特別寄与料とは?請求方法や認められる条件について解説

相続問題

特別寄与料とは?請求方法や認められる条件について解説

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

亡くなった方の親族が、相続人でない者が、亡くなった方の財産の維持又は増加について貢献した場合、その方が、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができることがあります。

この金銭を「特別寄与料」といいます。

特別寄与料とは

特別寄与料とは、亡くなった方の相続人ではない親族が、亡くなった方の療養監護に努めるなどしてその亡くなった方の財産の維持又は増加について貢献した場合、この貢献を特別の寄与として、貢献の程度に応じて、相続人に対して、支払を請求することのできる金銭のことです。

特別寄与料の範囲は?請求できるのは誰?

特別寄与料を請求できる者は、被相続人の親族であって、相続人でない者です。ここでいう親族は、法律上の概念であり、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族とされます。

ただし、「相続人でない者」となった理由が、相続放棄をしたこと、相続人の欠格事由に該当すること、廃除によって相続権を失ったこと、である場合には、特別寄与料を請求することはできません。

特別寄与料が認められる要件は?

特別寄与料を請求するためには、無償で、療養監護その他の労務を提供したこと、これによって被相続人の財産が維持増加したこと、この労務の提供が特別寄与料の請求を認めるに足りる程度の顕著なものが必要です。

労務の提供には、仕送り等の財産上の給付は含まれないため注意が必要です。

いつまで請求できる?時効はあるの?

遺産分割終了後でも請求できる?

特別の寄与を請求する者(特別寄与者)は、家庭裁判所に対して特別寄与料の支払いを求めるための調停・審判を申し立てることができます。この申し立ては、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内又は相続開始の時から1年以内にしなければなりません。

したがって、最長でも、相続開始の時から1年以内に請求しなければなりません。

特別寄与料の相場はどれくらい?計算方法は?

特別寄与料の額は、寄与の程度・内容等により決定されますが、相続人が相続財産から受ける利益を超えることはできないとされます。

介護した場合(療養看護型)

一つの考え方として以下の計算式が挙げられます。介護報酬相当額×療養監護の日数×裁量割合(0・5~0.8:看護や介護の専門家ではないこと等の事情を考慮した減額)介護費用相当額を基準に、特別寄与者が看護や介護の専門家ではないこと等の事情を考慮して金額を調整します。

事業を手伝った場合(家業従事型)

一つの考え方として以下の計算式が挙げられます。特別寄与者が通常得られたであろう給与額×(1-生活費控除割合(生活費等の恩恵を受けている割合を考慮した減額))×寄与期間

特別寄与者が家業に従事したことにより、亡くなった方は、従業員を雇用して給与を支払う必要を免れたといえます。そのため、特別寄与者が通常得られたであろう給与が基準になります。

もっとも、家業従事型の特別寄与者は、給料を支払われる代わりに生活費等の恩恵を受けていることが多いため、生活費控除割合を考慮して金額を調整します。

特別寄与料の請求先は?誰が払うの?

特別寄与料は、特別寄与者が相続人に対して請求するものです。特別寄与料の額が確定すれば、特別寄与者は、各相続人に対し、法定相続分に応じた割合で特別寄与料を請求できます。

以下の具体例で、嫁が特別寄与者となる場合、嫁は、被相続人の配偶者、子A、子Bに対して、それぞれ特別寄与料の2分の1、4分の1、4分の1の支払いを請求することになります。

特別寄与料請求の流れ

当事者の協議が整えば、合意により支払いがなされることになりますが、協議が整わない場合には、調停や審判の申し立てが必要になります。

調停は、裁判所において当事者が話し合いをする手続で、審判は、調停が不成立となった場合や、当事者が審判を申し立てた場合に、裁判所が裁量により相当と認められる特別寄与料を認定する手続です。

特別寄与料の受け取りに税金はかかる?

特別寄与料には相続税が課税されます。

特別寄与料請求をお考えの方は弁護士にご相談ください

特別寄与料請求には、請求できる方の範囲、請求できるための要件、金額の算定方法等について専門的な知識が必要となります。また、具体的な金額については当事者の合意や裁判所の裁量で決定される部分もあるため、相手方との交渉や、裁判所での主張立証も重要となります。

特別寄与料請求をお考えの方は弁護士にご相談ください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
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