モラハラが原因の離婚で慰謝料請求する方法

離婚問題

モラハラが原因の離婚で慰謝料請求する方法

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

配偶者から、モラルハラスメント(以下「モラハラ」と表記します。)を受けて、最終的に、離婚に至るということは少なくありません。そういった場合に、慰謝料請求は出来るのでしょうか。また、慰謝料請求が出来るとして、どれくらいの金額になるのでしょうか。

ここでは、モラハラを理由に離婚した場合における慰謝料について、ご説明をします。

モラハラを理由に離婚したら慰謝料を請求できる?

モラハラとは、精神的暴力のことを言いますが、一方配偶者から精神的暴力といえるほどの言動を受け、その結果として離婚に至ったということであれば、慰謝料請求をすることが出来ると考えられます。

ただし、慰謝料請求が認められるためには、モラハラの事実を立証する必要があります。また、そのモラハラの事実が婚姻関係を破壊しうるものであること、そのモラハラによって婚姻関係が破綻したことといったことが認められる必要があります。

慰謝料請求が認められ得るモラハラ行為とは

殴る、蹴るといった肉体的暴力であれば、その傷つく過程を目で見ることもでき、比較的容易に暴力の有無を判断できます。他方で、人の精神というのは、目に見えず、どういった言動で傷つくのかがはっきりしません。

それこそ、人によっては、傷つくような言動でも、他の人であれば全くの平気ということもあり得ます。そのため、最終的には、個々の状況によって、慰謝料請求が認められ得るモラハラか否かを判断するほかありません。

もっとも、人格否定に当たるような発言、長時間の非難、長期にわたる無視といった言動であれば、慰謝料請求が認められるモラハラに当たると考えられます。

また、過去の裁判例(東京家裁立川支部令和3年9月17日)では、「頭を下げるだけで足りないとして土下座をさせられたりしたほか、家から出ていくようにと言われた」ことに関して、「言葉の暴力」と評価されています。

モラハラの慰謝料請求が難しいとされる理由

モラハラを理由とした慰謝料請求は、難しいと考えられます。その理由はいくつかありますが、一つは、証拠の集めにくさが挙げられます。例えば、酷い暴言があったとしても、それが形に残ることはなく、証拠として収集しようとすると、録音等をするほかありません。

また、離婚に至るまでには、通常、さまざまなことがありますので、モラハラによって婚姻関係が破綻したと立証することも容易ではありません。

そのため、現実問題として、モラハラを理由とした慰謝料請求は非常に難しいといえます。

モラハラの証拠の集め方

一口にモラハラといっても、その態様は様々です。そのため、モラハラの態様によって、考えられる証拠も異なります。

例えば、人格否定に及ぶ発言、長時間の非難といったモラハラであれば、その発言・非難を録音することで、重要な証拠を得ることが出来ます。

また、モラハラを受けた際の状況、モラハラの内容等を記録した日記を付けていれば、その日記も一つの証拠になると考えられます。

メール、LINEなどによってモラハラを受けている場合には、そのメール、LINEのトーク履歴が重要な証拠になります(なお、一連のやり取りが重要になりますので、モラハラに当たると考えられるものだけでなく、その前後のやり取りも残しておくべきです。)。

そのほか、モラハラを誰かに相談している場合、その相談記録が一つの証拠になる可能性もあります。

モラハラで離婚した場合の慰謝料相場

モラハラの態様、モラハラの回数・期間、モラハラが夫婦関係に与えた影響の程度、夫婦関係の状況(婚姻期間、子の有無など)などにより異なりますが、通常、モラハラにより離婚した場合の慰謝料としては、数十万円くらいから300万円程度と言われています。

モラハラ慰謝料が高額になる要素とは?

特にない、またはごくレアケースの場合は項目の削除をお願いします。例えば、長期にわたりモラハラが繰り返されている場合や、そのモラハラの内容が苛烈な場合、モラハラによって重大な精神病が発症した場合などの事情があるときは、慰謝料が高額になる可能性があります。

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モラハラ離婚で慰謝料を請求する流れ

①まずは別居を検討する

離婚・慰謝料請求を考えるにあたって、まず、考えるべきは、別居でしょう。証拠集めのために、同居を続けるという選択肢を否定するつもりはありませんが、現実問題、簡単に証拠が集められるものではありません。また、証拠を集めたとしても離婚原因としては不足があると判断される可能性もあります。

また、同居しつつ、離婚や慰謝料請求をすると、更なるモラハラを受ける可能性もありますので、同居をしながら、慰謝料請求をすることも困難でしょう。

そのため、離婚・慰謝料請求をする場合、まずは、配偶者と離れることを検討すべきといえます。

②話し合いで請求する

別居して、自身の精神的安全を確保した後には、離婚や慰謝料請求を考える必要があります。多くの場合、離婚は、話合いから始まりますので、まずは、話合いで、離婚と慰謝料を求めていくことになるでしょう。

話合いの方法としては、直接会って話をするという方法もありますが、モラハラをしていた相手と直接会って話をすることは相当大変でしょう。話合いの方法は、文書でも構いませんので、メール、LINE、手紙などを活用しつつ、話し合いを行うのが良いでしょう。

③内容証明郵便で請求する

慰謝料の請求の方法として、内容証明郵便を活用するという方法も考えられます。内容証明郵便は、郵便局に、どのような内容の書面を送ったのかの記録を残す形で郵便を送る方法ですが、これによって、慰謝料請求をしたという事実を、証拠として、明確に残すことが出来ます。

また、内容証明郵便で慰謝料請求をすることで、本気で慰謝料請求を考えているということを示すことも出来ます。

状況次第ですが、内容証明郵便を活用して、慰謝料請求をするということも有効な方法といえます。

④離婚調停で請求する

話合いで解決が出来ない場合には、裁判所の手続きを活用することが考えられます。離婚に関する裁判所の手続きとしては、離婚調停と離婚訴訟とがありますが、先に調停をしなければならないというルールがありますので、まずは、離婚調停を申し立てましょう。

離婚調停は、裁判所で行う話し合いです。ここでは、調停委員を介して、相手との話し合いを進めることになりますが、調停委員は、当然、同居中の出来事を知りません。同居中に受けたモラハラの事実を整理した上で、調停に臨むといいでしょう。

⑤離婚裁判で請求する

調停でも決着がつかない場合には、離婚訴訟を提起することになります。これまでは、話合いでの解決を目指してきましたが、離婚訴訟は、主張と証拠に基づく裁判所の判断(判決)によって解決する手続きです。

過去にあったモラハラの事実を主張という形でまとめ、それを証明する証拠を提出して、離婚と慰謝料を請求していくことになります。

モラハラの慰謝料請求の時効はいつまで?

モラハラが原因で離婚したことの慰謝料の時効は、通常、離婚から3年と考えられています。もっとも、時間が経てば経つほど、記憶があいまいになり、具体的なモラハラの事実を訴えることが困難となります。

また、離婚したことで安心して、保有している証拠を破棄してしまうこともあるかもしれません。そのため、慰謝料請求をする場合には、離婚と共に請求するか、または、離婚後、早めに請求をする方が良いでしょう。

モラハラの慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット

上記のとおり、モラハラの慰謝料請求をするにあたっては、交渉、調停、訴訟という方法が考えられますが、仮に、調停委員を介したとしても、モラハラをした相手と話をすることは非常に苦痛に感じることでしょう。

また、過去の経験から、相手に言い負かされると感じる方も多いかと思われます。

弁護士に依頼をした場合、相手との話は、その弁護士が対応します。また、弁護士であれば、調停でも、隣でサポートすることが出来ます。そのほかにも、弁護士に依頼した場合、法律に則って、主張を組み立てることも出来ますので、慰謝料請求が認められる可能性が高くなると考えられます。

よくある質問

姑からのモラハラを理由に、離婚や慰謝料を請求することは可能ですか?

モラハラを理由として離婚や慰謝料請求が出来る可能性はあります。
まず、離婚に関して、例えば、姑からのモラハラに関して、夫が、その問題解決のために必要な努力を怠ったとか、むしろ積極的に姑に加担していたなどの事情があれば、離婚が認められる可能性は十分にあります。
また、慰謝料に関しても、夫が姑のモラハラ行為に同調していたなどの事情があれば、夫への慰謝料請求が認められる可能性があります。

夫が子供にもモラハラをしていた場合、慰謝料の増額は期待できますか?

夫が子にもモラハラをしていた場合に、当該事情がない場合と比較して、慰謝料が増額する可能性はあると考えられます。
もちろん、モラハラを原因として離婚した場合の慰謝料というのは、離婚した当事者の精神的苦痛に対する賠償ですので、基本的には、子の精神的苦痛は関係ないといえます。他方で、子へのモラハラがあったために、離婚を決意せざるを得なかった場合も考えられます。また、子へのモラハラは、妻へのモラハラの程度を証明する一事情になる可能性もあります。
簡単ではないでしょうが、子へのモラハラの事実は、慰謝料算定に当たって一つの事情になる可能性があるといえます。

妻からモラハラを受けていたことを理由に、養育費の支払いを減額してもらえますか?

妻からのモラハラを理由として、養育費の支払いが減額されるということは、通常、考えられません。
そもそも、養育費は、子の生活のために支払われるものですが、妻のモラハラによって離婚することになったとしても、それは子には関係のないことです。そのため、妻のモラハラの事実と養育費の金額とには関連性がなく、養育費の金額を下げる事情にはならないといえます。

モラハラで慰謝料請求するなら、離婚問題に強い弁護士に依頼することがおすすめです。

ここではモラハラを理由として離婚した場合の慰謝料請求に関して、ご説明をいたしました。

上記のとおり、モラハラの事実を立証することは困難であり、また、モラハラをした相手と話をすることも大変なことでしょう。離婚案件を多く扱っている弁護士であれば、モラハラに関する事例の対応も多く、適切に対応をすることが出来ると考えられます。

モラハラを受けているかもしれないと感じたら、離婚案件を多く扱っている弁護士にご相談することをお勧めします。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。