監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
交通事故で被害に遭われた場合、加害者に対して治療費や慰謝料等の損害賠償を請求することができます。この賠償請求は、まず、加害者と交渉(示談交渉)して行うのが通常です。
この示談交渉は自分で行うこともできますし、弁護士を代理人に選任して請求を行うこともできます。
以下では、示談交渉を自力で行うことのメリット・デメリット、自力で行う場合のポイントなどを説明していきます。
目次
自分で交通事故の示談交渉をするメリットとデメリット
メリット
示談交渉を弁護士に依頼する義務はないので被害者自身で交渉を行うことは可能です。
弁護士を代理人として選任して示談交渉を行う場合は、その費用がかかりますが、示談交渉を自身で行えば、その費用はかかりませんので、その分加害者から得られた賠償額が多く自身の手元に残るというメリットがあるといえます。
もっとも、弁護士に示談交渉を依頼すれば、後述のとおり、得られる賠償額自体が大きくなり、弁護士費用を差し引いても手元に残る額が自身で示談交渉を行う場合よりも大きくなる可能性があります。
デメリット
交通事故の示談交渉を自力で行う場合、まずは、治療費・通院費・休業損害・慰謝料等の項目ごとに額を計算した上で、過失割合や既払いの額も考慮して、請求する額を算定する必要があります。
また、請求額を提示した後は、示談交渉のノウハウを有する保険会社を相手に交渉を行い、最終的に支払われる賠償を確定することになります。
この交渉を適切に行うためには、証拠や専門的知識や経験を要しますが、通常、被害者には、必要な証拠を選択・収集した上で、相手方保険会社と対等かつ適切に交渉を行う知識や経験はありません。
また、このような証拠収集や交渉を自身で行うことは、被害者にとって、精神的にも時間的にも大きな負担となります。
結果として、相手方保険会社と対等かつ適切に交渉を行うことができず、得られる賠償額が少なくなってしまう可能性が高いと考えられます。
弁護士費用を差し引いても、弁護士に依頼した方が、手元に残る賠償金の額が大きくなる可能性さえあることは上記のとおりです。
自力で示談交渉したい場合のポイントと注意点
被該者が自身で相手方保険会社と適切に示談交渉を行うことが容易でないことは上記のとおりですが、それでも自身で示談交渉を行う場合のポイント・注意点は以下の通りです。
まずは、治療が終了し、後遺障害認定申請の結果が出て、賠償請求する額が確定してから、治療費・通院のための交通費・休業損害・後遺障害、過失割合等に関する資料を収集した上で、損害額を正確に算定してください。
算定にはいくつかの方法がありますが、弁護士基準を用いると、最も損害額を大きくすることができることがほとんどです。
損害額を算定したら、当該資料や算定額を基に、相手方保険会社との間で、最終的に支払われる額についての交渉を行うことになります。
その際は、収集した資料や法的理論を根拠に相手方保険会社の主張する賠償額よりも自己の主張する額が正当であると主張する必要があります。
また、双方の主張に隔たりが大きい場合、裁判で争う費用や労力、敗訴のリスクを考慮して、賠償額についてある程度譲歩することが適切な場合もあります。
保険会社の示談交渉サービスはどうなの?
任意の自動車保険に加入されている場合、当該保険会社の示談交渉サービスを利用することが考えられます。
このサービスを利用すると、保険会社の担当者が事故の相手方と交渉してくれますので、自ら交渉する時間的・精神的負担を負わずに済みます。
また、保険会社の担当者は、交通事故の示談交渉について、一定の知識と経験を有するため、ご自身で行うよりも適切に交渉を行ってもらえることも期待できます。
もっとも、当該サービスは、こちらに過失がない場合には利用することができません。
また、弁護士と比べると、専門的知識がなく、また、交渉が決裂した後の訴訟に関する経験がないため、弁護士に依頼する場合より、最終的に支払われる賠償額が少なくなる可能性が高いといえます。
示談交渉を弁護士に依頼すると費用はどれくらいかかる?
示談交渉を弁護士に依頼する場合にかかる費用は事務所によりまちまちですが、一般的に、相談料として、30分5000円などとされていることがほとんどです。
相談料につき30分無料、初回無料などとしている事務所もあります。
また、着手金(弁護士が事件に対応するために、契約の際に必要となる費用)や成功報酬(事件が成功に終わった場合に支払うこととなる費用)については、保険会社が参照しているLAC基準が参考になります。
同基準によりますと、⑴着手金について、経済的利益(損害賠償金の額)が①125万円以下の場合、10万円(税抜き。以下同じ)、②125万円を超え、300万円以下の場合、経済的利益の8%、③300万円を超え、3000万円以下の場合、経済的利益の5%+9万円などとなっており、⑵成功報酬としては、経済的利益(損害賠償金の額)が300万円以下の場合、経済的利益の16%、②300万円を超え3000万円以下の場合、経済的利益の10%+18万円などとなっています。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士に示談交渉を代わってもらうメリット
示談交渉について弁護士に依頼する場合、相談料・着手金(事件が成功に終わった場合は成功報酬)等の費用がかかることはとおりですが、弁護士に示談交渉を依頼した場合、ご自身で資料を収集して損害額を計算し、相手方保険会社と交渉を行う時間的・精神的負担を負わずに済みます。
また、弁護士は後遺障害の認定申請を行う際には、なるべく認定がなされやすいようにサポート行ったり、示談交渉の際には豊富な交渉経験や正確な法的知識を基に、相手方保険会社と適切に賠償額についての交渉を行ったりすることができます。
結果として、最終的に支払われる賠償額が、ご自身で交渉を行う場合よりも多額となり、弁護士費用を差し引いても、手元に残る賠償金の額が多くなる可能性もあります。
弁護士に依頼することにより賠償額の増額が見込める可能性の高い損害項目としては、傷害による慰謝料や後遺症による慰謝料・逸失利益等があります。
示談交渉は弁護士にお任せください
これまで説明してきたとおり、交通事故の示談交渉はご自身でも可能ですが、その交渉は必ずしも容易ではなく、相手方保険会社と適切に交渉を行い、十分な額の賠償を受けることは容易ではありません。
また、当該交渉をご自身で行うことは、時間的・精神的な負担が大きいといえます。
加えて、弁護士を用いて交渉を行った場合、傷害による慰謝料や後遺症による慰謝料・逸失利益等について、ご自身で交渉を行う場合よりも賠償額の増額が見込めるため、結果として、お手元に残る賠償額が多くなることも考えられます。
交通事故に遭われてこれから相手方保険会社との示談交渉を行う必要があるものの、ご自身でこれを行うことにつき不安を抱かれている場合は、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。
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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)