監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
兄弟姉妹の間で不和が生じた、また、遠方への引っ越し等により自然に連絡の機会が減少していったなど、様々な事情のもとで兄弟姉妹と絶縁状態になることも少なくありません。
絶縁した兄弟姉妹がいる中で相続が発生すれば、その兄弟姉妹にも連絡をするべきなのか、どのように遺産分割を進めていけばいいかなど、疑問や不安もたくさん生じると思います。
そして、絶縁した兄弟に対して適切な対応を取らなかった場合、さらなるトラブルが生じる危険もあります。
本記事では、絶縁した兄弟姉妹がいる場合の手続の進め方や、相続させたくない場合の対処法、弁護士に相談するメリットを解説するとともに、よくある疑問についても回答いたします。
目次
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続はどうなる?
そもそも、兄弟姉妹が相続人となるのは、大きく分けて2パターンあります。
1パターン目は、亡くなった方(被相続人と言われます。)が親の場合です。
この場合は、被相続人の子であるあなたや他の兄弟姉妹は当然に相続人になります。
2パターン目は被相続人が兄弟姉妹の場合です。
この場合にあなたや他の兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人に子・孫・ひ孫がおらず、かつ親・祖父母などの尊属もいない場合に限定されます(民法889条、887条)。
もっとも、上の状況を満たす場合には、仮に絶縁状態の兄弟姉妹がいたとしても、その兄弟姉妹は相続人になります。
法律上は、絶縁状態になっていたとしても、その者と兄弟姉妹関係が喪失することはないからです。
絶縁した兄弟姉妹がいる場合の遺産相続の進め方
相手の連絡先を知っているケース
絶縁した兄弟姉妹の連絡先を知っている場合、遺産分割を有効に成立させるために、その相手に遺産分割協議を行う必要があることを連絡し、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。
絶縁した兄弟姉妹と連絡をとれたとしても、その相手が遠方に居住していることもあると思います。この場合は、手紙やメール、LINEなどによって遺産分割協議を進めていけばよいでしょう。
なお、相手と感情的に対立していて、連絡を取ることに不安を感じている方もいらっしゃると思います。この場合は、弁護士に代理人となってもらうことで、相手との直接の交渉を弁護士に行ってもらうことができます。
相手の連絡先を知らないケース
絶縁した兄弟姉妹の連絡先を知らない場合、その相手と連絡を取るために、相手の現住所を知る必要があります。
相手の現住所は、まず被相続人の戸籍の附票を取得してその相手の本籍を把握した上で、相手の本籍が置かれている自治体から相手の住民票を取得することで、知ることが可能です。
相手の現住所を知ることができたら、遺産分割協議を行う旨の連絡文を相手の住所に送り、遺産分割協議を進めましょう。
それでも相手の住所がわからない場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てを行い、その相手の代わりに不在者財産管理人に遺産分割協議に参加してもらうことで、有効に遺産分割協議を行うことができます。
なお、上記の所在調査をしても相手の住所がわからない場合や、こういった手続を行うことが大変と感じる場合は、一度弁護士に相談するとよいでしょう。
相手の生死が7年以上不明のケース
相手の現住所がわからず、その生死が7年以上不明な場合、失踪宣告(民法30条)をすることで、その相手が死亡したものとみなして、相手を相続人ではなくすることができます。
この場合、相手を遺産分割協議に参加させなくても、有効な遺産分割協議を行うことができるようになります。
なお、相手を失踪宣告した場合に、相手が死亡したものとみなされる時点は、相手の生死が不明になってから7年が経過した時点になります。
失踪宣告の申立てにおいて、被相続人がなくなった時点より7年以上前の時点から相手の生死が不明である旨主張すると、被相続人の死亡以前にその相手が死亡したとみなされることになります。
このとき、相手の子が存在していれば、その相手の子が相手に代襲して相続人になり、相手の子を遺産分割協議に参加させる必要が生じます。
そのため、失踪宣告の申立てを行う際は、相手の生死が不明になった時点に注意して申し立てるようにしましょう。
絶縁した兄弟姉妹に相続させたくない場合の対処法
まず、絶縁した兄弟姉妹と連絡を取ることができるのであれば、その兄弟姉妹に相続放棄をしてほしいとお願いをし、相続放棄をしてもらうという方法があります。
もっとも、相続放棄は放棄を行う相続人が自ら家庭裁判所で手続を行わなければできないため、その兄弟姉妹に相続させないことができるのは、その兄弟姉妹が相続放棄の手続を行ってくれた場合に限られます。
その兄弟姉妹が相続放棄の手続を行ってくれるかわからない場合や、相続放棄をしてほしいという連絡をしたくない場合、またそもそも連絡が取れない場合には、被相続人にお願いをして、その兄弟姉妹には相続させないという内容の遺言書を被相続人に作成してもらうという方法もあります。
なお、被相続人が親であり子が相続人である場合、子の兄弟姉妹は相続人の子として遺留分が認められます。
そのため、遺留分を侵害するような遺言は認められないので、この点は相続放棄がされた場合と異なる点に注意が必要です。
一方、被相続人に配偶者・子・直系尊属がおらず、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となる場合には、兄弟姉妹には遺留分はありません。
また、被相続人を騙したり脅したりして上記の遺言書を作成してもらった場合、相続欠格に該当して相続人になることができなくなることにも気を付けましょう。
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続を弁護士に相談するメリット
絶縁した兄弟姉妹と連絡をとることは、絶縁の理由にかかわらず負担が大きいものと思います。
弁護士に相談をすれば、絶縁した兄弟姉妹と直接連絡を取らずに遺産相続を行う方法を知ることができる点が大きなメリットになると考えます。
また、不在者財産管理人や失踪宣告の申立て、所在調査などの手続は難しいものです。
弁護士に相談すれば、これらの手続を行うべきか、どのように行うかを知ることができる点もメリットかと思います。
さらに、弁護士に事前に遺産分割の相談をしていれば、法的な知見から他の相続人と法的な紛争をあらかじめ避けることができたという可能性もあります。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続についてのQ&A
絶縁した兄弟に遺産相続の連絡をしましたが返事がありません。放っておいて手続きを進めても良いですか?
遺産分割協議は相続人全員が同意しなければ有効に成立しません。
そのため、絶縁した兄弟姉妹にも遺産分割協議に参加してもらわなければ有効な協議とは認められません。
これは、絶縁した兄弟姉妹から返事がなかったとしても変わらないので、返事がなかったとしても、その兄弟姉妹を除いて手続を進めることはやめるべきでしょう。
返事がない場合には、内容証明郵便や特定記録郵便を送るなどして再度の連絡を試みましょう。
それでも返事がないときは、遺産分割調停を申し立てることも視野に入れるべきでしょう。
遺言書に絶縁した兄弟の名前がありませんでした。連絡せずに相続手続きしても良いですか?
遺言書が公正証書遺言の方式で作成されている場合や、自筆証書遺言の方式で作成されていて遺言書保管制度が使用されていない場合には、家庭裁判所から相続人に連絡がされることは通常ありません。
遺言書が存在する場合、基本的に、遺言書の内容に従って遺産分割が行われることになります。
遺言書に絶縁した兄弟姉妹の名前がなかったとしても、その兄弟姉妹には関係のないような遺言書の内容であれば、その兄弟姉妹に連絡を取らないまま手続を行うことも可能ではあります。
もっとも、被相続人が親となる場合には、被相続人の子であるその兄弟姉妹にも遺留分が生じます。
被相続人の子であるその兄弟姉妹に連絡をしないまま手続を進めると、遺留分侵害額請求をされるおそれがあります。
一方で、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合には遺留分がないため、遺言書において全く遺産の相続が認められていない兄弟姉妹については連絡を取らずに手続きを進めても問題はありません。
絶縁状態の兄弟に連絡をせず勝手に遺産分割や相続手続きを行ったらどうなりますか?
上記でも述べました通り、遺産分割協議は相続人全員が同意しなければ有効に成立しません。
そのため、絶縁した兄弟姉妹に連絡せず勝手に遺産分割協議を行ったとしても、相続人全員の合意がないとして、その協議は無効になります。
絶縁した兄弟姉妹を除いて遺産分割や相続手続を進めた場合、その兄弟姉妹から遺産分割の有効性を争うような主張がされかねず、さらには調停や審判が申し立てられる可能性があります。
したがって、絶縁した兄弟姉妹だからといって連絡することなく遺産分割や相続手続をすすめることは避けるべきです。
兄弟姉妹との遺産相続でトラブルにならないためにも弁護士にご相談ください
絶縁した兄弟姉妹がいる場合、感情的な対立があったり、連絡手段がなかったりして、一般的な遺産相続よりもトラブルに発展する可能性があります。
このようなトラブルを回避するためには、適切な手段をとるべきでありますが、適切な手段をとるためには弁護士に相談することが最も確実だと思われます。
弊所の弁護士は、相続事件も取り扱っておりますので、相続を円滑に進めるためのアドバイス・サポートをすることができます。
絶縁した兄弟姉妹がいる場合の相続に直面してお困りの方やもちろん、その他相続に関する相談についても、ぜひ一度、弊所の弁護士にご相談ください。

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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
