交通事故でむちうちになってしまったら

交通事故

交通事故でむちうちになってしまったら

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

むちうち(むち打ち)とは

むちうちとは別名「外傷性頚部症候群」と言われています。
これは、頚部に衝撃が伝わり頚部に過伸展や過屈曲が派生することで、頚部を包み込んでいる筋肉や靭帯の軟部組織の部分断裂や出血などによって痛みや運動制限が生じる症状です。
これらの症状は、レントゲンやMRIから得られる画像などには映ることはないため、受傷状況について客観的に判断することが出来ません。

むちうちの症状

むちうちの症状としては、頚部そのものの疼痛に加えて、長期間にわたって頚部痛、肩こり、頭痛、めまい、手のしびれ、などの症状がでます。
受傷部位以外の部分(頭部や腕部)にも影響を及ぼす可能性のある症状が特徴となります。

むちうちの治療は整形外科へ

外傷の治療は基本的には、整形外科へ通院していただくことになります。整形外科は運動器の疾患を扱う診療科です。身体の芯になる骨・関節などの骨格系とそれを取り囲む筋肉やそれらを支配する神経系からなる「運動器」の機能的改善を重要視して治療する外科です。

そして、むちうちは、頚部を包み込んでいる筋肉や靭帯の軟部組織の部分断裂や出血などによって痛みや運動制限が生じる症状ですので、むちうちの場合は整形外科へ通院していただくことになります。

整骨院でむちうちを治療したい場合の流れ

交通事故の怪我の治療のために整骨院に通院する方もいらっしゃると思いますが、整骨院の治療費は、場合によっては「必要な治療」ではないとして、賠償を受けられない場合があります。これは、「治療」とは国家資格を持つ医師による医療行為のみがと評価されるからです。
ただし、整形外科等医師の診断に基づき、当該医師の了承のもと通院している場合には、治療費が賠償の対象とされる可能性が高くなります。
そのため、整骨院での施術を受けようとする場合は、まずは整形外科の医師に相談の上医師の了承(指示)を受けてから整骨院に通う必要があります。

整骨院に通院する場合の注意点

上記のとおり、整骨院による施術は「治療」ではないため、整骨院ばかり通うということは、受傷部位を「治療」していないことを意味します。これは、保険会社から早期に知用日の打ち切られる原因にもなります。
また、後遺障害が残存し、後遺障害の等級申請をする場合に必要となる診断書の記載をできるのは医師だけですので、整骨院に通院していたとしても、整形外科にも継続して通院していなければ、治療経過等がわからないため、診断書の記載をしてもらえない可能性があります。
以上のことから、整骨院に通うにしても定期的に整形外科にも通院することに注意する必要があります。

むちうちは治療費を打ち切られやすい

むちうちの症状はレントゲンやMRIから得られる画像などに映ることはないため、受傷状況について客観的に判断することが出来ません。
したがって、むちうちの症状の有無や程度は受傷者の自覚症状によるしかないため、症状の重さを判断することが困難となります。

そのため、保険会社からは比較的早期に治療費を打ち切られやすくなってしまいます。
具体的には3か月程度で治療費の打ち切りを打診されることが多いです。

打ち切られないための通院頻度と治療内容

整形外科にバランス良い頻度で通院する必要があります。これは、頻度を多く通院しすぎても治療費が高額になることに加え、短期間で十分な治療を受けたと評価されることになります。
逆に、通院の頻度を低くし過ぎると通院の必要性が高くない程度の受傷状況と評価されることに可能性があります。

そのため、治療を打ち切られないように通院するには頻度が多くなく、少なくないように気を付ける必要があります。
具体的には週2~3日程度の通院頻度にする必要があります。

治療費を打ち切られてしまった場合の対処法

治療の打ち切り後に、通院すること自体は妨げられませんが、実施に通院する際には自費で通院をする場合、治療費を抑えるためにも健康保険証を使用して、自己負担額を下げる必要があります。
そして、健康保険を使用して治療(保険診療)するためには「第三者行為による傷病届」を協会けんぽに届け出る必要があります。
また、ご自身が負担した治療費を保険会社へ請求するためには、具体的な治療費が発生したことを証明する必要があります。

後遺症が残ったら検査を受けましょう

むちうちといえども、症状が残存してしまうことはあり得ます。このような場合、後遺障害等級の認定を念頭に入れる必要があります。
そのため、後遺障害の有無を判断するために様々な検査を受ける必要があります。
具体的には、MRI検査,スパークリングテストや握力検査などの検査を受ける必要があります。

むちうちで認定される可能性のある後遺障害等級と認定基準

むちうちを理由とした後遺障害が認定されうる等級は12級または14級のいずれかになります。

後遺障害等級12級に該当するには,具体的な症状が「局部に頑固な神経症状を残すもの」である必要があります。これは,症状が神経学的検査結果や画像所見などの他覚的所見により、医学的に証明できることが要求されます。

後遺障害等級14級に該当するには,具体的な症状が「局部に神経症状を残すもの」である必要があります。これは、受傷時の状態や治療の経過などから説明可能な症状であり,単なる故意の誇張ではないと医学的に推定される必要があります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

交通事故被害者専門ダイヤル

0120-979-039

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
交通事故の経験豊富な弁護士にお任せください

むちうちの慰謝料計算例

通院期間を6カ月とし通院日数45日、後遺障害等級14級9号が認定された場合に具体的に慰謝料がどの程度計算されるのか、計算例をご説明します。

自賠責基準

自賠責基準による慰謝料の計算方法は、①実通院日数の2倍または総通院期間のいずれか少ない方の日数に、②1日あたり4300円(令和2年4月1日以前の事故は4200円)をかけて計算します。
上記例ですと

(1)総通院期間=180日(6カ月)

(2)通院日数×2=90日(45日×2)

となり、(2)の90日の方が少ないため,90日が計算される日数となります。これに1日あたり4300円をかけることで慰謝料計算できます。
よって、慰謝料=90日×4300円=38万7000円となります。

弁護士基準

裁判所が慰謝料等の金額を決める際は、過去の裁判例をベースにします。そして、過去の裁判例の集積から一定の基準を導き出したものが「弁護士基準(裁判所基準)」と言われるものです。裁判所が判決を下すときは、その基準をベースに慰謝料の金額を決めることになります。
そして,弁護士基準は、原則として通院した日数ではなく通院した期間によって、慰謝料を計算します。
その具体的な、計算式は一律ではありませんが、弁護士基準のうち、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」に基づいた場合、6カ月間の通院を基準として、慰謝料は89万円となります。

後遺障害等級が非該当となってしまうケース

後遺障害が認定されるためには、むちうちであれば、後遺障害等級12級に該当するには、具体的な症状が「局部に頑固な神経症状を残すもの」(後遺障害等級12級)または、「局部に神経症状を残すもの」(後遺障害等級14級)に当てはまる必要があります。

この条件のうち、特に14級に当てはまるためには、総通院日数が短い(6カ月以下)、通院頻度が高い(前通院期間の5割程度)であるとか、症状が継続的に生じている、などの条件がないと非該当になる確率が高いです。

そのため、後遺障害が認定されるためには一定の頻度と期間通院を継続する必要があります。

むちうちで後遺障害等級認定されるためのポイント

14級9号は、神経症状について、医学上説明ができるか否かが問題になります。医学上説明できるためには、事故から症状が一貫していることや通院・リハビリを継続的に行っていること等が必要になります。その他にも、後遺障害診断時にジャクソン・スパーリングテスト等を実施し、異常がないかどうかを調べることも有益です。
なお、12級13号の認定のためには、レントゲンやMRI等の画像により、明らかに脊髄や神経部分への異常が認められることが必要になります。
ゆえに、画像所見上の異常が明らかでない場合には、認められなくなります。

むちうちの後遺障害等級認定は非常に難しい

むちうちの場合、一般的には、客観的な画像所見による異常が見つからないことが多いため、神経症状が生じているかが客観的に判別できないケースがほとんどです。そのため、受傷者が訴えている症状を客観的に明らかにできません。そのため、そもそも後遺傷害に該当するかどうかの判断が困難となります。
この場合、客観的に神経症状が生じていると言えないため、神経症状が生じていることを、事故の大きさ、物損の金額、治療期間、治療日数、症状の一貫性等で医学上説明できるか否かが後遺障害が認定される上でポイントになります。
ただし、医学上説明が可能か否かという点は非常に微妙な判断であるため、この意味においてむちうちの後遺障害等級認定は非常に難しいと言えます。

交通事故でむちうちになったら弁護士にご相談ください

弁護士であれば、交通事故でむちうちになった場合、どのような通院方法をおこなえば長く治療できるのか、どのような交渉を行なえば治療費の延長ができ、どのような主張や後遺障害の診断に検査をすれば後遺障害が認定されやすいか、異議申立を行うにあたって必要な事項は何かという点を熟知しております。

後遺障害が認定されるか否かで、示談金額が大幅にことなることもあります。そこで、ぜひ、むちうちの際は、弁護士に一度ご相談下さい。

むちうちの後遺障害等級が認められた事例

依頼者は40代の男性であり、交通事故によってむちうちの症状になりました。後遺障害の診断をしましたが、結果は非該当であり、依頼者と相談の上、異議申立を行うこととしました。
異議申立を行うにあたり、カルテを取り寄せ、カルテ上も首尾一貫して症状を訴えていることや可動域の検査等に関する主張を行い、14級9号が認定されました。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。