交通事故紛争処理センターの利用方法

交通事故

交通事故紛争処理センターの利用方法

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

交通事故の解決のための一つの方法として、交通事故紛争処理センターを利用することが考えられます。今回は、交通事故紛争処理センターを利用した交通事故の解決について、その手続きの流れやメリット・デメリットなどについてご説明していきます。

交通事故紛争処理センターとは

交通事故紛争処理センターとは、自動車事故の損害賠償について、弁護士が和解のあっせんを行ってくれる公益財団法人です。
交通事故における損害賠償について知識があり、公平中立な弁護士が担当してくれることとなります。
また、和解のあっせんによる和解が成立しなかった場合、審査会による審査を受けることもできます。

交通事故紛争処理センター(ADR)でできること

和解あっせん

担当の弁護士が、とそれぞれの主張を確認した上で、公正中立の立場で、和解のあっせんをしてくれます。3回から5回くらいの回数で終了するケースが多いようです。
当事者が合意できた場合には和解が成立し、事件が解決することとなります。

審査

和解のあっせんによっては合意ができず、和解が成立しなかった場合には、審査会に審査を申し立てることができます。審査会は、合議によって、損害賠償についての裁定を出すこととなり、この裁定内容に被害者が同意する場合には原則として和解が成立することとなります。

交通事故の無料相談

担当してくれる弁護士は、当該紛争についての法律相談を無料で行ってくれます。
担当してくれる弁護士は公正中立な立場で、必要な法律知識や交渉について相談に対応してくれます。

交通事故紛争処理センター利用のメリット・デメリット

交通事故紛争処理センターを利用することにはメリットとデメリットがあります。以下で、詳しくご説明していきます。

メリット

● 申立費用が無料
交通事故紛争処理センターに和解のあっせん等を申し立てるにあたっては申立費用はかかりません。担当する弁護士への相談等についても無料です。

● 期間が短い
多くの場合、3回から5回程度の回数で解決することが多く、訴訟と比べて短期間で解決することが多いといえます。

● 公平公正な機関で信頼性が高い
交通事故紛争処理センターは、公益財団法人であり、公平公正な組織であるといえます。また、知識のある弁護士が和解のあっせんを担当し、審査を担当する審査会も、弁護士に加え、法律学者や裁判官経験者で構成されており、信頼性が高いといえます。

● 弁護士基準ベースの高額の賠償額が見込める
交通事故紛争処理センターによりあっせんされる和解案は、いわゆる弁護士基準をベースとする和解案であるため、弁護士を立てて交渉した場合と同様の和解案を得ることができます。

デメリット

● 依頼できるケースが限られる
全ての交通事故について、交通事故紛争処理センターが利用できるわけではなく、加害者側が自動車以外の場合の事故では、利用ができません。また、まだ治療中の場合や、加害者が任意保険に未加入だったり、どの任意保険に加入しているか不明の場合は利用できません。

● 遅延損害金を請求できない
交通事故紛争処理センターによる解決の場合、遅延損害金を支払ってもらうことはできません。そのため、遅延損害金の支払いを受けたい場合には、訴訟等による解決を図る必要があります。

● 弁護士を変えることができない
原則として、担当する弁護士が変わることはありません。そのため、担当してくれた弁護士と相性が合わないなどと感じても弁護士の変更をさせることはできません。

● 何回も出向く必要がある
解決までに3回から5回程度の回数となることが多いとご説明しましたが、解決するまで、センターの和解あっせんの場に、原則として被害者本人が出席する必要があります。

交通事故紛争処理センターを利用した解決までの流れ

全体的な流れとしては、利用申し込み→担当弁護士による相談→和解のあっせん案の提示→合意又は不調(不成立)といった流れとなります。また、和解が成立せず、あっせん不調となった場合には、審査の申し立てをして審査会の裁定を受けることができます。

➀示談あっせんの申込

基本的な流れとしては、電話による申し込みの後、利用の予約の受付を行い、その後送られてくる利用申込書を記載の上、初回の相談の際に持参し提出することとなります。

➁初回相談

初回相談の際に、必要な資料を提出し、当方の主張等について担当してくれる弁護士に相談することとなります。その後次回の期日を決めます。

➂相談担当弁護士による和解あっせん

双方から必要な情報が聞き取れた段階で、担当弁護士が、和解をあっせんします。担当弁護士は公正中立な立場で和解案を双方に提示することとなります。

➃あっせん案合意

当事者双方が提示された和解案に合意できる場合には、和解が成立します。必要な書面を取り交した上で、合意した和解案の通りの解決を進めていくこととなります。

あっせんが不合意になった場合は審査申立

もしも、和解案について合意に達することができなかった場合、そのまま交通事故紛争処理センターの利用を終了し、訴訟等の別の手段による解決を図ることとするか、それとも同センターの審査会による審査を受けるかを選ぶことができます。

審査会による審査

審査を申し立てた場合、審査会による裁定が出されることになります。その上で、被害者である申立人は、この裁定として出された和解案に同意するかどうかを選択することとなります。保険会社は、この裁定のないようを尊重することとなっているため、原則として、被害者出る申立人が裁定に同意すれば和解が成立します。

裁定でも決まらない場合は

このような審査会による審査によって出された裁定によっても和解を成立させることができない場合、交通事故紛争処理センターによる手続きは終了し、訴訟等による事件の解決を図ることとなります。

物損事故の場合にも交通事故紛争処理センター(ADR)は使えるのか?

物損事故であっても交通事故紛争処理センターを利用することができます。

紛争処理センターを利用し、過失割合や賠償額共に有利にすすめられた解決事例・判例

実際に、交通事故紛争処理センターを利用して、過失割合や賠償額を有利に進めることができた事例をご説明します。
本件は、弁護士が代理人についている事案です。

まず、過失割合について、優先道路上の衝突事故として1対9と考えられる事案について、相手方保険会社は交差点上の中央線が消失していたとして2対8の過失割合を主張していました。しかし、代理人弁護士が、現地調査や刑事記録の精査等を行った上で、各種証拠を提出し、センターの担当弁護士の理解を得て、過失割合は1対9とされました。

さらに、賠償金額についても、代理人弁護士がついているにもかかわらず、それまで弁護士基準を大きく下回る賠償案しか相手方保険会社は提示してこなかったところ、センターの弁護士は、弁護士基準での和解案を提示してくれました。
これによって、被害者側が主張する過失割合で弁護士基準での賠償を受けることができました

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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交通事故紛争処理センターを利用するときでも弁護士にご相談ください

交通事故紛争処理センターを利用する場合でも、代理人の弁護士をつけることが可能です。
代理人の弁護士をつけることによって、弁護士から事案の内容や当方の主張を、より正確にセンターの担当弁護士に伝えることができます。また必要な資料の用意を弁護士に任せることもできます。

これらのことはより有利な和解案を勝ち取ることにもつながるため、交通事故紛争処理センターを利用する場合にも弁護士にご相談ください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。