過失割合10対0になる事故と示談交渉における注意点

交通事故

過失割合10対0になる事故と示談交渉における注意点

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

交通事故の損害賠償請求においては、賠償額を定める場面で相手方保険会社から9:1、8:2、7:3、6:4などの数字を聞くことがよくあります。これは、過失割合といい、発生した交通事故に対するこちらと相手の責任の割合を表した数字です。
こちらと相手どちらにも過失のある交通事故の場合、一般的には、当事者が契約している保険会社の担当者が、過去の裁判例を基準に話し合い、当事者の確認を得て過失割合を決定します。

過失割合10対0の事故とは

客観的に見て、事故を予測することも回避することも不可能だった場合は、過失割合は10:0になります。
しかし、自分では予測も回避も不可能だったと考えていても、客観的にみるとそうではない場合もありますので、あくまでも第三者的な視点を意識することが大切です。

過失割合の修正要素について

不注意の程度が著しかったり、もはやわざと事故を起こしたのではないかと考えられるほど重大な不注意だった場合、急な飛び出しや直前直後の横断、後退などの場合、相手が予測できる程度を超えるため、そのような不注意な行動をとった当事者の責任が1~2割程度、重く修正される可能性があります。

また、住宅街や商店街などの、人通りが多く事故の発生確率が高い場所は特に注意が必要なことや、夜間は見通しが悪くより注意が必要なこと、お年寄りや子供は、判断能力の低下や判断能力が未熟であることにより事故につながりやすい行動をとることがあることから、これらも加害者の責任をより重くする修正要素になります。
他にもいろいろな修正要素があります。いろいろな検討を経て過失割合が決まってきます。

「動いている車同士で10対0はありえない」は本当?

これは、正確に言えば、違います。動いている車同士の事故でも、過失割合が10対0になることはあります。
たとえば、加害者側が一般的な不注意にとどまらず、極めて危険な運転(特に近年問題とされている飲酒運転等)をしていたなどの場合には、修正要素として基本の過失割合を動かすことになり、その結果、過失割合が10対0になることはありえます。

保険会社から提示される際、保険会社の言うことはもっともらしく聞こえるかもしれませんが、それはプロで耳障りの良い言葉を選んでいるからかもしれません。自分でも冷静に事実を分析し、判断していくことが大切です。

車同士、または車とバイクの事故で過失割合10対0になる例

直進同士

信号のある交差点で、赤信号直進×青信号直進で衝突した場合には、10:0になることがあります。
これは、赤信号の車線からは他車が交差点に入ってこないことを前提として走行することが一般的で、他車が出てくることを予測・回避できないと考えられるからです。

赤信号の直進と青信号の右折

信号のある交差点で、赤信号直進×青信号右折で衝突した場合には、10:0になることがあります。
2.1と同じ理由です。

直進とセンターラインオーバー

双方向かい合って直進しており、一方がセンターラインを越えたために正面衝突した場合には、10:0になることがあります。
車線を無視して走行してくる車両がいることは予測・回避できないと考えられるからです。

駐車・停車車両に追突

路肩に駐車していたり、信号待ちで停車しているところに後ろから追突された場合には、10:0になります。
これは、当然ですが前方不注視になるため後ろを見ながら運転することはできません(止まっていたのならなおさら突然動いて回避は不可能です)。そのため、ぶつかるまで相手の車両の動きがわからないので、被害者には回避の可能性がないからです。

自動車と自転車で過失割合10対0になる事故事例

左折自動車と直進自転車

これは、いわゆる巻き込み事故と言われるものです。
直進自転車を追い越したうえで左折した自動車が、自転車を巻き込んで衝突した場合には、10:0になることがあります。

センターラインオーバーの自動車と自転車

自動車と自転車が向かい合って直進していたところ、自動車がセンターラインを越えて自転車に正面衝突した場合には、10:0になることがあります。
しかし、自転車側もセンターラインぎりぎりを走行していた場合には、修正要素により自転車側にも過失が認められることがあります。

自動車と歩行者で過失割合10対0になる事故事例

路肩を歩く歩行者と自動車

歩道の横の路肩を歩いている歩行者に自動車が衝突した場合、10:0になります。

歩車道の区別がない道路の右側を歩く歩行者と自動車

路側帯など、歩道と車道の区別がない道路の右側を歩いている歩行者に自動車が衝突した場合、10:0になります。
ただし、この歩行者が左側を歩いていた場合には、歩行者にも5%程度の過失が認められ、95:5程度になる場合があります。

自転車と歩行者の事故

青信号、または信号のない横断歩道を歩く歩行者との衝突

歩行者が青信号や信号のない横断歩道を歩いているときに自転車と衝突した場合には、10:0になるのが一般的です。

歩道外・路側帯外から出てきた自転車との衝突

自転車が歩道や路側帯の外側から進入し、歩道や路側帯を歩く歩行者に衝突した場合には、10:0になります。

歩車道の区別がない道路の右側を歩く歩行者と自動車

路側帯など、歩道と車道の区別がない道路の右側を歩いている歩行者に自転車が衝突した場合、10:0になります。
ただし、この歩行者が左側を歩いていた場合には、歩行者にも5%~10%程度の過失が認められ、95:5ないし90:10になります。

過失割合10対0の場合、自身の保険会社が交渉してくれない点に注意

過失割合が10:0で自分に過失がない場合には、保険会社は交渉してくれません。そのため、自分自身で示談交渉をしなければなりません。
これは、自分で加入している保険は、自分に何らかの過失があり、保険会社が保険契約に基づき相手方に支払う必要がある場合にのみ非弁行為とならずに対応できるからです(違法行為にならないためにそうしているのであって、決してサービス範囲を減縮しようといった意図の契約内容ではありません。)。
相手方の保険会社は、示談交渉の経験豊富なプロですから、負担分を少しでも減らそうと交渉してくると考えられます。これに対抗するには、自分でもある程度の知識ないし代理人をつける必要があります。

弁護士なら代わりに示談交渉できる

弁護士法によって、弁護士以外の者は、代理交渉できないという縛りがあるので、保険会社が10:0の交通事故の示談交渉をすることはできません。しかし、裏を返せば、弁護士であれば、ご自身の代わりに示談交渉ができます。
交通事故事案の経験豊富な弁護士を選ぶことが、交通事故事案を数多く扱ってきた保険会社に対抗するためには必要だと考えられます。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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保険会社の提案をその場で受け入れないでください

ご自身で保険会社との交渉を進める場合には、必ず即答せずにいったん持ち帰る、検討することを意識する必要があります。即決した方の多くは後悔して相談に来ることになります。
交通事故事案を得意とする弁護士が介入することで、正当な金額を求めて交渉を進めることができます。
弁護士でしたら、その場の雰囲気に流されて、保険会社が正当だと主張する金額を鵜呑みにすることなく、冷静に交渉を進めることができます。結果的に、慰謝料額や示談金額が大幅に上がる可能性がありますので、特にお怪我をした場合には、弁護士にご依頼された方が良いかと思います。

過失割合を10対0に修正出来た事例

事故態様は、自動車で直進中、後方から走行してきた自動車に接触されたというものです。この態様ですが、当初、相手方は、依頼者にも大きな過失があると主張していました。
しかし、弊所にて依頼者と相手の両方のドライブレコーダーを確認し、依頼者の主張と矛盾がないことを確認しました。そのうえで、10:0を主張しました。
ドライブレコーダーには走行速度の記録もあり、走行態様等から見ても依頼者の主張は客観的な証拠に沿っていました。一方で、相手方の主張は客観的な証拠と矛盾していました。そのため、これらについて、相手方に対し、丁寧に一つ一つ説明しました。
結果として、相手方も10:0を受け入れることになり、依頼者に適切な賠償を受けていただくことができました。

過失0といわれても、一度は弁護士にご相談ください

過失0と言われた場合、過失相殺がなくすべての損害賠償金を受け取ることができるため、一見きちんと賠償を受けられるという感覚に陥りやすいです。
しかし、特にお怪我をした場合には、金額も大きく変わってくるので、ぜひ、弁護士にご相談いただいた方が良いと思います。
弁護士費用がネックになって相談できないという方もいますが、ご自身で加入されている保険に弁護士費用特約が付いていれば、ほぼすべての場合に実質負担0円でご相談・ご依頼いただけます。
手続きがわからない場合には、情報提供もできますので、まずは気軽に弁護士法人ALGにお問い合わせください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。