監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
目次
交通事故の損害は大きく分けて2つ
損害は、人損と物損の2つに分けて考えることができます。
交通事故の人損について
人損とは、当事者が、負傷したことにより生じた損害のことであり、傷害による損害と後遺障害・死亡による損害に分けることができます。
交通事故の傷害による損害の主な損害項目としては、慰謝料、治療関係費、付添費用、通院交通費、休業損害などがあります。
後遺障害・死亡による損害の主な損害項目は、慰謝料と逸失利益です。
入通院慰謝料
傷害に対する慰謝料は、交通事故により傷害を負いその治療のために入院・通院した期間を基準として計算されます。
例えば、骨折で1か月入院しその後2か月通院した場合には、98万円、むちうち症で他覚所見がない場合に3か月通院した場合(実通院日数30日)には、53万円などとなります。
治療費
治療費は必要かつ相当な実費全額を請求することができます。そのため、交通事故の治療として必要であったか、高額すぎないかという点が争点となります。
東洋医学による施術費等
症状により有効かつ相当な場合、特に医師の指示がある場合などは認められます。
温泉治療費等
医師の指示がある場合など、治療上有効かつ必要がある場合に限り認められます。なお、裁判例上は請求が認められる場合でも額が制限される傾向にあります。
入院中の特別室使用料
医師の指示または症状が重篤である、空室がないなどの特別の事情があれば認められます。
付添費用
(1)入院付添費
医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢等により必要があれば認められます。
職業付添人の費用は実費全額、近親者付添人は1日につき6500円が被害者の損害として認められます。ただし、症状の程度、また、被害者が幼児、児童である場合には、1割から3割の範囲で増額される場合があります。
(2)通院付添費
症状または幼児である等、付添いが必要と認められる場合には被害者本人の損害として1日3300円が認められます。事情に応じて増額が考慮される場合があります。
通院交通費
公共交通機関(電車・バス)の料金、自家用車を使用した場合は1キロ当たり15円。
症状によりタクシーの利用が必要とされる場合には、タクシー料金も認められます。
休業損害
事故による受傷によって休業したことによる現実の収入減が損害として認められます。
なお、家事従事者、無職者などは現実の収入減がない場合でも平均賃金等を基礎に休業損害を算定します。
後遺障害慰謝料
後遺障害は、1級から14級までの等級が設けられており、各等級に応じた慰謝料が認められています。
後遺障害逸失利益
原則として事故前の現実収入を基礎収入として、以下の計算式により算定します。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
死亡慰謝料
一応の目安として、一家の支柱2800万円、母親、配偶者2400万円、その他2000万円から2200万円程度とされています。
死亡逸失利益
原則として事故前の現実収入を基礎収入として、以下の計算式により算定します。
基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年齢に対応するライプニッツ係数
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の物損について
物損とは、物が破損したこと等により生じた損害で、主な損害項目としては、自動車等の修理費、買替差額、代車使用料、休車損、評価損などがあります。
修理費
修理が相当な場合に、修理費相当額が認められます。ただし、修理費が車両時価額に買替諸費用を加えた金額を上回る場合には経済的全損となり、修理相当額は認められず、買替差額が認められます。
買替差額
物理的全損または経済的全損、車体の本質的構造部分が客観的に重大な損傷を受けてその買替をすることが社会通念上相当と認められる場合には、事故時の時価相当額と売却代金の差額が認められる。
代車使用料
相当な修理期間または買替期間中、レンタカー使用等により代車を利用した場合に認められます。
休車損
営業車の場合には、相当な買替期間中もしくは修理期間中に事故車両が使用できないことにより生じた損害の請求が認められます。
評価損
修理しても外観や機能に欠陥を生じ、または事故歴により商品価値の下落が見込まれる場合に認められます。
交通事故の損害を算定する基準について
上記の損害については、訴訟における損害の算定基準が存在しています。しかし、保険会社は、訴訟における損害の算定基準よりも低額となる保険会社の基準で賠償額を提示するのが通常です。
したがって、示談をする前に、保険会社の提示額が相当額かどうかについて、弁護士にご相談されることを強くお奨めします。
-
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)