監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
セックスレスの夫婦は、比較的離婚率が高くなる傾向があるようです。本ページでは、セックスレスでの離婚を解説していきます。
後悔しないためにできることを一緒に考えていきましょう。
目次
セックスレスとは
セックスレスとは、特別な事情がないのに性的な触れ合いが1か月以上なく、その後も長期にわたることが予想される状態をいいます。これによると、月に1回でも性交渉などがあれば、セックスレスとはいえません。
性交渉は義務ではないため、セックスレスは直ちに違法な行為とはいえません。しかし、特に理由もないのに性交渉を断った場合などには、夫婦の協力義務違反と判断され、程度によっては離婚理由となる可能性もあります。
セックスレスは離婚原因として認められるのか
協議や調停は、話合いの手続きなので、夫婦双方の合意で離婚が成立します。そのため、セックスレスを理由に離婚することはできます。
しかし、裁判で離婚が認められるためには、離婚事由を立証する必要があります。
①配偶者に不貞行為があったとき
②配偶者から悪意の遺棄をされたとき
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(婚姻関係が破綻していて修復する見込みがない状態)
セックスレスで当てはまる可能性があるのは、⑤です。
セックスレスでの離婚率
セックスレスになると離婚率が高くなるなどと言われます。性交渉は義務ではありませんが、円満な夫婦生活を営む上で重要なものです。また、相手から性交渉を拒否し続けられた場合、離婚を考えても無理はありません。
実際、裁判所に離婚調停を申立てる際、「性的不調和」を理由として挙げた方は、4940名います(令和3年司法統計年報)。セックスレスも性的不調和に含まれます。セックスレスを理由に離婚を求めることはあり得ます。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
セックスレス離婚の慰謝料
セックスレスを理由に離婚する場合、例えば正当な理由がないのに性交渉を拒否されてセックスレスになり、それが原因で離婚することになった場合には、慰謝料の請求が認められる場合があります。
ただし、婚姻期間の長さや夫婦の状況などによって異なることもありますが、数年単位のセックスレスの期間が必要となります。
慰謝料の相場
離婚理由がセックスレスのみだと、高額な慰謝料は期待できません。10万円程度しか認められない場合もあります。ただし、セックスレスのみでなく他の離婚理由となり得る事情も加味されて50万円から200万円の慰謝料が認められる可能性もあります。
なお、相手と合意ができれば、慰謝料の金額をいくらにするかは当事者の自由です。
請求方法
- 話合いによる協議離婚で請求
まずは話し合いで。ただし、離婚協議書(公正証書を作成できればなお良いです。)に記載しておかないと合意ができた証拠が残らないので、必ず協議書を作成してください。 - 話合いで決まらない場合は離婚調停で請求
合意内容は裁判所で書面として残してくれます。 - 調停不成立の場合は審判の申立てで裁判所に判断してもらう
おおむね合意はできているものの細かい条件で揉めている場合は、裁判所の判断でお互いに納得できる場合があります。 - 審判でも解決しなければ、離婚裁判で裁判所に判断してもらう
セックスレス離婚の切り出し方
セックスレスを理由に離婚したい場合には、まず、セックスレスをどう思っているのか、正直な気持ちを伝え、相手の気持ちもきちんと聞いた方が良いでしょう。相手は、セックスレスで苦しんでいることに気付いていないだけで、話し合うことで状況が変わり、離婚を回避できるかもしれません。
それでも何も変わらないようであれば、やはり離婚へ向けて進めていくことになるでしょう。
離婚したくないと言われた場合
離婚を拒否された場合、セックスレスを理由に離婚が認められるのは、とても難しいです。
王道としては、何度も説得して、離婚の合意を得るまで粘るという手段があります。
ただ、それでも離婚に応じてくれない場合は、長期間の別居をすることで、婚姻関係が破綻していると判断され、離婚が認められやすくなるのを狙うという手段もあります。
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セックスレス離婚に必要な証拠
セックスレスを理由に離婚したい場合は、証拠を集めましょう。相手が否定して離婚を拒んできた場合、相手を説得する材料として、裁判になったときの証拠として使います。
直接的な証拠は考えずらいため、いくつかの証拠の合せ技で証明していくことになります。以下のものが役立つ可能性があります。
夫婦の生活時間帯などがわかる表
夫婦の生活時間帯などがわかる表は、生活時間がずれているわけではないことを明らかにし、性交渉をすることができる時間があるのにもかかわらず拒否されていると主張するときに、証拠として役立つ可能性があります。
何時に帰宅し、就寝し、起床しているのかなど、日々の生活サイクルがわかるものであればよく、何時に歯を磨く等詳細なものを作成する必要まではありません。
セックスレスについて夫婦で話した会話の録音
相手が性交渉を拒んでいる発言や、自分たちのセックスレスについての夫婦間の会話を録音したものは、セックスレスの証拠になる可能性があります。
また、正当な理由もないのにセックスレスになっていることを相手が謝罪している場面を録音したものも、証拠になる可能性があります。
セックスレスのことが書かれた日記
セックスレスについての有効な証拠は残されていないことが多く、結局自分で記載した日記が多く使われることになっています。セックスレスについて記載してある日記は、証拠の一つになり得ます。ただ、自分に都合の良いように後から書き変えたなどと疑われないように、なるべく毎日日付とともに手書きで書いておいてください。継続的に起こった事実と感情が記載されていることがポイントです。
セックスレスが原因の離婚に関する質問
セックスレスで離婚した場合、子供の親権はどちらになりますか?
セックスレスが子供の親権に影響することは、基本的にありません。
裁判所が子供の親権者としてどちらがふさわしいのかを判断するとき、何より重視するのは「子供の幸せ」で、この判断基準として、どちらがより子の監護をしてきたのかを重視します。そのため、仮にセックスレスの原因が自分にあったとしても、親権を獲得できる可能性はあります。
セックスレスを理由に不倫された場合は離婚慰謝料を請求することはできますか?
セックスレスが理由でも、不倫は不倫です。不貞行為に該当するため、慰謝料自体は請求することができます。
しかし、不倫の理由の一端がご自身にあるため、慰謝料の額としては、通常の不倫慰謝料よりも少なくなってしまうことが多いです。
妊娠中のセックスレスでも離婚できますか?
妊娠中のセックスレスを理由に離婚を求めても、裁判所に認められるのは至難の業です。
妊娠中の女性は体調がすぐれないことも多いですし、男性もお腹の子への影響を心配することもあります。そのため、夫婦のどちらが性交渉を拒否したとしても、正当な理由があり、やむを得ないものだと判断される可能性が高いと考えられます。
ただ、妊娠中のセックスレスが産後も長く続き、そのせいで夫婦の関係が悪くなってしまった場合などには、離婚が認められる余地はあると考えられます。
セックスレスにより離婚する場合は弁護士にご相談ください
セックスレスで離婚を考えることは、決して珍しいことではありません。何の理由もない拒否が続けば、心が折れるのは当然です。その状態が長引けば長引くほど、夫婦関係を続けて行こうという気持ちは折れるでしょう。
セックスレスで離婚したいと思ったら、まず弁護士にご相談ください。弁護士であれば、状況に応じて法的知識に基づいた適切なアドバイスができます。
また、相手との交渉や裁判での主張や立証を代わりに行うなど、離婚の手続きをお手伝いすることもできます。
まずは弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)