物損事故とは | 物損で請求できる損害賠償

交通事故

物損事故とは | 物損で請求できる損害賠償

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

物損事故とは

物損事故とは、交通事故により、乗車されていた車など、事故により壊れた物があった場合の事故の事です。

人身事故では、怪我を負ったことを理由に生じた損害、例えば、治療費、休業損害、逸失利益など、広く賠償が認められます。一方で、物損事故での損害額は、原則として、壊れた物の財産的損害のみ請求できることになります。つまり、人身事故と物損事故とでは、請求できる損害の項目で大きく異なりますので、賠償額自体についても、大きく異なります。

物損事故で請求できる損害賠償

修理費

物損では、まず、修理費が、請求できる損害額として挙げられます。
修理費は、修理可能な場合に、修理に要した費用となります。修理未了の場合でも、見積による修理費用が、請求できる修理費用に含まれます。

格落ち損(評価損)

修理をしても外観や機能に欠陥を生じ、または事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合の損害を評価損といいます。評価損は、初年度登録からの期間、走行距離、修理の程度、車種等を考慮して認定することになります。修理費を基準にして評価損が認められるケース、車の時価を基準にして評価損を認めたケース、査定協会の査定等を考慮して評価損を算定したケースなど様々あります。裁判例では、修理費の10%から30%が認められるケースが多いです。

代車料

代車料は、相当な修理期間または買い替え期間中、レンタカーの使用等により代車を使用した場合に認められる損害です。修理期間としては、通常1週間ないし2週間程度で認められますが、部品の調達や営業車登録等の必要があるときは、2週間以上認められることがあります。

また、代車料も、必要な範囲で認められ、早期の通勤を要し乗用車を使用する必要性が認められる場合や他に保有している車の使用では代替できない場合などに認められます。

買替差額

物理的または経済的全損、車体の本質的構造部分が客観的に重大な損傷を受けていその買い替えをすることが社会通念上相当な場合に、事故時の時価相当額と売却代金の差額が認められます。経済的全損となる場合は、修理費が車両時価額に買い替え諸費用を加えた金額を上回る場合です。車両の時価は、同一の車種・年式・型、同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車として購入するのに要する価格です。

登録手続関係費

買い替えをする場合、買い替えのために必要な登録、車庫証明、廃車手数料相当分及びディーラー報酬部分のうち相当額並びに自動車取得税については、損害として認められます。
なお、還付される費用については、賠償の対象となりません。

休車損害

運送会社の貨物自動車、タクシーなど、営業車が事故により損傷して営業ができなかったために生じた場合、被害車両によって1日当たりに得られる利益に相当な修理期間または買い替え期間を乗じて算出される損害です。つまり、営業用の車の使用ができなかった場合の損害です。具体的には、

休車損害=〈被害車両の1日当たりの売上高-変動経費〉×必要な休車期間

です。変動経費は、車両を使用しないことで免れた経費として、燃料費、有料道路代金等に限られます。

なお、代車料と休車損は、いずれも事故車を使用できないことによる損害ですので、両者を重複して請求することはできません。

その他

上記項目以外の損害としては

  • ・事故車の保管料
  • ・レッカー代
  • ・事故時に着用していた衣服の損害
  • ・ペットの治療費、ペットの生命の確保・維持に不可欠な費用

が損害として認められます。

物損の場合は慰謝料が請求できない?

物損の場合、慰謝料請求はできません。
これは、損害賠償が、損害を補填する制度ですが、物損の場合には上記に挙げられた損害の賠償により、通常、損害が補填されると考えられるからです。

例外的に物損でも慰謝料が認められる場合

物損の場合でも、例外的に慰謝料請求が認められるケースもあります。

慰謝料が認められるには、
①社会通念上認められる特別な主観的・精神的価値を有し、財産的損害の賠償を認めただけでは足りない
②事故による加害行為が著しく反社会的で財産に対する金銭賠償だけでは償えないほどの精神的苦痛を受けた場合
であることが必要となります。

具体的に慰謝料が認められたケースとしては、家屋に車両が侵入して損壊した場合など住居の平穏が侵害された場合や家族の一員であるペットが死亡したり死亡に匹敵する程度に重い傷害を負った場合などです。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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物損事故の事故処理の流れ

交通事故に遭った場合には、物損の場合でも、まず、警察に連絡しましょう。

そして、損害の請求をするために、加害者の氏名・住所・連絡先、加害者の勤務先の名称・連絡先、自動車の所有者と加害者が異なる場合にはその所有者の氏名・運転目的・加害車両の通常の使用状況、加害者の自賠責保険及び任意保険の保険会社・契約番号を確認しましょう。上記については、運転免許証、自動車検査証、自動車損害賠償責任保険証明書の提示により確認できます。

少しでも人的損害があった場合は物損事故ではなく人身事故に切り替える

事故が比較的軽微の場合、加害者から物損扱いにしてほしいと求められることがあります。事故時に怪我に気づかずに物損として扱うことに応じると、以下に述べるように、後々不利となることもあります。

人身事故を物損事故にしておくリスク

加害者からは、当初の事故が比較的軽微な場合、罰則を恐れて、治療費等を全額賠償することなどの提案をし、人身事故ではなく物損事故として届けるよう求められることがあります。

しかし、物損で請求できる賠償額は、上記のように限られています。また、事故当時には怪我に気づかなくても、数日たってからむちうちなどの怪我に気づくことがあります。この場合、人身事故として届けておかないと、交通事故と怪我との因果関係が争いになることもあります。また、過失割合が争いとなる場合、実況見分調書により詳細を確認することもありますが、人身事故として届けておかなければ、実況見分調書が作成されずに、過失割合の立証をすることが困難となることもあります。

物損事故から人身事故に切り替える方法

物損事故から人身事故への切り替えを行うには、まず、病院に行き、診断書を作成してもらいます。事前に加害者の保険会社に連絡をするとよいでしょう。
その後、警察署へ行き、人身事故への変更の手続きをすることになります。この際、診断書、車検証、運転免許証等の必要書類がありますので、事前に警察署に必要書類を確認してから行くことがよいでしょう。
上記の手続きを経ると、人身事故の事故証明書が発行されます。

物損事故の弁護士依頼は損?費用倒れにならないケースとは

物損事故の場合、過失割合による減額があり請求できる賠償額が低かったり、そもそも損害額が低い場合など、弁護士に依頼しても、費用倒れとなる可能性もあります。しかし、過失割合や評価損など、法的に問題となる部分について争っていくことで、費用倒れとならない可能性もあります。

過失割合が少ない

過失割合は、法的評価の問題ですので、裁判例等の集積によりある程度類型化されています。過失割合を修正する要素についても、類型化されています。相手の保険会社は、十分な説明をせずに、表面的な説明をしてくることもありますが、十分争うことができ、過失割合を大幅に減らせる可能性もあります。この場合には、請求できる損害額を大幅に増加できますので、弁護士費用を支払っても、獲得できる賠償額が上回ることになります。

評価損が認められた

評価損は、修理費用の10%から30%とする場合が多いようですが、明確な基準がなく、具体的な金額の算定は容易ではありません。過去の裁判例との比較も必要となります。そのため、保険会社と交渉していても評価損を認めないケースが多いです。そこで、弁護士を介入させて、一定の見解を示すことで、保険会社に対して評価損を認めさせることができるケースがあります。

物損でも場合によっては弁護士の介入がプラスになることがあります。まずはご相談ください

物損の場合、慰謝料の請求が困難となるなど請求できる損害の項目が限定されたり、そもそも、損害額が低く、簡単に済ませてしますこともあるでしょう。しかし、本当に慰謝料の請求ができないのか、賠償額が適切かを法的に検討することは容易ではないケースもあるでしょう。ご相談いただければ、どういった請求ができるのか、その見通しなどについてご説明させていただきますし、弁護士へご依頼いただいた方が、賠償される金額が増額されることもあります。

弊所では、交通事故を非常に多く扱っていますし、経験豊富な弁護士が多数おりますので、まずは、ご相談ください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。