監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
後遺障害の等級認定に不服がある場合、当該結果に対して異議を申し立てることが考えられます。しかしながら、異議申立の手続きについては、それぞれの特徴があります。 また、どのような資料を収集し、どのような主張をする必要があるかは、適切な知識がないと困難です。 今回は、等級認定に対する異議申立について、解説します。
目次
後遺障害等級の異議申し立ての方法
後遺障害等級認定に対して、不服がある場合には、①自賠責保険に対して異議申立てを行う、②自賠責保険・共済紛争処理機構への申請をする、③訴訟提起をするという、3つの方法が考えられます。
①については、回数制限がないことや結果が出るまで比較的に短時間な手続きになります。②については、1回しか行えないという特徴があります。③については、訴訟費用がかかることや期間が長くかかるという特徴があります。
自賠責保険会社に異議申立てをする方法
自賠責保険会社に対する異議申立の方法は、事前認定と被害者請求の2種類の手続きがあります。
事前認定は、加害者が加入する保険会社を通じて異議申立を行う方法を言います。他方で、被害者請求は、被害者自身で自賠責保険に対して異議申立を行う方法を言います。
異議申し立て~審査完了までの流れ
異議申立てについては、被害者請求の場合は異議申立書と資料をつけて提出します。自賠責への異議申立の場合、およそ、2~6カ月程度がかかります。
必要書類と入手方法
必ず提出するものは、
- 異議申立書(書式自由)
- 委任状【弁護士に依頼する場合】
必要に応じて提出するものは
- 医師の意見書
- 画像
- 診断書
- 診療報酬明細書
- カルテ
- 検査結果(病院から入手)
- 事故状況の写真や物損の資料
- 陳述書
前記のような書類を集めて、提出します。
郵送先
事前認定の場合は、加害者が加入している任意保険会社に郵送します。被害者請求の場合は、加害者が加入している自賠責保険会社に郵送します。
審査に時間がかかる理由
異議申立てについて、一見して理由がないことが明らかな場合には、結果は早く出ます。他方で、認定されるか否かの判断が難しい場合には、上部組織にて判断が委ねられることもあります。
より慎重な判断を要する場合には、審査に時間がかかることがあります。
自賠責紛争処理機構に申請する方法
以下のいずれかに該当する場合は自賠責紛争処理機構が使えない
下記の場合には、自賠責紛争処理機構が使えません。
(1) 民事調停または民事訴訟に係属中であるとき又は当事者間の紛争が解決しているとき
(2) 他の相談機関または紛争処理機関で解決を申し出ている場合
※他の機関での中断・中止・終結の手続きをされた場合には受け付けることができます。
(3) 不当な目的で申請したと認められる場合
(4) 正当な権利のない代理人が申請した場合
(5) 弁護士法第72条に違反する疑いのある場合
(6) 自賠責保険・共済から支払われる保険金・共済金等の支払額に影響がない場合
※例えば、既に支払限度額まで支払われている場合
(7) 本機構によって既に紛争処理を行った事案である場合
(8) 自賠責保険・共済への請求がない場合あるいはいずれの契約もない場合
(9) その他、本機構で紛争処理を実施することが適当でない場合
引用元:http://www.jibai-adr.or.jp/enterprise_04.html
異議申し立て~審査完了までの流れ
まず、紛争処理申請書の作成をし、提出する資料を収集します。 次に、申請書と資料を.自賠責保険・共済紛争処理機構へ送付します。 すると、紛争処理委員会が、送付された資料等を審査します。 そして、審査が終わると、紛争処理委員会から調停結果の通知が来ます。
必要書類と入手方法
まず、必ず提出するものとしては、
- 紛争処理申請書
- 別紙(紛争処理申請書・「⑥紛争処理を求める事項」について具体的に記載)
- 同意書
- 交通事故証明書
- 委任状【弁護士に依頼する場合】
- 印鑑登録証明書(弁護士に依頼する場合)
各種テンプレートはこちら:http://www.jibai-adr.or.jp/enterprise_04.html
次に、任意的に提出する資料としては、
- 医師の意見書
- 画像
- 診断書
- 診療報酬明細書
- カルテ
- 検査結果(病院から入手)
- 事故状況の写真や物損の資料
- 陳述書
郵送先
下記のいずれか近い方にお送りします。
・東京本部
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-4龍名館本店ビル11階
・大阪支部
〒541-0051 大阪府大阪市中央区備後町3-2-15モレスコ本町ビル2階
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
裁判で異議申し立てをする場合
裁判で後遺障害を争う場合、立証責任は被害者側にあります。そこで、裁判においても、前記のような後遺障害を裏付ける資料(医師の意見書等)を提出する必要があります。
自分で後遺障害の異議申し立てをするのは難しい
異議申立は、専門的な知識を要するため、自身で行うことは非常に困難です。また、適切な資料を収集する必要もあるため、自身で行うことは負担が大きいと言えます。
異議申し立ての書類に不足しているものや不備があるとまたやり直し
書類に不備があったり、記載内容に誤りがあった等、適切な異議申立が行えない場合、やり直しになる可能性があります。
この場合、時効の問題もあるため、1回で適切な異議申立を行うことが必要です。
異議申し立ての審査には時間がかかる
前記のよう適式な方法で行えなかった場合、やり直しの可能性があります。
時間を多く要する手続きである以上、時間を浪費しないためにも、適切な知識を有する弁護士に依頼することをお勧め致します。
弁護士に後遺障害の異議申し立てを依頼した場合
弁護士に異議申立を依頼した場合、必要な資料の収集や異議申立書の作成を弁護士が行います。弁護士は、異議申立について、適切な知識を有していることから、有効な異議申立を行うことが可能です。
異議申し立てはいつまでにしなければいけないのか
後遺障害の時効は、症状固定から5年になります(令和2年4月1日前の消滅時効は、消滅時効の期間は症状固定から3年間です。令和2年4月1日より前に症状固定から3年を迎えている場合は、延長されるわけではありません。)。
ゆえに、症状固定から5年以内に異議申立を行う必要があります。
異議申し立ては弁護士にお任せください
後遺障害の等級認定の結果に対して不服がある場合には、不服申立ての手続きが必要になります。前記とおり、どのような手段を用いるかは、各制度や個別具体的な事案によって異なります。
また、適切な異議申立てを行うためには、適切な知識や必要な資料を収集する必要もあります。
そこで、異議申立てを行う場合には、弁護士にご相談下さい。
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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)