退職後の競業避止義務を定める際の実務上の注意点を解説します。
事件の概要
近時の裁判例として、東京地裁令和6年9月24日判決(アイ・ピー・コンサルティング事件/労政時報4093号12頁)が参考になります。
本件は、ソフトウェア開発等を営む会社が、元従業員らが取引先から業務を受注した行為について、会社のサブバージョン・サーバーに保存されていたソースコード等の情報を使用した不正競争行為に当たると主張し、予備的に、就業規則上の競業禁止規定に違反するなどとして、損害賠償を請求した事案です。
会社の就業規則には、在職中および退職後2年間の競業を禁止する規定が置かれていました。
元従業員の一人は、会社在職中に取引先との窓口となっており、もう一人の元従業員は、取引先の監査アプリの開発・更新業務に実際に従事していました。退職前後には、当該アプリの最新ソースコードの所在や、競業会社による取引先からの受注が問題となりました。
裁判所の判断(令和3年(ワ)第32143号・令和6年9月24日・東京地方裁判所・判決)
裁判所は、まず、元従業員らが競業会社の関係者と共謀し、営業秘密に当たる監査アプリのサブバージョンの記録等を開示・使用して、競業会社が取引先から当該アプリ関連業務を受注するに至ったと認定し、不正競争行為の成立を認めました。また、在職中の競業行為についても、不法行為責任を認めています。
他方で、退職後の競業避止義務については、退職後の競業避止合意が使用者の正当な利益の保護を目的とするものであっても、労働者には職業選択の自由が保障されていることから、労働者の契約期間中の地位、禁止される業務・期間・地域の範囲、代償措置の有無等を考慮し、合理性を欠いてその自由を不当に害する場合には、公序良俗に反して無効になると判示しました。
本件の就業規則は、パートタイム労働者等を除く全労働者に適用されるものであったため、特定の労働者の地位や代償措置の内容といった個別事情を考慮することはできないとされています。
そのうえで裁判所は、本件競業禁止規定について、在職期間中の地位・役職等に関係なく、退職後に職種や態様を問わず競業企業へ直接または間接に関与する行為を包括的に禁止している点、システムエンジニアが退職後に知識・技術・経験を活かしてシステム開発等の業務を継続することを事実上不可能にするほど禁止範囲が広い点、システム開発分野では技術等の進歩が速く、2年間の禁止により再びSEとして活動することが困難になる可能性がある点、地域的限定がない点、代償措置もうかがわれない点を考慮し、退職後の競業避止義務を定める部分は公序良俗に反し無効であると判断しました。
ポイント・解説
この判決は、就業規則に退職後2年間の競業禁止規定を置いていたとしても、その規定が一律・包括的で、対象者、職種、業務内容、地域などを十分に限定していない場合には、退職者の職業選択の自由を不当に制限するものとして無効と判断され得ることを示しています。
特に、システムエンジニアのような専門職・技術職について、同種業務への従事を広く禁止すると、これまで培った知識・技能を活かした就労を実質的に困難にする点が重視されます。
企業としては、退職後の競業避止義務を定める場合、単に就業規則で全従業員を対象とする抽象的・包括的な禁止規定を置くだけでは、有効性が否定されるリスクがあります。
保護すべき営業秘密や顧客関係を具体的に特定したうえで、対象者、禁止される業務、禁止期間、地域、禁止される関与態様を必要な範囲に限定し、重要情報に接する従業員については個別の誓約書や合意書を取得することが望ましいといえます。
また、退職後の活動制限に見合う代償措置の有無・内容も、有効性判断に影響し得るため、会社の利益保護と退職者の職業選択の自由とのバランスを意識した制度設計が重要です。
退職者の転職・独立に関するトラブルでお困りなら弁護士にご相談下さい。適切な対処法や解決策をアドバイスいたします。
退職者の同業他社への転職や独立をめぐる問題は、職業選択の自由、競業避止義務、営業秘密の保護、不法行為責任などが複雑に関係します。
企業側が一方的に退職者の活動を制限しようとしても、合意内容や情報管理体制が不十分であれば、法的措置が認められない可能性があります。
退職者による競業行為や情報持ち出しが疑われる場合には、早期に証拠を保全し、就業規則・誓約書・秘密保持契約の内容を確認したうえで、適切な対応方針を検討することが重要です。
弁護士法人ALG&Associatesにご相談いただくことで、警告書の作成、交渉、差止請求、損害賠償請求、再発防止のための規程整備まで、状況に応じた実務的なアドバイスで、退職者の転職・独立に関するトラブルの解決をお手伝いさせていただきます。
在宅ワーク(テレワーク)は、一時的な措置ではなく恒常的な勤務形態として多くの企業に採用されています。一方で、従業員が働く様子を直接確認できないことから、労働時間の管理が難しいという問題があります。
以下では在宅ワークに関して、法律上注意すべき点について解説します。
在宅ワークで課題となる労働時間の管理
会社に出勤してもらう場合には、タイムカードなどによって勤怠時間を管理することも容易でしょう。
しかし、在宅ワークでは、労働者が実際よりも多い労働時間を申告したとしても会社が虚偽だと見抜くことは容易ではなく、特に労働者が成果を出していれば勤怠時間の管理をしっかりと行わないとしても会社としては問題ないと考えてしまうこともあるかもしれません。
もっとも、会社は、在宅ワークだとしても労働時間の管理を行う必要があります。
そこで、以下では、在宅ワークを行う上での労働時間の管理の仕方や労働時間の管理が必要なのかなどについて解説いたします。
使用者には従業員の労働時間を把握する義務がある
労働基準法108条は、使用者に対し、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項等を賃金支払のつど遅滞なく記入することを義務づけています。
そして、同法施行規則54条は、賃金台帳の記入事項として労働日数、労働時間数、時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数を挙げています。
適正な賃金計算の前提として、労働時間の把握が当然に必要となります。
労働安全衛生法66条の8の3では、労働者の健康を保持するため、事業者は労働者の労働時間の状況を把握しなければならないとされております。
ここでの事業者は、事業を行う者で労働者を使用するものとされていますので、一般的な会社であればこの条文に基づいて従業員の労働時間を把握する義務があります。
在宅勤務者の労働時間を適正に管理する方法とは?
使用者は在宅ワークの労働者が働いているところを直接確認することができない点が、在宅勤務者の労働時間管理を難しくする点でしょう。
在宅ワークの労働者の労働時間の管理の手段として考えられるのは、ウェブ勤怠システムによる打刻、チャットで始業・終業の報告をしてもらう、PCログやアクセスログの確認や画面監視を前記2つと併せて行うなどがあるかと思います。
もっとも、労働時間の管理にあたっては、法令及び就業規則に注意する必要があります。
労働基準法上の留意点
在宅ワークを導入されている会社は、一般的に労働基準法の労働時間等を定めた第4章が適用されると考えられます。そのため、時間外労働や休日・深夜労働については割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条)。
また、休日や、労働時間次第では休憩を与える必要もあります(労働基準法34条、35条)。
就業規則にはどのような規定が必要か?
労働者が突然在宅ワークを行うことになれば、会社は労働者の労働時間の管理が難しくなると思います。
そのため、就業規則には、在宅ワークを認めることに関する規定のほか、在宅ワークの申請手続に関する規定や労働時間管理の方法に関する規定を備えておくべきだと考えられます。
また、在宅ワークでは、労働者が労働することでかかった通信料の負担について紛争が生じる可能性があります。そのため、通信料の負担に関しても定めておくと良いと思います。
なお、就業規則を変更した場合には、就業規則変更届を労働基準監督署に提出し(常時10人以上の労働者を使用する会社に限られます)、変更後の就業規則を見やすい場所に掲示するなどして周知させる必要があります。
労働時間を自己申告制とする場合に企業が講じるべき措置
ウェブ勤怠システムの打刻や始業・終業時刻の報告などの自己申告制を採用している場合、会社が講ずべき措置については「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずるべき措置に関するガイドライン」で定められております。
このガイドラインによると、会社が講ずべき措置は以下になります。
- 1. 労働者への説明 自己申告を行う労働者に対し、労働時間の実態を正しく記録し適正に自己申告を行うことについて十分に説明すること。
- 2. 管理者への説明 実際に労働時間を管理する者(上長等)に対しても、自己申告制の適正な運用を含め、ガイドラインに従い講ずべき措置について十分に説明すること。
- 3. 実態調査と補正 自己申告により把握した労働時間と、パソコンの使用時間の記録など客観的な記録との間に著しい乖離が生じているときは、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
- 4. 不適正な運用の有無の確認 労働者が自己申告できる時間数に制限を設けたり、使用者が労働者の記録を実際の労働時間と異なるものへ誘導したりといった、不適正な運用が行われていないかを確認すること。
- 5. 上限設定の禁止
労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定してはならないこと。
また、36協定で定めた延長時間を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが慣習的に行われていないかを確認すること。 - 6. 阻害要因の除去 時間外労働削減のための社内通達や、時間外労働手当の定額払制度(いわゆる固定残業代)などの措置が、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかを確認し、要因となっている場合には改善のための措置を講じること。
つまり、会社は、在宅ワークを行おうとする労働者に労働時間の管理のために自己申告が必要であることを十分に説明し、自己申告された労働時間が実際の労働時間とイコールかを確認し、必要なら補正をする必要があるということです。
また、自己申告された労働時間と実際の労働時間にズレがある場合、時間外労働削減に関する社内通達や時間外労働手当の定額払制度などの措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する原因となっているかを確認し、原因となっている時は改善のための措置を講じる必要があるともされております。
在宅ワークでの休憩時間はどのように取り扱うのか?
労働基準法上、労働時間が6時間超える場合なら45分、8時間を超える場合なら1時間の休憩を労働時間の途中に与えなければならないとされております。
そして、この休憩は、原則として、同一事業上の全社員に一斉に与えなければなりません。
一方で、例外的に、労働者の過半数で組織する労働組合(このような労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)と協定することで、個別に休憩時間を与えることができます。
育児や介護などと仕事の両立のために在宅ワークを行う労働者も存在し、このような労働者としては、出勤する労働者と同じ時間に休憩することになるのではなく、より柔軟に休憩時間を確保したいという希望が生じるところです。
このような場合には、上記の労使協定を作成して、在宅ワークを行う労働者に個別に休憩時間を与えるような設計にしておくと良いでしょう。
休憩時間の管理の方法としては、ウェブ勤怠システムでの打刻やチャット等での自己申告の義務化などが考えられます。
在宅ワークの時間外・休日・深夜労働について
在宅ワークは仕事とプライベートの境界線が曖昧になることが多く、ついつい時間外労働や休日労働、深夜労働を行う労働者も存在します。
これから触れるとおり、会社は在宅ワークの労働者であっても時間外労働、休日労働及び深夜労働を管理する必要があります。
在宅ワークでも残業代の支払いは生じるのか?
在宅ワークは労働を労働者の家で行わせているにすぎません。
そのため、在宅ワークであったとしても、時間外労働等が行われた場合には、残業代を支払わなければなりません。
残業を許可制にすることは可能?
仕事とプライベートが曖昧になった在宅ワークの労働者が時間外労働や休日労働を繰り返し行うことを防ぐ手段として、時間外労働を許可制にすることが考えられます。
判例も時間外労働を許可制にすること自体は認めておりますので、許可制を行うことは可能です。
時間外労働を許可制にする場合、就業規則に規定することになります。
就業規則は、時間外労働の時間や業務内容、時間外労働が必要な理由が書かれた書面を提出するといった申請方法や、上長が確認して時間外労働命令を出すまでの流れなどを規定するべきでしょう。
もっとも、時間外労働を許可制にしたとしても、許可していない時間外労働について黙認していると評価される場合には、残業代を支払わなければならないと判断される可能性があります。
そのため、許可制は厳格に運用される必要があります。
「事業場外みなし労働時間制」の適用について
「みなし労働時間制」とは、所定の労働時間を予め定めておき、実際の労働時間を具体的に把握することはせず、所定の労働時間だけ労働したものとみなす制度のことです。
テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインでは、以下の要件を満たす場合に在宅ワークでもみなし労働時間制を適用できるとされております。
- ① 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態に置くこととされていないこと。
- ② 随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと。
なお、①については、情報通信機器を労働者が所持していたとしても、労働者が通信回線を切断できたり、情報通信機器から自由に離れることができたり、情報通信機器への応答のタイミング等を自由に判断できる場合には、①を充足すると解されています。
みなし労働時間制でも残業代の支払いは必要
もっとも、みなし労働時間制を採用したからといって、所定労働時間を超過する労働に対して常に残業代を支払う必要がなくなるというわけではありません。
労働基準法上、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる労働時間がみなし労働時間となります。そして、このみなし労働時間が8時間を超過する分について、時間外労働として残業代を支払う必要があります。
たとえば、ある業務の遂行には通常9時間の労働を要するとき、みなし労働時間は9時間となります。
このみなし労働時間9時間は8時間を1時間分超過していますので、1時間分について残業代を支払う必要があります。
みなし労働時間制を採用すれば残業代を払う必要はないというのはよくある誤解ですので、注意しましょう。また、そもそも深夜又は休日に労働を行うことを前提とする所定労働時間となっている場合も、その割増賃金を支払う必要があります。
長時間労働対策として企業に求められる対応
これまでにも述べてきたとおり、在宅ワークの労働者であったとしても、その労働時間を管理することが必要かつ重要になります。
労働時間の管理は会社に一定のコストがかかるものではあります。
しかし、労働時間の管理を適切に行うことで、在宅ワークの労働者の休憩時間や残業代などの別の問題にいち早く気づくことができ、未然に紛争を防ぐことも可能になるでしょう。
在宅ワークを円滑に運用するには、労働時間の適正な管理が重要となります。不明点があれば一度弁護士にご相談下さい。
この記事をとおして、在宅ワークの運用には労働時間の適正な管理が必要かつ重要となることを理解していただけたかと思います。
労働時間を適切に管理するには、就業規則にどのように規定するべきか、休憩時間がいつなのか、また、みなし労働時間制を導入している場合にはどの業務の場合に所定労働時間に変更が生じるかなど、専門的な知識が必要となる場面が多くあります。
弁護士法人ALGには、労働問題や労務管理に詳しい弁護士がおりますので、在宅ワークの導入や労働時間の管理にあたっては、弁護士法人ALGの弁護士にご相談ください。
優秀な従業員の退職は企業にとって大きな痛手ですが、それ以上に深刻なのが「退職後に競合他社へ転職される」「自社のノウハウをもとに近くで起業される」といったリスクです。
これらを防ぐために「競業避止(きょうぎょうひし)義務」を課す企業が増えています。
しかし、退職後の行動を不当に制限することは、従業員の権利を侵害し、法的トラブルに発展する可能性もあります。
本記事では、企業が知っておくべき競業避止義務の基本から、有効性の判断基準、具体的な規定方法、万が一のペナルティまでを分かりやすく解説します。
競業避止義務とは
競業避止義務とは、所属する企業と競合する他社への転職や、競合する事業を自ら起業するなどの「競業行為」を行わない義務のことです。
在職中の従業員については、労働契約に伴う「誠実義務(信義則)」として、特段の規定がなくても当然にこの義務を負うと解されています。しかし、問題になりやすいのは「退職後」の従業員です。
退職後は労働契約が終了しているため、原則として競業避止義務は認められず、企業が義務を課すためには事前の特約や明確なルールが必要になります。
競業避止義務違反があった場合の企業リスク
元従業員が競業避止義務に違反した場合、企業は以下のような甚大なリスクに晒されます。
- 営業秘密やノウハウの流出:長年蓄積した独自の技術、営業リスト、社外秘の戦略などが競合他社に渡る。
- 既存顧客の奪取:元従業員が在職中に担当していた顧客に対し、不当なアプローチをかけて自社のシェアを奪う。
- 売上の減少と競争力の低下:自社の強みを知り尽くしたライバルが市場に現れることで、業績に直接的な影響を及ぼす。
競業避止義務を課すには
退職後の従業員については、職業選択の自由(憲法第22条第1項)があるため、当然に競業避止義務を負うものではありません。
このため、退職後の従業員に競業避止義務を課すためには、就業規則に規定を設けるか、個別に誓約書・合意書を取り交わす必要があります 。
ただし、企業が自由にどのような制限でも課せるわけではありません。
「職業選択の自由」による競合避止の制限
退職した従業員が生計を立てるためにどの職業を選ぶかは個人の自由であり、企業の利益のためだけにこれを過度に奪うことは許されません。
そのため、退職後の競業避止義務は、社会通念上「合理的」と認められる範囲内でなければ、公序良俗違反(民法第90条)として無効になります。
競業避止義務の有効性を判断する基準とは?
過去の裁判例では、退職後の競業避止義務が有効か無効かを判断する際、主に以下の6つの要素を総合的に考慮して判断しています。
- 企業の正当な利益があるか:守るべき独自の技術、営業秘密、顧客情報等が存在するか。
- 従業員の地位・職種:制限に値する役職や、機密を扱う職種(役員、幹部、開発職など)であったか。
- 地域的な限定があるか:業務の性質に照らし、制限する地域が限定されているか。
- 期間の限定があるか:制限期間が長すぎないか。
- 禁止される業務の範囲:従業員がそれまで行ってきた職種・業務に限定されているか。
- 代償措置の有無:競業を禁止する見返りとして、手当の支給や退職金の加算などが行われているか。
競業禁止の期間や地域を限定することは可能か?
結論から言うと、限定することは可能であり、むしろ限定しなければ無効となるリスクが非常に高まります。
- 期間の限定:一般的には「1年〜2年」程度が妥当と判断されやすい傾向にあります。それ以上の長期(例:5年や無期限)にわたる制限は、無効とされる可能性が高いです。
- 地域の限定:自社の営業エリア(例:○市内、関東近郊など)に限定する必要があります。「日本全国」「海外一切」といった広範すぎる地域制限の有効性は、認められない傾向にあります。
退職後の競業を禁止する具体的な方法とは?
企業が法的根拠を持って競業を禁止するためには、以下の2つの手法を組み合わせるのが一般的です。
競業避止の誓約書・合意書を取り交わす
入社時、または退職時に、競業避止義務に関する具体的な内容を盛り込んだ「誓約書」や「合意書」に署名・捺印をもらいます。
特に退職時に取り交わす誓約書は、従業員本人がその時点での不利益を認識した上で合意したとみなされやすいため、証拠能力として非常に強力です。
誓約書による競業避止義務が無効になるケース
誓約書があっても、以下のようなケースでは裁判で「無効」と判断されます。
- 一般的な事務職など、営業秘密を一切持たない従業員に一律で課している場合
- 競業を制限する代わりに支払うべき「代償措置(手当や退職金の上乗せ)」が一切ない場合
- 退職時のドタバタに乗じて、脅迫的な態度で無理やりサインさせた場合
競業避止義務を根拠づける就業規則
全従業員に共通するルールとして、就業規則(または退職金規定)に「退職後の競業避止義務」に関する条項を明記しておきます。
就業規則の不利益変更に関する問題点
元々無かった競業避止義務の規定を、就業規則の改定によって後から追加する場合、労働者にとって条件が悪くなる「不利益変更」に該当します。
労働契約法では、以下のように原則として労働者の合意なしに不利益変更を行うことを禁じています。
労働契約法 第9条(労働条件の変更)
「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。」
労働契約法 第10条(就業規則の変更による労働条件の変更)
「使用者が、就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、変更後の就業規則に定めるところによる。ただし、(中略)この限りでない。」
つまり、後から競業避止義務を課す場合は、その必要性や代償措置の有無などに照らし、「変更に合理性がある」と認められなければ、その規定は無効になってしまいます。
競業避止義務違反をした従業員へのペナルティ
有効な規定・誓約書があるにもかかわらず従業員が違反した場合、企業は以下の法的手段(ペナルティ)を講じることができます。
- 競業行為の差止請求:競合他社での就労や、競合事業の営業活動を辞めさせるよう裁判所に申し立てます。
- 損害賠償請求:違反行為によって企業が被った実際の不利益(顧客を奪われたことによる売上減少など)について、金銭的な賠償を請求します。
- 退職金の不支給・返還請求:就業規則や退職金規定に「競業避止義務に違反した場合は退職金を支給しない、または返還させる」という旨の規定がある場合、これを適用できます(ただし、全額不支給が認められるのは在職中の功労を喪わせるほど背信性が著しく高い場合に限られます)。
フリーランスの競業避止義務について
近年増えている外部のフリーランス(個人事業主)との業務委託契約においても、競業避止義務を課したいというニーズがあります。
フリーランスは「労働者」ではないものの、独占禁止法(優越的地位の濫用)やフリーランス・事業者間取引適正化法、民法第90条(公序良俗違反)の観点から、あまりに一方的で過度な制限(例:契約終了後も一切同業の仕事を禁止するなど)は無効となる可能性が高いです。
フリーランスに課す場合も、期間や対象業務を必要最小限に絞る配慮が必要です。
競業避止義務と引き抜き行為の規制
退職した従業員が、自社の現職従業員に対して「一緒に新しい会社へ移ろう」と声をかける「引き抜き(従業員のスカウト)」も企業リスクの一つです。
単なる転職の勧誘自体は原則として自由ですが、「在職中から引き抜きの計画を進めていた」「会社の幹部クラスを大量に一斉に引き抜き、業務を麻痺させた」「自社の誹謗中傷を交えて勧誘した」といったケースは、単なる競業避止義務違反にとどまらず、公序良俗に反する「不法行為(民法第709条)」として損害賠償の対象になります。
競業避止義務の有効性が問われた裁判例
退職後の競業避止義務の有効性を判断する上で、参考となる裁判例をご紹介します。
事件の概要
システムエンジニアの派遣・紹介事業を営むX社は、退職する従業員Yとの間で、秘密保持等を目的とした合意書を交わしました。
この合意書には、X社の取引先や顧客、競合企業への転職、および競合する事業の立ち上げを退職後1年間禁止する旨の「競業避止義務」が定められていました。
しかし、Yは退職後、X社と取引のある別企業を通じて従前と同じ顧客の案件に携わったため、X社は義務違反を理由に損害賠償を求めて提訴しました。
裁判所の判断
本事案では、退職後の転職等を制限する合意が、有効かどうかが主な争点となりました。
東京地方裁判所(令和4年5月13日判決、令3(ワ)7 6 4 1号)は、以下の4つのポイントを挙げ、今回の競業避止義務に関する合意は無効であると判断しました。
- 守るべき企業利益の不鮮明さX社がシステム開発や運営において独自のノウハウを持っているとは言えず、Yが在職中にそうした特有の技術提供を受けた事実も認められないため、退職後に競業を禁止する正当な目的や利益があるとは言い難い点。
- 制限範囲の過度な広範さ合意書の文言上、転職先の職種や地域に制限が設けられていない点。さらに、X社の直接の取引先だけでなく、客先の関係先に至るまで対象に含まれており、禁止される範囲が広すぎる点。
- 再就職への著しい不利益Yがシステムエンジニアとしてのキャリアを歩んできた背景を踏まえると、これほど広範な制限を課すことは、退職後の再就職や生計の手段を過度に狭める結果になる点。
- 代償措置の欠如在職中の給与は基本給と交通費にとどまり、競業制限に対する特別な手当や退職金の加算といった補償(代償措置)が一切なされていなかった点。
ポイントと解説
本判決では、企業側に保護すべき固有の利益(独自ノウハウ等)が存在しないこと、禁止される転職先や行為の範囲が広範にすぎること、従業員のキャリアや再就職を不当に阻害すること、そして何より制限に対する対価(代償措置)が支払われていないことを総合的に考慮し、職業選択の自由を揺るがすものとして義務の有効性を否定しました。
たとえ退職時に書面で双方が合意していたとしても、その内容が労働者に一方的な負担を強いるものであれば、公序良俗に反して無効と判断されるリスクが生じます。
競業避止義務を設定する際は、守るべき自社の情報資産を明確にした上で、禁止する期間・地域・職種を必要最小限に絞り、必要に応じて手当などの代償措置を講じるというバランスの取れた設計が極めて重要です。
競業避止義務の規定方法やトラブル発生時の対処法について弁護士がアドバイスいたします。
競業避止義務は、自社の営業秘密や大切な顧客を守るために極めて重要な盾となります。
しかし、ただ闇雲に厳しい誓約書を作っても、法的なポイントを押さえていなければ、いざという時に「無効」とされ、何の役にも立たなくなってしまいます。
自社の就業規則や誓約書のテンプレートは、現在の法律・判例に照らして有効か?退職した従業員が実際に競合他社で働き始めてしまったが、どう対応すべきか?こうした不安やトラブルを抱えている企業様は、ぜひ一度当事務所の弁護士にご相談ください。
貴社の業種や守りたい利益に合わせ、裁判に耐えうる実効性の高い規定の作成から、万が一の違反者への法的な差し止め・損害賠償請求の手続きまで、専門的な見地から全面的にサポートいたします。
多様な働き方を実現し、優秀な人材の確保や業務効率化につながる「フレックスタイム制」。
魅力的な制度である一方、正しい手順を踏まずに導入したり、運用ルールが曖昧だったりすると、思わぬ労務トラブルや法令違反を招くリスクがあります。
本記事では、フレックスタイム制を安全かつ円滑に導入・運用するために、企業が押さえておくべき法的な要件や実務上の留意点について、労働基準法に則って詳しく解説します。
フレックスタイム制を導入する上で留意すべき事とは?
フレックスタイム制は、労働者が日々の始業・終業時刻を自主的に決定できる制度です。企業が留意すべき最大のポイントは、「会社が一方的に命じて自由に働かせることはできない」という点です。
労働基準法に基づいた厳格な手続きが必要であり、制度の趣旨である「労働者の自主決定権」を侵害しないよう運用する必要があります。
フレックスタイム制を導入するための要件
フレックスタイム制を法的に有効に導入するためには、労働基準法第32条の3において、以下の2つの要件を満たすことが義務付けられています。
- 1. 就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる旨を定めること
- 2. 労使協定により、一定の事項(対象労働者の範囲、清算期間など)を定めること
これらの一方でも欠けている場合、フレックスタイム制としては認められず、通常の労働時間制(1日8時間・週40時間超で割増賃金が発生する原則)が適用されてしまうため注意が必要です。
労使協定を締結する際の留意点
フレックスタイム制の骨組みを決めるのが「労使協定」の締結です。労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者)と書面で協定を結ぶ必要があります。
労使協定で定めるべき事項とは?
労働基準法第32条の3第1項に基づき、労使協定では必ず以下の事項を定めなければなりません。
- 対象となる労働者の範囲(全労働者、特定の部署、特定の職種の労働者など)
- 清算期間(労働時間を清算する3ヶ月以内の期間)
- 清算期間における総労働時間(法定労働時間の総枠を超えない時間)
- 標準となる1日の労働時間の長さ(有給休暇を取得した際などに、何時間働いたものとみなすかの基準)
- コアタイム・フレキシブルタイム(※任意設定。設定する場合は時間帯を明記)
- 有効期間の定め(清算期間が1か月を超える場合(労働基準法施行規則第12条の3第1項第4号)
個人・部署単位の導入にも労使協定は必要か?
必要です。たとえ特定の部署だけ、あるいは特定の個人(例:子育てや介護中の従業員のみ)に限定してフレックスタイム制を導入する場合であっても、労使協定の締結を省略することはできません。
その場合は、労使協定の「対象となる労働者の範囲」の項目に、「〇〇部所属の社員」「育児短時間勤務から移行する社員」などと明確に対象を限定して記載します。
届出を怠った場合は罰金を科せられる
清算期間が「1ヶ月を超える(2ヶ月や3ヶ月など)」場合は、労使協定を労働基準監督署長に届け出る必要があります(労基法第32条の3第4項)。
もし届出を怠った場合、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、届出がない状態での1ヶ月超の運用は、割増賃金(残業代)の計算ミスにもつながり、未払い残業代請求に発展するリスクもあります。
就業規則に規定する際の留意点
労使協定を結ぶだけでなく、会社のルールブックである「就業規則」への規定も必須です。
具体的には、「労働者の決定に委ねる旨」や「コアタイム等のルール」を条文に明記します。
労働者への周知により就業規則の効力が発生する
就業規則を作成・変更した場合、労働者へ「周知」して初めて法的な効力が発生します。
パソコンの共有サーバー内にいつでも閲覧できる状態で保存する、冊子を配布するなどの方法で、全従業員がいつでも確認できるようにしておかなければなりません。
「社長の机の引き出しに眠っている」状態では、いくら立派な規定を作っても無効とされる可能性があるため留意してください。
フレックスタイム制の導入を円滑に進めるには
制度を形骸化させず、社内に定着させるための実務的なアプローチを解説します。
適用する職務・対象者を見極める
フレックスタイム制は、すべての職種に向いているわけではありません。
- 向いている職務:開発職、デザイナー、企画職、事務職など、個人の裁量で業務を進めやすい職種。
- 慎重に検討すべき職務:店舗の接客、工場のライン、カスタマーサポートなど、特定の時間にその場にいることが求められる職種。
一律に全社導入するのではなく、まずは対象部署を絞った「スモールスタート」から始めるのも有効な手段です。
労働者が制度を理解することが肝心
「フレックス=遅刻・早退が自由な楽な制度」という誤解を生まないよう、事前の説明が肝心です。
特に、「コアタイムには必ず勤務していなければならないこと」「清算期間トータルで規定の時間を働かなければ、欠勤控除(給与減額)の対象になり得ること」など、自由に伴う責任について周知徹底を図りましょう。
想定されるリスクへの対策を講じる
よくあるリスクとして「ルーズな勤怠管理による労働時間の過不足」や「コミュニケーション不足」が挙げられます。
- 対策:クラウド型の勤怠管理システムを導入し、リアルタイムで労働時間の過不足を本人と上司が把握できるようにする。また、1日の最低勤務時間(例:3時間以上)を社内ルールとして緩やかに設ける(拘束力を持たせる場合はコアタイムとして労使協定で定めることが必要です。)、などの対策が効果的です。
フレックスタイム制を運用する上での留意点
実際に運用を始めた後に、最もトラブルになりやすいのが「残業代(割増賃金)の計算」です。
フレックスタイム制では、「1日8時間、週40時間」を超えたからといって、すぐに残業(時間外労働)になるわけではありません。
「清算期間における総労働時間」を超えた時間が、初めて残業時間となります。
また、清算期間が1ヶ月を超える場合、各月において「週平均50時間」を超えた労働時間は残業代を支払わなければならないなど、計算方法が非常に複雑になります。
管理不足によって「意図しない未払い残業代」が発生しやすい制度であるため、給与計算のフロー構築には細心の注意が必要です。
フレックスタイム制の導入で不安があれば一度ご相談下さい。弁護士が最善の方法をアドバイスいたします。
フレックスタイム制は、従業員のモチベーション向上や生産性アップに大きく寄与する優れた制度です。
しかし、労働基準法に則った正確な労使協定の締結、就業規則の改定、そして複雑な残業代計算など、クリアすべき法的なハードルが多数存在します。
自社の業態にマッチした最適な制度設計ができているか、法令違反のリスクはないかなど、少しでも不安がございましたら、ぜひ一度当事務所へご相談ください。
労務問題に精通した弁護士が、貴社の経営実態に合わせた最善の方法をアドバイスいたします。トラブルを未然に防ぎ、健全な職場環境を作るお手伝いをいたします。
労働基準法で定められている「裁量労働制」
裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行について労働者の裁量に委ねる必要があるため、時間配分の決定などに関して使用者が具体的指示を要しないとする労働時間制度です。
労働時間は、実際の労働時間にかかわらず、予め労使で定めた時間を労働したものとみなすことになります。
労働者の自由な働き方を実現する目的
労働基準法で法定労働時間や時間外労働を規制し、時間外労働に対する割増賃金の支払いを義務付けたのは、戦前の労働者が長時間労働や低賃金で就労させられており、日本国憲法の制定を受け労働者の健康や生活を保護するためです。
しかし、労働内容が多様化したことにより、労働時間の長短で評価することに適さない形態の業務が生じるようになったことから、そのよう業務に従事する労働者の業務の実態に対応するために、労働時間については、実際の労働時間によらず、労使協定又は労使委員会で定めた時間だけ就労したものとみなす制度を導入することとなりました。
裁量労働制とはどのような仕組みなのか?
裁量労働制の適用対象になる業務は、労働基準法、厚生労働省令や厚生労働大臣告示により指定されている業務に限られています。
その業務内容の類型から、専門業務型と企業業務型に分類されており、それぞれについて、労働基準法に定められた手続きを踏むことで、労使協定又は労使委員会で定めた時間を働いたとみなすことができるようになります。
フレックスタイム制やみなし労働とは何が違うのか?
労使協定又は労使委員会で定めた時間を働いたとみなす裁量労働制に対してフレックスタイム制や事業場外労働のみなし労働時間制が類似の制度として挙げられ、これらの制度で代替できるのではないかといわれることがあります。
しかし、その日の始業時間と終業時間を労働者が自由に決められる点でフレックスタイム制と裁量労働制は同じですが、何時間就労したとしても労使協定又は労使委員会で定められた時間働いたとみなされる裁量労働制に対して、フレックスタイム制は、実際に働いた時間に対応した給与分しか給与が発生しない点で裁量労働制と異なります。
また、就業規則か、労使協定又は労使委員会の決議かの違いはありますが、予め定められた労働時間を働いたものとみなす点で裁量労働制と事業場外のみなし労働時間制は同じですが、裁量労働制は事業場内で就労していても適用されるのに対して、事業場外みなし労働時間制は、文字通り事業場外での労働をしていることから実際の労働時間の把握が困難である場合に適用されるため、事業場内での労働をしている場合には適用されません。
なお、フレックスタイム制も事業場外みなし労働時間制も、裁量労働制と異なり業務の内容に限定がない点も裁量労働制と異なります。
裁量労働制導入における留意点とは
裁量労働時間制を導入するにあたっては、単に就業規則に裁量労働時間制を適用する旨を定めれば足りるというものではなく、以下に説明する法律上の条件を満たし、手続を経る必要があります。
裁量労働時間制の適用の対象とできる業務は限定的ですので、導入の対象としたい従業員の業務内容が裁量労働時間制の適用対象となるかを慎重に判断していただく必要があります。
業務遂行の方法・時間配分は労働者の裁量に委ねられる
裁量労働制の適用対象となった従業員については、業務の遂行方法や時間配分については労働者の裁量にゆだねられることになります。
しかし、だからといって会社が当該従業員の労働時間を把握する必要がないわけではなく、労働安全衛生法上の健康管理義務の一環として、実労働時間の把握・管理は必要となります。
また、みなし労働時間数が法定労働時間を超える場合には、割増賃金の支払いの対象となります。
さらに、裁量労働時間制の適用対象となった従業員だったとしても、会社が業務の遂行手段と時間配分の決定について当該従業員に対して具体的な指示をしていた場合には、裁量労働制の対象外とされ、実労働時間により賃金の算定をする必要が生じます。
裁量労働制の対象となる業務は限られる
既に述べた通り、裁量労働時間制の対象となる業務は労働基準法等により定められた業務に限られます。
【専門業務型】
- 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
- 情報処理システム(電子計算機を使用して行う情報処理を目的として複数の要素が組み合わされた体系であってプログラムの設計の基本となるものをいう。7において同じ。)の分析又は設計の業務
- 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法(昭和 25年法律第132号)第2条第28号に規定する放送番組(以下「放送番組」という。) の制作のための取材若しくは編集の業務
- 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
- 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
- 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆるコピーライターの業務)
- 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(いわゆるシステムコンサルタントの業務)
- 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
- ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
- 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
- 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
- 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
- 銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言の業務(いわゆるM&Aアドバイザーの業務)
- 公認会計士の業務
- 弁護士の業務
- 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
- 不動産鑑定士の業務
- 弁理士の業務
- 税理士の業務
- 中小企業診断士の業務
【企業業務型】
- 以下の4要件を全てみたす業務で、かつ労使委員会で定められたもの(労働基準法38条の4第1項第1号)
① 業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること(例えば対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼすもの、事業場独自の事業戦略に関するものなど)
② 企画、立案、調査及び分析の業務であること
③ 業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があると、業務の性質に照らして客観的に判断される業務であること
④ 業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること
法律で定められた手続きを経る必要がある
裁量労働制を導入するのであれば、就業規則に定めるのみでは足りず、以下のとおり、専門業務型、企画業務型それぞれに定められた手続きを経ることが必要となっています。
【専門業務型】
- ① 労使協定を過半数労働組合又は過半数代表者と締結する
- ② 個別の労働契約や就業規則等を整備し、所管の労働基準監督署に協定届を届出る
- ③ 当該従業員本人の同意を得る
- ④ 制度を実施する
【企画業務型】
- ① 「労使委員会」を設置する
- ② 労使委員会で所定の事項を決議する
- ③ 個別の労働契約や就業規則等の整備をし、所轄の労働基準監督署に議決届を届出る
- ④ 当該従業員本人の同意を得る
- ⑤ 制度を実施する
不同意者に対する不利益な取り扱いの禁止
労働者の同意については、令和6年4月1日から要求されるようになりましたが、同時に、同意をしなかった当該従業員に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないことが規定されています。
また、労使協定または労使委員会で同意の撤回の方法等を定めることが必要となります。
労働者の健康・福祉を確保する義務がある
裁量労働制は、労働時間が長時間になってしまう可能性があるため、既に述べた通り、労働時間の把握・管理をする必要があることに加え、当該従業員の健康・福祉の確保措置として、以下の1と2からそれぞれ1つずつ実施するのが望ましいとされています。
1 長時間労働の抑制や休日確保を図るための事業場の適用労働者全員を対象とする措置
- ① 就業から始業までの一定時間以上の休息時間の確保(勤務間インターバル)
- ② 深夜業(22時~5時)の回数を1か月で一定回数以内とする
- ③ 労働時間が一定時間を超えた場合の制度適用解除
- ④ 連続した年次有給休暇の取得
2 勤務状況や健康状態の改善を図るためのここの適用労働者の状況に応じて講ずる措置
- ① 医師による面接指導
- ② 代償休日・特別な休暇付与
- ③ 健康診断の実施
- ④ 心とからだの相談窓口の設置
- ⑤ 必要に応じた配置転換
- ⑥ 産業医等による助言・指導や保健指導
苦情処理措置を定める必要がある
苦情処理措置については、
- 苦情の申し出の窓口及び担当者
- 取り扱う苦情の範囲
- 処理の手順・方法
等その具体的内容を明らかにすることが望ましいとされています。
加えて、
- この仕組みについては当該授業員が苦情を申し出やすい仕組みとすること
- 取り扱う苦情の範囲について当該従業員に適用される評価制度及びこれらに付随する事項に関する苦情を含むこと
が望ましいとされています。
裁量労働制であっても割増賃金は発生する
既に述べた通り、裁量労働制は、時間外労働・休日労働等に関する規定の適用が除外されるわけではありません。
そのため、労使協定又は労使委員会で定めたみなし労働時間数が法定労働時間を超える場合には、36協定の締結や時間外労働・休日労働に対する割増賃金の支払いをする必要があります。
裁量労働制を適切に運用するためには
裁量労働制は、適切に運用することができれば当該従業員のワークライフバランスを整えることに役立つことになりますが、適切な運用がされなければ、当該従業員は長時間労働を強いられることになります。
会社としては、後のトラブルを避けるために、裁量労働制を導入した場合には、適切な運用を心掛ける必要があります。
労働時間を正確に把握・管理する
既に述べたとおり、裁量労働制により労働時間をみなされるとしても、実労働時間を把握しなくてもよいということにはなりません。
労働時間の把握にあたっては、当該従業員の自己申告によるものではなく、タイムカードや事業所への入退室記録等のように客観的な方法により把握するべきとされます。
そして、当該従業員の実際の勤務状況にm十づいて、会社側が当該従業員の健康を確保するための措置をする必要があります。
遅刻や早退の取り扱いについて
裁量労働時間制を採用した場合、業務遂行の方法や労働時間の配分に関しては当該従業員が決定することができることになります。
しかし、裁量労働時間制は、フレックスタイム制のように出退勤時間まで自由に決定することができることを認めているわけではないため、就業規則等に定めた始業時間と終業時間に基づき出退勤をする必要があります。
そのため、当該従業員が労働時間の配分に関して自分が決められるからといって、正当な理由なく遅刻や早退を繰り返せば、懲戒処分等の対象になり得ます。
ただし、賃金算定にあたっての労働時間は、労使協定や労使委員会で定められた労働時間を働いたとみなされることから、遅刻や早退のために所定労働時間通りに就労していないことを理由として賃金を控除することは許されません。
仮にそのような対応をした場合には、会社に「時間の配分を指定した」として裁量労働時間制の適用対象外と判断される可能性があります。
労働基準法に違反した場合の罰則
労働基準法上、裁量労働時間制の導入・運用の規定に違反したことに対する罰則の規定はありません。
ただし、既に述べたとおり、時間外労働・休日労働等に関する規定の適用は除外されていませんので、これらの規定に違反した場合には、罰則を受ける可能性があります。
裁量労働制の導入でお悩みの方は、弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。
裁量労働時間制の導入・適用にあたっては様々手続きが必要となる上、フレックスタイム制や事業場外みなし労働時間制等と混同して、運用を誤る可能性があります。
また、従業員保護の観点から、導入に必要な手続きや運用の方法について改正が繰り返されています。
そのため、裁量労働時間制の導入を検討されている場合には、弁護士にご相談いただき、また、導入後の運用についても法改正に対応することができるように継続的に弁護士のご相談いただくことをお勧めいたします。
労働条件は、労働者にとって重要な事柄です。ただ、会社の状況によっては、その労働条件を変更しなければならないときがあるでしょう。
労働者に有利な方向で労働条件を変更するのであれば特に問題はありません。
しかし、不利な方向への変更となると話が変わります。
労働者の生活に影響する話ですので、不利益変更を行うためには、法律上の制限があります。
ここでは、労働条件の不利益変更について、ご説明をいたします。
どのような変更が「不利益変更」にあたるのか?
変更前と変更後の労働条件を比較して、労働者に実質的な不利益が生じる場合には、不利益変更に当たります。ただ、労働者に不利益な変更といえるか判断が難しい場合もあります。
例えば、成果主義を導入し、労働者によっては給与が下がる可能性があるものの、ほとんどの労働者の給与が上がると見込まれる場合は、どうでしょうか。
結論から言えば、この例のように一部の労働者であっても労働条件が低下する可能性がある以上は、不利益変更に当たると考えられます。
経営悪化による減給などの場合は?
減給は、労働者が得られる給与(利益)を減らすことですから、不利益変更に当たります。
これは、経営悪化という状況があっても変わりがありません。
確かに、会社が倒産して無職になるよりも減給の方が労働者のためにもなるから不利益ではないという見方もあるかもしれません。
しかし、給与の減額という実質的な不利益が生じている以上、労働者にとって不利な変更であることに違いはありません。したがって、経営悪化による減給でも不利益変更に当たります。
労働条件の不利益変更が認められるための条件とは?
労働条件は労働者の生活に影響する話ですので、不利益変更には一定の制限があります。
では、どのような条件を満たせば不利益に変更できるでしょうか。以下の3つの方法が考えられます。
一つ目は、労働者と合意をすることです。労働者の理解を得ることを考えても、後述の就業規則の変更による方法を考えても、まずは労働者との合意による方法を考えるべきです。
また、労働者の同意が得られない場合、就業規則を変更することによって、不利益変更が認められることがあります。これが二つ目の方法です。
就業規則の変更による不利益変更をするためには、変更に合理性があり、かつ、変更後の就業規則を周知することが必要です。最後に、労働協約の締結によって労働条件の不利益変更をする方法が考えられます。
労働条件の変更に合理性がある
変更の合理性があり、かつ、変更後の就業規則を周知することで労働条件を不利益に変更できます。
では、この「合理性」があるかは、どのように判断するのでしょうか。
労働契約法第10条では「労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき」とされています。
中でも、労働者の受ける不利益の程度が重要です。この不利益の程度に照らして、変更の必要性や内容の相当性が釣り合っていなければ合理性は否定される傾向にあるためです。
なお、一般に、変更の合理性が認められるためのハードルは高いですが、特に賃金、退職金など労働者にとって重要な労働条件については、より厳しく合理性が判断されています。
就業規則を周知している
就業規則の周知の方法は、①各作業場の見やすい場所への掲示、備え付ける方法、②労働者に書面を交付する方法、③電子データにて労働者が常時確認できるようにしておく方法があります。
変更後の就業規則についても、①~③の方法で開示すれば問題ありません。いずれの方法でも問題はなく、また、複数の方法を取ることも可能です。
労働条件の不利益変更を実施する方法
上記2でも記載をしましたが、不利益変更を行う方法として、①労働者との合意、②就業規則の変更、③労働協約の3つがあります。
ここでは、①労働者との合意による方法と、③労働協約による方法に関して、ご説明をいたします。
全ての労働者の合意を得る
労働条件は、労働者との合意内容ですから、労働者との合意があれば労働条件を変更することが可能です(労働契約法第8条)。
労働者の理解を得た上で労働条件を変更するということを考えても、労働条件を不利益に変更する場合、まずは労働者からの合意を得ることを考えることになります。
合意を得るべき労働者は、労働条件が変更される労働者全員です。全ての労働者に関わる条件変更をする場合には、全労働者からの同意を得ることが必要ということになります。
この同意には、労働者の自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する必要があるとされています。
「自由な意思」といえるためには、十分な情報が必要です。また、変更後の労働条件が適切なものでないのに変更合意に応じる労働者はまずいないと考えられます。
そのため、適切な労働条件を設定した上で、労働条件を変更する必要性や労働者が受ける不利益の程度・内容などを書類にまとめるなどして労働者に十分に伝えること、また、不利益の程度が大きい場合には代替的な措置も用意することが重要になります。
パートやアルバイトの合意も必要?
パートやアルバイトにも関わる労働条件の変更を行う場合には、パートやアルバイトからの合意も必要です。もっとも、就業規則は、雇用形態ごとに作成をしていることが多いと考えられます。
つまり、正社員用の就業規則、パート・アルバイト用の就業規則と分かれており、設定されている労働条件も違うでしょう。
どのような労働条件を変更するのか、その変更を受ける労働者はどのような者なのかを考え、変更の対象となる労働者との間で合意を結ぶことを考えることになります。
「黙示の同意」は認められる?
労働条件の変更に関する合意は、明示的なもののみならず、黙示のものでも可能と考えられています。ただし、労働条件の不利益変更に関して、明示的な合意であっても、労働者の自由な意思に基づくものといえるかは慎重に見られています。
黙示の合意の場合、明確な合意がないわけですから、より一層、慎重に判断される傾向にあります。
そのため、不利益変更を行う場合には、労働者から明確な合意を得るべきです。
また、合意成立に関する証拠を取っておくことが大切です。
合意書を作るなどして、明示的な合意を目指しましょう。
会社に労働組合がある場合
会社に労働組合がある場合には、労働組合との合意(労働協約)によって不利益変更を行うということが考えられます。
組合員との関係では、労働組合との合意(労働協約)により労働条件の不利益変更が可能となるためです。ただし、3年を超える労働協約を結ぶことができないなど、いくつかの注意点があります。
実際に労働協約を締結する場合には、慎重に行う必要があります。
また、労働組合との合意では、原則として、組合員ではない労働者には効力が生じません(「原則として」と記載しているのは、一つの事業所の4分の3以上が加入する労働組合の場合、非組合員に対しても、労働協約の効力が及ぶためです。)。
そのため、労働組合との合意では、非組合員には労働協約の効力が及びませんので、組合員以外の労働者との合意が必要なことに注意が必要です。
一方的に労働条件を不利益変更するとどうなる?
もし、労働者の同意などを得ずに、一方的に労働条件を不利益に変更した場合、どうなるでしょうか。
ここでは、一方的に不利益変更を行った場合に想定される問題について記載します。
労使トラブルが発生する
一方的に労働条件を労働者に不利に変更すれば、労働者の不満が溜まると考えられます。
そのため、いくら就業規則の不利益変更に合理性があれば労働条件の不利益変更が可能であるとはいえ、強引に変更すれば労使間のトラブルに発展しかねません。
また、労使間の協議が不十分な場合、変更までの経緯から、不利益変更の合理性が否定されやすくなります。
労使間のトラブルを避けることのみならず、不利益変更の有効性を考えても、十分な協議を行い、労働者の理解を得た上で不利益変更を行うことが大切です。
労働者のモチベーションが下がる
労働条件は労働者のモチベーションに直結すると考えられます。
これが不利になれば、労働者のモチベーション低下は避けられないでしょう。
特に労働者の理解を得ることなく労働条件が引き下げられれば、会社への不信感も募るでしょう。また、理解を得た場合と比較して、一層モチベーションに悪影響が生じると考えられます。
労働者のモチベーションを考えても、一方的な不利益変更は避けるべきです。
企業のイメージが悪くなる
強引な労働条件の引き下げは企業イメージにも関わってきます。
ホワイト企業、ブラック企業などといわれるように、労働条件は企業のイメージにも大きな影響を与えています。これが一方的に引き下げられたとなれば、企業イメージの悪化は避けられません。
また、労働条件の変更によって退職者が出たとなれば、口コミサイトにその旨の記載がなされる可能性もあります。企業イメージを考えても、労働条件を不利に変更しなければならない場合、労働者の理解を得た上で進めた方がよいといえます。
不利益変更をする際にやってはいけない行為
上述のとおり、労使間のトラブル、モチベーション、企業イメージなどを考えても、一方的に不利益変更を行うことは避けるべきです。また、労働者の合意を得て不利益変更を行う場合を想定しても、合理的な制度設計でなければ労働者の合意を得られないでしょう。
これは、変更の合理性にも関わる部分であり、労働条件の変更を考える際には、まずは適切な制度を考える必要があります。
裏を返すと、十分な制度設計をせぬまま、不利益変更に及ぶと労働者との合意が得られない上、変更の合理性も否定されることになります。そのため、適切な制度設計を行わずに不利益変更を進めることはやってはいけない行為といえます。
違法な不利益変更とその罰則
違法な不利益変更に対する直接の刑事罰は特にありません。
ただし、違法な不利益変更となると、労働条件の変更は無効となります。
賃金の引き下げが行われていた場合には、その減額が無効となりますので、差額の給与を支払わなければならなくなります。また、場合によっては、慰謝料請求が認められるとの指摘もあります。
違法な不利益変更をしても、それは無効となり労働条件は変えられません。
労働条件を変更するのは、会社の状況に変化があったためでしょう。
しかし、労働条件の変更が無効となれば、会社の経営状況にも大きな影響が生じるでしょう。罰則がないとしても、適切な方法で変更を行うべきといえます。
労働条件の不利益変更で争った裁判例
労働条件の不利益変更が争点になった裁判例をご紹介します。
事件の概要
この裁判例は、役職定年に関する就業規則の変更に関して、その有効性が争われた事案です。信用金庫である使用者(被告)は、就業規則を変更することにより役職定年を取り入れました。
これに対し、原告らは、使用者が導入した役職定年制を導入する就業規則の変更が無効であると主張し、使用者に対し、役職定年制が適用されなかった場合の給与、賞与及び退職金と原告らに実際に支払われた給与等との差額の支払いを求めました。
裁判所の判断(熊本地裁平成26年1月24日労判1092号62頁)
裁判所は、就業規則の不利益変更に関する基準を示したうえで、労働者が被る不利益の程度、労働条件の変更の必要性の内容、程度を検討した上で、不利益変更の合理性を否定し、変更を無効と判断しました。
まず、不利益の程度、労働者(原告ら)の不利益の程度については、役職定年によって、役職定年をした後、定年を迎えるまでの間、役職定年到達時の給与の額を基準とすると年10%の割合、定年を迎える時点では50パーセントの割合で削減されていくと認定し、役職定年到達後の労働者らの生活設計を根本的に揺るがしうる不利益性の程度が非常に大きなものとしました。
一方で、労働条件の変更の必要性の内容、程度に関しては、被告の経営状況の悪化及び他の信用金庫と比較しても経費率が高く、人件費を削減する必要性を一定程度認めつつも、被告に近い将来における破綻や合併等の危機が具体的に迫っているような状況であったと認めるに足りる客観的な証拠はないとしました。
そして、役職定年の性質(55歳以上の職員にのみ著しい不利益を与えること)などに照らして就業規則の変更の相当性は低いと判断しました。また、代替措置(職員貸付条件の緩和)では、労働者(原告ら)への不利益を緩和する代替措置として機能しないとしました。
そして、労働者の受ける不利益の程度に対し、変更の必要性が高度なものではなく、代替措置も不十分なことから、変更までの経緯を考慮しても、合理的なものであるとは認められないと判断しました。
なお、一部の原告については、合意による労働条件の変更が認められています。
ポイント・解説
本件では、就業規則変更の合理性が否定されました。
変更された内容は役職定年であるところ、その本質は役職定年後の労働者の給与を減額するというものですから、労働者にとって重要な条件である給与に関する不利益変更といえます。
上述のとおり、給与に関する不利益変更は慎重に判断されます。本件でも、被告の経営悪化を認めつつも、破綻や合併等の危機が具体的に迫っていないと示されていますので、慎重な判断がなされているといえるでしょう。
また、本件では、就業規則変更の合理性を否定しつつも、一部の原告においては合意による労働条件の変更が認められています。この裁判例を見ても、まずは労働者と十分に協議し、個別同意による労働条件の変更を目指すべきといえます。
労働条件の不利益変更によるトラブルを回避するためにも、労働問題を専門とする弁護士にご相談下さい。
ここでは、労働条件の不利益変更について、ご説明をしました。労働条件を変更する場合というのは、会社側の経営状況に変動が生じた場合が多いのではないでしょうか。
そのときに無効な労働条件の変更をすれば、結果として会社の状況に適さない労働条件となりかねません。また、強引な不利益変更は、労使間のトラブルに発展しやすく、慎重に対応をすべき事柄です。
労働条件の不利益変更に関し、お困りのことがあれば、ぜひ労働問題を専門とする弁護士にご相談ください。
会社という組織においては、従業員による不祥事が発生することを完全に防ぐことは難しいものといえます。
そこで、ここでは、従業員の不祥事が発生してしまった場合に、会社としてどのような対応をしていくべきなのかについてご説明いたします。
従業員の不祥事にはどのようなものがある?
従業員の不祥事については、様々なものがありますが、以下では、不祥事について、会社内での不祥事(対内的なもの)と、会社以外の第三者との関係での不祥事(対外的なもの)とに大きく分けて、それら具体例についていくつかご説明します。
会社内での不祥事の具体例
会社内での不祥事としては、会社の金銭等の使い込みや不正な経費請求等が挙げられます。
また、会社内での不祥事という意味では、従業員同士の喧嘩等のトラブル、さらにセクシャルハラスメントやパワーハラスメントなども挙げることができますが、特にセクシャルハラスメントやパワーハラスメントなどの事例においては、被害者は会社ではなく、当該従業員ですので、その点では、対外的な不祥事であるともいえます。
そして、これらの不祥事の種類や内容によっては、対応を誤ると会社としての対外的な評価を大きく落としたり、民事的・刑事的責任を負うことも考えられます。
また、会社の金銭等の使い込みや経費の不正請求など、会社自身が被害者となる不祥事であったからといってきちんとした対応を怠ると、その後もそのような不祥事が横行することにつながるリスクもあります。
会社以外の第三者との関係での不祥事の具体例
対外的な不祥事については、例えば、従業員が取引先から依頼されていた業務を怠って取引先に損害を生じさせてしまったといったような、業務中の従業員の故意や過失で取引先に損害を与えてしまった場合、業務中に社用車で交通事故を起こした場合などのように、従業員が会社の業務中に(故意や)過失で第三者にけがをさせてしまった場合のように、従業員が業務を行っているときに生じるものが考えられます。
前者は、取引先に、後者は全くの第三者に損害を与えてしまっていますが、これらはいずれも会社の業務中に生じているものです。
しかし、このような会社の業務と関係しているものだけではなく、会社として対応が必要な不祥事には、これ以外にも、従業員の私生活のおける不祥事が含まれてくる場合があります。
これには例えば、従業員が、私生活上において、不同意わいせつや不同意性交などの性犯罪を犯した場合などが考えられます。
これらは、従業員の私生活上の犯罪ではありますが、会社として、そのような事態が発覚した以上、何らの対応もしないということは、会社にとってもリスクとなることが考えられます。
一方で、従業員の私生活上の不祥事についてすべて対応しなければならないのかというとそれも現実的ではなく、私生活上における非難されるべき行為が、直ちに全て不祥事としての対応が必要であるとは考え難いといえます。
ただし、広い意味での不祥事への対応は、時代と主に求められるものが変化していきますので、常に検討が必要です。
従業員の不祥事が発覚した場合の対応と流れ
先ほどもお話ししたように、対内的な不祥事であっても、対外的な不祥事であっても、きちんとした対応をしなければ会社としてリスクを負います。
そこで、以下では、不祥事が発覚した場合の対応についてご説明します。
①事実関係の調査
まず、最も重要なのが、事実関係を調査し、把握することです。
従業員の不祥事が生じた疑いがあっても、きちんとした事実関係の調査をしないままその後の対応をすれば、大きなリスクを負うこととなります。
このような調査の方法としては、関連する資料の精査や当事者・関係者からの聞き取り等の調査をすることが考えられますが、被害者とされる方やその他の関係者のプライバシー等に配慮するのはもちろんのこと、不祥事を起こしたとされる方へのプライバシー等への配慮も必要です。
さらに、不祥事を起こしたとされる方についても、きちんと本人の言い分を確認することが重要です。
もっとも、特に不祥事を起こしたとされている方のプライバシー等にどのようにはどの程度配慮すればよいのか、事実関係の調査はどこまで尽くせばよいのかは非常に難しい問題でもありますので、専門家に相談することが考えられます。
また、事実調査においては、民法上の使用者責任など、会社自身も責任を負う可能性があるのかについても確認する必要があります。
②関係者への対応や情報開示
次に、不祥事について、関係者に対し、必要な対応や情報開示を行うことが考えられます。
例えば、当該不祥事によって、取引先との取引を本来の約束通りに実行することが難しくなる場合には、当該取引先に速やかに連絡を入れることが考えられます。また、その他にも、不祥事の影響が及ぶ関係者(取引先や債権者、株主など)に必要な情報の共有をする必要が生じる場面はいくつも考えられます。
情報開示の方法も個別の連絡だけでなく、必要に応じて会社としての公式の文書やホームページへの記載当による公表も考えられます、
しかし、関係者に与える影響の大きさや不祥事との関連性の強さを考慮するだけでなく、当事者や被害者の名誉やプライバシーへの配慮や、事実確認がどの程度済んでいるのかによっても、共有してよい情報と共有してはいけない情報とを適切に判断する必要があります。
この点も難しい問題となりえますので、専門家に相談することが考えられます。
③被害者への対応
当該不祥事について、被害者の方がいる場合には、被害者の方に対しては、特に適切な対応を求められます。
会社として直接の責任や使用者責任を負う場合はもちろん、会社として社会的責任を負うべき場面でも、被害者の方への必要な説明、謝罪、(賠償責任がある場合には)損害賠償等の必要な対応を行う必要が生じ得ます。
そのため、会社としても、被害者の方の情報や被害の内容・金額、被害者として会社に何を求めているのかなどを把握する必要があります。
このような場合には、将来的な示談交渉も含め、弁護士に依頼して慎重に進めていくことが考えられます。
④従業員に対する処分
不祥事を起こした従業員については、必要な調査や当該従業員の言い分もきちんと聞いた上で、当該従業員に落ち度が認められる場合には、必要な処分をする必要があります。
そのような処分について以下でご説明します。
懲戒処分
会社にいて、従業員を懲戒処分するにあたっては、必要な事実調査や当該従業員の言い分もきちんと確認するなど適正な手続きを経たした上で、就業規則上の懲戒事由に該当するかを確認して行う必要があります。
そのため、不祥事が生じてから、適正な手続きを行うだけでなく、不祥事が生じる前から適切な懲戒処分ができる就業規則となっているかどうかを確認しておき、そうでないのであれば、きちんと就業規則を整えておく必要があります。
損害賠償請求
従業員の不祥事によって、会社が損害を被った場合、会社は、当該従業員に対し、被った損害について損害賠償を請求することが考えられます。
ただし、事案にもよりますが、使用者と従業員という立場に鑑みて、裁判においては、損害賠償請求の一部ないし全部が認められない場合もあります。
また、損害賠償をすること自体やその金額について、会社と従業員との間で示談が成立し、合意が成立したとしても、原則として、給与から天引きすることはできません。
給与からの天引きには従業員の合意が必要ですが、形式的に合意を取ればよいというものではなく、自由意志に基づく合意であったといえる必要があるため、慎重な対応が必要です。
被害届の提出や刑事告訴
従業員の不祥事の内容によっては、被害者として被害届の提出や刑事告訴を行うことが考えられます。
被害届と刑事告訴(告訴状の提出)のいずれを行うべきかについては、不祥事の内容や、捜査を開始することに対する警察側の対応内容等にもよりますので、警察や弁護士等と相談することが考えられます。
被害届や刑事告訴をすることは、そのような不祥事を許さないという会社としての姿勢を示し、検察官の判断等にもよりますが、加害者に公正な処罰を下してもらうことが期待できます。
しかし、加害者との示談を検討している場合には、被害届や告訴状の提出の有無や時期は、示談交渉に大きく影響を与えることが考えられますので、提出の有無や時期についてはきちんとした検討が必要です。
⑤再発防止策の策定
不祥事が起きた場合、優先すべきは、当該不祥事そのものに対する対応ですが、同じくらい重要なのが、今後同じような不祥事が起きないようにする、あるいは起きにくくするための再発防止策を検討・実施することです。
不祥事の内容や規模等によっても行うべき再発防止策は変わってきますが、まずは、そのような不祥事が生じた原因、特に会社としての管理体制、企業風土、慣習など、組織的な原因がなかったかの見極めが重要となります。
このような発生の原因については、 不祥事の内容や規模によりますが、弁護士等による第三者委員会を設置して調査してもらい、再発防止策を提言してもらうことも考えられます。
不祥事が起きてしまった原因に応じて、組織の在り方や就業規則等を見直していくことが重要です。
従業員が不祥事で逮捕された場合の対応
従業員が逮捕された場合も、きちんとした事実確認を行い、逮捕等を理由とする懲戒処分が許されるのかは慎重に判断する必要があります。
また、当該従業員が身柄拘束されることに伴う、業務の調整等も必要となります。
もっとも、従業員が逮捕された場合、会社になかなか必要な情報が入ってこない状況のままとなり、事実確認について、難しい状況におかれ、懲戒処分の適否についても、非常に難しい判断を迫られる場合がありますので、弁護士等の専門家に相談することが考えられます。
従業員の不祥事に適切に対応するための措置
これまでお話ししてきたもの以外にも、従業員の不祥事に適切に対応するための措置としては、役員・従業員への講習・研修や、内部通報窓口、第三者による監査制度の設置などが考えられます。
従業員の不祥事に関する裁判例
次に従業員の不祥事に関する裁判例(最高裁判所第3小法廷昭和45年7月28日判決)をご紹介します。
事件の概要
この事件は、当時、会社として、企業運営上、地域住民の信頼を保持や、職場規律の確保、従業員の作業意欲の高揚の緊急性や必要性があるとして、会社において、従業員に対し、会社規則の厳守や信賞必罰を強調していた時期に、その会社の従業員が、会社の組織や業務とは関係なく、夜遅い時間に、理由もなく他人の居宅に侵入し、住居侵入罪で処罰されたことについて、その会社における「不正不義の行為を犯し、会社の体面を著しく汚した者」との賞罰規定に該当するとして、当該従業員を懲戒解雇したものです。
裁判では、この懲戒解雇が有効であるといえるかどうかが問題となりました。
裁判所の判断
裁判所は、上記従業員の行為が、私生活の範囲内で行なわれたものであること、受けた刑罰が罰金低額であったこと、職務上の地位が指導的なものでなかったことなどを考慮すれば、上記行為が、会社の体面を著しく汚したとまでは評価できないとして上記懲戒解雇を無効としました。
ポイント・解説
まず、私生活の範囲内の行為であっても、会社の名誉を著しく失わせるような行為(上記裁判例では「会社の体面を著しく汚」すような行為)は、懲戒解雇事由となりえます。
しかし、裁判所は、私生活上の行為について懲戒解雇事由として、上記のように定めていたとしても、その解釈や運用は制限的かつ厳格になされなければならないと考えているようです。
そのため、特に私生活上の行為を理由に懲戒解雇をしようとするときは、十分な検討と慎重な判断が必要となります。
従業員の不祥事への対応は弁護士法人ALGにご相談下さい
従業員の不祥事が生じた場合、その内容と規模にもよりますが、限られた時間の中で、様々な対応や判断を迫られます。
しかし、そのような対応や判断が間違っていた場合、会社にとっても思わぬリスクにつながる可能性があります。
従業員の不祥事が起きた場合だけでなく、これから起きる不祥事を防止していくといったことについても、ぜひ弁護士法人ALGにご相談下さい。
無断欠勤が続く従業員がいたとき、その理由は様々なものがありますが、中にはうつ病になって出勤できなくなってしまっているケースもあります。
このような場合に、安易に解雇に踏み切ったりすると、当該従業員から損害賠償請求を受けるリスクもあるため、会社として適切な対応を心掛ける必要があります。
今回は、欠勤が続く従業員がうつ病であると疑われる場合に、会社が対応すべきことについて解説していきます。
無断欠勤が続く従業員がうつ病だった場合にまずすべきこと
無断欠勤をしている社員にうつ病の疑いがある場合は、会社として以下のような対応を行うべきです。
医師や産業医の受診を促す
欠勤前後の様子や欠勤後の連絡状況から、無断欠勤の理由が、従業員のメンタル面の不調と考えられる場合、まずは精神科医の受診を促しましょう。
うつ病にり患している人の中には、自覚がないために病院にも行っていないこともありますので、病院に行っていないようであれば注意的に促すべきです。
また、うつ病にり患しているのか否か、休業の要否、その休業を要する期間にかかる医師の診断結果を確認することは、今後の対応検討にあたっても重要です。
そのため、従業員には必ず医師の診断書を提出するように伝えるべきです。
休職命令を出して療養に専念してもらう
従業員がうつ病にり患していることが判明したときは、休職制度などを利用させて療養に専念させる必要があります。
うつ病にり患している従業員に就労を強制すると、さらに症状が悪化してしまうことがあります。
その結果、会社が適切な配慮を行わなかったものとして、安全配慮義務違反による責任を問われるおそれがあります。
また、従業員が休職を拒むような場合でも、療養を要する旨の診断書が出ている場合には、就業規則上の根拠があれば、休職命令を出して療養に入らせることも検討すべきです。
うつ病の従業員を休職させる場合の対応
欠勤している従業員がうつ病で、就労に耐えられない状況にあると判明したときは、会社として、当該従業員を休業させることを検討することになります。
休職を命じるには就業規則の規定が必要
就業規則や雇用契約書に休職制度が定められており、会社が従業員に休職を命じることが出来る旨の記載があれば、要件を充足する限り、従業員の同意がなくとも休職させることができます。
他方で、就業規則などに根拠がない場合は、一方的な命令によって休職させることはできません。
この場合は、問題の生じた従業員との間で話し合いを行い、休職の必要性に理解をしてもらって、その上で休職に入ることに同意を得てから行うことになります。
また、うつ病になった人の中には、自分の状況がきちんと理解できておらず、明らかに療養を要するような状況でも働き続けてしまう人がいます。
このような場合でも、会社としてきちんと療養をさせるといった対応をせず、本人の希望に任せて放置したりすると、病状が悪化したときに責任を問われることがあります。
そのため、休職制度は、きちんと整備しておくべきです。
休職制度について従業員に説明する
休職制度は、法律上の定めがあるものではなく、あくまで会社が任意に設定するものです。
そのため、多くの場合、会社によって制度内容が異なってきます。
この点、従業員が会社の定める休職制度についてよく知らないこともあり、よく分からない不安から休職を拒むことがあります。病気になってしまった従業員に、安心して療養に専念させるためにも、制度内容については、しっかりと説明するようにしましょう。
従業員の連絡先を確認しておく
休職に入ったあと、従業員と連絡が取れなくなるとその後の対応も困難となります。
特に療養に専念していると、会社からの連絡まで気が回らない人もいます。
これに備え、従業員本人の連絡先だけではなく、同居の家族や親族と言った緊急連絡先についても確認しておいた方が良いです。
休職中の給与・社会保険料などの取り扱い
休職期間中の給料については、会社が自由に設定できます。休職中は無給とすることも可能です。
もっとも、休職中は無給とした場合、従業員の生活が困難となり、療養に専念することに支障が出るおそれもあります。
このとき、傷病手当金の支給要件を満たす可能性がありますので、休職期間中の生活費に不安を感じている従業員に対しては会社から案内してあげた方が、スムーズに休職に入ってもらいやすいです。
一方で、従業員が休職に入ったとしても、社会保険料の納付は必要です。
休職期間が無給となっている場合など、控除できるだけの給料がない場合には、この社会保険料については、従業員に対して直接請求する必要があります。
そのため、休職制度には、この社会保険料の取り扱いも含めて定めておいた方がよいです。
もし、休職制度はあるものの社会保険料について定めがない場合は、制度の見直しを行っていただいたほうがいいでしょう。
うつ病の従業員が復職した場合の対応
うつ病の従業員が回復し、復職できる状態となっても、以下のような注意すべき点があります。
復職可否の判断基準について
復職は、休職事由となったうつ病が、勤務可能な程度にきちんと回復しているかどうかで判断をします。本人との面談時の受け答えや様子も重要な要素ではあります。
しかしそれだけで判断するのではなく、医師による復職可否にかかる診断書を取り付け、その内容を尊重して判断していくことになります。
もっとも、主治医は、従業員の意向に寄り添って診断をしていることもあるので、判断に偏りがないよう、指定医の診断を命じて、その診断内容も加味して判断を下す方がよいでしょう。
配置転換や就業時間短縮などの配慮
原則的には、休職前の職場への復帰が前提であり、問題なく就業できるのであれば元の職場に戻す必要があります。
しかし、元の職場での業務内容によっては、うつ病から復帰した直後の従業員には負担が大きすぎることもあります。そのような場合にまで元の職場に戻すことは、再発のおそれが高まってしまいます。
なお、医師による復職判断には、就労時間や就業内容など条件付きで認められることもあります。
この医師の指定する条件を満たして復職させるためには、休業前とは別業務につけなければならないこともあります。
上記のような場合、会社は、もとの職場だけではなく、就業時間の短縮や負担の少ない部署への異動も検討して、復職によるメンタル不調が生じないように配慮をする必要があります。
休職期間が満了しても復職が難しい場合はどうする?
復職できないことを理由に解雇できるのか?
ときには、従業員のうつ病が回復せず、休職事由が消滅しないときもあります。
就業規則に、休職期間の定めがあり、期間満了時に休職事由が解消されていない場合は退職又は解雇扱いとする旨の規定があれば、その規定に基づく対応を検討することになります。
しかし、この期間満了時に復職が可能であったか否かが問題となることがあります。
安易に復職不可として退職や解雇してしまうと、従業員から不当解雇として争われることがあるため、慎重な判断が必要です。
精神疾患による休職後の退職が無効とされた裁判例
事件の概要
精神疾患による休職後、休職期間満了により退職と扱われた事案で、復職可能であったか否かが争われた判例として、【大阪地裁平成20年1月25日判決】をご紹介します。
精神疾患を理由に病気休職に入った原告が、約1年後に復職の意思を示したものの、被告会社がこれを拒否し、休職開始から2年後に休職期間満了として退職としました。
この退職として扱ったことが理由のない就労拒絶であり違法であるとして、原告が、被告に対し、従業員としての地位確認、退職日以降の毎月の賃金と年2回の賞与の支払い、慰謝料等の支払いを求めた事案です。
裁判所の判断
本件事案は、従業員から復職可能なほどに回復しているとの診断書が提出されていたものの、被告からは、原告がそれ以前に独断で復職し、わずか4日で再び欠勤することになった前例があったため、会社側として復職可能との申告を信用できず、被告会社から医師との面談や原告本人との面談を申し入れても拒否されたために復職可否を判断できなかったという反論がされていました。
これに対し、裁判所は、2名の医師が、医学的理由とともに通常の労務に服することに支障がないと示した診断書を作成しており、復職可能との判断は、原告独断のものではないと認定しています。
その上で、調停中であったために医師や原告本人との面談が難しい状況であったならば、被告の嘱託医による診断を求める等の手段を講じることも可能であったとし、そのような交渉をすることなく被告会社が原告の復職を認めないとして退職扱いとしたことは、就業規則の適用を誤ったものとして無効であると判断しました。
ポイント・解説
復職の可否にかかる会社の判断において、会社には医師の診断を尊重することが求められています。
仮に、当該従業員に、復職してすぐに休業再開した事実があったとしても、復職を可能とする診断書が出ている以上は、会社の指定する医師の診察を求めるといった確認措置を取るべきであり、医学的にみて復職可能性がないと言えるかどうかをきちんと確認しないままに退職扱いとすることは無効と扱われる可能性が高いです。
つまり、従業員から復職の意思が示されたとき、会社として、復職の可能性に疑いをもった場合には、指定医の診察を受けさせたり、主治医に問い合わせしたりするなどして、医学的な見解を確認するように努めることが重要です。
従業員のメンタルヘルスケアのために企業ができること
上司や産業医に相談できる体制づくり
従業員のメンタル不調による欠勤は、うまく対処しなければ大きな問題となり得ます。
このとき、会社内に、従業員のメンタル不調のような異変を早い段階で察知できる仕組みを作っておくことも重要です。
メンタルヘルスに関する研修の実施
従業員の中には、メンタルヘルスに関する正しい知識を持っていないために、症状が悪化するまで自らのメンタル不調に自覚がないなど、発覚した頃には、事態が深刻となっていることもあります。
そのため、メンタルヘルスに関する研修を行い、従業員個人でメンタル不調を予防・回避するように促していくことも有効な対策になります。
例えば、全社員向けにメンタル不調時に見られる特徴や相談先を教える内容とし、管理職向けには部下のメンタル不調時の対応という内容とするなど、具体的場面を想定して研修内容を検討するとよいでしょう。
ストレスチェックの実施
労働安全衛生法の改正により、平成27年12月1日から、50人以上の事業場では、年に1回、従業員のストレスチェックが義務となっています。
これまで、50人未満の事業場は努力義務とされてきましたが、令和7年5月14日に公布された改正により、義務化されることとなりました。この義務は交付から3年以内に施行される予定です。
このストレスチェックでは、「仕事のストレスの要因」、「心身のストレス反応」、「周囲のサポート」の3領域を含むことが必要であり、検査の結果、一定の要件(高ストレスと判定とされた者など)に該当する従業員からの申し出があれば、会社は、医師による面接指導を実施することが義務となっています。
また、面接指導の結果に基づいて、医師の意見を聞いて、必要に応じ就業上の措置を取ることも必要です。
従業員がうつ病になった際の対応でお困りなら、人事労務に強い弁護士にご相談下さい。
無断欠勤をし始めた従業員がいたとき、この原因がメンタル不調にあると疑われる場合、直ちに解雇してしまうのは不当解雇と判断されるおそれがあります。
会社としては、休職の原因を確認するため、病院での診察などを促し、うつ病と判明した場合には休職制度の利用などを促して、まずは療養に専念させる必要があります。
休職期間が満了しても、復帰できるほどにうつ病が回復せず、今後も回復の見込みがないようであれば最終的に解雇を検討することます。
しかし、復職の可能性について、会社には可能な限りの配慮を行ってもなお、復職の見込みがないような場合でなければ不当な解雇と判断されることがあるため、やはり慎重な対応が求められます。
うつ病で欠勤したり、休職に入ったりした従業員がいる場合、その対応を間違えてしまうと、会社の安全配慮義務違反といった賠償義務に発展するおそれもあります。
このようなリスクを避けるためには、専門家のアドバイスやサポートを受けつつ、丁寧に対応していくことが望ましいです。
うつ病にり患した従業員の対応にお困りのことがありましたら、是非弁護士にご相談ください。
全員がハイパフォーマンスで仕事ができれば、それに越したことはありません。しかし、得手不得手やモチベーションの問題などで、どうしても十分なパフォーマンスを発揮できない社員もいるでしょう。それが許容できる範囲であれば問題ありませんが、会社が求める水準に大きく届かない場合もあるでしょう。
このページでは、会社が求める水準に大きく届かないローパフォーマー社員に関して、会社側の対応や注意点などについて、ご説明をいたします。
ローパフォーマー社員の特徴
仕事に主体性がない
どのような分野でもそうでしょうが、主体性がなければ能力を発揮することはできません。また、主体性がないと、受け身で、言われたことだけを最低限こなすという仕事の仕方になりますから、能力を上げていくこともできないでしょう。
さらに、受け身の仕事になりますので、上司が事細かく指示を出さないといけなくなります。主体性というのは、高いパフォーマンスを発揮するために必要な要素です。主体性の欠如は、ローパフォーマー社員の典型的な特徴の一つです。
同じミスを繰り返してしまう
人間ですので、ミスをすること自体は仕方がありません。しかし、不注意で起きるミスが繰り返し起きている場合には話が違います。何度も、注意や改善方法の提示を受けても、同じミスを繰り返している場合には、ローパフォーマー社員に当たるといえます。
同じミスを繰り返す理由は、さまざまでしょうが、改善するつもりがない、改善方法が分かっていないというものが考えられます。
勤務態度に問題がある
遅刻や無断欠勤を繰り返す場合や、勤務時間中に頻繁に離席して長時間戻ってこないという場合には、ローパフォーマー社員である場合が多いでしょう。
人によっては、短時間でも高い能力を発揮するかもしれませんが、多くの場合、遅刻や無断欠勤、勤務時間中の中抜けが多いと、労働時間が減りますので、必然的にパフォーマンスが落ちていきます。このような勤務態度不良もローパフォーマー社員の特徴です。
コミュニケーション能力が著しく低い
多くの仕事は、他者とのコミュニケーションを避けて通れません。
例えば、専門性が高く、一見して他者とのコミュニケーションが必要ないと思われるようなことであっても、顧客の要望を無視して進められる仕事といったものはほとんどないですから、コミュニケーション能力は必要不可欠なものです。
しかし、コミュニケーション能力が著しく低いと、他の社員と連携して仕事ができません。また、分からない業務があっても、他の社員に聞くことができませんので、業務が停滞しがちになります。他にも顧客の要望が汲み取れず、適切な対応が取れないことも考えられます。
この場合、適切に業務を進められませんので、コミュニケーション能力が著しく低い場合も、ローパフォーマー社員に当たります。
なぜローパフォーマー社員が生まれるのか?
仕事に対する成長意欲がない
自身の能力を上げることに興味がなく、受け身で、与えられた仕事をただこなすことだけを考えていると、経験年数に応じた能力が身に付いていきません。また、成長意欲がないと時代や状況の変化にもついていけないでしょう。
そうすると、企業が求める水準に届かなくなっていき、結果として、ローパフォーマー社員になってしまいます。そのため、仕事に対する成長意欲が乏しいことは、ローパフォーマー社員が生まれる原因となります。
知識やスキルが不足している
仕事を行うにあたって、必要な知識やスキルが足りないと、当然、企業が求めるパフォーマンスを発揮することはできません。
この場合でも、対応速度を上げたり、他の社員にやり方を聞くなどして対応ができれば問題ありませんが、汎用的なスキルであるコミュニケーション能力にも問題があると、業務知識や業務スキルを補うこともできません。こうなると、会社が求める水準に届かず、ローパフォーマー社員となってしまいます。
採用段階でミスマッチが生じている
社員の希望や特性・能力と実際の職務内容が合致しない場合には、社員のモチベーションの低下を招きます。また、社員の特性・能力と職務内容にずれが生じていますので、その社員が持つ力を発揮することもできません。このような場合には、ローパフォーマー社員になる可能性があります。
会社側の指導に問題がある
会社側の指導に問題がある場合もあります。例えば、同じミスを繰り返す社員に対して、「今後は気を付けるように」と注意をしても改善は見込めません。
このような注意では、何が問題であったか、今後、同様のミスをなくすためには何が必要なのかなどが分からないためです。
このような注意・指導では、実質的な注意・指導になっていません。その結果、同じミスを繰り返すローパフォーマー社員が生まれるという場合もあります。
ローパフォーマー社員を放置するリスク
組織としての生産性が低下する
当然ですが、社員のパフォーマンスが低いわけですから、組織としての生産性は下がります。それだけでなく、何らの対応もしないと、周囲の社員の中には、「なぜ自分は頑張っているのか」、「あれで許されるなら自分もそうしよう」と考え始める人もいるでしょう。
ローパフォーマー社員に対し何らの対応もしないと、結果として、周囲の社員のパフォーマンスまで低下させ、組織全体の生産性がますます低下する恐れもあります。
他の従業員の負担が増える
一人の社員の生産性が低ければ、その分、他の社員がフォローをする必要があります。得意不得意がある結果、持ちつ持たれつの関係になっているのであれば問題ないでしょうが、ローパフォーマー社員の場合、常に周囲の社員がフォローをし続けることになります。
これでは、周囲の社員は、不満を溜め続けることになります。結果として、フォローできる社員は会社から離れていき、ローパフォーマー社員のみが残るということにもなりかねません。
ローパフォーマー社員への対応を怠ると、優秀な社員から辞めていくという事態を招きかねないのです。
ローパフォーマー社員に対してまずやるべき対応
本人に問題点を伝える
ローパフォーマー社員の対応として、まず、何が問題なのかを本人に伝えることが考えられます。ローパフォーマー社員は、自身の問題点に気づいていない場合もあります。
また、問題点に気づいていた場合であったとしても、問題点の共通認識がなければ、その後の改善につなげることも困難です。そのため、本人に問題点を具体的に伝えることが必要です。
本人が達成すべき目標を設定する
モチベーションを高めるにあたって達成すべき目標を設定することは有用です。自分の行く先も分からないのにパフォーマンスを上げろ、モチベーションを上げろと言われても困るだけでしょう。
優秀な社員であれば自身で目標を設定しているかもしれません。しかし、ローパフォーマー社員の場合、目標自体がない、または、会社の方向性と異なる目標を設定している場合が多いと思われます。そのため、本人の希望も尊重しながら、会社が求める方向性に即した目標を設定するのが良いでしょう。
評価・報酬制度を見直す
評価・報酬制度を見直すということも重要です。自身の行為がどのように評価されているのか、そのフィードバックがないと頑張る方向性を間違えてしまうこともあります。そうでなくても、フィードバックがないと、何のために頑張っているのか分からなくなってしまいます。
また、評価という形でフィードバックのみがあっても、それが結果(報酬)に繋がらないとモチベーションが湧かなくなるでしょう。評価・報酬制度を見直し、適正なフィードバックと結果につなげるということも重要な対策です。
定期的な面談の機会を設ける
面談を通じて、本人の希望や思いを確認し、会社としての期待や現状の評価を伝えていくということも重要です。これも一つのフィードバックになりますので、本人のモチベーションの向上につながります。
また、定期的な面談によって、設定した目標の達成状況を確認し、どうすれば目標を達成できるかを一緒に考え、行動を促すということも可能となります。パフォーマンス向上のために、定期的な面談の機会を設けるという対応も取るべきでしょう。
ローパフォーマーの社員を解雇できるのか?
パフォーマンスが低いということで解雇は許されるでしょうか。結論としては、解雇は容易ではないということになります。
新卒入社なのか、中途採用なのかによって判断が変わるところもありますが、過去の裁判例に照らすと、長期雇用を前提として、職務経験や知識を積ませて教育していくという考えから、ローパフォーマンスでも、まずは、教育や指導による改善を行うべきと考えられています。
何度、教育や指導をしても、改善する見込みがなく、かつ、雇用関係を維持することが難しいとなれば解雇も考えられますが、その前提として、十分な教育や指導が必要になるということです。
ローパフォーマー社員を解雇する際の注意点
指導が十分されているか
上述のとおり、日本では、長期雇用を前提として、職務経験や知識を積ませて教育していくという考えが取られており、ローパフォーマー社員の解雇が認められるためには、教育や指導で改善する見込みがないことが必要です。そのため、まずは、適切な指導・教育を十分に行うことが重要です。
指導・教育に当たっては、なぜ問題となるのか、問題の原因は何かを伝えることや、その問題を解決するための具体的な解決案の提示が重要となります。抽象的に注意をするだけでは意味がありません。具体的な解決策までセットで伝えるようにしましょう。
指導をしても改善されなかった証拠が残っているか
いくら適切に教育や指導をしていたとしても、その証拠がないと、解雇の有効性を立証することができず、不当な解雇と認定されてしまう可能性があります。
また、解雇の点を措いたとしても、過去の教育・指導内容が分からなければ、適切な教育・指導を続けていくことはできないでしょう。
起きた問題や、それに対してどのような教育・指導をしたか、その教育・指導に対して、本人がどのように取り組んでいるのかといった点を記録し、証拠として残しておくことが重要です。
可能であれば配置転換を検討する
ローパフォーマンスの原因が社員の能力・特性と職務内容のミスマッチにある場合や人間関係の問題でパフォーマンスが発揮できない場合などでは、配置転換をして職務内容を変えるということも一つの方法です。解雇は最終手段ですので、解雇が認められるためには、先に手段を尽くしたかどうかも重要な事情となります。
そのため、会社として、その社員の特性に合わせて配置転換を行い、提供できる仕事がないかを模索するということが大切です。状況にもよりますが、配置転換によって、その社員の能力を活かせないかも考えるべきでしょう。
解雇の前に退職勧奨を行う
解雇の前に退職勧奨を行うということも考えられます。ミスマッチにより、ローパフォーマー社員となっている場合や、本人としても周囲に迷惑をかけていると認識しているなどの場合、退職勧奨に応じる可能性があります。
ただし、退職勧奨に対し、本人が拒否をした場合には、それ以上の退職勧奨を続けてはいけません。意に反する退職勧奨を続けた場合、それが違法行為となる可能性があるためです。
ローパフォーマー社員の中には、十分な業務を行うつもりがない一方で、そのまま会社に在籍することを希望する者もいます。応じない場合には、速やかに退職勧奨を止めてください。
ローパフォーマー社員の解雇に関する裁判例
事件の概要(東京地判平成12年7月28日(平成10年(ワ)第19747号))
この裁判例は、「労働能率が甚だしく低く、会社の事務能率上支障があると認められたとき」に該当するという理由で普通解雇された従業員(原告)が、その解雇が無効であるとして、会社(被告)に対し、従業員たる地位の確認と賃金の支払いを求めた事案です。
この裁判例では、解雇事由に該当するか、解雇事由に該当するとしても、不当な解雇(解雇権の濫用)になっていないかといった事項が争点となりました。
裁判所の判断
裁判所は、原告の欠勤状況や遅刻、無断離席、勤務状況、勤務態度を詳細に認定しました。
その上で、長期欠勤を含め傷病欠勤が非常に多かったこと(その総日数は解雇までの約5年5か月のうちの約2年4か月に及んでいました。)、原告が長期欠勤明けの出勤にも消極的な姿勢を示したこと、出勤しても遅刻・離席が多かったこと、出勤時の勤務実績も劣悪で、担当業務を指示どおりに遂行することができなかったこと、その結果、他の従業員が原告の代わりに業務をしたり、後始末をしたりしなければならず、被告の業務に支障を与えたことを理由として解雇事由に該当すると判断しました。
また、解雇の有効性については、上司らが指導を続けてきたが、原告の勤務実績、勤務態度が変わらなかったこと、原告には出勤して労務を提供する意欲が見られなかったことを示し、「被告が原告を解雇せざるを得ないと判断したことには客観的に合理的な理由がある」と認定し、有効な解雇と判断しました。
ポイント・解説
この裁判例では、上司は、欠勤後の就業再開に当たって、原告と面談をして、具体的な業務を指示していました。それだけでなく、上司は、原告に対し、「(1)勤務時間中は業務命令に従い、指示事項を確実に実行すること、(2)プライベートなことは職場に持ち込まないこと、(3)私語は慎むこと、(4)遅刻・早退は遅刻・早退簿に必ず記入すること、(5)離席に際しては了解を得ること」を指導していました。
これを見ると、上司は、単に、原告に注意を促したわけではなく、具体的に、何をしなければならないか、何をしてはいけないかを指導していたといえます。特に(1)、(4)、(5)の事項は、「出来た」、「出来ていない」が明確に分かりますので、指導に対する改善の有無・程度を容易に判断できる内容です。
このような指導を受けても原告の勤務実績、勤務態度が変わらなかったという点もあり、解雇が有効と判断されたと考えられます。この裁判例を見ても、ローパフォーマー社員の解雇に当たっては、先に、十分な指導と注意が必要といえるでしょう。
ローパフォーマーの対応でお困りなら弁護士法人ALGにご相談下さい。
このページでは、ローパフォーマー社員についての特徴や対応方法、解雇に当たっての注意点について説明をいたしました。
上記のとおり、日本では長期雇用を前提としており、ローパフォーマー社員というだけでは、なかなか解雇が認められません。必然的に、長期にわたる教育や指導が重要となり、継続的に、ローパフォーマー社員に対応することが求められます。
しかし、現在行っている教育や指導が適切か、どのような記録をつけるべきかなどを判断することは容易ではないと思います。
ローパフォーマー社員の対応にお困りのことがありましたら、ぜひご相談ください。
社員の問題行動は、他の従業員の職場環境を悪化させ、モチベーションの低下や退職を誘発する可能性がある等会社の経営に深刻な影響を与える可能性があります。
社員の問題行動の内容によっては、会社が放置しておくと、会社に対して法的責任を問われることもありますので、会社が放っておいてよいことはありません。
本記事では、社員の問題行動の典型や、それに対して会社がどのように対応するべきなのか、説明します。
問題社員(モンスター社員)とは?6つの特徴
「問題社員」又は「モンスター社員」は、法律用語ではなく、明確な定義はありません。ただ、文字通り、“会社にとって何らかの問題のある社員”といった認識はある人が多いのではないでしょうか。
明確な定義がない以上、一概に「このような行動をとる社員」=「問題社員」ということはできません。そこで、この項目では、どのような行為をしている社員が一般的に「問題社員」とされるかご説明します。
業務命令に従わない
まず一つ目は、会社の業務命令に従わない従業員です。
就業規則等には、社員は、会社の業務命令に従わなければならない旨を規定されていることが一般的です。
それにもかかわらず、会社又は上司の正当な業務命令に対して従わずない社員は、企業秩序を乱し、他の社員に対しても業務命令に従わなくてもよいと誤認させる可能性があります。
会社が組織として運営していくためには、業務命令違反には厳正に対処することが必要となります。
ハラスメントを行う
二つ目は、他の従業員に対するハラスメントを行う従業員です。
ハラスメントと言っても、セクハラ、パワハラ、マタハラと多岐にわたりますが、いずれも他の社員に対する攻撃であり、被害者となる従業員の心身を害するだけではなく、社内の雰囲気も悪くなるような行為です。
ハラスメント行為は、社会問題ともなっており、ハラスメント対策は、法律により会社に義務化され、厚生労働省も会社にハラスメント対策を呼び掛けています。
社員からハラスメント被害の訴えがあったにもかかわらず、何も対応しない場合には、被害に遭った社員から損害賠償請求をされる可能性があるため、注意が必要となります。
仕事を怠ける
三つ目は、仕事を怠ける社員です。
怠け方は、様々ですが、無断欠勤・遅刻・早退、長時間の離席、勤務中の私的な用事を行うなどが考えられます。
このような社員は、他の勤勉な社員の不満を募らせることになり、職場の雰囲気が悪くなるため対応が必要となります。
素行・私生活に問題がある
四つ目は、素行・私生活に問題がある社員です。
会社の外、勤務時間外の行動であったとしても、会社に害が及ぶ可能性があります。
SNSの個人アカウントで会社の誹謗中傷をする・会社の機密情報を流すといった行為、飲酒運転・痴漢・盗撮などをはじめとする犯罪行為は、会社の評判を貶め、取引先からの信頼の低下をもたらし、会社運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
そのため、このようは社員に対しても適切な対応が必要となります。
協調性がない
五つ目は、協調性のない社員です。
業務時間後の飲み会に参加しない程度であれば、そこまで問題になるわけではありません。
しかし、会社内での業務は、他の社員と業務を分担して進めていくことが多いため、報告・連絡・相談ができず、他の社員との連携が取れない社員は、会社の業務の停滞を招き、重大なミスの原因となり、結果として会社の損害につながる可能性があります。
そのため、このような社員に対しては、早期に対応をすることが必要になります。
能力不足
六つ目は、能力不足な社員です。
入社したばかりの社員が、仕事をすることができないことはやむを得ません。
しかし、入社後どれだけ指導を受けても業務内容を覚えられず、技術を習得することができず、成果を出せない社員に対しては「能力不足」として対応する必要があります。
問題社員を放置しておくことのリスク
上記のとおり、問題社員の行為は、企業秩序の乱れ、他の社員のモチベーションの低下、不満の蓄積、会社の業務停滞、会社の評価の低下、取引先からの信頼の低下等会社の経営に深刻な時代を招く恐れがあります。
ハラスメントの被害申告に対する対応の如何によれば、社員から損害賠償請求をされる可能性すらあります。
問題社員への適切な対応方法
問題社員に対しては、上記のとおり会社の経営に悪影響を及ぼす可能性があるため、何らかの対応をする必要があります。
しかし、対応を誤ると、問題が解決するどころか、かえって問題行動が悪化する可能性があります。
①まずは業務指導を行う
問題行動をしているとしても、指導をすれば、改善をする社員もいます。
そのため、まずは、問題行動に対して、当該社員に対して問題行動を指摘して、具体的にどのように改善するべきか指導をすることで、当該社員に対して自らの行動に問題があること、改善の必要があることの自覚を促します。
なお、その後の会社の対応の正当性を主張するためにも、いつ、どのような指導をしたのか、その指導により、当該社員の問題行動が改善されたのか否かを、証拠として記録を残しておくことが必要です。
②問題行動に対して注意処分する
上記のとおり、指導をしたとしても社員の問題行動の改善が見られない場合、注意処分をすることが考えらえます。
注意処分は、口頭注意だけではなく、文書で注意・警告をし、始末書や反省文などの提出を求めることがあります。文書での注意は、後述の懲戒処分の正当性を証明するための証拠となるため、写しなどを保管しおくことが必要となります。
③程度によっては懲戒処分を行う
会社から、指導をしても、注意処分をしても改善が見られない場合、懲戒処分を検討することになります。懲戒処分の内容は、会社に就業規則に定められている者によりますが、一般的には、戒告、減給、出勤停止、諭旨解雇、懲戒解雇などがあります。
懲戒処分の程度は、問題行動の内容によりますが、懲戒処分をする場合には、当該社員に対して弁明の機会を与え、公平な手続きを経る必要があります。
問題社員を辞めさせることはできるのか?
問題行動をする社員に対して、指導、注意処分、懲戒処分をしても、当該社員に反省や改善が見られない場合には、会社としてもそれ以上、問題行動をする社員を雇用し続けることができないと判断することはやむを得ないといえます。
では、会社が問題行動をする社員との雇用関係を解消するためには、どのようにしたらよいのか、以下ご説明させていただきます。
まずは自主退職を促す「退職勧奨」を行う
会社として、問題行動をする社員を雇用し続けることが難しいと判断した場合に、いきなり「解雇」をするのではなく、「退職勧奨」をすることが考えられます。
「退職勧奨」とは、会社が社員に対して退職することを促すことです。
この退職勧奨はあくまで退職を促すものにすぎず、強制であってはなりません。
社員の自由意志による退職が必要となります。
この退職勧奨時の会社側の態度が威圧的であったりすれば、違法な退職勧奨とされて、事後的に当該社員の退職が無効と判断される可能性があります。
そのため、退職勧奨をする際には、録音・録画などで記録をして、事後的に会社の退職勧奨が強制していないこと、社員が自分の自由な意思で退職を決定したことを証明できるようにしておく等慎重に行うことが必要です。
退職勧奨に応じないときは「解雇」を検討する
会社が退職勧奨をしたとしても、問題行動をする社員が断固として自主的に退職することを拒否した場合には、いよいよ会社は「解雇」することを検討せざるを得ません。
しかし、解雇をするには、客観的に合理的な理由と社会通念上相当であることが必要とされます(労働契約法16条)。
また、解雇の事由については、就業規則に定めている必要があり、また、解雇するには、就業規則に定めた手続(特に懲戒解雇の場合には、当該社員に弁明の機会を与えること)を経なければなりません。
また、解雇は、社員にとっては、日々の生活費にかかわる問題になるため、社員が解雇の有効性を争う可能性も高くなります。
そのため、訴訟により争われたとしても、解雇が有効であることを主張立証することができるように、社員の問題行動をしていたこと、会社が問題行動に対して適切に指導・注意をしたこと、それでもなお当該社員の問題行動が改善しなかったこと等を証明することができる証拠を十分用意した上で、慎重に対応するべきです。
不当解雇と判断された場合の会社側のリスク
社員が解雇の有効性を争った結果、解雇が無効であると判断された場合、当該社員が復職することになる上、解雇をした後、支払っていなかった給与相当額を支払う義務が生じてしまいます。
また、当該社員の請求によっては精神損害に基づく慰謝料請求も認められる可能性もあります。
明らかに不当な解雇を繰り返す会社は、社員からの信頼も失う可能性もあり、このような実態が社外にも広がれば社員採用において、応募者が来ない等の人材確保に支障がでる可能性もあります。
そのため、こうしたリスクを避けるためには、専門家に相談しつつ事前に入念な準備をして、正当な手続きを踏むことが重要となります。
問題社員の解雇の有効性に関する裁判例
問題社員が解雇された場合、当該社員が解雇は無効であるとして裁判をしてくることがあります。
そのような裁判で、裁判所が解雇の有効性を判断するにあたっては、問題行動の内容・程度、会社が問題行動を改善するためにどのような行為をしたのか、解雇を回避するための努力はしていたのか等総合的に考慮して判断されます。
そのため、会社としては、問題社員が争ってきた場合に備えて、どのような指導・注意処分をしたのか、解雇より軽い懲戒処分をどのような経緯でどの程度しているのか等の証拠を備えておくことが肝要となります。
事件の概要
例えば、東京高裁平成28年11月24日判決(平成28年(ネ)第2098号、平成28年(ネ)第3139号)は、社員が他の社員に対して、怒鳴ったり、きつい言葉遣いや態度をとったり、叱責する等していたことに対して、そのような態度をとられた社員が強い不満やストレスを感じて退職したり精神的に追い詰められたりする等していたため、再三にわたり、言葉遣いや態度を改めるように注意したことを有効と判断した事案です。
裁判所の判断
訴えられた会社は、従業員が30名に満たない小規模な会社であり、当該社員の言葉遣いや態度等等により他の社員らとの軋轢が悪化し、他の社員が正常に勤務を継続することができなかったり退職したりする事態となり、会社の業務に重大な打撃を与えることになると判断したのもやむを得ず、また、小規模な会社においては、当該社員を他部門に配置換えをすることは事実上困難であるから、配置転換により職場環境の改善を図ることもできないため、解雇に代わる有効な手段はなく、また、会社から当該社員への再三の・注意にもかかわらず、当該社員は言葉遣いや態度の改善を改めなかったことから、解雇について客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当として解雇が有効でと判断しました。
ポイント・解説
本件で、①会社が再三にわたって当該社員に態度の改善を求めましたが、②当該社員が態度を改めることはなく、③当該社員の行動により正常に業務ができなくなったり、退職をする社員が出てきており、④会社の規模から配置転換等による解雇回避も難しいことから、解雇が有効と判断されたと考えられます。
このように問題社員であったとしても、解雇をするためには、解雇を回避するための努力として、当該社員の態度を改善させるための努力や、他の社員との軋轢を回避するための配置転換等を行っていることが必要と考えられます。
問題社員(モンスター社員)への対応で注意すべき点
問題社員は、注意をして改善をしなければ、解雇を検討するほかありません。
そして、上記のとおり、裁判で解雇が有効であると判断されるためには、証拠が必要となります。
そのため、社員の問題行動については、どのような問題行動をしているのか詳細に記録し、問題行動に対してどのような指導・注意処分を何回程度行ったのかといった記録を残し、その上で、就業規則に基づく処分をしていくことが必要となります。
これらの手続は、就業規則に則って適切に行われていることが必要となりますので、専門家と相談しながら慎重に進めていくことをお勧めします。
問題社員の対応でお悩みの際は弁護士法人ALGにご相談下さい。
上記のとおり問題社員への対応には、就業規則の整備を前提として、就業規則に則って、後の裁判による紛争にも備えつつ対応していくことが必要となります。
問題を解決するためのリスクを排除するためには、できる限り早期に弁護士に相談しておくことが有効と言えます。
弁護士法人ALGには、労働法に精通し、企業側の対応について適切なアドバイスを提供できる弁護士が揃っています。問題社員の対応にお困りの際には、ぜひご相談ください。
