監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
配偶者との離婚を考える理由は様々ですが、中には勢いで離婚をしてしまう人もいます。
しかし、離婚は、今後の生活に与える影響も大きく、場合によっては後悔してしまうこともあります。後悔をしてしまう事態を可能な限り避けていくためには、知っておくべき事項はいくつかあります。
この記事では、離婚を後悔する理由の紹介とともに、後悔しないためにすべきことを解説していきます。
目次
男女共通で離婚を後悔する理由
離婚したことを後悔してしまう理由は、人によって様々であり、男女の違いによっても異なってくる部分もあると思います。以下の項目では、男女を問わず、離婚を後悔する理由となりやすい事項について説明していきます。
世間から厳しい目で見られる
住んでいる地域や職場によっては、離婚を忌避すべきものと考える価値観が根強く残っている人も一定数いるようです。そのため、離婚をしたことが周囲に広まってしまうと、離婚に対する偏見から心無いことを言ってくる人もあるかもしれません。
離婚してから元配偶者の良さに気付いた
離婚を決意する際には、配偶者との対立が大きくなっていることもあり、関係の継続は一切考えられないとの心境のことも多いです。しかしながら、離婚が成立して元配偶者と離れるようになってから冷静になることもあります。
喧嘩をした直後のような冷静ではない状況で、離婚を決めてしまうと後悔に繋がりやすいので、周囲に相談するなどして、ひとまず冷静になって離婚すべきかどうかを考えてみるべきでしょう。
孤独感・寂しさを感じている
離婚に伴って一人暮らしを始める人もいます。ただ、配偶者と一緒に生活していた期間が長い人などは、この一人暮らしを寂しく思う人もいるようです。
このような孤独感が離婚への後悔に繋がることもあるため、離婚後の生活については事前にしっかりとイメージしておくべきでしょう。
勢いで離婚してしまった
上述したように、一時の感情に任せて離婚をしてしまうと後悔に繋がりやすい傾向にあります。離婚が今後の生活に与える影響について、きちんと整理しないまま離婚をしてしまうと後悔が生じやすいと思います。
子供に寂しい思いをさせてしまう
両親が離婚をして別居をするとき、基本的に子どもは、どちらかの親のもとで生活することになります。子どもが両親のどちらとも一緒に生活したいと考えている場合には、離婚によって子どもに寂しい思いをさせてしまうことになり得ます。
できる限り、離婚によって子どもが寂しい思いをしないようにしていくためには、子どもと同居していない親との面会交流をきちんと取り決めすることが重要です。
女性が離婚を後悔しやすい理由
以下の項目では、特に女性に多い理由について紹介していきます。
経済的に苦しくなってしまった
共働きの夫婦も増えてきたとはいえ、出産・育児のために仕事を抑えたり、婚姻を機に専業主婦を選択したりする方もいらっしゃいます。
専業主婦の方や育児中で収入が低下している方が離婚をする場合、これまでの就労経験や子どもの年齢によっては、離婚後の経済的な自立が容易ではないこともあります。
養育費の支払いや行政からの支援を受けることにより、一定程度は経済的な困窮の解消を図ることは出来ますが、それらのみで完全に解消されるとは限りません。
特に、解決を急ぐあまりに金銭的に不利な条件で離婚してしまうと、後から金銭的に困窮することになりやすいです。
経済的に自立するまでの間の資金をきちんと得ていくためにも、財産分与や養育費についてはしっかりと話し合いをすべきです。
シングルマザーで育児しなければならない
上記のとおり、出産・育児の影響で婚姻前よりも収入が下がっている方や専業主婦の方が、離婚してすぐに経済的な自立をすることは容易ではありません。
特に子どもの親権を取得した場合には、育児をしながら就労する必要があるので、その負担は非常に大きいものとなります。離婚をして子どもの親権を取得したいと考えているときは、育児と就労の両立ができるよう、しっかりと準備をしていくべきでしょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
男性が離婚で後悔しやすい理由
以下の項目では、特に男性に多い理由について紹介していきます。
子供と会えないことが辛い
離婚にあたっては子どもの親権者を決める必要があります。子の親権者に関しては、女性側が育児に多く関与している家庭が多いこともあり、母親が取得している事案が多く見られます。
離婚後の互いの居住地や生活内容によっては、父親が子どもと会う機会をなかなか得られないということも起きえます。
子どもとの面会をきちんと実現していくためには、離婚をする前にきちんと面会交流に関する取り決めをしておくべきです。
仕事と家事を両立するのが大変
夫婦共同で生活しているときには、家事と仕事のバランスを考えながら分担をすることもできます。
しかし、離婚後には全ての家事を一人でやることになることになるため、思うように仕事ができないといったことも起きることがあります。そのために、収入が減ってしまうこともあるため、離婚自体を後悔する人もいるようです。
子なし夫婦が離婚で後悔する理由
離婚はあくまで夫婦の問題であるため、両親の紛争に関係のない子どもを巻き込んでしまうことは、後悔する理由になりやすいといえます。
しかし、子どものいない夫婦の場合であれば、離婚を後悔しないものとは限りません。子どもがいる夫婦だと、子どもへの影響を考えて冷静になれることもあります。
他方で、子どもがいない夫婦の場合、感情的な行動のストッパーになるものが比較的少ないため、経済的な合理性が無い条件であっても、一時の感情に任せて離婚してしまうことがあります。
離婚後に冷静になったときに、本来得られたはずの利益を手放していたのではないかと考えてしまい、後悔に繋がることはあります。
離婚で後悔しないためにすべきこと
離婚をする場合には、可能な限りの事前準備を行ったうえで行動を起こすべきです。以下の項目では、離婚を後悔しないために行っておくべきと考えられるものを紹介します。
離婚に向けてしっかり準備しておく
離婚の前に、配偶者が持っている財産の情報をしっかりと集めておくことは重要です。相手の財産を把握していないまま別居をしてしまったとき、配偶者の性格によっては、正確な資料を開示してもらえなかったり、財産を隠されたりするおそれがあります。
配偶者がどこの銀行に預金を持っているのか、株式や有価証券を持っていないかなどは、家に届いた郵便物などから判明することがありますので、離婚を決意したときには注意を配っておいた方がよいでしょう。
離婚条件は妥協せず取り決める
離婚を切り出した側には、早く離婚を成立させたいという想いがあることが多いです。離婚を早く成立させることも一つの利益と言えますが、それを重視するあまり、経済面や子どもにかかわる条件を大きく妥協してしまう方もいます。
特に、離婚を急かす様子を相手方に気取られると、今すぐ離婚に応じる代わりに離婚条件を吊り上げ(又は引き下げ)ようとしてくることもあります。後悔をしないようにするためには、協議の中で出てきた離婚条件を冷静に分析し、あまり妥協しすぎないことが必要です。
合意できた内容は公正証書に残しておく
相手方から財産を受け取る内容の合意ができたとしても、取り決めを守ってもらえないリスクはあります。
そのような場合に備えて、離婚条件の合意ができたときには、その内容について、強制執行受諾文言を付けた公正証書にすることが考えられます。
万が一、離婚成立後に相手方が金銭支払いの約束を破ったとしても、上記の公正証書を作っておけば、相手方の預金や給与を差し押さえることが出来ることがあります。
そのため、あなたが、相手方から金銭を受けとる側であるならば、公正証書で合意内容を残しておくべきです。
離婚問題に強い弁護士に相談する
協議・調停による話し合いでも離婚が成立しない場合に、離婚を成立させるためには、訴訟を行い、裁判官の判断を仰ぐことになります。
そのため、交渉でより良い解決を目指していく場合であっても、訴訟を見据えて、裁判官がどのような判断を行うかの見通しをもって、離婚条件を検討していくべきです。
この見通しを立てていくには、法律の知識が必要となるため、専門家である弁護士に相談をしてみましょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚するかどうかで判断に迷ったときは
以下の項目では、離婚をするべきか否かで迷ったときに関して解説していきます。
離婚以外の方法がないかを考える
離婚以外の方法を取っていればもっと良い解決が出来たのではないかと考え、後悔してしまう方もいます。そのため、現状の不満点に関して、離婚以外の解決方法がないかを一度検討してみた方がよいかもしれません。
例えば、一緒にいることが耐えられないと感じているときに、一時的に別居をしてみて様子をみるなどが考えられます。
離婚後の生活が成り立つかを考える
経済的な自立の見通しが立たないまま離婚をしたことで困窮してしまい、後悔する方は多いように思われます。子どもの親権を得たいと考えている場合は、なおさら重要な点となってきます。
そのため、離婚を考えるにあたっては、自分が離婚後にどのように経済的に自立を図り、生活をしていくかを具体的にイメージしておくべきです。
経済的な問題については、財産分与や養育費という面である程度フォローできることがあります。相手方に請求をしうるか否かの判断に困った場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士に相談する
離婚は、戸籍上の問題だけではなく、金銭や子どもの件も絡んでくる複雑な問題です。これらの離婚条件については、法的な論点も多く含んでいるため、どのような結論が妥当と言えるのかについて判断に困る方は多いと思います。
そのような場合は、法律の専門家である弁護士にご相談すれば、個別の事情に応じたアドバイスを得ることが出来ます。離婚について悩みがある場合には、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。
すでに離婚して後悔している場合はどうする?
すでに離婚したことを後悔してしまっている場合であっても、その理由によっては、今からでも解決できる場合もあります。
例えば、財産分与について話し合わないまま離婚した場合には、離婚成立時から2年以内であれば、財産分与請求をすることが出来ます。
また、養育費や面会交流について特段の取り決めをしないまま離婚した場合であれば、調停申立てを行うことで話し合いの場を設けることができます。
実際にどのような手段を取りうるのかについては事案ごとに様々であるため、離婚後に悩みが生じているのであれば、一度弁護士に相談してみるのもよいと思います。
よくある質問
妻のモラハラ、ヒステリーがひどいため離婚を考えています。子供の親権を獲得できますか?
子どもの親権者は、父と母のどちらを指定するのが子の利益になるかという観点から判断されます。この判断にあたっては、これまでに子を監護・養育してきた実績が特に重要な要素となります。
そのため、妻から夫に対するモラハラやヒステリーを起こすことがあったとしても、妻側が子どもとは良好な関係をもって監護・養育を主に行っていたという場合には、父親が親権取得できないケースもあります。
もっとも、妻のモラハラやヒステリーがひどく、子どもに対する暴言や暴力にまで発展している場合には、裁判所が、子を母と一緒に生活させるべきではないとの判断をすることはあり得ます。
セックスレスが原因で離婚すると、後悔する可能性は高いですか?
ご自身の価値観において、性生活を夫婦関係において重要なものと考えているのであれば、セックスレスを理由に離婚をしても後悔することは少ないかと思います。
一方で、セックスレスが、婚姻関係が破綻に至っていると主張する根拠になりうることから、離婚を成立させることを主目的として主張するような場合、後悔に繋がることもありうるとは思います。
性格の不一致で離婚を考えています。後悔しないためにしておくべきことはありますか?
一時的な感情の対立であっても、根本的な性格の不一致が生じていると思い込んでしまうこともあります。
そのため、性格の不一致を感じたときほど、冷静に考える時間を取ったうえで決断した方が良いと思います。
また、第三者に話を聞いてもらうなど、客観的な意見を取り入れつつ、互いの歩み寄りを図る余地がないかという点も考えてみた方が良いと思います。
そのうえで、これ以上に互いの歩み寄りが難しいと判断したのであれば、離婚を決断したとしても後悔はしにくいと思われます。
妊娠中に浮気されたので離婚したいです。妊娠中の離婚で後悔するケースはありますか?
妊娠中に離婚した場合、出産してしばらくの間は育児のため就労に制限を受けるため、経済的に困窮しやすい状況にあります。
また、妻の生活費である婚姻費用は、離婚後には請求できなくなります。そのため、離婚してから子どもが生まれるまでの期間は、養育費も婚姻費用も請求できず、自らの貯蓄などから生活費を工面する必要が出てきます。
当面の生活を維持するためにも、財産分与が請求できる場合には、きちんと支払いが受けられるように話し合いをすべきでしょう。
産後クライシス・産後うつによる離婚で後悔しないためにはどうしたらいいですか?
産後うつは、精神的な疾患として誰しもがかかる可能性のあるものです。
そのため、必ずしも、産後うつの原因が夫の言動等にあるとは言い切れないこともあります。
産後クライシスも同様であり、離婚によって状況が改善するとは限らないにも関わらず、早合点して離婚を決断してしまうと後悔に繋がることがあります。
そのため、まずは産後に生じた不安について相談をしてみることをお勧めします。
離婚で後悔しないために、弁護士が法的な観点からアドバイスいたします。
離婚で後悔しないためには、一度、冷静になって離婚をすることが本当に良いのかどうかを考えることが重要です。
それでも、離婚をすべきだと考えた場合には、次に十分な準備を進めていくべきです。感情的なまま突き進んでしまうと、あとから取り返しがつかないこともありえます。自分だけでは冷静に判断できないと思ったときは、第三者の意見を聞くことも一つの方法です。
このとき、弁護士にご相談いただければ、財産分与、養育費、慰謝料、面会交流など、離婚にかかる諸条件について法的な観点からのアドバイスを行うことが出来ます。
本来は請求できるものがあったことを離婚してから知って後悔するようなことを起こさないためにも、離婚をご検討中の方は、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)