養育費算定表で養育費の相場を調べる方法

離婚問題

養育費算定表で養育費の相場を調べる方法

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

離婚後、子供と離れて暮らす親はもう一方に養育費を支払う義務があります。養育費は子供の生活に欠かせないものですので、たとえ自身の生活が苦しくても支払義務を免れることは基本的にできません。
しかし、離婚時に養育費の金額で揉める夫婦は少なくありません。将来の出費も不透明ななか、具体的な金額を取り決めるのは難しいでしょう。
そこで活用できるのが養育費算定表です。養育費算定表では、ご自身の状況に応じて養育費の相場を確認できるので、スムーズな取り決めに役立ちます。
本記事では、養育費算定表の使い方について解説していきます。よくある質問も取り上げていますので、参考になさってください。

目次

養育費算定表とは

養育費算定表とは、離婚後に支払うべき養育費の相場を示した表です。子供の人数や両親の収入に応じて、目安となる金額が定められています。
仕組みとしては、まず収入の多い方の親(義務者)が子供と同居していると仮定し、子供にかかる生活費を求めます。そして、この生活費を両親の収入の割合で按分し、もう一方(権利者)に支払うべき金額を算出しています。

養育費算定表は、実際の調停などでも使用されますし、夫婦の話し合いで参照することも可能です。裁判所のホームページで公開されていますので、金額で揉めている場合には活用すると良いでしょう。

新養育費算定表について

2019年12月には、約16年ぶりに養育費算定表が改訂されました。改訂後は、新養育費算定表をもとに計算することになります。
本改訂では、両親の基礎収入や子供にかかる生活費の計算方法が見直され、養育費が全体的に底上げされています。
この背景としては、増税・物価の変動といった社会情勢の変化や、ひとり親世帯の貧困化が挙げられています。養育費算定表の改訂により、より生活実態に見合った養育費が支払われると期待されています。

養育費算定表の使い方

では、養育費算定表の使い方を具体的にみていきましょう。細かな数字が多く抵抗を感じるかもしれませんが、流れに沿って行えば難しいことはありません。順序を追ってご説明します。

子供の人数と年齢を確認する

養育費算定表はいくつか種類があり、子供の人数と年齢によって使い分けがなされています。そのため、まずは養育費の対象となる子供の状況を整理しましょう。
なお、子供の年齢は0~14歳、15歳以上で区別されていますので、例えば子供が3人の場合、1人目が15歳以上、2人目と3人目が14歳以下というように整理します。

裁判所のHPから該当の算定表をダウンロードする

養育費算定表は裁判所のホームページに掲載されており、誰でも閲覧することができます。
また、子供の人数と年齢に応じて9つの表がありますので、前項で整理した内容と合致する表を選択しましょう。

すぐに算定表をご覧になりたい方は、以下のページをご覧ください。なお、養育費のほか婚姻費用の算定表も掲載されていますので、間違えないようご注意ください。

養育費算定表(裁判所)

義務者(支払う側)の年収を確認する

義務者(養育費を支払う側)の年収は、算定表の縦軸をみて該当する箇所をチェックします。
なお、年収は2列表記となっており、給与所得者(会社員やパート、アルバイト、派遣社員など)であれば外側の列を、自営業者であれば内側の列にあてはめます。
また、年収は数十万円単位で書かれていますが、中間的な金額の場合はより近い数字をみるとされています。例えば315万円の給与所得がある場合、縦軸の300万円と325万円のうち、より近い325万円を基準にするということです。

権利者(もらう側)の年収を確認する

権利者(養育費をもらう側)の年収については、算定表の横軸をみて該当する箇所をチェックします。
なお、給与所得者と自営業者で参照する列が異なる点や、年収が中間的な金額のときの対応については、義務者の場合と同様です。

2つの年収を辿り、養育費の金額を決定する

義務者と権利者の年収をあてはめたら、2つが交わる位置を確認しましょう。その枠に書かれた金額が、養育費の基準となります。
なお、養育費の金額は、義務者の年収が少ない場合は1万円、それ以外の場合は2万円の幅があります。その金額の範囲内で決めることになりますが、交差する位置により近い金額とするのが一般的です。例えば2万~4万円の枠で交わる場合、上部で交われば4万円、下部で交われば2万円といった具合です。

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養育費算定表の結果はあくまでも相場

養育費算定表の金額は相場にすぎないため、必ずしも従う必要はありません。夫婦が合意すれば自由に決めることができ、算定表の金額から増減させることも可能です。
むしろ、「算定表の金額では足りない」という方も多いと思われます。というのも、養育費算定表は子供が公立学校に通うことを前提としており、習い事や突発的な出費には対応していないからです。
算定表に固執せず、実情に即した金額を定めるのが望ましいでしょう。

養育費算定表に関するQ&A

養育費算定表以上の金額をもらうにはどうしたらいいですか?

話し合いでも裁判でも、算定表以上の金額を請求するにはその根拠を示すことが重要です。算定表は標準的な金額にすぎないため、足りないことを証明できれば増額できる可能性は十分あります。
例えば、子供が私立学校に通っている場合には学費の金額がわかる書面を、習い事をしているのであれば月謝代がわかる書面などを揃えましょう。

なお、話し合いで金額に合意した場合、合意内容は公正証書に残すことをおすすめします。特に「強制執行認諾文言付公正証書」にしておけば、相手が養育費を支払わない場合に財産を差し押さえ、強制的に金銭を回収することができるため安心です。

古い算定表で金額を決めました。新養育費算定表の金額で支払ってほしいのですが、どうしたらいいですか?

算定表の改訂は、養育費を増額すべき事情変更にはあたらないと定められています。よって、算定表が改訂されたことだけを理由に養育費を増額することはできません。また、過去に遡っての増額請求もできないのが基本です。

新算定表の金額で支払ってもらうには、当事者で再度話し合って合意するか、調停など裁判所の手続きによって新たな金額を取り決めなければなりません。このとき、増額が必要な事情の変化(収入の減少、子供の私立学校への進学など)を明確にできれば、増額が認められる可能性は高いでしょう。

子供に障害があるため医療費がかかります。それでも算定表の額しか支払ってもらえないのでしょうか?

子供の持病によって特別に医療費がかかる場合、算定表以上の養育費が認められる可能性があります。また、子供の病気などで突発的に高額の医療費がかかった場合、義務者にその分担を求めることも可能です。
もっとも、通常の医療費は算定表の金額に含まれているため、別途請求が必要な根拠を示す必要があります。また、増額幅は実際の出費を参考に決めるため、毎月の領収書や明細書など実際にかかった金額がわかる書面を保管しておきましょう。

新算定表の額が高すぎると調停を申し立てられました。減らさなければいけないのでしょうか?

調停では、最新の算定表をもとに話し合いが進められるのが基本です。また、調停委員もこれに沿って具体的な金額などを提示するため、相手の主張に必ずしも応じる必要はありません。
ただし、離婚後に事情の変化があり、相手が養育費減額調停を申し立てた場合、減額が認められる可能性はあります。
養育費を減額すべき事情の変化とは、以下のようなものです。

  • 義務者が失業や解雇、病気などで減収した
  • 権利者が就職、昇進などで増収した
  • 義務者、権利者が再婚した(詳しくは次項をご覧ください。)

再婚を理由に算定表の金額よりも養育費を減らしたいと言われました。受け入れなければいけないのでしょうか?

再婚したからといって、当然に養育費が減額されることはありません。ただし、再婚後の事情によっては減額が認められてしまうこともあります。
まず、相手(義務者)が再婚し、相手と再婚相手の間に子供が生まれた場合※、養育費の減額が認められる可能性が高いです。新たな子供を扶養しつつ、当初の養育費を支払い続けるのは経済的負担が大きいからです。 また、こちら(権利者)が再婚し、子供と再婚相手が養子縁組をした場合も、養育費は減額され得るでしょう。この場合、再婚相手が一次的な扶養義務を負い、基本的に義務者の責任は免除されるためです。

※相手が再婚相手の子供と養子縁組をした場合も同様です。

子供が4人以上いる場合の養育費算定表がありません。相場はどう調べればいいでしょうか?

子供の人数が多い場合、算定表の基礎である算定式をもとに養育費の金額を決定します。仕組みとしては、子供の生活費を義務者と権利者の基礎収入で按分し、義務者が負担すべき養育費を求めます

基礎収入とは、年収から税金や社会保険料、その他経費を差し引いた金額で、養育費の捻出の基礎となる収入をいいます。総収入に一定割合をかけて算出します。
子供の生活費とは、成人に比べ、子供にどれだけの生活費がかかるのかを示した割合です。具体的には、「(義務者の基礎収入×子供の生活費指数)÷義務者と子供の生活費指数の合計」という式で算出します。

養育費の金額は、上記を踏まえ以下の式で算出することができます。
(子供の生活費×義務者の基礎収入)÷義務者と権利者の基礎収入の合計

上の子を夫が引き取り、下の子2人を私が引き取ることになりました。算定表はどう見たらいいのでしょうか?

養育費算定表は、権利者がすべての子供を引き取ることを想定しています。よって、両親がそれぞれ子供を引き取る場合、別の方法で養育費を算出する必要があります。
計算方法としては、子供全員を権利者が監護すると仮定したうえで、義務者が監護する子供の配分割合を控除するのが一般的です。 ここでは、第1子が15歳以上、第2子と第3子が14歳以下と仮定して説明します。
まず、権利者が3人の子供を引き取った場合の養育費を算定表で求めます。本例では、10万円 だったと仮定しましょう。
次に、子供3人の生活費指数を合計し、義務者の負担割合を調べます。生活費指数は15歳以上が85、14歳以下が62なので、合計209 となります。
また、義務者は権利者が監護する2人分の養育費を支払えば良いので、負担割合は「(62+62)÷209= 0.59 」となります。 よって、養育費の相場は、10万円×0.59= 5.9万円 と求めることができます。

算定表に書かれている年収は手取りですか?支払額ですか?

算定表の年収は、手取りではなく税込みの金額です。給与所得者の場合、源泉徴収票の「支払金額」の欄に記載されています。
自営業者の場合、確定申告書の「課税される所得金額」に、「実際に支出していない費用」を加算して算出するのが基本です。

養育費のことでお困りのことがあれば、弁護士への相談がおすすめ

子供の生活のため、適切な養育費を請求することはとても重要です。養育費算定表を踏まえ、実情も加味した金額を求めるべきでしょう。
しかし、養育費はお金にかかわるうえ、長期的に支払うものですので、離婚時に揉めやすい項目です。まして相場以上の金額を請求する場合、相手がなかなか応じてくれないこともあるでしょう。
そこで、養育費のお悩みはぜひ弁護士にご相談ください。弁護士は相手との交渉を代理できるだけでなく、増額が認められるポイントなどを熟知しています。ご依頼者様の事情に応じて、適切な金額を漏れなく請求することが可能です。また、弁護士に依頼することで、交渉がスムーズに進む可能性も高くなります。
弁護士法人ALGには、離婚問題に詳しい弁護士が多く在籍しています。スムーズに手続きを進めるためにも、養育費でお困りの方はお気軽に弊所へお問い合わせください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。