遺産分割調停の流れとメリット・デメリット

遺産分割調停の流れとメリット・デメリット

当事者同士で遺産についての話し合いを直接することが難しい場合、あるいは、当事者同士で遺産分割について話し合ったものの、解決のめどが立たない場合などには、多くの場合、遺産分割調停で解決を図ることになります。

ここでは、この遺産分割調停とはいったいどのようなものであるのか、遺産分割調停がどのような流れで進んでいくものであるのか等についてご説明していきます。

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、裁判所を利用した話し合いの手続きです。話し合いの手続きですが、原告、当事者同士が直接顔を合わせることはありません(成立内容の確認等の場合を除く)。当事者それぞれが、裁判所から任命された調停委員(男女一人ずつ)と話していくことで解決を図るものです。

直接意見を戦わせるわけではなく、調停委員を挟んだ形で話をするため、比較的冷静な話し合いが期待できます。また、調停委員は、遺産分割についての法的な知識を有しており、担当の裁判官等もいるため、法律の基準に照らしながらの話し合いが期待できます。

遺産分割調停の流れ

以下、遺産分割調停を行うために必要となる準備、実際の調停期日の流れ、そして、調停が成立し解決に至るまでの流れについてご説明します。

必要書類を集める

遺産分割調停における標準的な必要書類は以下の通りです。
①申立書1通
②①の写し(調停の相手方となる相続人の人数分)
③亡くなった方(被相続人)の生まれた時から亡くなった時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
④相続人全員の戸籍謄本
⑤相続人全員の住民票又は戸籍附票
⑥遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書,預貯金通帳の写し又は残高証明書,有価証券写し等)
ただし、被相続人の子がなくなっている場合や、相続人が兄弟姉妹である場合など、実際の相続人の状況等によって、追加で戸籍が必要となる場合があります。

上記のうち、①については、家庭裁判所で交付を受けるか、裁判所のホームページから印刷することで入手できます。

次に、③から⑤については、市役所等で交付を受けるか郵送で請求することになります。注意が必要なのは、過去の戸籍は、その当時本籍地のあった市役所等でしか取得することができないということです。例えば、被相続人となる方が、亡くなったときは東京都に住んでいたが、以前は鹿児島市に本籍を置いて住んでいたという場合には、鹿児島市の市役所でなければ、当時の戸籍を発行することができません。

相続人全員の住所が必要なことに注意が必要

調停が申し立てられると、相手方に、裁判所から調停が申し立てられたことや調停の期日についての連絡を行うことになります。
そのため、調停を申し立てる側において、他の相続人を確定し、それらの方の住所も調査する必要があります。

他の相続人の住所がわからない場合、必要な調査等を行う必要があります。どうしても他の相続人の住所等がわからない場合などは、弁護士等に相談されるのがよいでしょう。

未成年・認知症の相続人がいる場合は代理人が必要

相続人の中に未成年者がいる場合、原則、法定代理人である親権者が当該未成年者を代理することになります。しかし、一定の場合には注意が必要です。

例えば、夫・妻・長男という家庭で夫が亡くなった場合、相続人は、妻と長男となります。しかし、長男が未成年者であった場合、本来長男を親権者として代理すべき妻も相続人であり、法的には長男と妻は利益相反関係にあることとなることから、妻は、長男の代理人として遺産分割に参加することはできません。そこで、長男については特別代理人という遺産分割のための特別な代理人を選任する必要があります。なお、一人の親権者で複数の未成年者を代理することもできません。

また、認知症を患っている相続人がいる場合、認知症の程度によっては、後見制度を利用したり特別代理人を選任したりする必要がある場合もあります。

管轄の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

遺産分割調停はどこの裁判所にも申し立てられるわけではありません。当該申し立てについて管轄のある家庭裁判所に対して申立を行う必要があります。

管轄は、調停の相手方となる方のうちの一人の住所地の家庭裁判所、もしくは当事者が合意で定める家庭裁判所となっています。例えば、自分は大阪市に住んでいるが、相手方は全て札幌に住んでいるという場合、相手方と特別な合意ができなければ、原則、札幌家庭裁判所に申立てを行うこととなります。

申し立てにかかる費用

遺産分割調停を申し立てる際には、被相続人1人につき収入印紙1200円分が必要となります。
また、連絡用の郵便切手も必要となりますが、必要な切手の金額については、申立の際に裁判所に確認する必要があります。

2週間程度で家庭裁判所から呼出状が届く

遺産分割調停を申立てると、その申し立てについて、受け付けた家庭裁判所がチェックをします。運用は裁判所ごとで異なることがありますが、場合によっては、当該裁判所の運用等に合わせて必要な修正や追加の書類等を求められることになります。
修正が必要ないか、必要な修正等が終わった場合、2週間から1か月程度で家庭裁判所から相手方へ調停期日への呼び出し状が届くことになります。

調停での話し合い

調停における実際の話し合いは、調停委員2人のいる調停室に、申立人側と相手方側とが交互に入って行う形になります。
それぞれの当事者が、1回の調停期日において、2回程度調停委員と話をすることになります。所要時間はおよそ2時間程度のことが多いです。
1回の期日で調停がまとまることは少なく、お互いに合意できるか、これ以上話していても合意できる可能性がほとんどないことが確認できるまで、第2回期日、第3回期日…と調停が行われることになります。

調停成立

調停でお互いに合意ができるところまで話し合いができた場合、最後の期日において具体的な合意内容を確認し、調停が成立することとなります。

調停が成立すると、最後の期日において確認した具体的な合意内容が、裁判所の調停調書に記載されることになります。なお、合意の内容によっては、具体的な合意内容のうち、ここまでは調停調書に記載し、ここからは、口頭での事実上の約束にとどまるといったことも最後の期日で確認することもありますので、合意内容のうちどこまでが調停調書に記載されるのかは十分な確認が必要です。
この調停調書に記載された内容については、原則、強制執行も可能です。

成立しなければ審判に移行する

遺産分割調停を行うことには様々なメリットがありますが、あくまで話し合いの手続きであることは変わりないので、残念ながら、最後まで話がつかず、調停が不成立で終わってしまうことはあります。
その場合には、遺産の分け方について、裁判所に強制的に判断してもらう審判という裁判の手続きに自動的に移行することになります。

調停不成立と判断されるタイミング

遺産分割調停が不成立で終了となるタイミングは、このまま調停を続けていても、合意が成立する見込みが立たないと裁判所が判断した時点となります。

そのため、例えば、〇回目までに合意が成立しなければ調停が終了してしまうといったルールはありません。極論、本当に合意が成立する見込みがあるのであれば、調停を続けることは可能です。ただし、一般的には、回数が増えれば増えるほど、このまま続けていても合意が成立する見込みがないと裁判所に判断される可能性は高くなるものといえます。

遺産分割調停にかかる期間

調停は、おおよそ1か月から2か月に1回程度のペースで期日が開かれます。平均的には、調停の成立ないし不成立による終了までに半年から1年程度ですが、これ以上かかる場合もあります。
また、調停の期日1回あたりにかかる所要時間は2時間程度です。

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遺産分割調停のメリット

遺産分割調停を行うことによって、当事者同士の話し合いではできなかった、冷静な話し合いや法的な基準に照らした話し合いを期待することができます。これによって、当事者では全く進まなかった遺産分割協議を前に進めていくことができます。
また、合意した内容は、強制執行も可能な裁判所の調停調書になりますので、合意内容が守られることを強く期待することができます。

冷静に話合いを行うことができる

遺産分割調停においては、対立している当事者同士が直接顔を合わせることなく、話し合いを進めていくことができますし、お互いの話を調停委員を通して聞くことができますので、冷静に話し合いを進めていくことを期待できます。
また、調停委員は遺産分割についての法的知識を有していますので、法的な基準に沿った話し合いを期待することができます。

遺産分割を進めることができる

当事者同士の話し合いにおいては、主に感情的な対立ばかりが表に出てしまいがちです。そのため、話し合いにおいていつまでも同じ話ばかりをしてしまいいつまでたっても話し合いが先に進まないということが起こりがちです。

一方で遺産分割調停であれば、当事者でなく、調停委員が話し合いを主導することになりますので、感情的な対立があっても、とにかく遺産分割のために必要な話し合いを進めていくことができます。

また、仮に、最終的に調停での話し合いで合意できなかったとしても、最終的には調停の終了により自動的に審判によって遺産分割を解決することができますので、その点でも遺産分割を解決するために有効な手段であるといえます。なお、原則として審判を行うためには調停を先に行っておく必要があります。

遺産分割調停のデメリット

一方で、遺産分割調停を申し立てる際には、あらかじめ認識しておかなければならない点があります。以下、ご説明します。

希望通りの結果になるとは限らない

調停は、あくまで話し合いの手続きです。そのため、合意が成立するためにお互いに譲歩する必要があり、お互いに自分の希望が100%通ることは原則ありません。

また、審判は法的な基準に従って裁判所が判断を下す強制的な手続きです。判断は法律の規定に沿って行われるため、相続に関する希望が全く法律の規定と一緒であるという場合を除き、やはり、自分の希望通りの判断を受けるということは難しいものといえます。

そもそも、調停を検討する際には、そもそも当事者同士の話し合いでお互いに相手の希望を受け入れることが難しい状況であることがほとんどですが、遺産分割調停を行ったからといって、自分の希望がそのまま通るとは限りません。もっとも、そのような場合、当事者同士の話を行っていてもどちらかの希望が100%通ることは考えにくく、遺産分割塗油帝を行ったからといって不利になるわけではありません。

長期化する恐れがある

遺産分割調停は、期日が1か月から2か月に1回程度しか開かれません。そのため、解決までには半年から1年程度かかることが多いものといえ、解決までにはある程度長期間かかることを認識しておく必要があります。

もっとも、遺産分割調停を行う場合は、当事者同士では合意の見込みがないことがほとんどであり、この点は必ずしもデメリットであるとはいえないかもしれません。また、1か月から2か月に1回だけ話し合いを行うことにより、冷静な話し合いを行うことができるようになったり、お互いの譲歩の余地を生み出すというメリットもあります。

基本的に法定相続分の主張しかできない

遺産分割調停は、話し合いの手続きですので、遺産分割についてどのような内容を主張するかについては、必ずしも法定相続分にとらわれる必要はありません。
しかし、調停での合意ができなかった際には、最終的には法定相続分に基づいて審判が下されることとなります。
そのため、相手方の合意が得られないのであれば、基本的には法定相続分に基づいた分割となることに注意が必要です。

遺産分割調停で取り扱えないもの

相続に関連する問題であっても、遺産分割調停では扱えないものもあります。
代表的なものに、被相続人の死亡前に被相続人が行ったとは思えない多額の引き出しがなされているといった使途不明金の問題や、被相続人が書いたとされる遺言書が無効ではないかといった遺言書の有効性の問題などがあります。

これらについては、遺産分割調停で取り上げることが全く許されないというわけではありませんが、これらの問題について当事者間が合意できない場合、遺産分割の審判において裁判所が判断することができず、別途民事訴訟等を起こす必要があるため、遺産分割調停において、当事者間の合意の見込みがないと判断された時点で、調停や審判で扱える問題ではないとして調停での話し合いの対象から外されてしまいます。

遺産分割調停を欠席したい場合

遺産分割調停は、裁判所の開いている時間内でしか行われません。そのため、祝祭日や土曜日・日曜日には調停を行うことはできません。また、平日の夜遅い時間などに行うこともできません。
平日の日中の時間にどうしても都合がつかないという場合には、弁護士に依頼することなども検討する必要があります。

遺産分割調停の呼び出しを無視する相続人がいる場合

裁判所からの遺産分割調停への呼び出しを相手方が複数回無視し続ける場合、遺産分割調停は話し合いの余地がないものとして、終了します。
もっとも、その場合でも審判に移行し、審判については相手方が全く出てこない場合でも裁判所の判断を受けることができますので、遺産分割についての解決を図ることができます。

ただし、相手方が期日の呼び出しに応じない理由や状況等によって、実際に審判を得ることのできるまでの期間や必要な手続きは異なりますので、その点には注意が必要です。

遺産分割調停は弁護士にお任せください

最後に、遺産分割調停について弁護士に依頼するメリットについてお話します。

遺産分割調停という手続き自体は弁護士をつけなければ申立てができないというようなものではありません。
しかし、遺産分割調停による遺産分割の結果をできる限り希望に沿うものとするためには、調停委員から聞かされる話の内容を見極めていく必要があります。

例えば、調停委員が遺産分割の方法について、こちらの希望とは異なる話をしてきた場合において、それが単に相手方の希望をそのまま伝えているだけで拒否しても特に不利益がないものなのか、それとも法的な裏付けのある内容で拒否しても審判ではその通りの内容が出てしまうものなのかを見極める必要があります。

前者であれば、調停委員の話を拒否しても特段の不利益はない一方で、むしろ安易に調停委員の話だからと受け入れてしまうと一方的に不利益な内容となってしまう恐れがあります。

反対に、後者であれば、単純に拒否だけをしてしまうと、交渉の機会が失われるだけでなく、調停委員に法的な基準に従った話も受け入れられないのであれば合意の見込みはないと判断され、調停そのものを不成立とされてしまう恐れもあります。仮に拒否するとしても、代替案を出したりするなど配慮が必要です。

このような見極めは、専門的な知識のある弁護士でないとなかなか難しいものと考えられます。遺産分割調停において、必要のない不利益を被らないためにも、遺産分割がうまく進んでいない方は一度弁護士までご相談ください。

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この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長弁護士 井本 敬善
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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