
監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
遺言書には、検認という手続きがあります。なじみがない方が多いと思いますが、遺言に沿った解決をするために必要な手続きです。
以下では、検認の流れ、注意点等について解説していきます。
目次
遺言書の検認とは
検認とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。
有効性を判断をされるものではない
検認手続きは、遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
そのため、検認手続きがされた遺言について、遺言無効確認訴訟等により、遺言の有効性を争うことは可能です。
遺言書の検認が必要になるケース
遺言書には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3つがあります。
このうち、検認が必要なのは、①自筆証書遺言、③秘密証書遺言の2つです。
②公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるものであり、公証役場で保管されるため、遺言書の偽造・変造の可能性が低く、検認は不要とされています。
また、①自筆証書遺言のうち、法務局において保管されているものについても、偽造・変造の可能性が低いため、検認は不要とされています。
検認せずに遺言書を開封してしまったらどうなる?
検認せずに遺言書を開封しても、直ちに、遺言書の内容が無効になるわけではありません。
もっとも、開封者が、遺言の内容を改ざんしたとの疑いが生じることになり、後にトラブルが発生するリスクがあります。
また、検認せずに遺言書を開封すると、5万円以下の過料に処せられることになります(民法1005条)。
遺言書の検認に期限はある?
遺言書の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく、その検認を請求しなければならないとされています(民法1004条1項)。
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遺言書の検認手続きの流れ
まず、①遺言書を探します。遺言書は、自宅に保管されている場合もあれば、法務局や公証役場に保管されている場合もあります。
その次に、②必要書類を揃えて、申立てを行います。
申立てが受理されると、③家庭裁判所から、相続人に、検認期日が通知されます。
そして、④検認期日に、検認が行われます。裁判官が遺言書を開封し、遺言書の形式面についてチェックします。
その後、⑤検認済証明書を申請すると、これが発行されます。検認済証明書は、各相続手続きにおいて必要となります。
手続きをする人(申立人)
遺言の保管者又は遺言書を発見した相続人が、申立ての手続きをする必要があります。
必要書類
申立てに必要な書類は、以下の通りです。
- 1 申立書
- 2 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(全部事項証明書)
- 3 相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)
もっとも、遺言者の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本(全部事項証明書)が必要となるなど、事案により、追加で書類が必要となる場合があります。
申立先
申立先は、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所になります。
検認手続きにかかる費用
検認手続きには、以下の費用がかかります。
- 遺言書1通につき収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手(これは、申立先の家庭裁判所に確認する必要があります。)
遺言書の検認が終わった後の流れ
検認が終わった後、遺言の執行をするためには、遺言書に検認済証明書が付いていることが必要となるので、検認済証明書の申請(遺言書1通につき150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要となります。)をすることになります。
遺言書の検認に関するQ&A
遺言書の検認に行けない場合、何かペナルティはありますか?
遺言書の検認を欠席しても、ペナルティはありません。
相続人全員の出席が必要なわけではありませんが、申立人は出席する必要があります。
遺言書の検認を弁護士に頼んだら、費用はどれくらいになりますか?
弁護士に検認を依頼する場合の費用は、手数料10万円ほど、諸経費数万円ほどになることが多いです。
検認せずに開けてしまった遺言書は無効になりますか?
前述のように、遺言書を検認せずに開封しても、それにより直ちに、遺言書の内容が無効になるわけではありません。
開封者が、遺言の内容を改ざんしたとの疑いが生じ、後にトラブルが発生する可能性があります。
遺言書の検認手続きは専門家にお任せください
検認は、そこまで難しい手続きではありませんが、一度も経験したことのない人がほとんどだと思います。
弁護士であれば、検認の流れを説明し、申立てから検認当日に至るまで、終始サポートをすることが可能です。
ご不安なことがあれば、一人で悩まず、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
検認手続きについて、精一杯サポートさせていただきます。
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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)