監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
配偶者からのDV(ドメスティック・バイオレンス)に悩み、離婚や慰謝料請求を考えている方にとって、最も重要なのが「証拠」の確保です。
DVは密室で行われることが多く、証拠がなければ相手が事実を否定した際に、法的手段を進めることが難しくなるためです。
本記事では、DVの証拠として有効なものの種類や具体的な集め方、証拠が不十分な場合の対処法について詳しく解説します。
目次
DVで離婚・慰謝料請求するには証拠が必要
DVを理由に離婚を成立させたり、慰謝料を請求したりするためには、客観的な証拠が不可欠です。
裁判などで離婚を認めてもらうには、民法770条1項4号に規定される「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があることを立証しなければなりません。
証拠がなければ、相手が「暴力は振るっていない」と主張した場合に、第三者である裁判所が事実を認定することが困難になります。
DVの証拠になるのはどんなもの?集める方法は?
DVの証拠といっても、その内容は多岐にわたります。
身体的な暴力だけでなく、精神的な嫌がらせや経済的な制限もDVに含まれるため、それぞれの被害形態に合わせた記録を残すことが重要です。
ここでは、法的に有効と認められやすい具体的な証拠の種類とその収集方法をご紹介します。
怪我の写真
暴力によって生じた怪我(痣、切り傷、腫れなど)は、視覚的に被害を証明できる強力な証拠です。
写真は、怪我の箇所がはっきりと分かる「接写」と、本人の顔と怪我の部位が一緒に写っている「引き」の両方を撮影しておきましょう。
撮影日を記録するため、日付が表示される設定にするか、その日の新聞などと一緒に写すのも効果的です(もっとも、新聞の場合、その日付以降に撮影されたことは立証できても、その日付に撮影されたことまでは立証できません。公証役場で写真撮影報告書に確定日付を得ることで撮影日を立証することが可能となります。)
医師の診断書や受診歴
怪我をして病院を受診した際の診断書は、専門家による客観的な記録として非常に高い証拠能力を持ちます。
受診時には、医師に対して「配偶者に付けられた傷である」という経緯を正確に伝えることが重要です。これにより、カルテに被害状況が記録されます。
また、怪我が完治するまでの通院歴や領収書も、被害の継続性を裏付ける材料となります。
DVの様子を記録した音声・動画
暴言を吐かれている場面や、暴力を振るわれている最中の音声・動画は、当時の緊迫した状況を伝える直接的な証拠になります。
スマートフォンやICレコーダーを隠して録音・録画する方法が一般的です。
相手の怒鳴り声、物が壊れる音、自身の助けを求める声などが鮮明に入っているほど、被害の実態を証明しやすくなります。
DVを受けたことが記載してある日記やメモ
日々の被害状況を記録した日記やメモも、継続的に記録されていれば証拠として認められます。
- いつ(日時)
- どこで(場所)
- どのような理由で、どのような暴力を受けたか
- その時の気持ちや体調の変化
これらを詳細に、手書きで残しておくことが望ましいです。
内容が具体的であるほど、信憑性が高まります。
警察や配偶者暴力相談支援センター等への相談記録
警察や自治体の配偶者暴力相談支援センターへ相談したという事実は、公的機関による記録として残ります。
これらの機関に相談に行くと、相談日時や内容が「相談実績」として保管されるため、後に裁判所が事実確認を行う際の強力な裏付けとなります。
身の危険を感じる場合は、まずこれらの窓口に繋がっておくことが身を守ることにも直結します。
荒れた部屋など被害状況の写真
暴力によって壊された家具や家電、破かれた衣類、散乱した部屋の様子などは、その場の激しさを証明する証拠となります。
片付ける前に必ず写真を撮影してください。壊れた物の修理代の領収書や、買い替えた際の明細などもあわせて保管しておくと、損害の大きさを具体的に示すことができます。
モラハラ(精神的DV)を受けている場合
無視、侮辱、執拗な非難といった精神的DV(モラハラ)の場合、身体的な怪我のような目に見える痕跡が残りません。
そのため、相手から送られてきた誹謗中傷メールやLINE、人格を否定するような発言の録音が主たる証拠となります。
また、モラハラが原因でうつ病などの精神疾患を患った場合は、心療内科の診断書も有力な証拠になり得ます。
経済的DVを受けている場合
生活費を渡さない、自由にお金を使わせないといった経済的DVについては、家計の状況を客観的に示す資料が必要になります。
- 給与明細や通帳のコピー(相手の収入と渡されている金額の差を示す)
- 家計簿の記録
- 生活費を要求しても拒否された際のメールやLINEのやり取り
これらを整理し、不当に経済的自由が奪われている状況を立証します。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVの証拠が不十分、または証拠がない場合は離婚できない?
「決定的な証拠がないから離婚は無理だ」と諦める必要はありません。
証拠が不十分であっても、別居を継続して「婚姻関係の破綻」を証明したり、複数の小さな証拠(日記や親族の証言など)を積み重ねたりすることで、離婚が認められるケースはあります。
ただし、相手が離婚を拒否している場合に有利に進めるためには、やはり少しでも多くの記録を集めておくことが推奨されます。
DVの証拠を集めるポイント
証拠集めにおいて大切なのは、日常生活の中での「些細な記録」を疎かにしないことです。
軽微な怪我でも病院に行く
「これくらいの痣ならすぐ治る」と思わず、必ず病院を受診してください。
一度きりの受診であっても、それが「暴力が存在した」という公的な証明になります。
通院をためらわず、医師に事実を伝えることが、将来の自分を守る一歩となります。
メールは消さずに残しておく
相手からの脅迫的なメールや、謝罪の言葉が入ったメールは、消さずに保存しておきましょう。特にDV加害者は、暴力を振るった後に「二度としない」「自分が悪かった」といった謝罪メールを送ることがありますが、これは暴力を認める重要な証拠になります。
LINE等のメッセージアプリはスクリーンショットを残しておく
LINEなどのメッセージは、相手が送信を取り消したり、アカウントを削除したりする可能性があります。そのため、重要なやり取りは必ずスクリーンショットを撮り、画像データとして保存しておきましょう。
端末の故障に備え、クラウドストレージや信頼できる知人への送信など、バックアップを取っておくと安心です。
DV加害者と離婚したいときは弁護士に相談してください
DV被害を受けている中での証拠集めや離婚協議は、精神的・身体的に多大な負担がかかります。また、相手に知られると被害がエスカレートする危険もあります。
弁護士に相談することで、安全を確保しながらの証拠収集のアドバイスや、代理人としての交渉を任せることが可能です。
法的な観点から最適な戦略を立てるためにも、まずは専門家のサポートを受けることをご検討いただき、まずは是非一度、弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。

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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
