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相続問題

遺留分とは|不公平な相続割合で揉めないための方法

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

ご両親が亡くなった際、複数いる兄弟のうちの一人にすべての相続財産を相続させる内容の遺言が残っていた場合、他の兄弟は不満を覚えるものです。その際に利用できるのが遺留分侵害額請求権です。
以下では、被相続人(亡くなった人)とどのような関係にあった人が遺留分侵害額請求をすることができるのか説明していきます。

遺留分とは

遺留分とは、被相続人の財産の中で、法律上その取得が一定の相続人に留保されていて被相続人による自由な処分に対して制限が加えられている持分的権利をいいます。つまり、被相続人(亡くなった人)が遺言で自分の財産の全てを複数いる子供のうちの一人に挙げようと遺言を残したとしても、それが制限されるという事です。

遺留分の請求が認められている人

民法上、遺留分侵害額請求が認められているのは、「兄弟姉妹以外の相続人」とされています(民法1412条)。すなわち、遺留分侵害額請求をすることができるのは、

  • 配偶者
  • 直系卑属(亡くなった人の子供、孫等)
  • 直系尊属(亡くなった人の親、祖父母等)

となります。
なお、「相続人」との規定がある以上、直系尊属については、被相続人に直系卑属がいない限り相続人となりません(民法889条)。そのため、被相続人に子供がいる場合には、被相続人の直系尊属は、遺留分侵害額請求をすることができる立場にはありません。

遺留分の請求が認められていない人

兄弟・姉妹

被相続人に直系卑属がおらず、かつ直系卑属もいない場合には、兄弟姉妹が相続人となります(民法889条1項2号)。しかし、上記のとおり民法は、遺留分侵害額請求をすることができるものを「兄弟姉妹以外の相続人」と規定しています(民法1412条)。したがって、仮に、被相続人の兄弟姉妹が相続人であったとしても、兄弟姉妹は遺留分侵害額請求をすることができません。

相続放棄した人

遺留分侵害額請求をすることができるのは、「相続人」です。しかし、相続の放棄をした人は、その被相続人の相続に関しては、最初から相続人にならなかったものとみなされます(民法条)。
遺留分侵害額請求は、「相続人」しかできませんから、相続放棄により相続人にならなかったとみなされてしまった場合には、遺留分侵害額請求をすることもできなくなります。

相続欠格者にあたる人

相続人の欠格とは、民法891条各号に規定された事由に該当した場合をいいますが、同条各号のいずれかに該当する者は、「相続人となることができない」とされています(民法891条柱書)。
したがって、民法891条に該当する者は、被相続人が亡くなった後相続人となることができないため、遺留分侵害額請求をすることもできません。

相続廃除された人

相続排除をされた人は、相続権を失うことになります(民法887条2項)。そのため、相続排除をされた人は、相続人として取り扱われないため、遺留分侵害額請求をすることはできません。

遺留分を放棄した人

遺留分の放棄とは、被相続人が亡くなる前に裁判所に申し出て行います(民法1419条)。裁判所の手続きを経て放棄が認められた場合には、原則として、その遺留分の放棄を撤回することはできません。そのため、被相続人が亡くなる前に遺留分を放棄した人は、遺留分侵害額請求をすることはできません。

 

遺留分侵害額請求権と代襲相続

被相続人の死亡に先立って相続人が死亡していた場合には、その直系卑属がその相続分を相続することになります(代襲相続(民法901条)。これは遺留分についても適用があります。すなわち、被相続人の死亡に先立って、相続人が死亡していた場合には、その直系卑属が代襲相続人として、遺留分侵害請求をすることができます。

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遺留分の割合

遺留分の割合

各遺留分権利者の遺留分の割合は、以下の計算式により算出されます。

  • 直系尊属の場合
    遺留分の割合(民法1042条第1項第1号)×法定相続分(民法1042条第2項、900条)
  • それ以外の遺留分権利者
    遺留分の割合(民法1042条第1項第2号)×法定相続分(民法1042第2項、900条)

遺留分の計算方法

具体的な遺留分侵害額については、

(被相続人の死亡時に所有していた財産+贈与した財産のうち遺留分算定に含まれるもの-債務額)×遺留分割合

で算出されます。
なお、財産そのものの金額的な評価については、各財産の種類によってさまざまな評価方法、基準がありますので、具体的な金額自体は、各財産の評価方法によって変動します。

遺留分を貰うには、遺留分侵害額請求を行う

遺留分の問題が発生するのは、遺贈等により遺留分が侵害された場合、つまり、遺留分相当の遺産を相続することができなかった場合です。そのため、何もしなければ、遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害されたままそれ以上の遺産を相続することはできません。
そのため、遺留分を侵害された状態を回復するためには、遺留分侵害額請求をする必要があります。なお、遺留分侵害請求権は、相続開始等を知ったときから1年以内に行使しないとき又は、相続開始から10年が経過したときには、時効によって消滅し、行使できなくなりますので、ご注意ください(民法1048条)。

遺留分を渡したくない場合にできること

遺留分を渡したくないとしても、遺留分を侵害してしまっている場合で、かつ、遺留分権利者に遺留分侵害額請求をされてしまった場合に事後的にとれる対策はほとんどありません。遺留分権利者が合意してくれるのであれば、遺留分を放棄してもらう等は考えられますが、強制できるものではありません。相続財産の価格を減らすこと、特別受益の主張立証など、遺産の総額を調整することで渡す金額を調整することは考えられますが、遺留分権利者に対して渡す金額を0にすることは、相当程度ハードルが高い争いになります。

遺留分の権利者が亡くなった場合はどうなる?

遺留分侵害額請求権を行使することができるのは、「遺留分権利者及びその承継人」(民法1046条)です。したがって、被相続人の死亡後、相続人も死亡した場合には、その相続人が遺留分侵害額請求をすることができます。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。