サンキュー事故の過失割合と慰謝料

交通事故

サンキュー事故の過失割合と慰謝料

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

対向車線が渋滞している際に、右折しようと停止をしていたら、道を譲られたということは珍しくないと思います。

しかし、ここで道を譲られたと思って焦って右折すると、死角から現れた他の車両やバイクとあわや衝突という事態になりかねません。

ここでは、このような事故に関して、主に過失割合の観点から説明をいたします。

サンキュー事故とは

サンキュー事故とは、道を譲られた際に生じる事故のことです。

例えば、交差点で右折をしようとしているときや、路外から道路に進入しようとしているときに道を譲られることがあるかと思います。

これに応じて進行を開始した結果、死角から出てきた他の車両やバイク、自転車等と衝突したというケースが典型的なサンキュー事故です。

サンキュー事故の過失割合

交通事故では、事故の類型に応じて基本となる過失割合が定められています。

この過失割合を定めた代表的な文献としては、『別冊判例タイムズ39号』というものがありますが、ここでは、道路状況や当事者の性質(歩行者、自動車、単車等)などによって、基本的な過失割合が決められています。

しかし、これを見ても、道を譲られたという事情をもって、直ちに過失割合を修正しているわけではありません。

道を譲られたとしても、周囲の状況を十分に確認した上で進行しなければなりませんから、その事情は、過失割合を決める際に、考慮され得る事情の一つに留まります。
なお、道を譲ったこと自体に落ち度があるとは考えられませんので、原則、道を譲った側に過失は認められません。

以下では、サンキュー事故が起きやすい状況について、事故類型ごとに具体的な過失割合を見ていきます。

車と車の事故

信号機のある交差点での事故

信号機のある交差点での事故

信号機による交通整理がなされている交差点における右折車と直進車との事故です。
これは、信号の色によって基本となる過失割合が変わっていきます。

例えば、上記図のように、双方が青信号で交差点に進入して衝突した場合、基本となる過失割合は、直進車が20、右折車が80の割合になります。

直進車が優先ですので、その過失割合が低くなりますが、前方を十分に確認していれば事故を回避できた可能性がありますので、直進車にも20の割合の過失が認められています。

信号による交通整理がなされている交差点での直進車と右折車の事故の基本過失割合をまとめると、次のとおりとなります。

信号の状況 直進車(A) 右折車(B)
直進車・右折車ともに青信号 20 80
直進車:黄信号で進入
右折車:青信号で進入→右折時に黄信号
70 30
直進車・右折車ともに黄信号 40 60
直進車・右折車ともに赤信号 50 50
直進車:赤信号で進入
右折車:青信号で進入→右折時に赤信号
90 10
直進車:赤信号で進入
右折車:黄信号で進入→右折時に赤信号
70 30
直進車:赤信号
右折車:右折青矢印信号
100 0

信号機のない交差点での事故

信号機のない交差点での事故

次は、信号機による交通整理がなされていない場合の事故です。

上記の図のように右折車両と対向する直進車が衝突した場合の基本過失割合は、直進車が20、右折車が80となります。

やはり、直進車が優先されるものの、直進車側も十分に注意をしていれば事故を回避できる可能性があるためです。

そのほかの例として、右折車両と左方からきた直進車両が衝突したケースと、右折車両と右方からきた直進車両が衝突したケースがありますが、いずれも同幅員の交差点の場合を前提としています。その基本過失割合は、以下表のとおりです。

なお、幅員が異なる場合や、一方に一時停止義務が課されているなどの場合、基本となる過失割合が異なりますので、ご注意ください。

事故時の状況 直進車(A) 右折車(B)
右折車両と対向する直進車両が衝突したケース 20 80
右折車両と左方からきた直進車両が衝突したケース 30 70
右折車両と右方からきた直進車両が衝突したケース 40 60

片方に一時停止義務がある場合の交差点での事故

片方に一時停止義務が課されている交差点の場合、一時停止が課されている側の方が過失割合が重くなります。

直進車側に一時停止義務が課されている場合における過失割合は、以下表のとおりです。

直進車側に一時停止規制あり(直進車が一時停止せずに交差点内に進入した場合)
事故時の状況 直進車(A) 右折車(B)
右方から自動車が右折 60 40
左方から自動車が右折 70 30

駐車場などからの進入時の事故

駐車場などからの進入時の事故
事故時の状況 直進車(A) 右折車(B)
右折車が路外から進入 10 90

駐車場などの路外から道路に進入しようとした際に、道路上を直進している車両と衝突した場合の基本過失割合は、直進車が10、右折車が90です。

路外から道路に進入する際には、他の車両の正常な交通を妨害してはなりません。
そのため、路外から道路に進入する方の過失が重く認められています。

他方で、直進車側にも、通常の注意義務を尽くしていれば、道路外の車両を認識することが可能と考えられることから、直進車側にも10の過失が認められています。

車とバイクとの事故

次に、自動車と自動二輪車(以下「バイク」と表記します。)との間の事故について、見ていきます。

ここでも、事故類型によって基本的な過失割合が異なります。
そのため、事故類型に応じて記載をいたします。

信号機のある交差点での事故

信号機のある交差点での事故

信号機による交通整理がなされている交差点における直進車(バイク)と右折車(自動車)との事故です。

上記の場合、双方が青信号で交差点に進入していますが、この場合の基本過失割合は、直進車(バイク)が15、右折車(自動車)が85となっています。

自動車同士の事故と比較すると、バイク側の過失が低くなっていますが、これは、バイクと比較して自動車の方が危険性が高いものであるため、被害者保護の観点や優者の方が危険を負担すべきなどの考えに基づくものです。

バイクと自動車の事故の場合でも、信号の状況によって、過失割合が異なります。それをまとめると以下表のとおりです。

直進バイクAと右折車Bの過失割合
事故状況 直進バイク(A) 右折車(B)
A・Bともに青信号 15 85
A:黄信号
B:青信号で進入→黄信号で右折
60 40
A・Bともに黄信号 30 70
A・Bともに赤信号 40 60
A:赤信号
B:青信号で進入→赤信号で右折
80 20
A:赤信号
B:黄信号で進入→赤信号で右折
60 40
A:赤信号
B:右折の青矢印信号
100 0

信号機のない交差点での事故

信号機のない交差点での事故

信号機による交通整理がなされていない場合における直進車(バイク)と右折車(自動車)との間の事故類型です。基本となる過失割合をまとめると以下のとおりです。

なお、自動車同士の事故と同様に、「左から自動車が右折した場合の事故」、「右から自動車が右折した場合の事故」は、同幅員程度の交差点の場合を前提としています。

幅員が明らかに異なる場合や、一方に停止義務が課されている場合、一方が優先道路になっている場合には基本となる過失割合が異なるため、ご注意ください。

直進バイクAと右折車Bの過失割合(信号のない交差点の場合)
事故状況 直進バイク(A) 右折車(B)
対向から自動車が右折 15 85
左から自動車が右折 30 70
右から自動車が右折 20 80

片方に一時停止義務がある場合の交差点での事故

片方に一時停止義務がある場合の交差点での事故

一方に、停止義務が課されている場合における交差点でのバイクと自動車との間の事故類型です。その過失割合をまとめると、以下表のとおりです。

なお、優先道路と交差する非優先道路にも一時停止線が引かれていることがあります。

このケースでは、優先道路と非優先道路が交差する場合の事故類型が優先して適用されるため、以下表の基本過失割合とは異なる点にご注意ください。

直進バイク側に一時停止規制あり(直進車が一時停止せずに交差点内に進入した場合)
事故状況 直進バイク(A) 右折車(B)
左から自動車が右折 55 45
右から自動車が右折 45 55
右折車側に一時停止規制あり(右折車が一時停止せずに交差点内に進入した場合)
事故状況 直進バイク(A) 右折車(B)
左から自動車が右折 15 85
右から自動車が右折 15 85

渋滞中の道路上での事故(バイクのすり抜け)

渋滞中の道路上での事故(バイクのすり抜け)

対向車が渋滞をしている場合に、その間を抜けるように右折をした類型になります。

右折車には右折を急ぐあまり単車に対する注意を怠ったという過失がある一方で、直進しているバイク側も隙間を抜けて進入して来る車両の存在を予想できることから、一定の落ち度が認められています。

交差点の場合では、基本過失割合は、直進するバイクが30、右折する自動車が70です。
また、交差点以外の場合、バイク側にとって、渋滞車両の隙間を抜けてくる車両の予見が難しくなります。

そのため、バイク側の過失が5~10減じられるとされています。

事故状況 直進バイク(A) 右折車(B)
交差点内で衝突 30 70
交差点以外の場所で衝突 20~25 75~80

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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過失割合の修正要素

過失割合は、事故類型による基本過失割合のみで決まるわけではありません。
個々の事情に応じて、基本となる過失割合を修正し、最終的な過失割合を定めていきます。

修正要素は、事故類型によって異なりますが、以下の事情は、修正要素となり易いものになります。なお、繰り返しになりますが、実際に修正要素になるか否かは、事故類型によって異なります。

容易に判断ができないこともありますので、お困りのときは、弁護士等の専門家にご相談ください。

交差点における過失割合の修正要素
右折車の徐行なし 右折車に+10%
右折車の直近右折 右折車に+10%
右折車の早回り・大回り右折 右折車に+5%
右折車の合図なし 右折車に+10~15%
右折車の右折禁止違反 右折車に+10%
右折車の著しい過失・重過失 右折車に+10~20%
右折車の既右折 直進車に+10~20%
直進車の著しい過失・重過失 直進車に+10~20%
直進車の速度違反(15㎞以上/30㎞以上) 直進車に+10~20%
駐車場の出入り口などにおける過失割合の修正要素
路外車が頭を出して待機 直進車に+10%
直進車の著しい過失 直進車に+10%
直進車の重過失 直進車に+20%
路外車・右折車の徐行なし 路外車・右折車に+10%
幹線道路 路外車・右折車に+5%
直進車の速度違反(15㎞以上/30㎞以上) 直進車に+10~20%
渋滞中の車両間の車とバイクの修正要素
バイクの著しい前方不注意 バイクに+10~20%
バイクの著しい過失・重過失 バイクに+20%

サンキュー事故で請求できる慰謝料

実務上、交通事故によって、生命、身体が害された場合、つまり、事故によって怪我をしたり、死亡した場合に慰謝料を請求できると考えられています。

人身事故の場合には、慰謝料請求ができるということです。
他方で、物損事故の場合には、ペットが傷ついたなどの場合を除いて、原則として、慰謝料が発生しないと解されています。

サンキュー事故でも、これは同様です。
人身事故の場合であれば、慰謝料(傷害慰謝料)が請求できる可能性があります。

また、後遺障害が認定された場合には、傷害慰謝料とは別に、後遺障害に関する慰謝料(後遺障害慰謝料)も認められる可能性があります。

過失割合に納得いかない場合の対処法

交渉中であれば、事故の相手(又はその保険会社)との間の協議によって、過失割合が定まることになります。

もし、過失割合に納得がいかない場合には、その旨を伝えつつ、過失割合に関する交渉を行うことが必要です。

他方で、裁判に至っている場合は、訴訟の中で過失割合に関する必要な主張を行うことになります。上述のとおり、過失割合は事故類型によって基本となる過失割合や、修正要素が異なります。

そのため、交渉に当たっては、どの類型に当たるかを見極めながら、ドライブレコーダー等の証拠を踏まえて、基本過失割合や修正要素に関する協議をすることが重要です。

ただ、過失割合に関する協議や主張は容易ではありません。
ご自身で検討することが困難な場合には、専門家に相談することをご検討ください。

交通事故の過失割合に納得がいかない場合の対処法

サンキュー事故の被害に遭った際は、弁護士にご相談ください

ここでは、サンキュー事故について、主に過失割合の観点からご説明をいたしました。
上述のとおり、道を譲られたとしても、周囲への注意を怠ってよいことにはなりませんので、その事情により、直ちに過失が減じられるわけではありません。

ただ、状況によっては、修正要素になることもありますので、個々の事情を踏まえて、過失割合の修正の可否や程度を考えなければなりません。

しかし、過失割合は、法的な評価の問題ですので、妥当な過失割合を判断することは容易ではありません。

弁護士は、専門家として交通事故案件に関わっており、また、サンキュー事故に関する過去の裁判例を調査して対応することも可能です。
サンキュー事故の被害について、お困りのことがあれば、弁護士にご相談ください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。