監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
大切なご家族を亡くされた後、残されたご遺族には故人の財産を引き継ぐ「相続手続き」が待っています。
この手続きは複雑で多岐にわたるため、「自分で全て進めるのは難しいのでは?」と不安に感じる方も多いでしょう。
時間や費用を節約するために自分で手続きをしたいと考える一方で、ミスなく確実に手続きを完了させるにはどうすれば良いのでしょうか。
この記事では、自分で相続手続きができるケースと、専門家である弁護士に依頼した方が良いケース、そして自分で進める際のリスクについて詳しく解説します。
目次
相続手続きは自分でできる?
相続手続きは、原則として自分で行うことも可能です。
法的に「弁護士でなければできない」というものではありません。
ただし、故人の出生から死亡までの戸籍謄本など、非常に多くの公的書類を集める必要があり、また、それらの書類を基に、銀行や法務局、税務署など、様々な機関で手続きを行う必要があります。
相続の状況がシンプルであれば自分でも対応しやすいですが、複雑になると専門知識が求められ、時間や労力が大幅にかかることになります。
自分で相続手続きができるケース
相続財産がシンプルで、相続人同士の仲が良い場合は、比較的自分で手続きを進めやすいでしょう。
具体的には、相続人が配偶者と子のみなどで少なく、遺産が現金や預貯金が主で不動産などが少ないケースです。
さらに、遺言書があり、その内容にすべての相続人が納得しており、相続人全員が手続きに協力的であることも重要な条件です。
この場合、金融機関や法務局での手続きのみで完結しやすく、複雑な法律問題が生じる可能性が低いため、自分で書類を集め、手続きを一つずつ完了させることが十分に可能です。
専門家に相続手続きを依頼した方がよいケース
以下のようなケースでは、手続きの複雑さや法的なリスクから、最初から弁護士などの専門家に依頼した方がスムーズです。
相続人の間で遺産の分け方について意見の対立がある場合や、相続財産に不動産や株式、複数の銀行口座など多岐にわたるものが含まれる場合です。
また、相続人の中に連絡が取りにくい人がいる、遺言書の内容に不明確な点がある、あるいは多額の借金があることが判明し、相続放棄を検討する必要がある場合なども、専門的な判断と対応が不可欠となります。
相続手続きを自分で行うときの5つのリスク
必要書類を集めるのに時間と労力がかかる
相続手続きでは、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡まで全ての戸籍謄本など、非常に広範な公的書類の収集が必要です。
これらは複数の役所を回って取得する必要があり、郵送でのやり取りにも時間がかかります。特に、本籍地を何度も変更している場合や、代襲相続が発生しているケースでは、戸籍の数が増え、その読み解きだけでもかなりの労力が必要です。
日中に役所へ行く時間が取れない方にとって、この書類収集の段階で大きな負担となるリスクがあります。
預金解約や不動産の名義変更などやるべきことが多い
集めた書類を基に、次は実際に名義変更や解約の手続きを行う必要があります。
具体的には、銀行口座の解約や名義変更、不動産の所有権移転登記(名義変更)、自動車の名義変更、株式などの証券の移管手続きなど、多岐にわたります。
それぞれの金融機関や法務局で求められる書類が微妙に異なっていたり、手続きのルールが違っていたりするため、一つ一つ個別に確認しながら進める必要があり、予想以上に時間と手間がかかることになります。
裁判所や銀行に何度も足を運ぶ必要がある
手続きを進める上で、戸籍や印鑑証明書などの提出、あるいは金融機関や法務局の担当者との面談が必要になるため、平日の日中に何度も各所へ足を運ぶ必要が生じます。
特に、不動産の名義変更を行う法務局や、複数の銀行が遠方にある場合は、移動だけでも大きな負担となります。
何度も足を運んだにもかかわらず、書類の不備で手続きが完了しないという事態も起こり得るリスクがあります。
手続きの期限に間に合わない可能性がある
相続に関する手続きには、期限が設けられているものがあります。
特に重要なのは、相続放棄や限定承認の申述期限(原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内)や、相続税の申告・納付期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内)です。
これらの期限は非常に短く、手続きに手間取っているうちに期限を過ぎてしまうと、多大な不利益を被るリスクがあるため、迅速かつ正確な対応が求められます。
相続人でトラブルになりスムーズに進まないことがある
相続財産の分け方について、当初は合意できていたつもりでも、手続きの途中でそれぞれの主張がぶつかり、相続人同士でトラブルに発展するリスクがあります。
特に、不動産や非上場株式など、評価が難しい財産がある場合や、寄与分や特別受益を主張する人がいる場合に紛争化しやすいです。
一旦トラブルになると、手続きは完全にストップし、長期化する上、弁護士を立てての交渉や裁判所の調停・審判といった、より複雑な対応が必要になる可能性が高まります。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続手続きを弁護士に依頼するメリット
必要書類の収集など全ての手続きを任せられる
弁護士は、法律に基づき、相続に必要なほぼ全ての手続きを代理で行うことができます。
煩雑な戸籍謄本などの収集、遺産分割協議書の作成、銀行口座の解約手続き、不動産の名義変更に必要な書類作成(司法書士との連携)など、依頼者様がやるべきことを大幅に減らすことができます。
これにより、ご遺族は精神的負担を軽減し、本来故人を偲ぶべき時間を確保できます。
相続トラブルにも適切に対応できる
弁護士は、唯一、相続人の代理人として法律交渉や調停、審判といった裁判所での手続きを行うことができる専門家です。
もし相続人間の意見対立が発生し、遺産分割協議が難航した場合でも、法律の専門家として、解決策を提案し、依頼者の利益を守りながら紛争の解決へと導きます。
また、トラブルの予防的な観点からも、遺産分割協議書の作成を依頼することは非常に有効です。
自分で相続手続きを進めるのが難しいと感じたら、できるだけ早めに弁護士へ相談しましょう
相続手続きは、期限があるもの、専門知識が必要なもの、そして相続人間でトラブルになり得るリスクを多く含んでいます。
特に、「3ヶ月の相続放棄の期限」や「10ヶ月の相続税申告期限」を考えると、手続きを先延ばしにすることは大きなリスクにつながります。
戸籍収集の段階でつまずいた、相続人の連絡先が分からない、遺産の評価が複雑で不安など、少しでも自分で進めるのが難しいと感じたら、是非一度、弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。

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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
