離婚をするためにはモラハラの証拠が重要

離婚問題

離婚をするためにはモラハラの証拠が重要

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

近年、モラハラを原因として離婚を希望する方は多いです。相手のモラハラにより離婚したいと思っていても、話し合いで離婚をすることができずに、調停や裁判に移行してしまい、モラハラの事実が争いになったケースでは、モラハラを主張する側が、モラハラの事実を立証しなければなりません。
そこで、モラハラの事実の証拠としてどのようなものが考えられるか、また、その証拠収集における注意事項を解説していきます。

モラハラが原因で離婚する場合は証拠が重要

離婚には、主に、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3種類があります。
協議離婚は、裁判所の関与なく、当事者間での合意により離婚する場合です。協議離婚ができない場合などに、裁判所における話し合いで離婚する場合が、調停離婚です。調停でも離婚に至らない場合に、裁判所の判断により離婚するのが裁判離婚です。
裁判離婚の場合は、証拠をもとに、モラハラの事実を認定します。そのため、モラハラがあったとしても、その証拠がない場合には、裁判所は、モラハラはなかったとの判断をする可能性があります。また、当然ながら、協議離婚や調停離婚でも、証拠があった方が、相手がモラハラの事実を認めやすいと考えられます。

モラハラの証拠になるもの

モラハラの証拠としては、当時の夫婦間のやり取りがしっかり分かるようなものが望ましいといえます。具体的には、次のようなものが挙げられます。

モラハラの内容を記載した日記やメモ

モラハラの内容として、相手に言われたことやされたことを書き記した日記やメモは証拠にできる可能性があります。手書きの日記や、スマートフォンやパソコンなどにデータとして残しておいた場合でも同様です。その際には、単に「モラハラがあった」などではなく、「・・・と言われた」などのように、具体的な事実関係を残すようにすべきです。

書き方に気を付けるべきことはある?

日記やメモとして残す際には、まずは、その事実があった日付、時間、場所、状況を可能な限り具体的に残すようにしましょう。そして、後から改ざんしたと疑われないように、消せないボールペンで手書きで書くなどが望ましいです。

モラハラの現場を録音・録画したデータ

録音や録画といった証拠は、モラハラを基礎づける事実をそのまま確認することができることから、有力な証拠になるといえます。暴言などを言っている本人が写っていない録画であっても、声や話し方などでそれが本人であると分かれば、証拠となり得ます。暴言などが途中から録音されたものであるときも、証拠になり得ますが、編集が疑われることがありますので、会話の流れが分かるような録音が望ましいといえます。相手に知られずに録音録画していた場合、その収集した証拠の内容は、収集した者が見たり聞いたりできたものなので、プライバシー侵害の程度は低いと考えられます。

モラハラ夫(妻)から届いたメールやSNS

人格を否定したり、一方的に非難したり何かを強制させようとする内容のメールやSNSはモラハラに該当すると考えられます。被害者を非難したりする場合に限らず、被害者の親族や友人を非難することによって、間接的に被害者に対するモラハラが認められることもあります。ですので、そのような内容のメールやSNSであっても、スクリーンショットを撮って保存するなどして、証拠として残しておくことをお勧めします。また、頻繁な通話記録もモラハラの証拠になる可能性があるので、残しておくようにしましょう。

精神科への通院履歴や医師の診断書

過去の通院の際の診断書も、モラハラの証拠となり得ます。精神科以外にも心療内科を受診した場合にも、その診断書が証拠になり得ます。また、通院する際は、必ず医師にモラハラのことを伝えるようにしましょう。なお、診断書のみではなく、日記やメモなど、モラハラの事実が分かる証拠と一緒に残しておくのが望ましいといえます。

子供や友人などによるモラハラの証言

モラハラの証拠は、これまで述べた「物」に限られません。モラハラの相談を受けていた友人などの証言であったり、目撃していた子供の証言も証拠になり得ます。ただし、子供については、モラハラの事実を認識できて、自分の言葉で説明できるくらいの年齢であることが望ましいといえます。

警察・公的機関への相談履歴

警察などの公的機関に相談した際に作成される記録は、事後的に手を加えることができないため、有力な証拠になります。また、相談内容は、書面で保管されることが多いため、写しを取得することも可能です。モラハラの被害にあった際には、早めに公的機関へ相談することをお勧めします。

モラハラの証拠が集めにくい理由

モラハラについては、自分が被害者であると自覚していない場合が多いです。また、突発的に起きることも多いことから、証拠を残すことが難しいと考えられます。さらに、モラハラの被害は、目に見えない精神的苦痛であるため、なかなか客観的な証拠を残すという発想にすらならないことがあります。このように、モラハラについては証拠が残りにくいため、少しでもモラハラの様子を感じたら、証拠を残すことを意識して準備するのが良いでしょう。

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証拠を集める上での注意点

モラハラは前触れなく行われることが多いため、あらかじめ準備していないと証拠を残すことが難しいです。そのため、日常的にスマートフォンの録音機能を使用できるようにしておくなど、いつでも証拠を残せるようにしておくことが重要です。また、スマートフォンのデータについては、破損したときに備えて、バックアップを取っておくようにしましょう。

モラハラの証拠がない場合の対処法

モラハラの様子を録音・録画することは簡単ではありません。そのため、状況によっては、そのような証拠を残すことが困難という場合もあります。そのような場合でも、自分で日記やメモを残したり、精神科や心療内科に通院した際には診断書を保管するなど、自分で残すことができる証拠は残すようにしましょう。
モラハラの証拠がない場合に、加害者がモラハラを認めることは少ないため、このような場合にモラハラを理由に離婚することは難しいです。しかし、モラハラが原因で別居に至った場合、別居が長期に及べば、長期の別居により婚姻関係が破綻したとして裁判離婚が認められるようになります。
モラハラがあった場合にどのように証拠を残すかの判断は、簡単ではありませんので、弁護士や探偵などに相談することをお勧めします。

モラハラの証拠があれば、慰謝料も請求できるのか

モラハラが証拠上認められ、それにより被害者が精神的苦痛を受けたとされれば、加害者に対し、慰謝料を請求することが可能です。金額については、モラハラの内容や程度により様々なので、事案によって異なります。

モラハラ離婚の証拠に関するQ&A

子供が配偶者からモラハラを受けていた場合、離婚するには証拠が必要ですか?

子供が配偶者からモラハラを受けていた場合でも、離婚をするためには、そのモラハラの証拠が必要になります。客観的な証拠がない場合、自分の証言だけでモラハラが認められない可能性があるからです。しかし、子供がモラハラを受けていた場合、証拠収集だけを考えるのではなく、子供を守る為に別居するということも検討すべきです。別居状態が続けば、モラハラの証拠がなくても、別居が長期に及んだことを理由に離婚することが可能だからです。その場合は、モラハラの証拠がないことには変わりがないので、慰謝料が認められる可能性は低いと考えられます。

配偶者とのLINEの内容が削除されていても、友人などにモラハラの内容が書かれたLINEを転送していた場合はモラハラの証拠になりますか?

配偶者からのLINEの内容が削除されていても、友人などにモラハラの内容が書かれたLINEを転送していた場合には、それが証拠になる可能性があります。ただし、そのLINEの内容は、会話の流れや日時、時間からして、削除されたものと一致すると認められる必要があります。そのため、あらかじめ会話の流れ全体をスクリーンショットに残し、共有することが望ましいといえます。

日記や録音データなどの証拠は、長期間集めるべきですか?

モラハラの証拠は、できる限り長期間集める方が望ましいといえます。短期間のモラハラより、長期間のモラハラの方が、離婚が認められやすく、慰謝料も認められやすいからです。もっとも、モラハラが短期間であっても、その証拠があれば離婚が認められる可能性はあるため、必ず集めるようにしましょう。

離婚の際に必要なモラハラの証拠について、経験豊富な弁護士がアドバイスさせていただきます。

モラハラは、暴力や不貞と異なり、何がそれにあたるのかについてはっきりとした基準があるわけではありません。そのため、裁判所が離婚を認めるハードルは高くなりやすいです。
また、何が証拠になるかや、その証拠の収集のためには具体的にどのようなことをすればよいのかを判断するのは容易ではありません。
モラハラにお悩みの方は、一度弁護士にご相談することをお勧めします。皆様の状況に応じて、具体的な証拠収集方法などをアドバイスさせていただきます。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。