
監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
交通事故に何度も交通事故に遭うという経験をされる方は多くないでしょう。そのため、交通事故に遭われて怪我をされた場合、どうすればよいか不安がある方が大半であると思います。不安を解消するために、弁護士への相談・依頼も考えているが、費用もかかるし、かえって損になるのではないかなどとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
そこで、以下では、弁護士に相談・依頼するメリット・デメリットはどのようなものが考えられるか、弁護士に相談・依頼した方がよい(メリットが大きい)場合とはどのような場合か、相談・依頼のベストなタイミングはいつか、相談・依頼を考えた場合に、交通事故に強い弁護士を選ぶためのポイントは何かなどについて説明していきます。
目次
交通事故で弁護士に相談するメリットとは?
交通事故に遭われて怪我をされたりした場合、まずはしっかり怪我治療をしなければなりません。それだけでなく、加害者に対して事故により生じた治療費や慰謝料等の損害賠償を請求して加害者(の加入する保険会社)と交渉する必要もあります。
これらのことをご自身で適切に行うのは容易ではありません。弁護士に相談するメリットは、具体的に何をすればよいかについての助言を受けることができます。
また、弁護士に依頼すれば、上記の助言に加えて、加害者(の保険会社)との交渉を任せることができますので、ご自身は治療に専念した上で、適切な額の損害賠償を受けることができます。以下では、弁護士に相談、依頼することによるメリットについて詳細に説明していきます。
慰謝料が増額する可能性が高くなる
弁護士に依頼することによるメリットが最も大きいのが、傷害や後遺傷害による慰謝料がご自身で交渉するより高額となる可能性が高くなることです。傷害や後遺傷害による慰謝料の算定方法は大きく分けて、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準があり、慰謝料額はこの順番に高額となります。
加害者加入の保険会社は、このうち自賠責基準や任意保険基準を用いて低額の慰謝料額を算定し、示談交渉してくることが多くなっています。弁護士にご依頼いただければ、弁護士基準に基づき慰謝料を算定することを前提として示談交渉を行うことができ、最終的に支払われる賠償金の額を増額する可能性が高くなります。
後遺障害等級認定をサポートしてもらえる
交通事故により怪我をされて、6か月以上治療を続けたものの、完治せず、これ以上続けても怪我による症状が改善することはない状態となることがあります(症状固定といいます。)。
症状固定となった場合、それ以降の治療費は賠償されなくなり、症状が残ったことによる損害の賠償は、後遺障害による損害の賠償としてなされることとなります。当該損害の賠償を受けるためには、後遺障害の認定申請を行い、後遺障害に該当するとの認定を受ける必要があります。
後遺障害認定申請は、加害者加入の保険会社が行う方法(事前申請といいます)と被害者が自ら行う方法(被害者請求といいます)があります。いずれの方法による場合も、後遺障害認定申請のための診断書を医師に書いてもらう必要があります。
被害者請求の場合、診断書以外の必要書類についてもご自身で準備する必要がありますが、弁護士に依頼すれば、必要書類の準備や、診断書を作成する医師宛てに症状を正確に伝える書面の作成などで、少しでも後遺障害認定がされやすいようにサポートを受けることができます。
適切な通院頻度・治療のアドバイスを受けられる
交通事故に遭われてけがをされたときは、まずはしっかり治療を受けて症状を残さないようにすることが重要です。そのためにはどのようにすればよいのでしょうか。単に通院の頻度を増やせばよいわけではありません。
お怪我の治療に際しては、加害者加入の保険会社が、被害者の治療費について、病院などに対して直接支払う対応(一括対応といいます)をすることが多いでしょう。
これにより被害者は、窓口での負担なく治療を受けることができます。この一括対応は保険会社のサービスとして実施されているものであるため、治療費が高額になったり、治療保険会社において治療の必要がなくなったと判断されたりした場合には終了となります。
この一括対応をできる限り長く続けてもらうことが、しっかり治療を受けるために重要ですが、弁護士に相談・依頼すれば、そのために適切な通院頻度や通院して受診する際の医師への対応に関する助言を受けることができます。
正しい過失割合を主張できる
交通事故においては、当時者の一方が完全に停止していたにもかかわらず、他方により後方から追突されたといった場合を除き、当時者双方に何らかの過失が認められるのが通常です。このような双方の過失の割合について、加害者加入の保険会社から、提示されることがあります。
当該過失の割合は、保険会社が把握した事故の態様を基に、過去の類似した態様の交通事故における裁判例の判断を参照してなされるものです。しかし、この提案に安易に応じるのは避けるべきです。実際の事故態様は保険会社が把握したものと異なる可能性などがあるためです。
この点に関し、弁護士に相談・依頼すれば、実際の事故の態様を詳しく聞き取った上で、保険会社が参照した裁判例が当該事故態様に当てはまるのか否かを判断し、適切な過失割合を主張することができます。
保険会社や加害者への対応を全て任せられる
上記からも分かる通り、交通事故に遭われた際にするべきことは多岐にわたり、かつ、これらをご自身で適切に行うことは容易ではありません。
しかも、事故に遭われて精神的なショックを受け、お怪我をされて痛みがある中で、治療やリハビリを受けたしている状態で、このような対応を全てご自身で行うことは、時間的・精神的な負担が非常に大きいといえます。
弁護士に依頼すれば、加害者加入の保険会社への面倒な対応などを全て任せることができるため、上記の時間的・精神的な負担から解放されます。また、弁護士からしっかりと治療を受けられるための適切な助言を受けて、治療に専念することができるようになります。
弁護士に相談することでデメリットはある?
弁護士に相談・依頼することによるメリットは、これまで説明してきたとおりですが、逆に弁護士に相談・依頼するデメリットは何かあるのでしょうか。弁護士への相談・依頼のデメリットとして考えられるは、そのために費用を要することです。
特に、事故により仕事を休まざるをえずに収入が減少してしまわれた場合には、弁護士に相談・依頼するための費用負担は小さいとはいえないでしょう。
この他、デメリットといえるほどではないかもしれませんが、事故の程度が軽微で怪我が全くないか、ごく軽傷であった場合などは、治療や加害者加入の保険会社への対応のための時間的・精神的負担が小さく、かつ、慰謝料が増額される余地が小さいと考えられることから、弁護士への相談・依頼により得られるメリットが比較的小さくなるといえるでしょう。
費用の不安を解消する「弁護士費用特約」とは?
弁護士に相談、依頼するデメリットは上記のとおり、費用がかかることです。もっとも、このようなデメリットがデメリットでなくなる場合があります。それは、あなたが加入している任意保険に弁護士費用特約が付されている場合です。
弁護士費用特約とは、交通事故に遭われた際に弁護士に相談・依頼するための費用を保険会社が負担することを内容とする特約であり、自動車保険に付することのできるものです。あなたの加入されている自動車保険(任意保険)に当該特約が付されている場合には、弁護士への相談・依頼の費用は保険会社が負担してくれますので、ご加入の任意保険の内容を確認してみてください。
交通事故で特に弁護士に依頼した方が良いケースとは?
では、交通事故に遭われた際に、弁護士に依頼した方がよいのはどのような場合でしょうか。それは、上記のような弁護士への相談・依頼のメリットが大きいと考えられる場合、すなわち、事故に遭ってしまったが、どうすればよいかわからず、適切なアドバイスを受けたい場合、事故による怪我の程度が重大で、時間的・精神的な負担を負うことができない場合などがこれにあたります。
前者としては、具体的には、症状が残っており、治療を継続する必要があると考えられるにもかかわらず、加害者加入の保険会社から一括対応の終了についての連絡があった場合、症状固定となり、後遺障害認定申請をしたいがどうすればよいかわからない場合、治療を終了して加害者加入の保険会社と示談交渉を行いたいが、当該保険会社が提示してくる過失割合や当該過失割合に基づく損害賠償額が適正といえ、当該賠償額で示談してよいものか判断ができない場合などがあります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士に相談・依頼するベストタイミングはいつ?
弁護士に相談・依頼するメリット・デメリットは上記のとおりですが、仮に相談・依頼するのであれば、なるべくメリットが大きいタイミングでとお考えの方が多いでしょう。では、どのタイミングでの相談・依頼がベストでしょうか。以下では、この点について説明します。
なるべく早い段階で相談・依頼した方がメリットは多い!
上記のようなメリットを最大限に享受するためには、事故に遭われてからなるべく早いタイミングで相談・依頼するのがよいといえるでしょう。弁護士の助言や直接のサポートは、事故後早い段階であればあるほどできることが多くなると考えられるためです。
例えば、事故後すぐに相談・依頼すれば、速やかに一括対応を受けられるようにした上で、一括対応を長く続けられるようにするための通院頻度や受診の際の医師への対応(症状を明確に伝えるなど)に関する助言を受けて、症状を残さないようにしっかりと治療を受けることができます。また、保険会社への対応も弁護士に任せることができるため、ご自身は治療に専念することができます。
弁護士への相談・依頼が手遅れになってしまうケースも
上記とは逆に、弁護士への相談・依頼のタイミングが遅くなってしまった場合、弁護士が助言や直接のサポートとしてできることは少なくなってしまいます。
特に、まだ治療が必要な状態であるにもかかわらず、加害者加入の保険会社からの一括対応終了打ち切りの打診に同意したり、加害者加入の保険会社の提示する不当な過失割合や適正額とはいえない賠償額で安易に合意をしてしまったりした場合、当該合意を後から覆すことができずに手遅れとなってしまうこともあります。
交通事故に強い弁護士を選ぶためのポイント
交通事故に遭った際には弁護士に相談・依頼することによるメリットやタイミングについては上記のとおりですが、実際に相談・依頼するなら、交通事故に強い弁護士にと考えられることでしょう。では、交通事故に強い弁護士を選ぶためにはどうすればよいでしょうか。以下では、そのためのポイントについて説明していきます。
交通事故の実績が豊富な弁護士を選ぶ
弁護士であれば誰もが交通事故の相談・依頼を受けた際に、適切な助言やサポートをすることができるとは限りません。交通事故の案件への対応には交通事故特有の知識やノウハウがあるためです。このような知識やノウハウは、実際に交通事故案件に対応した経験により得られることが多いものです。
そのため、交通事故に強い弁護士を選ぶためには、交通事故案件への対応実績が豊富な弁護士を選ぶことが重要といえ、これにより弁護士の選択に失敗することが少なくなるでしょう。交通事故案件の実績が豊富といえるかどうかは、①事前に、弁護士所属事務所のホームページを確認する、②実際に相談して、その際の説明が具体的で分かりやすいかどうかを確認するといった方法で判断することができます。
無料相談を利用して弁護士を選ぶ
交通事故の案件への対応実績が豊富であることや交通事故に強いことを明示している弁護士は、初回の無料法律相談を受け付けていることもあります。その場合には、当該無料相談を利用して相談した上で、弁護士を選ぶことも考えられます。
この場合、相談自体に費用を要することなく、当該弁護士の話をしっかり聞いて、説明が具体的で分かりやすいか等を判断できるため、適切に弁護士を選ぶ可能性を高めることができると考えられます。
よくある相談内容
弁護士に相談・依頼すれば過失割合を10対0にできますか?
交通事故においては、当時者の一方が完全に停止していたにもかかわらず、他方により後方から追突されたといった場合を除き、当時者双方に何らかの過失が認められるのが通常です。
もっとも、双方に過失があるような場合でも、当時者の一方に特定の事情がある場合に、過失割合の修正がなされることがあります。例えば、当時者の一方が飲酒運転をしていたような場合には、当該当事者の過失割合は、基本的な過失割合より10~20%程度高く修正されます。
当初、加害者の飲酒の事実が明らかでなく、加害者加入の保険会社から、(類似の事故態様の基本的な過失割合に基づき)被害者に10%の過失があると主張されていたものの、弁護士による事実の調査や証拠収集の結果、当該事実を証拠により証明することができたという場合もあります。
そのような場合、過失割合が上記のとおり修正されますので、弁護士への相談・依頼により、過失割合が10対0となることもありえます。
交通事故による怪我が軽傷の場合でも、弁護士に相談した方が良いですか?
上記では、交通事故によるお怪我がごく軽微である場合には、弁護士に相談・依頼するメリットは大きくないと説明しました。
もっとも、事故直後は、アドレナリンの分泌や神経の損傷などにより痛み等の症状が自覚できないことも多く、事故後数日、1週間以上経過してから症状が出始めることもあります。そのため、事故直後に痛みを自覚できない場合でも、直ちにご自身で軽傷と判断して治療や弁護士への相談・依頼が不要であると判断してしまうのは危険です。
事故直後に痛みを自覚できなくてもまずは病院において受診をして、医師による診断を受けてから弁護士への相談・依頼の要否につき判断するようにしてください。
交通事故を弁護士に依頼した場合、解決までの日数はどれぐらいかかりますか?
弁護士に依頼した場合、加害者加入の保険会社との示談交渉を含めたやり取りはスムーズに行われることが通常ですが、それを前提としても、事故発生から示談成立などにより解決するまでに要する期間は、事故によるけがの程度等により様々です。
当事者にけがが生じていない事故の場合、けがの治療に時間を待つことなく、損傷した自動車等の修理費等の損害額を計算して、示談交渉を行うことができるため、事故から数か月程度で解決することが多くなっています。
けがの程度が後遺障害認定申請に至らない程度である場合は、治療に数か月から半年を要し、その後に損害額を計算して示談交渉を行うため、事故から解決まで半年から1年を要することが多くなります。
けがの程度が重大で、後遺障害認定申請を行う程度に至っている場合は、治療に半年以上、その後の後遺障害認定申請に2~3か月を要するため、事故から解決までに1年以上を要することが多くなります。
交通事故の被害に遭ってお困りなら、ぜひ弁護士への相談・依頼をご検討ください。
以上では、交通事故に遭われた場合に弁護士に相談・依頼するメリット・デメリットはどのようなものが考えられるか、弁護士に相談・依頼した方がよい(メリットが大きい)場合とはどのような場合か、相談・依頼のベストなタイミングはいつか、相談・依頼を考えた場合に、交通事故に強い弁護士を選ぶためのポイントは何かなどについて説明してきました。
これらの説明を参照していただくことにより、何も知らない状態で、事故後の対応を行う場合と比べて幾分不安は軽減されるのではないでしょうか。もっとも、上記の点をふまえて適切に治療を受けたり、加害者加入の保険会社と交渉したりすることは容易ではありません。
弁護士にご相談・ご依頼いただければ、保険会社との交渉等は弁護士に任せ、治療についての適切な助言を受けた上で、治療に専念することができます。交通事故後にどうすればよいかについて、少しでもご不安がある場合は、弁護士へのご相談・ご依頼をご検討ください。
-
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)