監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
結婚をしても、お互いの両親との交流は避けて通れません。
その交流の中で、姑との間に摩擦が生じ、その関係が悪化することもあるかと思います。
そして、このような嫁姑問題に疲弊し、離婚を考えている人もいるでしょう。
このような場合に、姑との関係性を理由として離婚することができるのか、また、慰謝料請求をすることもできるのか、これらについて、離婚率や離婚前に考えるべきことにも触れながら解説していきます。
目次
嫁姑問題を理由に離婚できるか
民法763条は、「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と規定しておりますので、嫁姑問題を原因として離婚することを夫婦間で合意できれば、離婚することはできます。
もっとも、上記のような協議での離婚が成立しない場合、離婚するためには、裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
しかし、相手が離婚に合意しない場合には、離婚調停で離婚することはできないでしょう。
離婚調停での離婚ができなかったときは、裁判所に離婚訴訟の提起をすることになります。
ここで、離婚が認められるためには、嫁姑問題が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たることが必要です(民法770条1項4号)。
もっとも、姑との関係が悪化したことで夫とも長期間別居しているといったことがなかったり、夫婦間での固有の紛争がなかったりする場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」はないと判断される可能性があります。
裁判例でも、嫁と姑や夫の姉の間で強いあつれきが生じている場合でも、夫婦間で固有の紛争が生じていないことなどを理由として、「婚姻を継続しがたい重大な事由」の存在を否定し、離婚を認めなかったものがあります(東京高裁昭和60年12月24日判決)。
夫と長期間別居している、姑との関係における夫の立場について夫婦間で紛争が生じて家庭内別居の状態になっている等の事情があれば、嫁姑問題であったとしても離婚が認められる可能性はあります。
嫁姑問題が原因の離婚率はどれくらい?
離婚率それ自体は明らかにされていないですが、離婚調停を申し立てた動機は明らかにされており、そこから推し量ることはできるでしょう。
令和6年度の司法統計年報の「―申立ての動機別申立人別― 全家庭裁判所」によると、離婚調停を申し立てた妻側の動機として、「家族親族と折り合いが悪い」が選択された割合は、申立の動機全体の約4%になります。
令和5年度が約4.6%、令和4年度が約4.7%になりますので、4%前後で推移しているものと思われます。
なお、「家族親族と折り合いが悪い」には、嫁姑問題に限られず、例えば、嫁と夫の父親との間の関係性が悪い場合等も含まれることには注意が必要です。
4%とだけ聞くと少なく感じてしまう方も多いと思います。
しかし、嫁姑問題を理由として協議での離婚が成立している場合も多いと考えられますので、実際の離婚の動機としては4%より多いと考えられます。
そのため、4%の数字だけ見て、嫁姑問題での離婚は難しいと思い至る必要はないのです。
離婚前に考えるべき3つのこと
離婚に踏み切った場合に後悔しないよう、以下の3点を意識しておくといいと思います。
①姑と和解する方法が無いか
もし、姑との間で和解することができれば、平穏な夫婦生活を取り戻すことができ、夫と離れる決断をしなくても済むことができるとおもいます。
和解は、法律的な意味では、当事者の互いの譲り合いです。
もし、こちらも姑に対してよくない言動をしてしまったのであれば、自己の非を認める形で譲ることが、和解の第一歩になると思います。
また、夫の協力が得られるのであれば、夫には、姑との間に直接入ってもらう、注意してもらう等してもらうことで、関係の修復が前進する場合があります。
夫の協力が得られないのであれば、両親に頼ってみてもいいかもしれません。
②離婚後の生活に備えておく
離婚に伴って、居住地や経済状況が変化します。そのため、離婚するにあたっては、離婚後の居住地や収入をどうするかについて考えておく必要があります。
居住地は、離婚後に婚姻時の住居に誰が住むかどうかは、各夫婦間での事情に左右されるものであり、妻が新しい住居に引っ越すことが通常といった一般論はありません。
そのため、まずは夫と妻のどちらが引っ越すかを話し合っておくべきでしょう。
また、専業主婦の場合、離婚後の収入を確保する必要があります。そのため、離婚の話し合いを行っている段階で、離婚後の支出に見合った就職先を見つけておくべきでしょう。
もっとも、姑との関係で離婚を選択せざるを得なくなっている状況で、さらに離婚後の居住地や収入をどうするかを考えることは、精神的に非常につらいものがあると思います。
もし、実家からの協力が得られるのであれば、実家を頼ることも一つの方法になります。
③子供の親権をどうするか
子が未成年である場合、親権者を誰とするかについては必ず決めなければなりません。
親権には、夫と妻のどちらかだけが親権者となる単独親権と、離婚後もその双方が親権者となる共同親権があります。
このうち、共同親権は、親の一方が子を虐待している場合や、親の一方が他方に対して暴力等を行っている場合には、行うことができない可能性があります。
子の育て方に対する考え方の違いから、姑との関係が悪化してしまったケースもよくあると思います。
夫が親権者になる可能性はあっても、姑が親権者になることは法律上認められていませんので、親権者を姑にとられるといった心配はしなくても問題ありません。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
嫁姑問題による離婚の慰謝料請求と相場
姑や夫の言動に精神的な苦痛を被った場合、慰謝料請求をしたいと考える人もいるかもしれません。
以下では、姑や夫に慰謝料請求ができるのか、できたとしてその相場はいくらかについて触れていきます。
姑への慰謝料請求
姑との間で、姑が慰謝料を支払うことの合意をすることができた場合には、合意された慰謝料額を姑から払ってもらうことができます。
もっとも、実際には、姑との間でこのような合意をすることは難しいでしょう。
裁判で、姑に対して慰謝料請求をする場合、慰謝料請求が認められるのは「姑の言動」を理由とする場合に限られ、「離婚」を理由として姑に慰謝料請求することは認められておりません。
そのため、慰謝料請求をするためには、「姑の言動」が「不法行為」であることを立証する必要があります。
もっとも、姑の言動を理由に慰謝料請求が認められるのは、姑の言動が客観的に見て限度を超えたと判断される場合です。そのため、姑の言動が軽微なものにとどまる場合は、慰謝料請求が認められない可能性があります。
上記を踏まえて、不法行為に該当しうる姑の言動の例としては、姑による過度な暴言・暴力があったことなどがあげられます。
そして、姑の暴言を記録したボイスレコーダーやLINE等の履歴、姑の暴力によって生じた痣等の写真、診療記録などが、その証拠になりうると思います。
また、姑の言動に精神的に疲労したことで心療内科や精神科に通ったことがある場合には、その診療記録も有益な証拠になります。
慰謝料の額は、300万円以下になることがほとんどであると思われます。
夫への慰謝料請求
夫についても、夫との間で慰謝料の合意がされれば、その合意に基づいて慰謝料請求をすることができます。
また、裁判で慰謝料請求する場合も、離婚の原因となった夫の言動が「不法行為」にあたることを立証する必要があります。
夫も姑と一緒になって過度な暴言・暴力を行っていた場合には、その夫の言動は「不法行為」に該当しうるでしょう。
これに対し、姑の暴言・暴力を止めなかった、嫁の味方をしなかっただけでは、「不法行為」に該当しない可能性があります。
慰謝料の額も、同様に300万円以下になることがほとんどであると思います。
嫁姑問題で離婚をお考えなら離婚弁護士ALGにご相談ください
現在の夫婦の状況から離婚事由を満たす場合もありますし、姑や夫の言動を立証することができるのであれば、慰謝料請求をすることも可能になります。
もっとも、上記のような判断は個人では判断が難しいものでもありますので、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
また、弁護士が交渉に携わることによって、姑との関係等を理由とした有利な財産分与ができる場合もあります。
弊所には、離婚問題に精通した弁護士が数多く在籍しておりますので、一度ご気軽にご相談ください。

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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
