子供の認知とは?認知が必要なケース、養育費や戸籍について

離婚問題

子供の認知とは?認知が必要なケース、養育費や戸籍について

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

子供の認知について、認知が必要となるケース、子供が認知されたときの効果、認知の種類等について解説していきます。

子供の認知とは

認知とは、婚姻を媒介に父子関係を成立させること(嫡出推定)ができない場合に、父子関係を成立させる手段です。

法律上は、認知によって父子関係または母子関係の成立が予定されていますが、母子関係は分娩(出産)によって発生するとされているため、実際に認知が問題となるのは、主に父子関係となります。

以下では、父親が認知を行う場合について解説していきます。

認知が必要になるケース

認知が必要となるのは、嫡出推定が働かないケースです。
嫡出推定については、以下で説明します。

子供を認知しないとどうなる?

子供を認知しないと、①子の戸籍に父親が記載されない、②父親に子の扶養義務が生じない、③子に父親の相続権が生じない、④父親を親権者に定めることができないといった問題が生じることになります。

嫡出推定制度について

①妻が婚姻中に懐胎(妊娠)した子は、当該婚姻における夫の子であると推定されます(民法772条1項前段)。
②女性が婚姻前に懐胎(妊娠)した子であって、婚姻が成立した後に生まれた子も、当該婚姻における夫の子であると推定されます(民法772条1項後段)。

②については、令和4年の民法改正により追加され、令和6年4月1日から施行されています(令和6年4月1日以降に出生した子が対象となります)。

また、①婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎(妊娠)したものと推定され(民法772条2項後段)、②婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎(妊娠)したものと推定されます(民法772条2項前段)。

子供が認知されたときの効果

戸籍に記載される

子供を認知すると、子の戸籍に父親の名前が記載されます。
また、父親の戸籍にも子の名前が記載されることになります。

養育費を請求できる/支払い義務が生じる

認知を行うことにより、法律上、子の父親になります。
父親は子を扶養する義務があるため(民法877条1項)、子供は、認知によって父親に養育費を請求できるようになります。

認知後の養育費はいつから請求できる?過去の分は請求可能?

認知は、出生の時にさかのぼって効力を生じるとされています(民法784条)。
認知により、父子関係は子の出生時から存在していたことになるため、父は子の出生時から扶養義務を負っていたことになります。
そのため、過去の養育費についても請求することができると考えられています。

子供に相続権が発生する

子は父親の相続人であるため(民法900条1号)、認知を行うことにより、子供に相続権が発生します。

父親を親権者に定めることができる

父が認知した子に対する親権は、母が行うとされています(819条4項本文)。
ただし、父母の協議により、父母の双方又は父を親権者と定めることができるとされています(819条4項ただし書)。

子供の認知の種類

認知の種類としては、①任意認知(話し合いによる認知)、②強制認知(調停や裁判による認知)、③遺言による認知があります。

任意認知(話し合い)

父は、嫡出でない子(婚姻していない母から生まれた子)を任意に認知することができます(民法779条)。
そのため、母が父に認知するよう求め、父がこれに了承すれば、認知が可能になります。もちろん、父が自発的に認知を行うことも可能です。

任意認知は、認知届を市区町村の戸籍窓口に提出して行います(民法781条1項、戸籍法60条)。
もっとも、成年の子を認知するには、その子の承諾が必要となる(民法782条)、胎児を認知するには母の承諾が必要となる(民法783条1項)等の制約も存在します。

遺言による認知

任意認知は、遺言によってもすることができます(民法781条2項)。
遺言による認知は、父親(遺言者)の死後に、遺言執行者(民法1006条)が届け出ることによって行われます。

強制認知(話し合いで拒否された場合)

母が父に認知するよう求め、父がこれに了承しない場合、家庭裁判所に①認知調停や②認知の訴え(裁判)を起こす必要があります。
調停前置主義(裁判の前に調停を経る必要がある)という制度があるため(家事事件手続法244条、257条)、②認知の訴え(裁判)を起こす前に、まず、①任意調停を起こす必要があります。

①家庭裁判所に認知調停を申し立てる

まず、家庭裁判所に①認知調停を申し立てます。
申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。

この調停において、当事者双方の間で、子が父の子であるという合意ができ、家庭裁判所が必要な事実の調査等を行った上で、その合意が正当であると認めれば、合意に従った審判がされます。

この審判に対し、当事者から異議の申立てがなければ、認知が確定することになります。
もっとも、①認知調停は、あくまで当事者双方の合意がなければ成立しません。認知調停が不成立となった場合には、②認知の訴え(裁判)を起こす必要があります。

②家庭裁判所に認知の訴え(裁判)を提起する

認知調停が不成立となった場合、家庭裁判所に認知を訴え(裁判)を提起する必要があります。裁判手続きの中で、血縁関係を証明することになります。

基本的には、DNA鑑定で判断されることになります。
父親がDNA鑑定を拒否した場合には、①妊娠可能期間中に父親と母親に性交渉があったこと、②血液型が一致すること、③容貌等が類似すること等の事実を証明することになります。

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子供の認知はいつまでできるのか?

任意認知については、期間の制限はなく、いつでも行うことができます。
認知の訴え(裁判)についても、父が生存している間は、いつでも提起することができます。父が死亡した場合には、死亡の日から3年以内であれば提起することができます。

子供の認知を取り消すことは可能か?

認知をした父は、認知を取り消すことはできないとされています(民法785条)。

血縁関係のない子を認知してしまった場合は?

血縁関係のない子を認知してしまった場合は、その認知は無効となります。
また、血縁関係がある場合でも、他人が父になりすまして認知届を提出した場合や、意思能力がない父(認知症を患っているなど)がした認知は無効となります。

認知の無効の訴え(民法786条1項)を提起することにより、認知の無効を求めることができます。

子供の認知に関するQ&A

不倫相手との子供を認知したら妻にバレますか?

認知を行うことにより、その事実が父親の戸籍に記載されることになります。
妻が、各種手続きの場面などで、父親(夫)の戸籍を確認する機会はあり得ますので、認知すればその事実が妻に露呈する可能性はあります。

認知された子供はどこで確認ができますか?

関連する質問「認知された子供はどうやって確認するのですか?」
子供の戸籍に、認知された事実が記載されるため、そこで確認することができます。

認知された子供は父親の姓を名乗れますか?

家庭裁判所の許可を得ることができれば、認知された子供は父親の姓を名乗ることができます。

認知した子供のDNA鑑定を行った結果、親子の可能性0%でした。支払った養育費を取り返すことは可能でしょうか?

血縁関係のない子供を認知したことになるため、その認知は無効となります。
養育費は、法律上父子関係にあることを前提に支払われるものです。

法律上父子関係がないことが判明した場合には、「法律上の原因なく」(民法703条)養育費が支払われていたことになるため、不当利得返還請求を行う余地があります。

子供の認知で不安なことがあれば、お気軽に弁護士にご相談下さい。

子供の認知は、普段慣れていない手続きであるため、不安に感じられると思います。
もし子供の認知で不安なことがあればぜひ一度弁護士にご相談ください。
ご相談者の方々に寄り添い、不安を取り除くお手伝いをさせていただきます。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。