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相続問題

相続手続きの一覧と期限について

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

人が亡くなった後には相続手続きが発生しますが、健康保険等の手続きや税金関係の手続き、亡くなった方(「被相続人」といいます。)の遺産の承継手続きなど、様々な相続手続きを行う必要があります。被相続人の状況や資産状況等で、実際に行う必要があることは大きく異なります。このページでは、被相続人が亡くなってから、対応すべき相続手続きについて、時系列に従ってご説明をしていきます。被相続人が亡くなった後、何をしたらいいのか分からない方のご参考になればと思います。

相続の手続きには期限のあるものが多い

被相続人の死後、遺産が相続人に相続されるなどの相続手続きが発生しますが、相続手続きには、期限があるものが多々あります。後述しますが、相続放棄の申述は、相続開始を知った日から3か月以内に行わなければならず、その期間を過ぎると相続放棄ができなくなってしまいます。以下では、期限のある相続手続きについて、時系列順にご説明いたします。

7日以内に必要な手続き

死亡届の提出
同居の親族、その他の同居者は、被相続人が亡くなったのを知った日から7日以内に死亡の届け出をしなければなりません(なお、同居の親族以外の親族や後見人も死亡届を提出することはできます。)。
死亡届の提出先は、被相続人の本籍地、届出人の所在地または死亡地を管轄する役所です。
また、死亡届には死亡診断書又は死体検案書を添付する必要があります。

10日以内に必要な手続き

被相続人の年金受給の停止(厚生年金)
被相続人が厚生年金を受給していた場合、同居の親族、その他の同居者は、被相続人が死亡した日から10日以内に、年金事務所又は街角の年金相談センターに、「受給権者死亡届」を提出する必要があります。ただし、日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合は、原則として、届け出を省略することができます。
上記の届出の際には、被相続人の年金証書、死亡の事実を確認できる書類(戸籍抄本や市町村長に提出した死亡診断書の写し等)が必要となります。

14日以内に必要な手続き

保険証の返還

被相続人が国民健康保険に加入していた場合、被相続人が亡くなってから14日以内に居住地を管轄する役所に、「国民健康保険資格喪失届」を提出する必要があります。この際、死亡を証明する書類(戸籍抄本や市町村長に提出した死亡診断書の写し等)、国民健康保険証が必要となります。
なお、市区町村によっては死亡届の提出によって、国民健康保険資格喪失届の提出が不要になるところもあります。ただし、その場合でも保険証を返還する必要があります。

被相続人の年金受給の停止(国民年金)

被相続人が国民年金を受給していた場合、同居の親族、その他の同居者は、被相続人が死亡した日から14日以内に、年金事務所又は街角の年金相談センターに、「受給権者死亡届」を提出する必要があります。
なお、被相続人が厚生年金も受給している場合は、上記のとおり、被相続人が亡くなってから10日以内に死亡届を提出する必要があります。そのため、被相続人が国民年金のみを受給している場合なければ、10日以内に届け出をしていることとなります。

3ヶ月以内に必要な手続き

相続方法の選択

被相続人が亡くなると、その遺産を相続人が承継することになります。しかし、被相続人が多額の負債を抱えているなどの場合、相続したくない場合もあるでしょう。このように被相続人が多額の負債を有していた場合は、相続する(単純承認)のか、相続放棄をするのか、または、限定承認という方法を取るかを選択する必要があります。この選択は、相続開始を知った日から3か月以内にする必要があります。

まず、相続の方法として単純承認という方法があります。一般的に相続というと、この単純承認をイメージすることが多いと思いますが、単純承認とは、被相続人の全ての遺産(プラスかマイナスかを問わず、すべての遺産)を相続するというものです(なお、複数の相続人がいる場合は、法定相続分に応じて相続することになります。)。
次の限定承認及び相続放棄をしない場合は、単純承認をすることになります。

次に限定承認という方法について、これは遺産にマイナスの遺産が含まれている場合、相続人が相続によって得た限度で、このマイナスの遺産について弁済する義務を負うという相続の方法です。例えば、プラスの遺産が500万円、マイナスの遺産が800万円あるとします。この場合において、限定承認をすると、相続人は、マイナスの遺産のうち500万円のみを弁済する義務を負い、それ以上は弁済する義務を負いません。
限定承認は、相続人全員で、家庭裁判所に申述をする必要がありますので、この方法を選択する場合は、相続人全員の協力が必要となります。

最後に相続放棄について、これは、被相続人の遺産をすべて相続しないというものです。プラスの遺産も相続しませんが、マイナスの遺産も相続しませんので、マイナスの遺産の方が大きい場合は、相続放棄をすることを考えることになります。相続放棄をするためには、家庭裁判所に対する申述が必要です。限定承認と異なり、各相続人が単独で自己の相続について、放棄をすることができます。

相続財産の調査、目録の作成

上記のとおり、限定承認をする場合は、相続人全員で家庭裁判所に申述をしなければなりませんが、この申述をする際には、相続財産の目録を作成して提出する必要があります。
そのため、限定承認をする場合には、相続開始を知ってから3か月以内に、相続財産を調査し、それを目録にまとめる必要があります。
なお、限定承認を選択しない場合は、相続財産の目録を作成する時期に決まりはありません。例えば、単純承認をする場合、遺産分割協議のために相続財産の調査や目録を作成することが多いですが、期間制限はありません。遺産分割協議を始めるまでに作成をしておけば足りることが多いでしょう。

4ヶ月以内に必要な手続き

準確定申告
準確定申告とは、年の途中で死亡した人の相続人が、1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して申告をすることをいいます。準確定申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行わなければなりません。事業所得や不動産所得があった場合、複数の箇所から給与を得ていた場合には準確定申告が必要となります。

10ヶ月以内に必要な手続き

相続税の申告及び納税

被相続人の相続財産が相続税を納めなければならないくらい多い場合、被相続人が亡くなった後、10か月以内に、相続税の申告をして、相続税を納める必要があります。
現行法上、基礎控除は、「3000万円+(600万円×法定相続人の人数)」となっています。そのため、例えば、被相続人の遺産が5000万円で、相続人として子が2人というような場合、遺産が、基礎控除の4200万円(=3000万円+(600万円×2人))を超えますので、相続税の申告が必要となります。
なお、生命保険金が相続税の課税対象とされたり、他にも様々な特例があるなど、相続税独自のルールがあります。相続税申告に関して、心配な場合は、専門家に相談した方がよいでしょう。

遺産分割協議書の作成

上記のとおり、相続税の申告は、被相続人が亡くなってから10か月以内に行う必要がありますが、相続人が収めるべき相続税は、相続した遺産の割合に応じて、その額が異なります。そのため、被相続人が亡くなってから10か月以内に遺産分割協議を成立させ、遺産分割協議書まで作成したいところです。
もっとも、遺産の調査に時間を要したり、遺産分割協議に時間を要することも多々あります。このような場合、被相続人が亡くなってから10か月以内に遺産分割協議を成立させることができないことがあります。10か月を超える場合は、法定相続分に従って遺産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税をすることになります。遺産分割が終わった後に、必要に応じて、修正申告又は更正の請求をすることになります。

1年以内に必要な手続き

遺留分侵害額請求
例えば、被相続人が、特定の相続人にすべての遺産を相続させる旨の遺言書を作成していた場合、その相続人がすべての遺産を相続することになります。しかし、相続には、相続人の生活保障という側面もあるため、上記のように、特定の相続人にすべての遺産を相続させるとなっていても、他の相続人は、その相続人に対して、一定の額の支払いを求めることができます。これを遺留分侵害額請求と言います。
遺留分侵害額請求は、相続の開始及び遺留分を侵害されていることを知ってから1年以内に行使しない場合、時効によって消滅します。そのため、遺留分侵害額請求権を行使したい場合は、相続開始及び遺留分を侵害されたことを知ってから1年以内に行使する必要があります。

2年以内に必要な手続き

埋葬料・葬祭費の請求
被相続人が亡くなった場合、健康保険から、埋葬料や葬祭費と呼ばれるものが支給されることがあります。被相続人が国民健康保険に加入していたのか、それとも健康保険に加入していたのかによって支給要件や支給額が異なりますが、いずれについても、被相続人が亡くなってから2年以内に請求する必要があります。
なお、被相続人が労働災害によって死亡した場合は、健康保険ではなく、労災保険給付として葬祭費が支給されることになります。これについても、被相続人が亡くなってから2年以内に請求する必要があります。
上記のとおり、被相続人が亡くなった場合、埋葬料や葬祭費と呼ばれるものが支給されることがありますが、被相続人の死亡後、2年以内に請求する必要がありますので、忘れずに請求をするようにしましょう。

3年以内に必要な手続き

生命保険(死亡保険)の生命保険会社への請求

保険金を請求する権利は、その権利を行使することができる時から3年以内に行使しなければ時効によって消滅するとされています。生命保険金の場合は、被相続人が亡くなった時から保険金の請求ができると考えられますので、被相続人が亡くなってから3年以内に請求する必要があります。
どこの保険会社に加入をしているか知っていれば、3年もあれば、十分に手続きを行うことができるでしょう。一方で、保険会社が分からない場合、調査が必要となり、調査をするのに一定の時間を必要とします。保険会社が分からない場合は、速やかに調査をして、保険金の請求をした方がよいでしょう。

相続税の軽減措置

上記のとおり、相続税は、被相続人が亡くなってから10か月以内に申請をする必要があります。10か月以内に遺産分割協議が成立すれば、申告の際に小規模宅地等の特例や配偶者の税額の軽減の特例などの適用を受けた上で申請ができます。
しかし、遺産分割協議が成立していない場合、これらの特例を受けた上で申請をすることはできません。これらの特例の適用を受けることができるのは、遺産分割協議成立後の修正申告や更正の請求の際になります。ただし、原則として、申告期限から3年以内に修正申告や更正の請求をしなければ、特例の適用を受けることができません。
そのため、相続税の申告期限内に遺産分割協議が成立しないとしても、申告期限から3年以内(つまり、被相続人が亡くなってから3年10か月以内)には、遺産分割協議を成立させ、修正申告または更正の請求をする必要があります。

5年以内に必要な手続き

相続税の還付請求
場合によっては、相続税を払いすぎてしまったということが起こり得ます。例えば、遺産に不動産がある場合、その不動産の評価については、様々な方法がありますので、評価の方法によっては、高めの金額に評価してしまうことがあります。その結果、過分に相続税を払いすぎているということが起こり得ます。このように過分に相続税を払い過ぎた場合には、相続税の還付請求を行うことで、払い過ぎた相続税の返還を受けることができます。
この相続税の還付請求は、申告期限から5年以内(つまり、被相続人が亡くなってから5年10か月以内)に請求しなければならないとなっています。相続税を払いすぎたかもしれないという場合は、申告期限から5年以内に手続きを行うようにしましょう。

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期限のない相続手続き

上記においては、期限のある手続きに関して、ご説明をしてきました。しかし、すべての相続手続きに期限が設定されているわけではありません。もちろん、相続手続きを放置し続けると権利関係を複雑にしてしまうなどの不都合が生じます。そのため、期限がなくても早めに手続きをした方がよいでしょう。以下において、期限のない相続手続きについて、ご説明します。

遺産分割協議

遺産分割協議とは、法定相続人の協議によって誰が、どの遺産を承継するのかを決めることをいいます。上記のとおり、相続税申告との関係を考えると、遺産分割協議を早めに行う必要があります。もっとも、遺産分割協議自体については、期限が定められているわけではなく、遺産分割の未了のままで放置されているという場合があります。しかし、遺産分割未了のままで放置すると、相続人が増えてしまったり、関係性が希薄な相続人で協議しなければならなくなるなど、事実上、協議ができなくなってしまうことがあります。
上記のとおり、遺産分割協議について、期限が定められていませんが、未分割のままで放置すると協議ができなくなってしまう可能性があります。そのため、放置することなく、協議を進めた方がよいでしょう。

遺言書の有無の確認、検認

遺言書がある場合、相続は、その遺言書に従って行われることとなります。遺言書の有無の確認について、期限を定められているわけではありませんが、遺産の承継手続きを進めるために、早めに遺言書の確認をした方がよいでしょう。
もっとも、被相続人が自筆で遺言書を作成して、どこかに保管していた場合、遺言書を探すことは容易ではありません。被相続人が亡くなった後では、遺言書の場所を聞くこともできません。あらかじめ遺言書の場所を確認しておくとか、公正証書遺言、自筆証書遺言の保管制度を利用するなどして、遺言書の場所が分かるようにしておいた方がよいでしょう。
なお、自筆証書遺言については、保管者がいる場合においては相続の開始を知った後、保管者がない場合においては相続人が遺言書を発見した後、遅滞なく検認手続きをしなければならないとされています。具体的な期限は定められていませんが、遅滞なく手続きを経るようにしましょう。

法定相続人の確定

遺産分割協議を行う場合、その前提として法定相続人を確定する必要があります。これは、遺産分割協議が、法定相続人全員で行わなければならないためです。
遺産分割協議の期限が定められていない関係上、法定相続人の確定についても、期限が定められていないこととなります。もっとも、上記のとおり、遺産分割協議をしないままに放置をすると、遺産分割協議が、事実上、不可能になるなどの不都合が生じます。そのため、遺産分割協議については、速やかに行うべきであり、法定相続人の確定についても早めに行うべきといえます。

預貯金などの解約、名義変更

遺産に預貯金などがある場合、解約や名義変更をすることで遺産の承継をすることになります。このような預貯金の解約や名義変更を行わずに長年放置すると、休眠口座になり、金銭を引き出すためには一定の手続きを必要とします。また、銀行によっては、取引停止にするなどの対応をしており、いずれにしても、放置することは望ましくありません。
そのため、預貯金などの解約、名義変更手続きについても、早めに行うようにしましょう。

(不動産を相続する場合)相続登記

遺産に不動産がある場合、相続によりその不動産を取得したことを登記する必要があります。中には、相続登記を行わないまま、長年放置されることがあり、何十年も前に亡くなった方の名義が現在においても残存しているという場合もあります。
しかし、不動産の名義変更をしていないと、不動産を売却することが困難になるなど、一定の不都合が生じます。また、名義変更変更未了のまま、何十年も放置すると、多数の相続人が生じ、その結果、所有権移転登記をするためには、何十人もの相続人の協力が必要になるということも起こり得ます。
そのため、相続により不動産を取得した場合には、名義変更手続きも忘れずに行った方がよいでしょう。

(車やバイクを相続する場合)名義変更

車やバイクについては、所有者の名義が登録されています。不動産の場合と同様、名義変更を行わないと、売却することが困難となります。不動産と異なり、車やバイクの場合、使用を続けるといつかは稼動しなくなるため、処分(廃棄)することも考えなければなりません。他人名義の車やバイクを処分(廃棄)することも困難ですので、名義変更を行っていないと処分(廃棄)することも難しくなってしまいます。
そのため、車やバイクについても、速やかに名義変更手続きを行うべきといえます。

相続の手続きは自分でできる?

相続人であれば、被相続人の遺産を調べたり、預金の払い戻しを受けたりなどの手続きを行うことができます。そのため、相続人自身で相続手続きを行うことは可能です。
もっとも、相続手続きをするには、相続人の調査(具体的には、被相続人の生まれてから死ぬまでの戸籍の取得)、被相続人の遺産の調査(具体的には、銀行や保険会社に問い合わせたり、不動産の登記を取得する等)が必要であり、相当な手間がかかります。仕事や家事をしながら、これらの手続きを一人で行うことは相当な負担が可かることと思います。
上記のとおり、相続の手続きは自分でできる一方、負担も多々ありますので、対応が難しい場合は、弁護士等に依頼をした方がよいでしょう。

相続手続きについてわからないことがあったら弁護士にご相談ください

このページでは、被相続人が亡くなった後から、順次行う必要がある相続手続きについてご説明をいたしました。相続手続きは、順次対応しなければなりませんが、被相続人が亡くなった後であり、精神的にも大変なことだと思います。また、他の相続人と意見対立が生じた場合、どのように対応すべきなのか法的な議論も多々生じ得ます。相続手続きに関して、不明なことがありましたら、弁護士にご相談いただければと思います。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。