遺言書に納得いかない!遺言書を無視して遺産を分ける方法はある?

相続問題

遺言書に納得いかない!遺言書を無視して遺産を分ける方法はある?

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

配偶者や親が遺言書を残して亡くなられたものの、その内容が法定相続人であるあなたにとって、あまりにも不利で納得できないという場合があります。そのような場合であっても、遺言の内容は絶対で、いかなる事情があってもその内容に従わなければならないのでしょうか。以下では、遺言の絶対性や対処方法について説明していきます。

目次

遺言書は絶対?納得いかない遺言書でも従わなければいけないの?

遺言の内容は絶対的なものではなく、以下のように、一定の要件を満たす場合、遺産分割協議で遺言内容と異なる取決めを行ったり、遺言内容と異なる額の遺産を相続したりすることが可能です。

相続人全員の合意が得られれば従わなくて良い

亡くなられた人(被相続人)の意思を尊重するために、民法上遺言という制度が認められていることから、(有効な)遺言書がある場合、これに従って相続を行うのが原則です。

もっとも、①遺言書で遺産分割協議が禁止されていない場合で、②相続人全員の合意があり、③遺言書執行者の同意もある場合には、遺産分割協議を行って、遺言書と異なる内容を取り決めることができます。

合意が得られない場合であっても、遺留分を請求できる場合がある

上記のように、相続人全員の合意が得られない場合でも、遺言の内容が遺留分(兄弟姉妹を除く法定相続人に法律上保障された最低限の取り分をいいます)を侵害するものである場合には、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害者に対して、侵害された額について、支払請求することができます。この場合、当該相続人は、遺言内容と異なる額の遺産を取得できることとなります。

遺言が無効である場合は、そもそも従う必要がない

そもそも、遺言書が無効な場合があります。例えば、遺言書に作成日が記載されていない、遺言者の署名・押印がないなど、遺言書が法律で定められた方式に従っていない場合や、認知症を発症して遺言能力のない状態で遺言書が作成された場合などがこれにあたります。

この場合、相続人は、無効な遺言書の内容に拘束されませんので、遺言書と異なる内容の遺産を相続することができることとなります。

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遺言書の無効を主張したい場合は?

遺産分割協議は、裁判外で行う協議、裁判所で行う調停があります。相続人間において、遺言書が無効であることに争いがなければ、この遺産分割協議において遺言書が無効であることを前提として協議をするということが考えられます。

また、遺言書が無効か否かについて争いがある場合には、遺言無効確認訴訟を行い、その訴訟の中で、遺言書が無効であることを主張していくことになります。

遺言書の内容に納得がいかない場合であっても、偽造したり破棄したりすることは違法

被相続人の残した遺言を発見して、その内容を確認したところ、とても納得できない内容である場合、被相続人がこのような内容の遺言書を書くはずがないなどと感情的になって、当該遺言書の内容を独断で書き替えたり、捨てたりしてしまうことを考える人もいるかもしれません。

しかし、遺言書の偽造・変造や破棄・隠匿を行った相続人は、相続人となる資格を失ってしまいますので、このような行為は絶対にしないようにしましょう。

遺言書の内容に納得できない場合に関するQ&A

遺言書どおりに遺産を分けたいと考えていますが、共同相続人の一人がそれでは納得いかないと言っています。話し合いがまとまらない場合、どうすればよいでしょうか?

話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるということが考えられます。この場合、遺言の有効性を主張して、遺言の内容どおりの遺産分割をする旨合意できるように話し合います。
また、遺言書の内容によっては、遺言執行者の選任を申し立て、その遺言執行者に遺言の内容を実現してもらうということも考えられます。

遺言書に、愛人一人に全財産を相続させると書かれていました。相続人が全員反対していることから、愛人本人には知らせずに、遺産を分けることも考えています。これは問題ないでしょうか?

本件では相続人ではない愛人が遺言により遺産全部について遺贈を受けています。このような場合、遺言書と異なる遺産分割を行うためには、相続人のみならず遺産を譲り受ける者(今回でいうと愛人)も含めて、全員で合意をする必要があります。愛人本人に知らせずに遺産を分けたとしても、無効ですので、相続人限りで遺産を分割してはいけません。

遺言書の内容にどうしても納得できません。遺言書の内容どおりに遺産を分けた場合であっても、遺留分に近い金額を相続できる場合はあきらめるしかないのでしょうか?

仮に、遺留分に近い金額ではあるものの、遺留分に満たない場合、遺留分の請求をして、その差額を取得することは考えられます。もっとも、遺留分侵害額請求をしても、取得できる額が大幅に増えることは期待できません。
このような場合には、特別受益がないかを確認するということが考えられます。例えば、他の相続人が多額の財産の贈与を受けていたという場合には、遺留分の対象となる財産が増えることになります。そのため、被相続人の死亡時点で残っていた財産からすると遺留分に近い金額であったとしても、特別受益を含めると遺留分の金額には遠く及ばなかったということもあり得ます。
そのほか、そもそも遺言書が無効となれば、法定相続分どおりの財産を得る権利があります。そのため、遺言書が無効となるような事情がないかを確認するのも一つの手段です。

遺言書に関して納得いかないことがある場合、弁護士に相談することにより、解決できることがあります。お一人で悩まずに、まずはご相談ください

亡くなられた配偶者や親が残した遺言書の内容が、相続人であるあなたにとって、他の相続人らと比べてあまりにも不利で納得できないということもあるかと思います。あなたが当該配

偶者らに対して長年手厚く介護を行うなどしていた場合や、他の相続人らが生前の被相続人から多額の贈与を受けていた場合は特にそのように感じられるでしょう。そのような場合、遺言書があるからといって、必ずしも遺言書どおりの取り分で諦める必要がないのは上記のとおりです。

もっとも、一人で他の相続人らを相手に適切な主張を行い、相当な遺産の取り分を確保することは容易ではありません。弁護士にご相談いただければ、事案に応じた適切な助言を行うことが可能です。お一人で抱え込まずに、まずはご相談ください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。