弁護士なしで離婚調停するメリットとデメリット

離婚問題

弁護士なしで離婚調停するメリットとデメリット

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

離婚を考えている、または離婚を切り出された場合、様々なことが頭をよぎります。

今後の生活はどうなるのか、子どもはどうなるのか、相手名義だが自分が使っている車はどうなるのか等々です。そして、悩みの一つに、弁護士に依頼すべき事案なのかということがあると思います。

離婚調停は弁護士なしでもできる?

結論から申し上げますと、離婚調停を弁護士なしで行うことは可能です。弁護士に依頼せず離婚を無事成立させた人は多くいます。

もっとも、事案によっては、弁護士を入れたほうが良いケースも存在します。以下、それらの違い等についてご説明させていただきます。

弁護士なしで離婚調停する人の割合はどれくらい?

「家庭裁判所における家事事件及び人事訴訟事件の概況及び実情等」によると、離婚事件(令和4年時点)において弁護士に依頼した人、依頼しなかった人の割合は以下のようになっています。

双方に代理人あり 32.6
申立人のみ代理人あり 27.0
相手方のみ代理人あり 5.0
双方に代理人なし 35.5

自力で離婚調停を申し立てる方法

まず、家庭裁判所に申立書や事情説明書等の書類を提出します。これらの書式は、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

その後、家庭裁判所から呼出状が当事者双方に届くため、記載されている日時に、記載されている場所(家庭裁判所の待合室等)に行きます。

調停期日を何度か繰り返し(1~2か月に1回のペースで開かれることが多いです)、合意がまとまれば調停成立、まとまらなければ調停不成立となります。

調停不成立となった際には、調停に代わる審判という手続により離婚が認められることがありますが、これは相手方が異議を申し立てれば失効するため、通常は、離婚を成立させるためには訴訟を提起せざるを得ません(調停に代わる審判はそもそも行われないことが多いです)。

弁護士なしだと離婚調停で不利になる?

弁護士に依頼しなかったからといって、離婚調停で直ちに不利になるわけではありません。離婚調停は、裁判所によって選任された調停委員が双方の話を交互に聞くという方法で進めることになります。

そのように、調停委員が双方の間に入ってくれる形になるため、相手方から一方的な内容を押し付けられることはある程度防御することができます。もっとも、調停委員はあくまで中立的な立場であるため、必ずしもこちらの味方をしてくれるわけではありません。

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弁護士を入れた方が望ましい例

離婚

離婚調停は、双方の合意を形成する手続であるため、双方の合意がなければ成立しません。

そのため、自分は離婚したいと思っているが、相手方は離婚したくないと思っている場合、調停期日を重ねても相手方の意思が変わらなければ、離婚調停は成立しないことになります。

もっとも、相手方が、養育費や財産分与等の条件によっては離婚に応じても良いと考えている場合は多くあります。

その場合、離婚条件の交渉に入ることになりますが、相手方が要求する離婚条件が法的に正当なものが判断するのが難しいケースがあります。

以下、その例を述べます。

婚姻費用、養育費

婚姻費用とは、夫婦や未成熟の子どもにとって必要な生活費であり、子がいる場合には、子の養育費部分も含みます。養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用です。

婚姻費用は離婚時まで、養育費は離婚時から認められる点に違いがあります。また、婚姻費用は、配偶者の生活費に子の養育費を加えた額になるため、一般的に養育費よりも高額になります。

これらは原則として、双方の収入額を基準に、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」に基づき決められることになります。そのため、双方の収入額に争いがないケースでは、基本的には算定表に基づいて決めればよいことになります。

もっとも、相手方が任意に収入を明かさない場合(相手方が確定申告書や源泉徴収票を提出しない場合)には、相手方の収入を把握することができません。

その場合、弁護士であれば、弁護士会照会という制度を利用し、相手方の勤務先に、相手方の収入を明かすよう働きかけることができます。

また、算定表では双方の収入のみをもって婚姻費用や養育費の額が決められることになるため、その他の個別事情を考慮してほしいという場合には、算定表からの修正を主張する必要があります。

算定表は、通常の範囲のものは額の幅の中ですでに考慮されていることになっているため、それを超えた事情がある旨の主張をすることになりますが、その主張を構成することが難しいことがあります。

財産分与

財産分与とは、離婚の際、夫婦が共同して築いた財産を分ける手続きです。基本的には、双方が婚姻期間中に得た財産を折半することになります。

双方の財産が預貯金だけの場合、婚姻期間中に得た双方の預貯金を折半すればよいため、弁護士なしで行うことが容易です。

また、財産に不動産が含まれる場合でも、それらを売る場合には、売却によって得られた代金を折半すればよいため、弁護士なしで行うことが比較的容易です。

もっとも、財産に不動産や株式等が含まれ、今後もどちらか一方が持ち続けたいという場合には、その評価が問題となります。

鑑定等が必要となることもあり、どう算定すべきか、算定の基準時はどうするか等事案として複雑になってくることが予想されるため、弁護士を入れたほうが良いと思われます。

また、婚姻期間前に有していた財産は、特有財産として、財産分与の対象からは基本的に外れることになりますが、相手方の財産が婚姻期間中に得たものか、婚姻期間前に有していたものなのか分かりにくいケースがあります。

そのような際も、弁護士は普段からそのような事例をよく目にしているため、弁護士であれば判断できる場合があります。

離婚調停で弁護士ができるサポート

書類の提出に関しサポートが受けられる

離婚調停を申し立てる際には、申立書、事情説明書といった書類を家庭裁判所に提出する必要がありますが、書類の書き方が分からないという場合には、弁護士によるサポートが可能です。

また、財産分与等の判断のため証拠の提出が求められることがありますが、どの書類を提出すべきか分からない場合や、必要書類の取得方法等が分からない場合にも、アドバイスすることができます。

陳述書やの作成時にアドバイスしてもらえる

離婚調停では、陳述書という書面を提出すべき場合があります。陳述書とは、これまでに経験したことや自身の言い分をまとめた文書です。

もっとも、なんでも記載すればよいというわけではなく、法的に意味のある事実に重点をおいて記載する必要があります。

何が法的に意味のある事実か分からないこともあると思いますので、そのような場合に弁護士がアドバイスすることができます。

調停委員と話すときに同席してくれる

ほとんどの方にとって離婚調停は初めてであると思われるため、調停委員とどう話したらよいか不安に感じると思います。

弁護士が入れば、調停前に、調停委員とどう接したらよいか、何を話せばよいか等アドバイスすることができます。また、弁護士は離婚調停に同席することができ、時に調停委員とのやり取りを代わって行うこともできます。

離婚条件についてアドバイスがもらえる

離婚調停は、双方の合意があれば成立するため、法的に妥当な範囲でなくても合意があれば成立し得ることになります。そのため、自分に不利な条件であっても、合意すれば成立することになります。

もっとも、離婚条件は、この項目は自分に有利になっているが、この項目は自分に不利になっているなど、様々なバリエーションがあるため、全体として自分に不利になっていないか見極めるのが難しいことがあります。

相手とのやり取りを代わってくれる

離婚調停の期日では、双方が交互に呼び出される形になるため、相手方と顔を合わせる機会は基本的にありませんが、期日間で相手方や相手方代理人(弁護士)と連絡を取り合うことがあります。

弁護士が付いていれば相手方との連絡は弁護士が行うことになるため、そのストレスから解放されます。

ひとりで離婚調停を乗り切れるか心配な場合は、一度弁護士にご相談ください

とはいえ、それでも弁護士に依頼すべきかどうか悩む場合も多いと思います。そのような際には、ぜひ一度ご相談にいらしていただければと思います。事情をお伺いし、相談者の方々の内容にあったご提案をさせていただきます。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。