試用期間中の社員に問題があるときの対応

コラム

試用期間中の社員の問題があるとき、会社はどう対応すべきか?

試用期間中の社員に問題があるときの会社の対応方法について、以下で説明します。

試用期間中の社員と会社の関係

三菱樹脂事件判決(最大判昭48・12・12民集27巻11号1536)により、試用期間中の社員と会社との関係は、解約権留保付労働契約であるとされています。
この立場は、試用契約も、期間の定めのない労働契約であり、試用期間中は労働者の不適格性を理由とする解約権が留保されているという考え方です。

試用期間中に問題視されやすい事由とは?

試用期間中の労働者については、当該労働者の能力不足や不良な勤務態度等についてどのように対応すべきかが問題となることが多いです。

問題社員の試用期間を延長することは可能?

それでは、能力や勤務大度に問題がある問題社員の試用期間を延長することは可能なのでしょうか。
合理性がない試用期間の延長は認められないと解されていますが、一定の要件のもとで、試用期間を延長することは認められます。

延長が認められる基準とは?

試用期間の延長は、就業規則などで①延長の可能性及び②その事由、③期間等が定められている場合には認められます。
長期の試用期間は、公序良俗に反すると考えられており、延長に合理性が認められる場合であっても、延長期間が長すぎると、これが原因で延長そのものが無効と判断される可能性があります。

実務上は、3カ月の試用期間の定めが多くみられますので、延長する場合でも最大6か月程度にとどめるのが無難でしょう。もっとも、業務内容により、労働者の適正を判断するためにこれ以上の期間を要するというものであれば、1年程度までは許容され得ると考えます。

試用期間中の解雇は法的に認められるのか?

試用期間において、解雇事由が認められる場合に解雇することは認められます。
裁判例は、通常の解雇よりも、留保解約権の基づく解雇の方がより広い範囲で解雇の自由が認められるべきとしつつも、留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認され得る場合にのみ許されると考えています。留保解約権の行使と解されるのは本採用の拒否と同様ですが、期間満了前の解約であることから、解雇の方がより、厳格に相当性が判断されることになります。

本採用を拒否したい場合は?

試用契約を解約権留保付労働契約と考える判例の立場からは、本採用の拒否は試用期間中の解雇と同様に、留保解約権の行使となります。
そのため、本採用の拒否が認められる場合も、判例の立場からは、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認され得る場合にのみ許されることになります。

不当な処分を行うことのリスク

採用後、能力不足その他の理由により、試用期間中の解雇や本採用拒否を行った場合にこれらの対応が不当なものと判断されると無効となります。この場合、労働者との労働契約は存続することとなり、労働者と裁判などで争った期間についても、賃金を支払う義務が生ずるというリスクがあります。

試用期間の延長・解雇を行う際の注意点

試用期間の延長を行う場合の注意点は、就業規則等の延長の規定が存在する場合にのみ延長を行うこと及び試用期間満了前に労働者に対し、試用期間延長の通知をすることです。試用期間が経過すれば、労働関係は留保解約権なしの通常の労働契約に移行するので、延長する場合には、試用期間が経過する前に試用期間の延長を通知しておかなければなりません。

既にみたとおり、試用期間中の解雇は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認され得る場合にのみ許されるものです。よって、仮に、試用期間中の労働者を、能力不足と判断した場合であっても、何らの指導・教育もせずに解雇することは、社会通念上不相当と判断され無効となるリスクがあります。そのため、通常の解雇を行う場合と同様に慎重に対応する必要があるといえます。

どのような指導・教育が必要か

試用期間中の労働者が、期待した水準の業務を遂行できないといった場合、直ちに解雇や本採用拒否という判断をするのではなく、通常の労働者と同様に、改善点を指摘し、教育を行うことが必要です。
また、遅刻、無断欠勤などといった怠業についても、通常の労働者と同様に、改善するように指導することが必要です。

弁明はどの程度まで受け入れるべきか

試用期間中の労働者が、期待した水準の業務を遂行できない場合には、そもそも業務の経験がなく、期待水準に到達できていない場合があります。このような場合には、業務に慣れれば対応可能であるという弁明がなされることがあります。
このような場合、一般的な労働者と比較して、少し覚えが悪いといった程度であれば、試用期間を延長するなどして能力を見極めた方がよいでしょう。

能力不足はどう判断するか

労働者を、客観的な根拠に基づかず、主観的に能力不足であると判断した場合、解雇や本採用拒否を争われれば無効と判断されることとなります。
まず、業務において定量的に把握できる業務に関しては、数値で他の労働者と比較して能力不足と判断できる根拠を収集する必要があります。この場合、未経験の労働者と経験者を比較する場合には、経験不足であることによる影響に十分配慮する必要があります。

また、業務能力の判断に役立つ具体的事実については、できるだけ詳細に記録を残し、能力不足かどうかを複数の事実から評価できるようにしておくべきです。軽微なミスと評価される事実であっても、それが、許容できる頻度を越えて発生するような場合には、そもそも、当該労働者の能力不足と評価できる場合があるからです。

試用期間の延長・解雇、本採用拒否に関する裁判例

会社と労働者との間で、新規採用契約においてその適性の評価・判断のために設けられた期間が、試用期間か、有期契約の存続期間かが争点となった事案を解説します。

事件の概要

Xは、学校法人Yに教員として採用された。採用の際、Xは、Y理事長から、契約期間は1年とすること、及び、1年間の勤務状況を見て再雇用するかどうかの判定をすることにつき説明を受けた。
XはYとの間で、1年の非常勤講師として採用され、期限満了の日に当然退職となるとの記載がある契約書に署名押印した。
Yは、期限満了をもって契約が終了するとの通知を行った。これに対し、Xが労働者としての地位の確認と賃金の支払いを求めて訴えを提起した。
一審、控訴審ともに、Xが敗訴。
Xは上告した。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

最高裁平成2年6月15日判決(平成元年(オ)第854号)は、以下のとおり、判断して原判決を破棄差し戻した。
「使用者が、労働者を新規に採用するにあたり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適正を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間と解するのが相当である」と判断したうえで、X・Y間に1年の期間満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立しているなどの「特段の事情」が認められるかについてはなお疑問が残るとして、原判決を破棄・差し戻した。

ポイント・解説

本稿でみたとおり、試用期間は、解約権留保付労働契約と理解されています。そのため、期間満了時の本採用拒否についても、留保解約権の行使として、社会通念上相当として是認される必要があります。一方、有期契約は、反復継続され期限の定めのない労働契約と同視されるものや、契約更新を期待することに合理的な理由があるものでなければ、契約更新をしなければ、期間の満了により終了します。
上記のとおり、試用期間と有期契約では、期間満了時の契約終了(本採用拒否と雇止め)に大きな違いがあります。
御社が、労働者の適正を評価・判断するという目的をもって、新規採用にあたり有期契約を締結している場合には、上記判例を踏まえて、期間満了により雇用契約が当然に終了する旨の合意を労働者との間で明確にしておく必要があるといえるでしょう。

試用期間の延長及び解雇、本採用拒否を検討される際は弁護士にご相談下さい。適切な対応方法や注意点についてアドバイスいたします。

試用期間に関しては、一般的な理解と実務上の理解が大きく異なっており、本採用拒否を通常の有期契約の満了と同視されているケースも少なくありません。試用期間中の労働者に対する対応は、裁判例を踏まえて適切な対応を取る必要がありますので、是非、専門家である弁護士にご相談ください。

本稿執筆時点において、新型コロナウイルスの流行は終息しておらず、第4波といえる流行状況を迎えています。
これまで、新型コロナウイルスの感染者が出ていない企業においても、今後、感染者が出ることを想定しておくことは必要不可欠の状況といえます。
そこで、実際に、労働者に感染者が出た場合に備えるために、労働者への対応方法を解説します。

新型コロナウイルスにおける労働者への対応

労働者が、新型コロナウイルスに感染した場合の対応等について、以下で説明します。

感染の報告があった場合の対応

労働者から、新型コロナウイルス感染に関する報告がある場合としては、労働者本人が感染した場合と、家族や知人など、労働者本人と近しい人物が感染した場合等があります。

労働者本人が感染した場合

労働者本人が新型コロナウイルスに感染した場合、当該従業員は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」といいます。)により、都道府県知事は、当該従業員に対し、就労を制限することができます。

そのため、会社が労働者本人から新型コロナウイルスに感染したことにより、就労制限を受けた場合には、就労してはならない旨を告げて出勤停止を命ずる必要があります。もっとも、労働者は就労をしなければよいので、労働者から有給休暇を取得したいとの希望があれば、出勤停止ではなく、就労制限期間中は有給休暇を取得してもらうという対応でも構いません。

労働者本人が新型コロナウイルスに感染した場合に出勤停止となった場合、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」ではないため、会社は休業手当を支払う義務は生じません。

労働者の同居人が感染した場合

労働者の同居人が新型コロナウイルスに感染した場合、当該労働者は濃厚接触者に該当する可能性が高いといえます。
濃厚接触者であったとしても、必ず、新型コロナウイルスに感染しているわけではありません。しかし、会社は、労働者に対し安全配慮義務を負っていることから、感染するリスクを踏まえて、出勤停止を命ずることが望ましい対応であるといえます。
この出勤停止は、会社の判断による出勤停止ですので、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に該当するので、労働者に対し、休業手当を支払う必要があります。

もっとも、労働者の同居人に感染者が発生した事実などを「帰国者・接触者相談センター」に相談し、センターが就労を制限すべきであると判断した場合には、会社が休業手当を支払う必要はありません。そのため、上記センターに問い合わせた上で、出勤停止を命ずるのが良いでしょう。

新型コロナウイルスの検査について

労働者に新型コロナウイルスの感染者が発生した場合、その周囲の労働者も同時に感染しているリスクがあります。感染の有無を判断するための検査の実施について説明します。

一部の労働者が感染した場合、全労働者の検査実施は可能か?

企業は労働者に対し、安全配慮義務を負っており、一部の労働者に感染者が出た場合には、他の労働者に感染が拡大しないように対応すべき義務が生じます。
この場合に、感染した労働者と接触の機会をもっていた労働者について、検査の実施を命ずることは、対象となる労働者の感染可能性を考慮すると、業務命令として必要性と相当性が認められ、就業規則等に根拠となる規定がなくとも、検査を実施することは可能であると考えます。

これとは異なり、全労働者に検査実施を行う場合、感染した労働者とおよそ接触の機会を持っていない労働者も対象に検査を実施する可能性が生じます。そのため、全労働者に対し、検査を命ずることについて、業務命令として許容されない可能性もあります。

そこで、就業規則等に、感染者が生じた場合には、他の労働者について検査を命ずることができる根拠を定めておくべきです。このような明文の定めがあれば、他の労働者について検査を受けるように命ずることも許容されると考えます。

新型コロナウイルス感染者の出勤停止命令

新型コロナウイルス感染者への出勤停止命令について、解説します。

「出勤停止命令」と「自宅待機命令」の違い

出勤停止は、懲戒処分として行われる出勤停止処分と、業務命令として行われる出勤停止命令があります。
当然ながら、新型コロナウイルスの感染者が出勤しようとした場合に下す出勤停止は、業務命令としての出勤停止命令です。この場合、感染者に対し、業務命令として自宅待機命令を下す場合とその内容に違いはありません。

労働安全衛生法の「就業禁止の措置」は適用されるのか?

新型コロナウイルス感染症が、感染症法の指定感染症として定められました。そのため、都道府県知事は、感染した労働者に対し、就業制限や入院の勧告等を行うことができます。
厚労省のQ&Aによると、感染症法による就業制限を行う場合は、労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置の対象としないとされています。

出勤停止期間中の賃金支払いについて

当該労働者が、新型コロナウイルスに感染し、都道府県知事が行う就業制限により休業する場合、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には該当しないと考えられています。そのため、企業は労働者に対し、休業手当を支払う必要はありません。
ノーワークノーペイの原則により、この場合の賃金支払義務は発生しません。

新型コロナウイルスで休業する場合の休業補償

新型コロナウイルスで休業する場合の休業補償について説明します。

会社は休業手当を支払う必要はあるのか?

会社は、その休業の理由に応じて、休業手当を支払うべき必要が生じる場合とそうでない場合が生じます。

感染した労働者を休業させる場合

当該労働者が、新型コロナウイルスに感染し、都道府県知事が行う就業制限により休業する場合、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には該当しないと考えられています。そのため、企業は労働者に対し、休業手当を支払う必要はありません。

感染が疑われる労働者を休業させる場合

厚労省Q&Aでは、感染が疑われる労働者を休業させる場合、受診・相談センターへの相談結果を踏まえても、職務の継続が可能である労働者を、会社の自主的判断で休業させる場合には、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」として休業手当を支払う必要があるとされています。
そのため、感染が疑われる労働者がいる場合には、まず、受診・相談センターにご相談ください。

発熱などの症状がある労働者が自主休業した場合

発熱などの症状がある労働者が自主休業した場合、本人が他の病気で病欠した場合と同様に取り扱うことになります。そのため、休業手当は発生しません。

事業の休止に伴い休業する場合

新型コロナウイルスを原因とする事業の休止に伴い休業する場合、その休業が「不可抗力」といえる場合には、使用者に休業手当の支払い義務は発生しません。
しかし、新型コロナウイルスを原因とするという理由だけで、直ちに不可抗力による休業と認められるわけではありません。
例えば、取引先が休業したことに伴う事業の休業である場合でも、当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者の休業回避のための具体的な努力等を総合的に勘案して、不可抗力による休業といえるかが判断されます。

休業手当の対象となる労働者

休業手当の対象となる労働者について、以下で説明します。

パートタイマー・アルバイト

パートタイマーやアルバイトといった契約形態であっても、休業手当の支払いの対象となります。また、会社が、法律上の休業手当を超える手当の制度を設けている場合に、パートタイマーやアルバイトを契約形態の身を理由に対象から除外していると、パートタイム等労働法に違反する可能性があるのでご注意ください。

派遣労働者

派遣労働者も、休業手当の支払いの対象となります。また、法律に定めのない制度が設けられている場合に、派遣労働者と他の労働者との取り扱いに違いがあると、労働者派遣法に違反する可能性が生じます(派遣元事業主に生じるリスクであり、労使協定方式では問題となりません。)

外国人労働者

外国人であっても、労働基準法の適用はあります。そのため、休業手当についても、日本人と同様に取り扱う必要があります。

子どもの休園・休校で休んだ労働者の賃金について

ノーワークノーペイの原則により、会社は賃金の支払い義務を負いません。もっとも、この場合に、特別の有給休暇を付与して賃金を支払った企業に対し、公的助成を行う制度も存在しましたので(現在は、終了しています。)、助成などの動向には注意が必要です。

新型コロナウイルスの影響による解雇

新型コロナウイルスの影響により、業績が悪化し、従業員の解雇を行われる会社が少なくありません。しかし、新型コロナウイルスの影響を受けているという理由だけで解を行うと、解雇等が無効となるリスクがありますので注意が必要です。

整理解雇が認められる要件とは

経営状況の悪化により、人員削減のためになされる解雇(整理解雇)については、裁判例において、以下の要素を考慮して、有効性が判断されています。

①人員削減の必要性
②解雇を回避する努力を行っているか
③解雇対象者の選定基準が、客観的・合理的であるか
④労働組合との協議や労働者への説明が行われているか

新型コロナウイルス感染者の治癒と職場復帰

新型コロナウイルスの感染者及び無症状病原体保有者の退院基準については、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律のおける新型コロナウイルス感染症患者の退院及び就業制限の取り扱いについて(一部改正)」(令和3年2月10日付け健感発0210第3号厚生労働省健康局結核感染症課長通知)により、新たな基準が示されています。

同通知では、有症患者については、①発症から10日経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合、②発症日から10日間経過以前に症状軽快した場合に、症状軽快後24時間経過した後に、核酸増幅法又は抗原量検査の検査を行い、陰性が確認され、その検体の検体を採取した24時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合、には「病原体を保有していないこと」に該当し、退院基準を満たすとされています。

無症状病原体保有者については、③発症日(陽性確定に係る検体採取日)から10日経過した場合、④発症日から6日間経過した後に核酸増幅法等の検査を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した24時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合、退院基準を満たすものとされています。

上記の基準からすると、有症患者であっても、最短で発症後10日経過後に退院基準を満たし、自宅療養なども解除されることとなります。

労働者が、上記基準を満たし、職場復帰を求めた場合には、就労制限を理由に復職を拒むことはできません。また、当初の自宅待機命令を14日程度で発出していたとしても、上記退院基準を満たしたのち、期間満了まで自宅待機を命ずることには、必要性と相当性が認められず、不当な自宅待機命令と判断される可能性があります。

新型コロナウイルス感染防止に向けた働き方の検討

新型コロナウイルス感染防止のため、テレワークの実施や、時差出勤などの働き方を採用されている企業も増えています。新型コロナウイルス流行の終息が見えない状況を考えると、このような働き方の導入について検討をする必要性はますます高まっていると思われます。

よくある質問

従業員に就業中のマスク着用を義務付けることは可能ですか?

マスクの着用は、感染予防に一定の効果があると考えられており、業務命令として必要性と相当性を認められますので、義務付けることは可能です。

従業員が海外旅行に行き、帰りの検疫で陽性と判断されました。隔離されている間の休業手当を支払う必要はありますか?

使用者の責めに帰すべき休業ではなく、本人の責めに帰すべき休業ですので、支払う必要はありません。

新型コロナウイルスの感染拡大を理由に、新卒内定者の内定を取り消すことは可能ですか?

内定者との間にも、労働契約が成立していると認められる場合がほとんどです。そのため、内定取り消しについても、すでにみた整理解雇の要素を考慮して、無効とならないように配慮して内定取り消しを行う必要があります。

新型コロナウイルスの感染が疑われる社員に対し、有給休暇を取得させることは可能ですか?

有給休暇は、労働者が自由に取得できるものです。労働者本人が希望する場合は、有休を取得できますが、会社が一方的に有休を取得させることはできません。

保育所の入所自粛で育児休業から復職できない場合、休業期間を延長させるべきでしょうか?

育児休業期間の延長を認める必要があります。
早期の復職を予定していた労働者については、育児休業の終了予定日の繰り下げ変更を認める必要があります。また、1歳又は1歳6か月での復職予定者の場合には、育児休業期間の延長を認める必要があります。

新型コロナウイルスの社内感染は、労災保険給付の対象でしょうか?

業務に起因して感染したと認められる場合には、労災保険給付の対象となります。
感染経路が業務によることが明らかな場合だけでなく、感染リスクが高い業務に従事して、それにより感染した蓋然性が強い場合にも労災保険給付の対象とされます。

従業員が感染の増えている地域に行くことを、会社が認めないとすることは可能ですか?

会社が、従業員に対し、感染が増えている地域に行かないように要請することは可能ですが、これを禁止することはできないと考えます。

派遣労働者にもテレワークをさせることは可能ですか?

労働者派遣契約において、派遣労働者の自宅等も就業場所となることを明記しておけば可能です。

従業員の家族が濃厚接触者となった場合、自宅待機命令を出すことは可能ですか?

当該従業員が感染しているリスクも低いとは言えないので、業務命令として自宅待機命令を出すことが可能です。ただし、会社の自主的判断による休業となるので休業手当の支払いは必要となります。

新型コロナウイルスの影響で在宅勤務となった場合、定期代を支払う必要はありますか?

在宅勤務により、全く出勤をしないのであれば原則として支払う必要はないと考えます。そもそも、交通費の支払いは、法律上の義務ではなく、会社が、労働者に対し、労働契約により交通費の支払いを約していることにより支払う義務が生じているものです。出勤のために交通費を全く必要としない場合に、交通費の支払いをするのは、当事者の合理的意思に反します。もっとも、就業規則などの文言は、一律に交通費を支給するように規定されていることがほとんどですので、在宅勤務などを想定して、就業規則等を改定しておいた方がよいでしょう。

車通勤に変更した社員に対し、駐車場代やガソリン代を支払う必要はありますか?

就業規則等で、車通勤の際に、どのように通勤手当を支払う定めを置いているかによります。車通勤に関し、何らの定めがなければ、交通費を支払う義務は発生しません。

新型コロナウイルスにおける労働者への対応でお困りなら、一度弁護士にご相談ください

新型コロナウイルスに関しては、特に、解雇等で紛争となるケースが多くみられます。解雇等の具体的行動の前に、是非、弁護士にご相談されることをお勧めします。

現時点において、新型コロナウイルスの流行は、いつ終息するのかわからない状況が続いています(2020年3月現在)。このような状況下においては、貴社で、新型コロナウイルスの感染を防ぐために、従業員に対して、自宅待機を命ずる必要がいつ生ずるかわかりません。
以下では、新型コロナウイルスの感染防止のために従業員に自宅待機命令を出す際に知っておくべき事柄を解説していきます。

新型コロナウイルス流行に伴う自宅待機命令

新型コロナウイルスの感染防止策として、テレワークを導入される企業が増えてきました。このような全社的な取り組みのほかに、個別の従業員に対し、自宅待機命令を出すことによっても、感染防止を図ることができます。

自宅待機命令の効力について

会社が、従業員に対して自宅待機命令を出した場合、その自宅待機命令が業務命令として有効であるならば、従業員はこれに従う必要があります。自宅待機に伴い従業員が休業をすることになるので、その自宅待機命令を下した理由が、会社の都合によるものであると判断される場合には、会社は従業員に対して、休業補償をする必要があります。

業務命令としての自宅待機命令とは

会社は、雇用契約上、従業員に対し労務指揮権を有しています。従業員に対し、自宅待機命令を出す必要性が認められる場合には、就業規則の定めがなくとも、自宅待機を命ずることは労務指揮権に基づく業務命令として行うことができます。ただし、従業員に就労請求権が認められる場合や、自宅待機中に賃金を支払わなければならないにもかかわらず支払いを行わない場合などには、自宅待機命令そのものが無効と判断される可能性があります。

新型コロナウイルスによる就業制限は可能か?

従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、当該従業員は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律により、就労を制限されます。

安全衛生法上の就業禁止に関する解説は、以下のリンクをご覧ください。

従業員の疾病による「就業禁止」

感染が疑われる段階での自宅待機命令

従業員が、新型コロナウイルスに感染したと判明していないものの、感染が疑われる症状を発症しているような場合などには、他の従業員への感染を防止するために、会社は当該従業員に対し、自宅待機を命ずることは、必要かつ相当な業務命令であるといえます。

自宅待機中の給与を支払う義務

自宅待機により従業員が就労していないので、会社は休業中の給与を支払う義務はありません(ノーワークノーペイの原則。ただし、完全月給制など雇用契約による例外は除く。)
ただし、労働基準法は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」(法26条)の場合には、使用者は従業員に対し、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないと定めています。

新型コロナウイルスにおける労働者への対応

「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは

労働基準法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」については、不可抗力(①その原因が事業の外部より発生した事故であること、かつ、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること)以外は、「使用者の責めに帰すべき事由」にあたると考えられています。

感染者を自宅待機させる場合は、「使用者の責めに帰すべき事由」による休業にあたらないことは明らかです。

感染の疑いのある方を自宅待機させる場合には、上記②の要件を満たすかどうかが問題となりますが、厚労省のガイドラインにおいては、「帰国者・接触者相談センター」の結果を踏まえても、職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に当てはまるとされていますので、ご注意ください。

休業手当の支給事由については、下記のリンクも参照ください。

休業手当の支給事由

自宅待機期間の終了について

WHOが、新型コロナウイルス感染症に関して、健康状態の観察期間として最低14日間としていることを踏まえると、自宅待機命令においても、最低14日間の自宅待機を命ずるのが相当であると考えます。

新型コロナウイルスの感染と治癒後の職場復帰に関しては、下記のリンクも参照ください。

新型コロナウイルスの感染と治癒後の職場復帰

派遣社員への自宅待機命令

派遣社員は、派遣先で労務の提供は行いますが、派遣元と雇用契約を締結しています。派遣先も通常業務の遂行に必要な指示や命令を派遣社員に下すことはできますが、労働者の労務の提供を全面的に行わせない自宅待機命令については、原則として、雇用主である派遣元でなければ命ずることができないものと考えます。

自宅待機の要否は派遣元、派遣先のどちらが判断するのか?

派遣労働者が実際の就労しているのは、派遣先であるので、派遣先が自宅待機が必要であると判断した場合には、派遣元に自宅待機命令を下すことを要請して、最終的には派遣元がその命令の要否を判断することとなると考えられます。

労働基準法における派遣元・派遣先の責任分担

高年齢者を雇用している場合の対応

新型コロナウイルスに高齢者が感染した場合、若年者と比較して重症化しやすく、死亡率も高くなっています。企業が、高齢者を雇用している場合、当該従業員が新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクは予見可能であると考えます。高齢者の従業員に対して感染するリスクが高い職場である場合、重大な被害を回避する必要性から、そうでない職場よりも、自宅待機命令を出す必要性が高くなる可能性があります。

高齢者雇用

高年齢労働者のみに自宅待機を命じることは可能か?

高年労働者のみに自宅待機を命ずるのは、高年齢労働者の重症化リスクが高いことを踏まえると、状況によっては、自宅待機命令の必要性や相当性が認められる可能性はあります。

自宅待機命令に関するQ&A

緊急時の連絡手段として、社内連絡網を作成することは問題ないでしょうか?

連絡先は個人情報に該当しますので、緊急時の連絡手段に用いるという目的を明示したうえで情報を取得し、その範囲内で社内連絡網を作成して利用することに問題はありません。

就業規則に規程がなくても自宅待機を命じることは可能ですか?

自宅待機を命ずる必要性と相当性が認められる場合には、就業規則の定めがなくとも有効な業務命令として命ずることは可能です。

就業規則

社員の家族に風邪の症状がある場合、自宅待機を命じるべきでしょうか?

社員本人ではなく、家族に風邪の症状があるという事実だけでは、当該社員の新型コロナウイルス感染が疑われる状況にあるとは認めがたいと考えます。自宅待機命令の必要性や相当性に疑問が生じうるので、仮に、念のため、自宅待機を命ずるのであれば、賃金は100%支払うなどの対応が望ましいと考えます。

自宅待機中に有給休暇を取得してもらうことは可能ですか?

有給休暇の取得は、原則として労働者に自由に取得時期を定めさせねばなりません。そのため、会社が、労働者に対し、自宅待機中に有給休暇の取得を命ずることはできません。しかし、一方的に取得を命ずるのではなく、会社と労働者と協議し、労働者の判断で有給休暇を取得するのであれば問題はありません。

労働基準法で定められる年次有給休暇の基礎知識

在宅勤務が可能な社員に自宅待機を命じた場合、休業手当の支払いは必要ですか?

在宅勤務が可能であるにもかかわらず、これをしないのであれば、「事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること」とはいえず、休業理由は、労働基準法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」にあたります。そのため、休業手当の支払いは必要となります。

休業手当の支給事由

自宅待機中の社員に、定期的に病状の報告をさせることは可能でしょうか?

社員の病状は、自宅待機命令の延長の判断などに必要な情報であると考えますので、報告を求めることは可能であると考えます。

新入社員を自宅待機させる場合、休業手当の支払いは必要ですか?

新入社員であっても、他の社員と同様に扱う必要があります。他の社員に対し、休業手当の支払いが必要な状況(本人が感染者ではない等)であれば、当然、休業手当を支払う必要があります。

    
新型コロナウイルスにおける労働者への対応
休業手当の支給事由

自宅待機中に新型コロナウイルスに感染した場合、労災は適用されますか?

自宅待機中に、新型コロナウイルスに感染したことが明らかな場合には、業務に起因して新型コロナウイルスに感染したとは認められないので、労災の適用はないと考えます。

自宅待機命令に関する様々なご質問に弁護士がお答えします。お気軽にご相談ください。

同じ自宅待機命令であっても、その発令の状況で、様々な違いが生じます。トラブルを回避するためにも、実際に命令を下す前に、弁護士にお気軽にご相談ください。

貴社に、休職と復職を繰り返す社員はいませんか?社員が、メンタルヘルス不調になった場合、休職と復職を繰り返す場合があります。これは、怪我や精神疾患以外の病気による休職では、あまり見られない現象です。

会社の就業規則は、怪我や精神的疾患以外の病気による休職を前提に作られていることが多く、休職と復職を繰り返す社員に対し、制度上、うまく対応できない場合が少なくありません。
以下で、会社がどのような対応をすべきか説明します。

休職・復職を繰り返す社員に会社はどう対応すべきか?

まず、業務外の事由による傷病により、仕事ができない社員に対する対応としての休職制度により対応することになります。

休職制度は、休職期間満了時に、通常の仕事に復帰できない場合には、当然退職となる制度です。メンタルヘルス不調により休職した社員は、休職期間の満了時には、通常の仕事に復帰できる状態に回復していることも多いので、当然退職とはならず、その後、再び、メンタルヘルス不調を理由に休職を繰り返すのです。

このような状態になるのは、会社の就業規則は、怪我や精神的疾患以外の病気等を前提に休職制度を設計していることが多く、休職と復職を繰り返したとしても、いったん復職していると、当然退職とならない制度となっているからです。

したがって、休職・復職を繰り返す社員に対しては、休職制度を整備して、対応できる状況にすることが重要です。

メンタルヘルス不調による再休職について

メンタルヘルス不調は、就労ができない状況が長期間に及ぶのではなく、就労ができる状況と就労ができない状況が繰り返しあらわれます。
そのため、メンタルヘルス不調で休職をしても、休職期間満了時には、就労できる状態に回復できることが多いので、当然退職とならずに休職から復職する労働者がほとんどです。
しかし、復職をしても、再び、就労ができない状態となる労働者が多いので、再度、同じメンタルヘルス不調を原因として、再休職するケースが多いのが特徴です。

休職を繰り返す社員の特徴

メンタルヘルス不調により休職を繰り返す社員は、職場での人間関係が円滑でなく、職場内で孤立している人物であることが少なくありません。
そのため、会社が、職場での人間関係が円滑となるように配慮することは、休職を繰り返す社員を出さないための方策として、一定の効果があるといえます。

度重なる休職が他の従業員に及ぼす影響

特定の労働者が、休職を何度も繰り返す場合、他の従業員は、その従業員に対し、業務の引継ぎを何度も行うことになる等、業務の生産性をさげる要因にもなります。
また、少人数の職場では、休職したからといって直ちに別の人材を補充することもできず、人手不足で業務過多となり、ほかの従業員の士気が下がることも少なくありません。

再休職させる場合の給与はどうなるのか?

1回目の休職と再休職とで給与の取り扱いに違いはありません。休職制度を採用している会社の大半は、休職期間中は無給としていることが多いですが、この場合、再休職も場合も1回目の休職と同様に無給の扱いとなります。

休職・復職を繰り返させないためにすべきこと

休職と・復職を繰り返させないためには、そのような社員に対応する就業規則を整備することが必要です。具体的な規定について、以下で説明します。

休職・解雇に関する就業規則の見直し

まず、休職制度は、同じ原因や類似の原因で再休職した場合には、前の休職と通算して休職期間を計算し、前の休職の残期間を再休職の休職期間とする規定を設けるべきです。
休職制度は、3か月や6か月などの一定の期間を休職期間と定め、期間満了時に復職できなければ当然退職とする制度ですが、上記のような通算規定がないと、再休職の場合も0から休職期間を算定することになるので、何度でも休職を繰り返すことが制度上可能となるからです。

また、メンタルヘルス不調により、仕事ができないことを解雇事由と定めて、解雇ができるようにしておく必要もあります。もっとも、解雇による対応は、解雇の有効性を争われることが多いため、原則としては、休職制度により対応すべきでしょう。

復職可否の適切な判断

メンタルヘルス不調による休職は、再休職のリスクが多いため、復職の可否の判断は慎重に行う必要があります。専門医の診断に基づき復職の可否を判断すべきであり、労働者本人の申告のみに基づいて判断することは避けるべきです。

完治しないまま復職させることのリスク

復職可否の判断を誤って、完治しないまま復職をさせると、再休職のリスクがあるだけでなく、復職後の就労により、症状が悪化し、重症化する恐れがあります。
この場合、復職後の業務量などが適正でないと、重症化した精神疾患については、会社が安全配慮義務を怠った結果であるとして、労働者に会社が訴えられるリスクもあります。

リハビリ出勤制度の導入

復職の可否を判断するにあたり、復職のためにリハビリ出勤をしてもらう方法があります。リハビリ出勤は、業務を全く行わず出勤だけ行ったり、極めて少ない業務量の業務を行わせるなどして、少しずつ本格的な復職に向かわせる制度です。
リハビリ出勤を行い、その状況を専門医の復職可否の判断の資料とすることで、より適切な復職判断が可能となるでしょう。

復職後の業務内容等についての配慮

会社が、労働者が復職可能であると判断し、復職をさせた後の業務内容等については、業務量や業務によるストレスが過度にならないように配慮をする必要があります。

メンタルヘルス不調による休職から復職した労働者に、多くの業務をこなすように命じたり、重要な判断を伴う責任の重い仕事を任せたりすると、これらのストレスにより、再びメンタルヘルス不調を訴えたり、重篤な精神疾患にり患するリスクがあります。

会社が、復職した労働者に、過度の業務を命じたため、重篤な精神疾患が生じたと認められた場合には、会社が安全配慮義務を怠ったために重篤な精神疾患が生じたとして、労働者から会社が損害賠償を求められる可能性があります。

休職・復職をめぐる裁判例

休職と復職を繰り返す労働者に対する対応を考えるうえで、参考となる裁判例を、ご紹介します。

事案の概要

労働者が気分障害の診断により、5か月欠勤後、休職制度を利用し、2か月休職し、復職後、約1年で再び、欠勤を始め、欠勤が7か月続いたのちに、休職制度を利用して、約6か月後に復職し、復職後、1か月弱で欠勤を10日ほど続けたのち、休職制度を利用して休職し、約3か月後の休職期間満了にあたり、労働者の主治医復職可能であるという診断書を出したため、会社は、就業規則の解雇事由である「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、またはこれに堪えないとき」等にあたるとして、解雇を行ったため、労働者が解雇の有効性を争った事案。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

平成28年(ヨ)第12号 平成28年6月17日神戸地方裁判所明石支部決定

裁判所は、会社側が、労働者に対し、即時の復帰か、自主退職のいずれかを迫ったことにより、労働者が心理的圧迫を受けたことなども、解雇事由の存在の判断において考慮すべきとし、労働者が安定した就労を阻害する要因として、会社の就労環境が整っていないことなども指摘したうえで、「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、またはこれに堪えないとき」の解雇事由に該当しないと判断し、その他の解雇事由もないとしたうえで、解雇を無効と判断しました。

ポイント・解説

本件は、会社の労働者に対する対応が不適切であったことが、解雇の有効性の判断に大きく影響したものと考えられます。
裁判所は、会社が、労働者に心理的圧迫を加えたことやこれにより労働者が苦痛を感じたこと、就労環境が整っておらず、労働者の希望するやりがいのある場所で勤務していないことを主治医が指摘していることなども考慮して、「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、またはこれに堪えないとき」には当たらないとしました。

この裁判例は、会社の対応が不適切な場合には、就労できないのは心身の故障が原因ではなく、会社の対応が原因であると考えていると思われます。
このような考え方に立てば、会社が不適切な対応をとると、休職と復職を繰り返す労働者をいつまでも解雇できないこととなります。
したがって、会社は、休職と復職を繰り返す労働者に対しては、労働者の復職に向けた環境作りを適切に行い、それでもなお就労ができない場合に解雇に踏み切ることを選択すべきです。

会社が、労働者の復職に向けた環境作りを適切に行っているにもかかわらず、労働者が休職・復職を繰り返すような場合には、医師も、復職が困難であると判断する可能性も高まります。環境に問題がない以上、心身の故障が就労できない状態を引き起こしていると判断しやすいためです。

以上のことからも、メンタルヘルス不調により、休職・復職を繰り返す労働者に対する会社の対応としては、復職に向けた適切な環境作りが最も重要であると考えます。

再休職の予防には社内規定の整備、復職可否の判断が重要となります。不明点があれば、まずは弁護士にご相談ください。

裁判例で示したとおり、実務上は、休職と復職を繰り返し、休職期間が長期にわたっても、会社の対応が不適切であれば、労働者の解雇や休職期間満了による退職が認められない可能性が高いといえます。
休職・復職を繰り返し、戦力とならない労働者に対し、周囲の従業員が不満を持ち、就労するか退職をするかを迫るというケースは少なくありません。
また、適切に対応するためには、就業規則の整備が必要にもなります。
そのような対応を適切に行うためには、労働紛争に詳しい弁護士に相談されることを強くお勧めします。

フレックスタイム制とは、労働者が一定の単位期間の間に定めた一定の所定労働時間の労働を行うことを条件として、労働者が、1日の労働時間の始業時刻と終業時刻を定めることができる制度です。

このフレックスタイム制においては、出退勤のなされるべき時間帯(フレキシブルタイム)と出勤すべき時間帯(コアタイム)が定められることが多いです。そのような会社においは、労働者に対し、コアタイム外で就業命令を下すことはできるのでしょうか。

コアタイム外の時間帯に就業命令を下すことは可能か?

フレックスタイム制を採用している場合、就労をすべきと定めているコアタイム外の時間に就業命令を下すことはできません。以下、説明します。

労働時間の指定はフレックスタイム制の趣旨に反する

そもそも、フレックスタイム制は、労働者が、1日の労働時間の始業時刻と終業時刻を自ら定めることができるという点が制度の根幹です。労働者が、自由に始業時刻と終業時刻を定めることができることから、1週および1日単位の法定労働時間を超えても、清算期間における労働時間が、平均週40時間(特例事業を除く)を超えなければ、時間外労働とならないとする制度です。

コアタイム外で、使用者が就業命令を下すことができると、労働者が自由に始業時刻と終業時刻を決定できるというフレックスタイム制の趣旨に反するため、このような就業命令を下すことはできないのです。

労働者本人の同意を得ることができれば可能

使用者が、コアタイム外に就業命令を下すことはできません。労働者が、コアタイム外の就労に同意するのであれば、その時間について就労してもらうことは可能です。厳密にいえば、会社の要請に合わせて、労働者が、始業時刻や終業時刻を決定したことになるでしょう。

フレックスタイム制における就業命令について

フレックスタイム制において、就業命令を出すことはできません。コアタイムを設けている場合、コアタイムについては、労働者は就労義務を負っていることから、就労していなければ就業命令を出すことは可能です。しかし、コアタイム外については、就業命令を出すことはできません。フレックスタイム制においては、就業命令を下すのではなく、労働者に当該時間帯に出社をするように依頼をして同意を得ることが必要です。

会議等がコアタイムをまたぐ場合

フレックスタイム制では、労働者は、コアタイム以外の時間については就労義務を負っていません。そのため、会議等の予定がコアタイムをまたいでしまう場合には、労働者に対して、事情を説明して、その会議等の間について出社することに同意を得る必要があります。

フレックスタイム制の仕組み

すでに述べましたが、フレックスタイム制とは、労働者が一定の単位期間の間に定めた一定の所定労働時間の労働を行うことを条件として、労働者が、1日の労働時間の始業時刻と終業時刻を定めることができる制度です。その仕組みについて、以下で解説します。

フレキシブルタイムとコアタイム

フレックスタイム制においても、24時間のうち、いつでも出退勤自由といった制度が設けられることはありません。通常は、出退勤をすべき時間帯が定められ、この時間帯をフレキシブルタイムといいます。また、必ず出勤すべき時間帯が定められることも多く、この時間帯をコアタイムといいます。

法定労働時間を超える場合は割増賃金の支払いが必要

フレックスタイム制では、1週及び1日の法定労働時間の制限はありません。しかし、労使協定で定めた1か月や3か月など一定の期間(清算期間)において、週平均40時間(特例事業を除く)を超えた労働時間については、時間外労働となります。使用者は、この時間外労働に対して割増賃金を支払う必要があります。

フレックスタイム制における就業命令でトラブルにならないよう、弁護士が最善な方法をアドバイスさせて頂きます。

フレックスタイム制は、労働者に自らの労働時間を決定させることを認めて、始業時刻と終業時刻の決定権を労働者に与えた制度です。そのため、フレックスタイム制を採用している労働者に対し、就業命令を下すことはできません。むしろ、特定の時間帯に勤務してもらいたいという労働者に対して、フレックスタイム制を採用していることが、そもそも適切であるのか検討する必要があります。

フレックスタイム外での就労の必要性が高い場合には、フレックスタイム制におけるコアタイムの見直しで対応するのか、フレックスタイム制の適用労働者の範囲を制限するのかなどの制度設計を見直す必要があります。フレックスタイム制の運用でお困りになられた場合には、是非、弁護士にご相談ください。

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労働者が、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、日々の始業時刻と終業時刻を自ら決定して、労働時間を決めることができる制度をフレックスタイム制といいます。

フレックスタイム制と一般の労働時間制度とは、その制度の違いから時間外労働の計算方法が異なっています。以下では、フレックスタイム制における時間外労働の計算方法について説明します。

フレックスタイム制における時間外労働の考え方

フレックスタイム制は、①労働者に日々の始業時刻と終業時刻を決定することを委ねる制度ですが、制度の導入時に、あらかじめ②一定の期間について働く時間の総量も定めなければなりません。

②の一定の期間を、「清算期間」といい、清算期間において働くこととされた時間の総量を「総労働時間」といいます。清算期間は、3か月以内で定める必要があります。

原則として、フレックスタイム制における時間外労働は、清算期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間を、時間外労働として算定することになります。清算期間が1か月を超える場合には、法定労働時間の総枠を超えなくとも、1か月あたり週平均50時間を超える労働も時間外労働となります。

時間外労働が発生する場合は36協定の締結が必要

フレックスタイム制であっても、一般の労働時間制度と同様に、時間外労働を行わせるためには、36協定の締結と届け出が必要です。

ただし、一般の労働時間制度と異なり、36協定において、1日の延長期間については協定する必要はなく、1か月、1年の延長期間を協定します。これは、フレックスタイム制が、日ごとの労働時間については、労働者が自ら決定できる制度だからです。

フレックスタイム制の残業時間の計算方法

フレックスタイム制では、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた労働時間が時間外労働となります。
清算期間における法定労働時間の総枠は、以下の計算式により求めます。清算期間が1か月を超える場合、法定労働時間の総枠の範囲内であっても、1か月あたりの労働時間が週平均50時間を超える部分は時間外労働となります。

なお、法定休日の労働は、時間外労働とは別に算定して計算し、35%以上の割増賃金を支払う必要があります。

(計算式)
清算期間における法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間×(清算期間の暦日数)÷7日

・上記の計算式で求めた清算期間における法定労働時間の総枠を実労働時間が超える場合には時間外労働が発生します。

以下で、具体的な計算例を示して、解説します。

清算期間が1ヶ月以内の場合

清算期間が1か月の場合を説明します。1週間の法定労働時間は40時間ですので(特例措置対象事業場を除く)、さきほどの計算式で計算すると、暦日数が31日の月は、法定労働時間の総枠は、177.1時間、30日の月は171.4時間、29日の月は165.7時間、28日の月は160時間となります。

清算期間における労働者の実労働時間を算定し、各清算期間に対応する暦日数の法定労働時間の総枠を超える場合には、その超えた時間が時間外労働となります。

例えば、暦日数31日の清算期間において、実労働時間が190時間であった場合、12.9時間(190-177.1=12.9)が時間外労働となります。

清算期間が1ヶ月を超える場合

清算期間の法定労働時間の総枠を実労働時間が超えた場合、その時間が時間外労働となるのは、清算期間が1か月以内の場合と同様です。これに加えて、清算期間が1か月を超える場合には、1か月ごとの労働時間が、週平均50時間を超えた場合には、その超えた時間については、時間外労働となります。

計算方法としては、①1か月ごとに週平均50時間を超えた労働時間を時間外労働として算定し、②①で算定した時間を除いて、清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間を、時間外労働として算定します。
具体的に、4月から6月までの3か月が清算期間であった場合を例に、説明します。

まず、法定労働時間の総枠を求めます。4月から6月の暦日数は91日ですので、法定労働時間の総枠は、520時間となります(40時間×91日÷7日=520時間)。

次に、各月の週平均労働時間が50時間となる月間労働時間数を求めます。

4月と6月は、214.2時間(50時間×30日÷7日)、5月は、221.4時間(50時間×31日÷7日)です。

実労働時間が、4月220時間、5月180時間、6月140時間であったとします。

①まず、各月ごとに週平均50時間を超えた労働時間を算定します。
4月は、5.8時間(220時間-212.4時間)、5月、6月は0時間となります。

②清算期間の実労働時間は、540時間(220時間+180時間+140時間)ですが、5.8時間分は、すでに、さきほど時間外労働として算定済みなので、清算期間の法定労働時間の総枠を超える労働時間の算定では、二重に算定しないように除きます。そうすると、総枠を超えた時間は、14.2時間(540時間-5.8時間-520時間)となります。

そして、4月から6月の清算期間における時間外労働の時間は、①と②を合計した20時間となります。

特例措置対象事業場の法定労働時間

一般の事業場と異なり、特例措置対象事業場は、週の法定労働時間が44時間とされていますので、法定総労働時間の総枠の計算においても、週44時間を用いて計算を行います。そのため、清算期間における法定労働時間の総枠は、一般の事業場に比べて大きくなります。
なお、特例措置対象事業場とは、常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)、保健衛生業、接客娯楽業です。

労働時間に過不足があった場合の対処法は?

フレックスタイム制では、労働者が、始業時刻と終業時刻を決定することから、清算期間において働くことを予定していた所定労働時間との過不足の調整についても、一般の労働時間制度と異なる扱いが生じる場面があります。

実労働時間に過剰があった場合

ある清算期間における労働時間が過剰であったときに、過剰に働いた時間を、次の清算期間に充当して、過剰に労働した清算期間の割増賃金の支払いを免れることはできません。
これは、過剰に労働した清算期間において、割増賃金を支払う義務がすでに生じているので、割増賃金を支払わないことは、賃金の全額払いの原則(労基法24条)に反することになるからです。

実労働時間に不足があった場合

ある清算期間における実労働時間が不足した場合に、所定の総労働時間に不足する時間分を次の清算期間に繰り越して清算することが認められる場合があります。
これは、所定の総労働時間を実労働時間が下回る場合には、ノーワークノーペイの原則により、不足分に相当する賃金をカットして支払うことができるので、これを行わずに、次の清算期間の労働と調整することは、労働者にとっても不利益がなく、過剰な場合と異なり、賃金の全額支払い原則等に反しないからです。
もっとも、あらかじめ、法定労働時間の総枠を超えて労働を予定することは、労働時間を規制する法の許すところではないので、次の清算期間における労働時間が法定労働時間の総枠の範囲内となるように、繰り越す時間の限度を定める必要があります。

そのため、総労働時間の不足があった場合に、次の清算期間に繰り越しができるのは、所定総労働時間が、法定労働時間の総枠を下回っている場合に限られます。したがって、多くの企業でみられる所定総労働時間が法定総労働時間の総枠と一致している制度の場合には、繰り越しができないので、実労働時間に不足があったときは、不足分について賃金をカットして支払うことになります。

働き方改革による時間外労働の上限規制

働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制が設けられています。
まず、原則として、月の時間外労働は45時間以内、年360時間以内とすべきとされ、限度時間を超えることができる場合であっても、年6回以内で年720時間以内としなければなりません。

また、時間外労働と休日労働の合計は、単月100時間未満、2から6月平均は80時間以内とせねばなりません。

フレックスタイム制は、労働者に始業時刻と終業時刻を決定することを委ねる制度ですが、上記の時間外労働の上限規制の範囲内になるようにしなければならないのは、一般の労働時間制度と同様です。

フレックスタイム制における休日労働と深夜労働の取り扱い

フレックスタイム制における法定休日における労働は、時間外労働とは別にカウントされます(なお、一般の労働時間制度においても、法定休日労働と時間外労働は区別されています。)。法定休日以外の所定休日における労働は、時間外労働の算定において考慮します。

次に、深夜労働に関する規制は、フレックス制であっても、一般の労働時間制度と変わりません。そのため、午後10時から午前5時の間の労働については、割増賃金を支払う義務が生じます。深夜の割増賃金を発生させないためには、労働者が、始業時刻と終業時刻を定めることができる時間帯(フレキシブルタイム)を、午前5時から午後10時の間に設定しておくべきです。

フレックスタイム制で時間外労働を適正に管理するなら、労務問題に強い弁護士にご相談ください。

多様な働き方が求められ、コロナ禍においては、テレワークを導入する企業が増えるなど、フレックスタイム制のような柔軟な働き方を可能とする制度を導入される企業は増加していくことでしょう。

ただ、今回の記事で説明したとおり、フレックスタイム制は、一般の労働時間制度とは大きく異なる部分もあります。正しく制度を理解し、フレックスタイム制における時間外労働を適切に管理するためには、労務問題に強い弁護士に是非ご相談ください。

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労働者に退職金を支払うことは、使用者の義務ではありません。それでは、制度として退職金制度を導入する際に、使用者が自由に退職金の減額・没収・不支給ができると定めていた場合には、使用者が自由に、退職金の減額等ができるのでしょうか。

退職金は、賃金の後払い的な性格を有していると理解されているので、退職金の減額・没収・不支給の定めがあったとしても、直ちに減額等が有効となるのではなく、その減額等の定めが無効と解されて、減額等が認められない場合があります。

以下では、退職金の減額・不支給を行う場合で問題となる点について、解説を行います。

長年、労働者が会社に貢献してきたことに報いるという側面(これを功労報償的性格といいます。)も、有しています。

そのため、退職金の功労報償的性格を踏まえた退職金の支給基準の定めを設け、退職金の減額等をすることは可能です。だだし、この場合であっても、退職金が賃金の後払い的性格を有していることから、支給基準の有効性が争われて、退職金の減額等が認められない場合もあります。

問題社員の退職金を減額・不支給とすることは可能か?

問題社員が退職をした場合に、その社員の退職金を減額したり、不支給としたりすることができるのでしょうか。

まず、就業規則において、退職金の減額・不支給の条項が設けられていなければ、減額や・不支給を行うことはできません。

次に、就業規則において、退職金の減額・不支給の条項が設けられていたとしても、使用者の自由な裁量で退職金を減額・不支給とする条項は無効であり、単に問題社員であるという理由のみで退職金の減額・不支給を行うことはできないと考えます。なぜなら、退職金は賃金の後払い的性格を有していることから、使用者の自由な裁量で退職金の額を決することは、賃金の後払い的性格に照らして合理性がないと考えるからです。

一方で、退職金には、賃金の後払い的性格だけでなく、労働者が、使用者のために長年勤続して貢献したことに報いるという性格(功労報償的性格)もあります。したがって、退職金の支給基準おいて、「懲戒解雇」などの場合には減額・不支給とするなどの具体的な定めを設けることで、問題社員の退職金を減額・不支給とする余地はあります。

減額・不支給の対象となる問題社員とは

すでに、述べたとおり、退職金の功労報償的性格から、特定の事由を理由に退職金の減額・不支給を行うことは認められると解されます。

しかし、問題社員であるといった事由だけで退職金の減額・不支給を行える定めがある場合には、その減額等の定め自体が、退職金が賃金の後払い的性格に照らして合理性がなく、無効となると考えます。

一方、問題社員の行動が、懲戒解雇の対象となり、懲戒解雇に伴う扱いとして、退職金の減額や不支給を行うことは、そのような退職金規程等が存在すれば可能です。

問題社員を懲戒解雇とした場合、退職金はどうなるか?

問題社員を懲戒解雇した場合に、退職金規程等で懲戒解雇を、退職金の減額事由や不支給事由として定めていれば、退職金を減額または不支給とすることは可能です。

しかし、減額・不支給事由に懲戒解雇が定められていれば、その規定どおりの減額や不支給が直ちに有効とされるわけではありません。退職金が、賃金の後払い的性格と功労報償的性格を有していることから、減額が不支給規定を有効に適用できるのは、労働者の行為が、退職までの勤続の功をすべて失わせる(不支給の場合)か、減殺してしまう(減額の場合)程の著しく信義に反する行為があった場合に限られると解されるからです。

懲戒事由と減額・不支給の相当性

懲戒解雇となる懲戒事由にも様々な事由があります。たとえば、無断欠勤を繰り返した社員を懲戒解雇する場合もあれば、業務上横領を犯した社員を懲戒解雇する場合もあるでしょう。

先ほどみたとおり、退職金の減額・不支給が認められるとしても、その行為が退職までの勤続の功をすべて失わせるほどのものといえなければ、退職金の不支給は認められません。過去の裁判例からすると、無断欠勤を理由に懲戒解雇した場合に、懲戒解雇し、退職金を不支給としたとしても、不支給条項の適用は無効とされ、一定額の退職金の支払いが命ぜられることとなると思われます。また、裁判例では、業務上横領が行われた事案において、使用者が退職金を不支給としたことが争われたところ、勤続年数の長さ等その他の事情を考慮し、退職金の3割の支給を命じたものもありますので、退職金を不支給とする場合には、慎重な判断が求められます。

退職金の減額・不支給が有効と判断されるには

退職金の減額・不支給を有効と判断されるためには、就業規則(退職金規程)において、減額・不支給の条項を定めておく必要があります。

退職金に関しては、就業規則でその内容を定めることが必要ですが、就業規則に退職金の減額・不支給条項がないと、そもそも、減額・不支給を行うことができません。これは、労働契約法12条により、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効とする。この場合において、無効となった部分については、就業規則で定める基準による。」とされていることから、就業規則に減額・不支給規定なければ、労働者に不利益な退職金の減額・不支給ができないことになるからです。

事前に退職金の減額・不支給規程を設けておく

上記のとおり、退職金の減額・不支給を行うためには、事前に、就業規則(退職金規程)に、退職金の減額・不支給ができる条項を定めておく必要があります。

減額・不支給の根拠となる証拠を集める

また、退職金の減額・不支給を行った場合には、退職後の労働者が、減額・不支給について争い、退職金の全額支給を求めてくる可能性があります。そのため、退職金の減額・不支給を行う場合には、その根拠となる証拠を収集しておくことが重要です。

問題社員への退職金の減額・不支給に関する就業規則の定め方

退職金の支給要件として、懲戒解雇された場合または懲戒解雇事由がある場合には、退職金を減額または支給しないなどと定めて、問題社員への退職金の減額等に対応する方法があります。しかしながら、このような定めは、問題社員の行為に、懲戒解雇事由がある場合でなければ適用ができません。

怠業などの問題行動のある社員に対応するのであれば、退職金の減額ではなく、退職金の支給基準として、勤務成績を勘案して退職金額を定める、として、怠業をマイナス評価して退職金額を決定するという対応も考えられます。なお、このように勤務成績を勘案する場合には、勤務成績の評価が恣意的であってはならず、かつ、その評価と退職金の金額の計算方法が退職金制度全体をみて合理性があるといえる必要があるでしょう。

能力不足等で普通解雇とする場合の退職金

能力不足等で普通解雇とする場合の退職金を、減額や不支給とすることができる旨の定めを設けていても、退職金の賃金の後払い的性格に照らせば合理性がなく無効と判断され減額等は認められないと考えます。

裁判例では、懲戒解雇が認められる事案であっても、退職金は賃金の後払い性格を有しているので、退職金の減額等が認められるのは、その労働者の行為が、勤続の功を損なうよう場合にのみ、減額等が認められると考えています。このような裁判所の考え方からすれば、能力不足を原因とする普通解雇のような場合に退職金を減額・不支給とすることは困難であると考えます。

能力不足等の社員に対する退職金の支給については、算定された退職金支給額を減額するのではなく、能力不足による勤務成績の不良が退職金の計算方法に反映されるような合理的な基準を定めることにより対応すべきと思われます。

退職後に問題行為が発覚した場合

退職後に、退職金不支給の事由が発覚するという場合があります。

退職金が支払われる前に発覚した場合には、不支給条項を根拠に支払いを拒むことができます。退職後に、雇用関係はないので懲戒解雇を行うことはできませんので、不支給条項には、懲戒解雇事由が存在する場合も含めておくべきでしょう。

退職金が支払われた後に発覚した場合、退職金の没収・返還条項があれば、これを根拠として返還を求めることができます。また、没収・返還条項がない場合には、労働者が退職金不支給事由を使用者に秘匿して退職金を不当に取得したとして、不当利得返還請求権を行使し、退職金の返還を求めることも可能です。

競業避止義務違反による退職金の没収

退職後、労働者が、同業他社への転職した場合に、退職金を没収するという条項を設ける場合があります。裁判例では、「ある程度の期間」に同業他社へ転職した場合には、勤務中の功労に対する評価が退職手当に関し一般の自己都合退職の半分に減殺される趣旨であると解して、退職金を2分の1に減額する条項を有効としたものがありますが、全額没収条項の定めについて、「顕著な背信性のある同業他社への就職についてのみ適用される」として、適用を否定した裁判例もあります。

すくなくとも、競業避止義務違反による退職金の没収条項を定めるとしても、全額没収が有効と認められるのは、営業秘密を持ち出して転職するなどの重大な背信行為がある場合に限られると思われます。

退職金の減額・不支給をめぐる裁判例

以下では、退職金の不支給が問題となった裁判例を解説します。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判種類)

平成14年(ネ)6224号 東京高裁平成15年12月11日判決は、以下の通り判断しました。

①賃金の後払い的性格の強い退職金について、その全額を不支給とするには、当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要である。

②会社に対する直接の背信行為とはいえない職務外の非違行為である場合には、それが会社の名誉信用を著しく害し、会社に無視しえないような現実的損害を生じさせるなど、業務上横領や背任等の犯罪行為に匹敵するような強度の背信性を有することが必要である。このような事情がないのに、退職金の全額を不支給とすることは、比例原則に反する。

③退職金が功労報償的性格を有するものであること、支給の可否については、会社の側に一定の合理的裁量の余地があることからすれば、職務外の非違行為が強度の背信性を有するまではいえない場合であっても常に退職金の全額を支給すべきであるとはいえず、個別的事情に照らし、一定割合を支給すべきものである。退職金不支給条項は、このような趣旨を定めたものと解すべきであり、その限度で合理性を持つ。

等と判断し、会社に退職金の3割を支給することを命じました。

ポイントと解説

上記の裁判例は、退職金を賃金の後払い的性格と功労報償的性格の二つの性格を有するものであると理解し、全額不支給が認められるには、当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要であると考えています。また、全額不支給を認めるほどの強度の背信性がない場合には、個別的事情に照らし、一定割合を支給すべきものとしています。

このような考え方は、従来の裁判例の考え方に沿ったものであるということができます。

上記の通り、懲戒解雇が認められた事案においても、退職金の全額不支給は認められず、一部支給が命じられています。また、減額の事由についても、労働者の永年の勤続の功を損なうものであるかという観点から検討を加えています。このような裁判例を踏まえれば、問題社員であるといった事情だけで、退職金を減額したり、不支給とすること認められることが困難であるといえるでしょう。

業務上横領、背任といった事案においては、退職金を不支給とし、その他の懲戒解雇相当事案については、減額にとどめるべきであると思われます。

問題社員の退職金でトラブルにならないよう、労働問題の専門家である弁護士がサポート致します。

退職金の減額や不支給をめぐっては、過去に労使間で紛争となり、裁判例において一定の考え方が示されているところです。したがって、これを無視した取り扱いを行うことは、無用な紛争を招き、かつ、使用者にとって不利な判断がなされる可能性が高くなります。

判例の考え方を踏まえ、当該事案においてどのように対応すべきかは、弁護士による訴訟を踏まえた助言なくしては困難です。専門家である弁護士がサポートしますので、お気軽にご相談ください。

「健康経営」という言葉をご存じでしょうか。「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること(経産省HP参照)ですが、従業員への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上等につながると考えが得られています(同HP)。

このような「健康経営」を戦略的に実践するためには、企業全体が組織として、健康経営に取り組む必要があります。

従業員の健康管理は企業経営において重要な課題

我が国は、出生率が低下し、生産年齢人口が減少を続けています。多くの企業において、若年層の採用ができず、労働力の確保が企業経営における重要な問題となっています。全体としての生産年齢人口が減少をする中で、労働力を確保するためには、これまで定年で雇用契約が終了していた高齢者についても、雇用期間を延長して、仕事を続けてもらうことや、人材の流出を防ぐ取り組みが必要となってきます。

従業員の健康状態が悪化すると企業の生産性が低下するだけでなく、人材の離職を招いたり、人材の確保が難しくなるなどの影響が生ずるため、従業員の健康管理を行うことは、現代における企業経営において重要な課題となっています。

従業員の健康的な働き方とは

長時間労働が、過労死やうつ病などの精神疾患、脳梗塞などの疾病の原因となりうることは、広く世間に知られるようになりました。従業員の健康的な働き方としては、まず、労働者の心身に悪影響を及ぼすような長時間労働を避け、適切な労働時間で働くことが重要です。

また、労働時間が長時間に及ばなくとも、仕事内容や職場環境で強いストレスがかかり、従業員の心身を害することもあります。このような仕事内容や職場環境のストレスについては、適切な休暇を取得したり、職場環境を適切に改善することなどで、ストレスを緩和するなどの対策が必要です。

働き方改革の推進と「健康経営」について

「働き方改革」は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立」などの働く方のニーズの多様化に伴い、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作るために、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指すもの(厚労省HP参照)です。

働き方改革を推進するための法律においては、労働者の残業時間の上限規制について罰則を設けたり、企業に労働者の有給休暇を義務付ける規制が設けられるなど、「健康経営」の考え方と共通する部分が少なくありません。

そのため、企業が、適切に働き方改革を推進していくことは、健康経営を実践するきっかけとなるでしょう。

企業が健康経営に取り組むメリット

労働者の心身の健康状態が損なわれている場合、労働者は、十分な能力を発揮できません。企業が健康経営に取り組み、労働者の心身を健康な状態に保つことができれば、生産性の向上、ひいては業績の向上につながるというメリットがあります。

また、生産年齢人口の減少に伴い、労働者にとって、就業先の選択肢はこれからも増えていくことでしょう。健康経営に取り組み、労働者の心身を健康に保つことができれていれば、人材の離職を防ぐことにつながり、また、人材の確保にもつながるというメリットがあります。

健康的な働き方を実現するには組織マネジメントが重要

健康的な働き方を実現するためには、労働時間が適切に管理され、仕事内容や職場環境についても、状況に応じた改善がなされる必要があります。

上記のような管理や改善は、労働者の個人的な努力では対応できるものではなく、企業が組織として、管理・改善を行う必要があります。そのため、労働者の健康的な働き方を実現するためには、組織マネジメントが重要となります。

経営理念の公表と意識改革

企業が、長時間労働の危険性などを理解しつつも、現実には、長時間労働が是正されないという企業は少なくありません。職場環境の問題として取り上げられるパワハラやセクハラの問題についても、問題であることは理解されながらも、現実には、改善されないという企業もあります。

これは、建前としては、長時間労働やパワハラ等はすべきでないが、企業内部の意識として、これを許容する考えが支配的であるためです。

そのため、働き方改革を推進し、健康経営を目指すうえでは、経営理念として、健康経営を目指すことを宣言公表し、企業内部の意識を改革していくことが重要です。

労働時間の適切な管理

長時間労働を抑制するための手段として、使用者が労働者の労働時間を適切に管理することが必要ですが、中小の企業においては、労働時間の適切な管理がなされていない企業が少なくありません。

使用者が、労働時間の適正な把握のために講ずべき措置としては、①タイムカード等により、始業・終業時刻の確認及び記録すること②賃金台帳を適正に記載し、③労働時間の記録に関する書類を保存することが必要です。また、④労務管理を行う部署の責任者が、労働時間管理上の問題点を把握し、その解消を図ることや、⑤労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、問題点やその解消を図ることも重要です。

職場環境の改善

職場環境を原因として、労働者の心身の健康が害される場合には、パワハラ、セクハラ等の各種のハラスメントがあります。

労働者から、パワハラ等のハラスメント被害の申告があった場合や、ハラスメント被害をうかがわせる状況を社内で発見した場合には、速やかに、ハラスメントの事実があるか否かについて、調査を行い、適切に職場環境を改善する必要があります。

ハラスメント事案では、加害者が、自分の行為が被害者に精神的苦痛を与えるものであることを認識していない場合や、職務上許される言動であると理解している場合が多くみられます。

そのため、ハラスメント事案について、事実の存在が確認された場合には、当該事案に対する処分等の対応のみならず、事実が確認できなかった場合であっても、ハラスメントに対する教育を施すなどして、ハラスメントが発生しない職場環境を構築することが必要です。

ハラスメントによるメンタルヘルス不調の防止

パワハラ等のハラスメント行為が行われた場合、これにより被害者となった労働者がメンタルヘルス不調を訴えることが多くみられます。当該ハラスメント行為について、加害者を処分し、再発防止策を講じたとしても、被害者のメンタルヘルス不調が直ちに改善するわけではありません。

そのため、ハラスメント行為を受けた者が、メンタルヘルス不調に至る前に、ハラスメント行為を発見し、対応する体制づくりをすることが重要です。

具体的には、ハラスメントに対する相談窓口を設置し、労働者に周知することで、より早い段階でハラスメントに対応することができる体制を整備することが重要です。

会社の健康管理責任が問われた判例

以下では、会社に従業員の健康管理責任いわゆる安全配慮義務違反が問題とされた判例を解説します。

事件の概要

Aは、大学卒業後、Yに採用され、ラジオ局ラジオ推進部に配属された。Yでは残業時間について、労働者の自己申告制がとられていた。Aは長時間労働を続けるうちに、うつ病にり患して、異常な言動をするようになった。しかし、上司らはAが休息できるような措置を取らなかった。その後、Aは自宅で自殺した。

遺族は、上記の長時間労働により、うつ病にり患したことが自殺の原因であり、安全配慮義務違反または不法行為を理由として、会社に対し、損害賠償を請求した。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判種類)

最高裁平成12年3月24日判決(平成10(オ)第217号・第218号)は以下のとおり判断しました。

①使用者は、その雇用する労働者の業務遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う。

②Aの業務の遂行とそのうつ病り患による自殺との間には相当因果関係があることを認め、Aの上司らは、Aが恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していること及びその健康状態が悪化していることを認識しながら、その負担を軽減させるための措置を採らなかったことにつき過失があるとして、Yの損害賠償責任を肯定した源信の判断は是認できる。

③被害者の性格などの心理的要因を損害賠償すべき額の決定にあたり一定の限度で斟酌することはできるが、労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様などが業務の過重負担に起因して損害の発生または拡大に寄与したとしても、労働者の性格が前記の範囲を外れるものでない場合には、その性格などを損害賠償すべき額の決定にあたり、斟酌することはできない、として、損害額の3割を減じた原審を破棄した。

ポイントと解説

本判決が示すように、使用者は労働契約に伴う安全配慮義務として労働者の健康に配慮する義務を負っています。

長時間の労働により、うつ病を発症し、労働者が自殺した事案においては、労働者の死亡という結果に労働者の性格などが影響していますが、本判決の判断枠組みに従い、過失相殺を認めず、損害の全額の賠償を使用者に認めるのが、裁判所の趨勢です。

長時間労働を原因とするうつ病の発症については、因果関係の存在が争点となるところですが、裁判例においては、精神障害の労災認定基準を参考にし、長時間労働がある場合にはうつ病の発症との因果関係が認められています。

労働者の労務管理を怠り、長時間の労働を容認することは、労働者の健康を害するのみならず、これを原因とした、多額の損害賠償請求リスクが生じることを意識すべきです。

従業員の健康な働き方を目指すなら、企業労務に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

従業員が健康的な働き方ができることは、生産性や業績の向上など効果があるだけでなく、使用者の損害賠償リスクを軽減するといった効果もあります。

しかし、企業の置かれている現状や企業文化などから、従来の働き方を変更することは容易ではありません。

そのため、法改正により労働時間の上限規制違反に対する罰則が設けられるなど、国は、法規制を用いて従業員の働き方を変えようとしています。このような法規制や法的リスクを理解することが、企業が、従来の働き方を変更するきっかけとなるでしょう。ぜひ、労務に詳しい弁護士にご相談いただき従業員の働き方を変えることを目指してください。

職務怠慢の社員を解雇することは可能か?

職務怠慢を理由として、社員を解雇することは可能でしょうか。使用者が、職務怠慢を労働契約の債務不履行であり、社員を解雇することに何ら問題はないと考えられる方もいらっしゃると思います。

しかし、解雇されることは、賃金を唯一の生活手段とする労働者に対しては、生活上の脅威であり、極めて深刻な影響を与えます。そこで、労働基準法や労働契約法等の諸法令により、解雇に関する規制が置かれ、労働者の保護が図られています。

すなわち、民法上は、解雇は自由ですが、労働契約法16条によって、社員の解雇が、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、解雇は無効とされます。

したがって、職務怠慢を理由に社員を解雇することは可能ですが、無効と判断される可能性があることに注意が必要です。

また、解雇を行うにあたっては、守るべき法規制が他にもあります。

以下では、職務怠慢の労働者を解雇するにあたって問題となる点について解説していきます。

労働契約上の債務不履行とは

労働契約により、労働者は、使用者との間で、労務を提供することの対価として賃金を受け取る合意をしています。そのため、労働者は、労働契約により、使用者に対し、労務を提供する義務を負っています。労働者の労務を提供する義務には、使用者の指揮命令に服して、誠実に労働をする義務を含みます。

そのため、労働者が指揮命令に反することや誠実に労働することを怠ることは、労働契約上の債務不履行となります。

職務怠慢とみなされる問題社員の例

職務怠慢(職務懈怠)は、労働者の労働の遂行が不適切なことを言います。労働の遂行が不適切な場合とは、労働義務に違反している状態ですが、既にみた通り、労働義務は、単に労務の提供をするというだけでなく、使用者の指揮命令に服して、誠実に労働をする義務を含みます。

具体的には、無断欠勤・遅刻・早退、職場離脱、勤務状況・勤務不良・業務命令違反等が、労働義務に違反しており、職務怠慢に該当します。

問題社員でも簡単に解雇することはできない

職務怠慢を行う問題社員であれば、直ちに解雇することを検討するかもしれません。しかし、既に述べた通り、解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、無効となります。

職務怠慢があるという理由による解雇は、その職務怠慢の内容やそれまでの会社の対応などを踏まえて、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」として、無効とされる可能性があります。

そのため、職務怠慢を繰り返す問題社員であっても、直ちに解雇するのではなく、解雇を行っても無効とされないか十分に検討したうえで、方針を決定する必要があります。

就業規則に解雇事由を定める必要性

労働基準法89条3号により、解雇の事由については、就業規則に記載しなければならないと定められています。そのため、職務怠慢の問題社員を解雇する場合、その職務怠慢が解雇の事由として、就業規則に定められていなければなりません。なお、当該職務怠慢行為そのものが解雇の事由として定められていなくとも、一般的な職務怠慢行為を解雇事由として掲げ、解雇事由の中に「その他前各号に掲げる事由に準じる重大な事由」といった包括条項の定めを置けば解雇事由の記載としては問題ありません。

また、職務怠慢の問題社員を懲戒解雇する場合には、懲戒事由と懲戒事由により解雇という処分が下されることを就業規則に明記しなければなりません(労基法89条9号)。就業規則に解雇事由や解雇の処分が下されることを明記していない場合には、解雇の有効性が否定される可能性があります。

職務怠慢は普通解雇・懲戒解雇どちらにあたるか?

職務怠慢の問題社員を解雇する手続には、普通解雇と懲戒解雇があります。 職務怠慢が懲戒事由にあたることが就業規則に明記されており、職務怠慢により懲戒解雇となる旨就業規則に明記されていれば、職務怠慢の労働者を懲戒解雇できます(この場合でも、前述の解雇の規制には服します)。また、職務怠慢について、普通解雇事由に該当すると就業規則に明記することも可能で、この場合にも職務怠慢の労働者を普通解雇できます。

労働者が、解雇の有効性を争う場合を考えると、普通解雇よりも懲戒解雇の方がより厳格に解雇の有効性が判断される傾向にあります。なぜなら、懲戒解雇は、制裁としての解雇であり、労働者に対する不利益の程度も大きいことから、労働者保護の観点からも、より有効性を慎重に判断する必要があるからです。

したがって、就業規則に職務怠慢が懲戒解雇事由に該当することや普通解雇事由に該当することを明記することにより、使用者としては、職務怠慢を理由とする解雇は、普通解雇と懲戒解雇のいずれによっても、解雇できるようにしておくべきです。懲戒解雇としては、無効と判断される可能性がある場合に、リスクを回避するため、普通解雇で解雇するといった対応をするケースは実務上よくみられます。

職務怠慢による解雇が認められるには

職務怠慢の問題社員を解雇するには、既に述べた通り、職務怠慢が解雇事由として就業規則に明記されている必要がありますし、懲戒解雇の場合には、職務怠慢が懲戒解雇に該当することも就業規則に明記されている必要があります。

上記のとおり、就業規則に解雇事由の記載があることに加え、職務怠慢が解雇事由に該当して、解雇に客観的合理的理由があると認められなければなりません。また、解雇が、職務怠慢行為の性質・態様その他の事情に照らして社会通念上相当なものでなければなりません。

訴訟等で解雇の有効性が争われる場合には、使用者側が職務怠慢行為の存在を主張立証し、これが解雇事由に該当することを主張立証することになります。

職務怠慢を客観的に証明できる

職務怠慢による解雇をするためには、職務怠慢を客観的に証明する必要があります。

出勤簿や関係者のヒアリングシートは、無断欠席・遅刻・早退を証明する客観的に証明できる証拠となります。また、書面やメールにより注意を行っておくことで、勤務不良などの職務怠慢についての客観的な証拠として残すことにもなります。営業日誌も、労働者の日々職務を把握するために有効となるでしょう。

解雇が相当であること

職務怠慢により解雇をするには、労働者の職務怠慢の程度・内容に照らし、解雇が相当なものでなければなりません。また、懲戒解雇を選択することは使用者の裁量に属しますが、職務怠慢の問題社員に対して懲戒解雇することが不当に重い処分となるならば、相当性を欠き解雇は無効となります。懲戒解雇の場合には、退職金の全部又は一部の不支給となることがあり、人事記録においても懲戒解雇と記録されるなど、労働者に経済的困難や再就職への重大な障害をもたらすものですので、相当性については慎重に判断をする必要があります。

欠勤、遅刻、早退の回数が少なく、勤務懈怠の程度が低い場合など比較的軽微な場合に解雇をすることは、職務怠慢とはいえ、解雇の有効性が否定されるおそれがあります。一方で、十分な必要性があるならば解雇の有効性が認められます。

再三の指導・注意を行い、軽い懲戒処分を科したにも関わらず、改善が見られない場合は、より重い懲戒処分としての懲戒解雇の有効性が認められるでしょう。

業務命令違反という職務怠慢を理由とする懲戒解雇については、業務命令に従わないことだけを理由とする懲戒解雇は相当性を欠くとして有効性が否定される可能性があります。一方で、業務命令の効力を争うとともに、その態度を継続させた場合、業務命令が有効であれば、懲戒解雇が有効と判断された裁判例もあります。

また、就業規則や労働協約上、組合との協議や労使代表によって構成される懲戒委員会の討議を経るべきことなどが必要とされる場合、当該手続を遵守すべきことは当然で、当該規定が何もない場合にも、本人に弁明の機会を与えることが要請されています。手続を怠った場合、ささいな手続きを怠ったに過ぎない場合を除き、職務怠慢を理由とする解雇でも、懲戒権の濫用として、懲戒解雇の有効性が否定されます。

問題社員を解雇する場合も「解雇予告」は必要か?

使用者が労働者の解雇を行う場合には、少なくとも30日以内に解雇予告をする必要があります。

これは、職務怠慢の問題社員であっても変わりはありません。

もっとも、懲戒解雇を即時解雇として行うのであれば、解雇予告なく懲戒解雇を行うことができます。この場合には、労働者の責に帰すべき事由が要件として必要となります。

円満退職を目指すなら退職勧奨の検討も

解雇は、使用者の一方的意思表示により行うため、労働者の意思に関係なく、要件を充足すればできることになります。解雇の要件が厳しいこともあり、訴訟等で労働者から解雇の有効性が争われることは珍しくありません。

そこで、解雇を回避して、労働者自らの意思により退職をするよう促す退職勧奨により、円満退職をさせることで、訴訟等のリスクヘッジをすることを考えるべきです。そのため、職務怠慢の労働者に対しては、解雇の通知の前に、退職勧奨をすることを検討することも有効でしょう。

もっとも、退職勧奨はそもそも労働者の自由意思による雇用関係の終了を促すものであるので、執拗に多数回にわたって上司から退職勧奨を行うことは、いたずらに労働者の不安感を増し、不当に退職を強要する結果になる可能性が強く、また、勧奨の際の言動も労働者に精神的苦痛を与えるなど、自由な意思決定を妨げるような言動は許されず、違法となる可能性がありますので、注意が必要です。

問題社員による職務怠慢を防ぐために服務規律をどう充実させるべきか?

使用者は、労働契約の本質として、企業秩序を維持するために労働者の行為の規制いわゆる服務規律を就業規則に定めることができます。そして、服務規律に反することで解雇事由に該当することを明記することにより、服務規律の遵守を促すことができます。

服務規律には、主に労働義務の履行に関する就業規則上の行為規範が挙げられます。具体的には、入退場の規律、遅刻早退欠勤休暇の手続き、離席外出面会の規制、服装規定、職務専念規定、上司の指示命令への服従義務、職場秩序の保持、職務上の金品授受の禁止、安全衛生の維持のための規制、職場の整理整頓、があります。

職務怠慢の具体的事由である、無断欠席・遅刻・早退職場離脱、勤務状況・勤務不良・業務命令違反等を具体的に服務規律として就業規則に規定することで、服務規律違反、つまり職務怠慢を防ぐことが期待できるでしょう。

職務怠慢による解雇の有効性が問われた判例

ここで、職務怠慢による解雇の有効性が問われた裁判例について、ご紹介します。

事件の概要

本件は、被告学校に教職員として雇用されていた原告が、被告学校から貸与された業務用パソコン及び同被告学校のメールアドレスを使用して,いわゆる出会い系サイトに登録し,同サイトで知り合った女性との間で大量のメールの送受信をしたことを理由に、被告学校から懲戒解雇されました。原告は、懲戒解雇が解雇権の濫用であって無効であると争いました。

受信記録については、平成10年9月21日から平成15年9月3日までの受信記録が1650件、平成11年5月18日から平成15年9月3日までの送信記録が1330件であり、そのうちいわゆる出会い系サイト関連と判断される送受信記録が、各800余件に達しており、しかも、約半数程度が勤務時間内の受送信されていました。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類) 平成17年9月14日判決(福岡高判平成17年(ネ)76号、平成17年(ネ)390号、平成17年(ネ)577号)

裁判所は、原告の一連の行為は、懲戒解雇事由に該当するとしたうえで、原告の行った私用メールの送受信は、被告学校の服務規則に定める職責の遂行に専念する義務等に著しく反し、その程度も重く、また、送信元が被告学校のパソコン出ることを推知しえるメールアドレスを用いて露骨に性的関係を求める内容のメールを送信し、同メール内容を第三者が閲覧可能な状態に置いたことは、被告学校の品位・対面及び名誉心用を傷つけるものであり、私用メールの送受信時間とその労力を職務に充てれば、より一層の効果が得られたはずであるから、事務を疎かにしていなかったとはいえないし、被告学校のパソコンの使用規定の有無で背信性の程度が異なることはないなどとして、本件懲戒解雇を相当と判断しました。

また、原告が「行った行為が被告学校の服務規則に定める懲戒解雇事由に該当することは明らかであり、このことは、原告の行為によって、現実に実害を生じたか否かによって変わるところはない。」とも判断しました。

ポイント・解説

裁判所は、懲戒解雇の有効性について争われた場合、懲戒事由該当性を判断し、その上で、解雇の有効性を判断します。本件において、勤務中に職場のパソコンで出会い系サイトに関するメールのやり取りを行うことは、職務怠慢にあたり懲戒事由に該当することは明確でしょう。

その上で、解雇の有効性について、裁判所は、原告の使用メールは被告学校の服務規則に定める職責の遂行に専念すべき義務に著しく反すると判断し、大量の使用メールのやり取りが職責の遂行に専念すべき義務に反する程度が重いと判断しました。また、メールの送受信により、学校関係者が性的関係を送受信するという、被告学校の品位、対面、名誉信用を傷つけることになる点も考慮されています。実際に業績が下がったという点よりも、時間と労力を本来の業務に充てていれば、より一層の成果を上げることができたという点を踏まえて、解雇を有効としました。

もっとも、懲戒解雇は、懲戒処分の中でも、最も重い処分であり、その有効性をめぐって紛争化することが多いので、懲戒解雇ができるかは慎重に判断する必要があります。

そのため、実際に懲戒解雇を行う前に、その解雇の有効性に関しては専門家である弁護士にご相談することを強くお勧めします。

団体交渉とは、労働組合等と使用者が労働者の待遇などについて交渉を行うものです。交渉する内容は、労働関連法規の規制を踏まえて決定すべき事項であり、相手方となる労働組合は、労働関連法規の知識を有したものが交渉にあたるので、使用者側にとって、労働関連法規の知識を有し、労働関連紛争の経験がある弁護士を団体交渉に関与させることは大きなメリットがあります。

以下に、その内容をご説明します。

団体交渉には専門的な知識と経験が必要

団体交渉で協議する内容は、労働者の待遇や労使関係のルールに関するものなので、労働関連法規の規制を踏まえた協議を行う必要があるので、これに関する専門的知識が必要です。使用者には労働者の代表者と誠実に交渉する義務があるため、交渉を正当な理由なく拒否したり、誠実な交渉を行わなかった場合には、労組法の禁止する不当労働行為に該当します。誠実交渉義務に違反した場合、使用者が、不法行為に基づく損害賠償が命ぜられることもあります。誠実交渉義務に反しないように、団体交渉を進めるには、団体交渉の経験があることが望ましいと言えます。

有利に進めるには弁護士の関与が不可欠

先に述べたとおり、団体交渉には専門的な知識と経験が必要となります。そのような知識と経験を有する弁護士が関与することが団体交渉を有利に進めるためには不可欠と言えるでしょう。

団体交渉における弁護士の役割

団体交渉に弁護士が関与する場合、使用者と打合せの上で、団体交渉にどのように対応するかの方針決定に大きな役割を果たします。団体交渉の交渉内容が労働関連法規の規制を受けることから、弁護士による法的規制に関する知識の助言なく、適切な方針決定をすることは困難でしょう。

また、実際の団体交渉の場に、弁護士が出席することで、会社の説明が労働組合に誤解を与えかねないような場合にフォローすることなどの役割も果たします。

団体交渉で弁護士に依頼することのメリット

団体交渉に弁護士を関与させることの一番のメリットは、専門的知識と経験に基づき適切な方針決定を行い、これに基づいて交渉を行えることです。

経験に基づく交渉戦略の立案

労働組合から団体交渉を申し込まれたとしても、使用者がその要求を飲まなければならないというわけではありません。通常の交渉であれば、交渉にそもそも応じない、形式的に話を聞いて交渉を打ち切るという行為に問題は生じません。

しかし、団体交渉に関しては、使用者に誠実交渉義務が課せられており、これに違反すると不当労働行為となります。

そのため、労働組合の申し入れを結果的に拒否するとしても、誠実交渉義務に違反しないように交渉を進める必要があります。

また、労働組合の要求を受け入れざるを得ない場合であっても、全面的に要求を受け入れるのではなく、使用者の立場を主張し、労働者との協議の落としどころを見つけることが重要となります。このような交渉は、弁護士が日常的に行っている業務であり、特に、団体交渉に関し経験がある弁護士であれば、より的確な交渉戦略を立案することが可能となるでしょう。

迅速な対応と最良な解決策の提案

団体交渉の申し入れは、労働組合から団体交渉の日時について指定をして申し入れをされることがほとんどです。労働組合の指定した日時に交渉に応ずる義務はありませんが、交渉の申し入れから実際の交渉開始までに時間がかかりすぎると、それ自体が誠実交渉義務に反すると主張されかねません。そのため、団体交渉の申し入れに対しては、迅速に対応を行う必要があります。団体交渉の経験のある弁護士が関与すれば、迅速な対応をスムーズに行うことができるでしょう。

また、解決策についても、労働関連法規の規制を踏まえて解決をする必要があるので、専門的知識を有する弁護士が関与することは、最良な解決策の提案を受けることにつながるでしょう。

事態の悪化・会社の不利益を防ぐ

団体交渉においては、労働者からの未払い賃金の請求など、団体交渉で解決されない場合には、労働審判、訴訟などの別手続きに紛争が移行するものが協議されることが多くみられます。 紛争が終了した後にみれば、訴訟まで争わずに団体交渉の時点での労働組合の申し入れを受け入れていた方がよかったというケースもあります。

団体交渉の時点から弁護士を関与させることにより、会社の不利益が拡大を防ぐことも可能となります。

弁護士が関与することで冷静な話し合いができる

弁護士が関与しない場合の団体交渉は、当事者である使用者と労働者が直接対峙することとなります。紛争一般にいえることですが、当事者間の交渉は、感情的な対立が激化しやすく、また、協議内容と関係しない当事者間の事柄について時間をとられることがよくあります。

そこで、第三者である弁護士が団体交渉に関与した場合、そもそも感情的な対立がない立場であるので、冷静な話し合いをすることができます。また、当事者間で協議内容が関連性にない事項に及んだ場合に、話し合いの内容を本来の協議内容に戻すことも容易です。

交渉中止や合意の落としどころを判断できる

団体交渉は、使用者に誠実交渉義務があるものの、誠実に交渉した結果、交渉が成立する見込みがないと判断できる場合に交渉を中止することができます。

しかし、交渉の中止は、交渉を中止された労働者側から、使用者が誠実に交渉を尽くさずに一方的に交渉を打ち切ったとして争われるリスクがある行為です。

実際の団体交渉に弁護士が関与すると、使用者による交渉打ち切りが誠実交渉義務に反するかどうかについてより正確に判断することができます。

また、協議に関して合意をする場合に、実際の交渉の現場に弁護士が関与して入れば、より正確に合意の落としどころを判断することができます。

労務トラブルを未然に防ぐ体制づくりをサポート

使用者が、団体交渉を申し入れられる内容の中には、事前の会社の対応が適切であれば、団体交渉を経ることなく紛争が解決できたと思われるものも少なくありません。

例えば、当初は労働者と使用者の間で話し合いが行われていたが、使用者の対応が適切でなかったため、労働者が労働組合に加入して団体交渉が申し入れられる場合があります。

このような事態を避けるためには、労働者から直接の要求があった時点で、専門家である弁護士に相談することが有用です。

また、会社の制度が問題なく運用されていれば、発生しないであろう労使トラブルが団体交渉にいたることもあります。このような紛争を回避するためには、会社の体制づくりに関しても、弁護士のサポートを受けることが望ましいと言えます。

団体交渉の根本的し解決を目指すなら顧問契約の締結を

労働組合から申し入れられた団体交渉を解決することは、対処療法であり、望ましいのは、団体交渉を申し入れられることない状態に至ることです。

そのためには、労働者から直接の申し入れ等をすぐに弁護士に相談したり、会社の体制を労使トラブルが発生しにくいものとすることが必要です。そのような体制をとるためには、実際に団体交渉が

申し入れられた際に、弁護士に依頼するだけでなく、弁護士と顧問契約を締結し、日ごろから相談をできる体制を作ることが有用であると考えます。

団体交渉に関するQ&A

団体交渉を申し入れられた場合、会社は必ず応じる必要があるのでしょうか?

使用者は、労働者の労働条件その他の待遇や当該労使のルールに関するいわゆる義務的団交事項については、団体交渉に応じなければなりません。複数の要求がなされる場合に、義務的団交事項以外の事項が交渉内容に含まれるケースもありますが、全く義務的団交事項を含まない団体交渉の申し入れがなされることは事実上ありません。また、義務的団交事項かどうかの判断か困難なものもあります。そのため、団体交渉には応じる必要があるとご理解ください。

恫喝まがいの団体交渉を受けたとき、弁護士に対応してもらうことは可能ですか?

団体交渉を行う労働組合の中には、恫喝まがいの団体交渉を行う組合が存在するのが実情です。このような組合との団体交渉についても、弁護士は対応することができます。

団体交渉が裁判に発展した場合、弁護士に代理人として出廷してもらうことは可能ですか?

団体交渉が訴訟化した場合、弁護士に依頼していただくと弁護士が出廷して訴訟に対応します。

団体交渉申入書の回答書の作成方法についてもアドバイスして頂けますか?

後に、使用者が誠実交渉義務を尽くしているかが争われる場合には、回答書の内容や回答時期も問題となりえますので、アドバイスを行います。

弁護士に依頼することで、団体交渉による不当労働行為を回避することは可能ですか?

弁護士が団体交渉に関与することで、誠実交渉義務に反する行為が行われようしている場合には、これを指摘することができますので、使用者の不当労働行為を回避することが可能となります。

顧問契約を依頼した場合、弁護士費用はどのくらいかかりますか?

通常の顧問契約は月額10万円で承っております。ただし、企業規模や対応内容により、3から5万円程度でお受けすることもあります。

弁護士に団体交渉を代理出席してもらった場合、社長本人の出席は必要ですか?

社長ご本人が団体交渉に出席する義務はありません。これは、弁護士に依頼されない場合でも同様です。ただ、全く権限のない人物を出席させた場合、誠実交渉義務に反すると判断される恐れがあります。したがって、社長が出席されないのであれば、人事労務に関する部門の責任者を参加させる必要があると考えます。

労働者側の交渉担当者についても、弁護士が担当することがあるのでしょうか?

通常、労働者側の団体交渉に弁護士がつくことはありません。労働者側に弁護士がつく場合には、団体交渉という場ではなく、労働者の代理人として、使用者と直接交渉をしたり、訴訟を提起するなどの関与となります。

弁護士と顧問契約した場合、就業規則の整備についても相談することは可能ですか?

ALGは、労使の紛争を未然に防ぐためには就業規則を整備することが重要であると考えており、精力的に就業規則の整備に関するセミナーも開催しておりますので、就業規則の整備についても、ご相談いただけます。

団体交渉のトラブルは深刻化する恐れがあります。早期解決のためにも弁護士に依頼することをお勧めします。

団体交渉で問題となるトラブルは、労働者の労働条件その他待遇に関するものが多く、労働者が労働関連法規により手厚く保護されている分野です。そのため、団体交渉が決裂し、労働審判、訴訟などの手続きに移行した際に、使用者側が敗訴するリスクは少なくないといえます。

訴訟まで至らなければ、より使用者に不利益のない条件でも紛争が解決できたという事案は数多くあります。また、団体交渉の時点で紛争解決することは、その後に訴訟などで解決にいたる場合に比べて、時間的にも弁護士の費用等の点からも経済的です。

団体交渉の申し入れを受けられた場合には、弁護士の関与のもとで紛争を解決することを是非ご検討ください。