浮気・不倫の慰謝料請求には時効に注意!時効を止める方法とは?

離婚問題

浮気・不倫の慰謝料請求には時効に注意!時効を止める方法とは?

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

浮気(不倫)されたことであなたが負った精神的苦痛について、慰謝料請求ができることがあります。これは、過去の浮気であっても同じであり、慰謝料を請求できる可能性があります。ただし、権利の行使には時効があるため注意が必要です。ここでは、消滅時効の成立について注意すべきポイントや時効をストップさせる方法などについて解説しています。

浮気(不倫)の慰謝料請求にも時効がある

浮気(不倫)をされた場合における慰謝料の根拠は、不法行為に基づく損害賠償となります(民法709条)。この不法行為に基づく請求権は、以下の2つのうち、いずれか早い時点で時効により消滅します。

⑴被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年が経過したとき(1号)
基本的には、配偶者の浮気(不倫)の事実を知った時が、損害発生の事実と加害者を知ったことになるため、この時から3年が経過すると権利を行使することができなくなります。

⑵不法行為の時(不倫・浮気の時)から20年が経過したとき(2号)
仮に、配偶者の浮気(不倫)を知らなかったとしても、浮気(不倫)が実際にあった日から20年間が経過したときは、時効により権利を行使することができなくなります。

浮気相手への慰謝料請求の時効は?

配偶者の浮気(不倫)があった場合、浮気(不倫)をした配偶者に対して、慰謝料請求をすることができます。また、浮気(不倫)は、配偶者とその浮気(不倫)相手の2人で行うものであるため、その浮気(不倫)相手に対しても、慰謝料請求ができるとされています。

浮気(不倫)相手に対する慰謝料請求権についても、上記のとおり、浮気(不倫)などの事実を知ってから3年を経過した時、または、浮気(不倫)の事実から20年が経過した時には、時効により権利行使が出来なくなります。

ところで、浮気(不倫)相手がいることは知っていても、その住所や名前を知らないということは、往々にしてあると思います。このような場合には、浮気(不倫)相手に対して慰謝料請求をすることは現実的には困難です。そのため、上記「加害者を知った時」については「加害者への賠償請求が事実上可能な程度に知ったとき」とされており(最判昭48・11・16民集27・10・1374)(要)、基本的には、相手方の名前及び住所を知った時から3年が経過した場合に時効が成立することとなります。

なお、不法行為の時(不倫・浮気の時)から20年が経過したときの時効については、上述した配偶者への請求と同様、知ることができたかに関わらず、浮気(不倫)が実際にあった日から20年間が経過したときに成立します。

慰謝料請求の時効はいつから起算する?

慰謝料請求については、浮気(不倫)行為自体に対する慰謝料請求(不貞行為に対する慰謝料)と、浮気(不倫)の結果、離婚したことに対する離婚慰謝料請求とがあります。
浮気(不倫)をされたこと自体に対する慰謝料の請求は、浮気(不倫)行為などを知った日から起算します。

一方で、浮気(不倫)を原因として離婚に至った場合における離婚慰謝料については、離婚をした日から起算します。そのため、配偶者の不貞行為を知ってから3年間が経過してしまっているときであっても、離婚してから3年以内であれば、離婚慰謝料を請求できる可能性があります。

なお、浮気(不倫)相手に対しては、その浮気(不倫)が離婚原因であったとしても、原則、離婚に対する慰謝料請求はできないとされています。そのため、浮気(不倫)相手に対しては浮気(不倫)行為に対する慰謝料のみが請求でき、浮気(不倫)相手を知ったとき、または、浮気(不倫)行為をしたときを起算日とします。

①不貞行為に対する慰謝料 不貞行為や浮気相手の存在・住所などを知った日から起算
②離婚に対する慰謝料 離婚した日から起算

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浮気の慰謝料請求の時効を止める5つの方法

上記のとおり、一定期間が経過した場合、時効によって慰謝料請求権が消滅してしまうことがあります。確かに、浮気(不倫)を知ってから3年間など、時効が成立するまでには一定の期間がありますが、浮気(不倫)の事実を知ってすぐに証拠を集めようと考えたり、慰謝料請求をすることができる人ばかりではありません。

このように浮気(不倫)の事実を知ってから時間が経ってしまった場合には、時効の更新や時効の完成猶予という方法を取ることが考えられます。

「時効の更新」というのは、時効の経過をリセットし、新たに時効をスタートさせるというものです。一方で、「時効の完成猶予」というのは、しばらくの間、時効の完成を止めておくというものとなります(あくまで、時効の完成をしばらく止めるだけですので、完成が猶予されている間に、時効を更新させるようにする必要があります。)。

以下において、時効の更新や時効の完成猶予がなされる事情について、ご説明します。

①裁判で請求する

慰謝料の支払いを求める訴訟を提起した場合、裁判を行っている間に時効の期間が到来したとしても、その裁判が終了してから6か月が経過するまでは、時効の完成が猶予されます(民法147条1項1号)。

また、裁判に勝訴し、慰謝料の支払いが命じられる判決が確定した場合には、確定判決の日に時効が更新され、その判決確定の日から10年が経過するまで時効が完成しません(民法169条1項)。

ただし、判決や和解ではなく、訴えを取り下げるなどして裁判が終了した場合には、時効は更新されませんので、注意が必要です。

②内容証明郵便を送付する

相手に慰謝料を支払うよう催告をした場合、その催告から6か月が経過するまでの間は、時効の完成が猶予されます(民法150条1項)。
催告による完成猶予中に、再度催告をしたとしても、改めて時効の完成が猶予されることはありません(同条2項)。そのため、催告によって時効完成を遅らせることは、一度きりの一時的なものといえます。そのため、例えば、訴訟提起を予定しているが、時効完成まで時間がないという場合などに催告が利用されることになります。

この催告については、催告の有無や催告の時期が明確になるよう、通常は、配達証明付き内容証明郵便で行われています。

③債務を承認させる

相手方が慰謝料を支払う義務があることを認めた場合、その時点で時効は更新されます(民法152条1項)。これを「債務の承認」といいます。例えば、慰謝料請求をしたら、慰謝料を支払う義務自体は認めて来た場合や、慰謝料の一部を支払ってきた場合などが、「債務の承認」に当たります。

債務の承認は、口頭のやり取りでも成立しますが、後日、相手方が債務を承認した事実を認めて来ない場合には、認めた認めてないの水掛け論となってしまいます。
そのため、相手方が慰謝料の支払い義務を負っており、それを支払う旨を明記した示談書などを作成し、相手方が債務を承認した事実を証拠化しておくことが重要です。

④協議を行う旨の合意をする

慰謝料の支払いに関して、相手方との間で、協議を行う旨の合意が書面でなされたときは、次のうち、いずれか早い時までは、時効の完成が猶予されます(民法151条1項)。

①協議を行う合意があった日から1年を経過した時(1号)

②当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る)を合意で定めたときは、その期間を経過した時(2号)

③当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その拒絶の通知の時から6か月を経過した時(3号)

上記によって時効の完成が猶予されている間では、協議が終了しない場合には、再度、協議の合意をして時効の完成を猶予する期間を延ばすことができます(2項)。

一方で、催告の完成猶予期間中に協議の合意をしても時効の完成猶予の効果は発生しないこととされています。また、協議の合意による完成猶予中に催告を行った場合も同様に時効の完成猶予の効果は発生しません(3項)。

⑤仮差押え・差押えを行う

慰謝料の支払いのための金銭を確保しておくために、相手方の財産を仮に差し押さえておくということがあります。これを仮差押えといいますが、この仮差押えを行うと、それが終了して6か月を経過するまでは、時効の完成が猶予されます(民法149条1号)。

また、裁判などで慰謝料の支払いが命じられたにもかかわらず、任意に支払をしない場合には、相手方の財産を差し押さえて、強制的に慰謝料を支払わせるということがあります。この差押えは、強制執行の手続きの一つとなりますが、強制執行が終了するまでの間は、時効の完成が猶予されています(民法148条1項1号)。そのため、差押えを行った場合にも時効の完成が猶予されます。
なお、取り下げや取り消しにより強制執行手続きが終了した場合には、その終了から6か月を経過するまで時効の完成が猶予されます。

仮差押え 金銭の支払を目的とする債権に関して、将来支払いができなくなる可能性がある場合に、強制執行をできるようにするために行われます(民事保全法20条)。
差押え 金銭債権を満足させるための手続きであり、相手方の財産が処分されることを制限し、支払いを確保するために行われます(民事執行法45条1項など)

民法改正による慰謝料請求権の時効への影響

令和2年4月1日施行の改正民法(以下、「新民法」)で、時効に関する規定が大きく改正されました。大きく分けて次の二つの変更がありました。

①時効中断の再構成
旧民法では、それまでの期間の効力をなくして期間をリセットすることを「中断」、期間進行を一時ストップさせることを「停止」として規定されていました。新民法では、効果をわかりやすくするため、権利の存在について確証が得られたといえる場合には「更新」、権利行使の意思を明らかにしたといえる場合には「完成猶予」という形に新たに振り分けなおされました。

②除斥期間の廃止
旧民法では、不法行為のときから20年が経過したときは、除斥期間が経過したものとして権利行使ができなくなると解されていました。消滅時効とは異なり、除斥期間は、時効を使うという意思表示がなくとも、期間が満了すればそれだけで権利が消滅します。
除斥期間から消滅時効になったことによって、相手方が時効完成に気付かずに債務を承認した場合など、時効完成後にも慰謝料の支払いを請求できる余地があります。

時効が過ぎた後では慰謝料を請求できない?

消滅時効によって権利が確定的に消滅するには、債務者による時効完成の援用(時効を使うとの意思表示)が必要になります(民法145条)。そのため、消滅時効完成後であっても、相手方が任意に支払いに応じるのであれば、支払いを受けることができます。しかしながら、自分の債務を承認してくれる人は多くありません。相手を脅迫したり、あまりに高額な請求をしたりするとトラブルに発展する可能性があるため、請求の仕方には注意が必要です。

また、不貞行為を原因として離婚に至った場合、配偶者に対する請求であれば、離婚から3年以内であれば、浮気(不倫)行為自体の慰謝料の時効が経過していたとしても、離婚慰謝料の請求が可能です。

時効で浮気の慰謝料を取り逃がさないためのポイント

時効完成を止めるいくつかの手段をお伝えしてきましたが、浮気(不倫)の慰謝料請求は、早めに行うことをお勧めいたします。そのためには、慰謝料請求の時効が完成する前に証拠を効率よく集めておく必要があります。どのような証拠を集めるのか、どのような手段で収集するかといった点が分からないという方もいらっしゃると思います。そのため、プロの視点からのアドバイスを受けながら証拠収集を行い、迅速に裁判手続きに移行するためにも、弁護士に依頼することには一定のメリットがあります。

浮気の慰謝料の時効に関するQ&A

5年前の浮気を最近知ったのですが、浮気相手に慰謝料を請求することは可能ですか?

慰謝料請求権の消滅時効は、損害の発生とその加害者を知るまでは進行しません。5年前の浮気であっても、その浮気相手に慰謝料請求をすることができます。ただし、浮気相手に対する慰謝料請求を裁判所に認容してもらうには、浮気相手が、浮気をしていた当時に、あなたの配偶者が婚姻していることを知っていた、あるいは、知らなかったことに過失があったことの立証が必要です。

10年前の浮気が発覚したのですが、既に離婚しています。元夫に慰謝料を請求することはできますか?

10年前の浮気ということですので、20年経過したときに完成する時効は成立していません。また、浮気の事実を知らなければ、3年で成立する時効はスタートしていませんので、浮気の事実を知ったのが3年以内ということであれば、元夫に慰謝料請求をすることができる可能性があります。
しかしながら、浮気の事実を知らずに離婚しているため、浮気と離婚との間に因果関係があるのかが問題になる可能性があり、認められる慰謝料が低額になる可能性があります。

また、すでに離婚に伴う慰謝料を受領していた場合、離婚慰謝料の賠償が済んでいると判断される可能性があります。その場合は、10年前の浮気の事実が認定されても、補填すべき損害がなく、慰謝料請求は認められないという結論となります。

時効を止めるために裁判を起こしたいのですが、相手の居場所が分かりません。何か対処法はありますか?

相手方の居場所がわからない場合、まずは住民票上の住所を調べることが一般的です。しかしながら、住民票上の住所に必ずしも相手方が居住しているとは限りません。そのような居場所不明の場合には、公示送達という方法によって、訴訟手続きを行うことが考えられます。公示送達とは、相手方当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合において、相手に訴状を送る代わりに公示する方法で裁判を行うというものです(民事訴訟法110条1項1号)。

ただし、相手方当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れないことの証拠提出を求められる場合があります。そのため、公示送達を行うとしても、十分な調査が必要です。
相手方の居場所が不明な場合、弁護士の調査によって判明することもあります。公示送達の申立ても代理人として行うことが可能ですので、一度ご相談されることをお勧めします。

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浮気の慰謝料請求は早い段階で行う必要があります。まずは弁護士にご相談下さい。

消滅時効を止める方法は様々なものがあり、状況によって取ることができる手段やその時点でベストな手段は異なります。消滅時効と止めるということだけを考えるのであれば、裁判を行うことが確実ですが、手続きには相手が住所を特定する必要があるなど、おひとりで対応することが難しい場面も多々あります。裁判上の手続きを進めることについては、弁護士に依頼することでカバーできます。時間が経てば経つほどに取りうる手段が限定され、時効が完成して請求ができなくなるリスクは高まります。浮気(不倫)の慰謝料について、お困りのことがありましたら、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。