遺留分侵害額請求とは|請求の方法と注意点

相続問題

遺留分侵害額請求とは|請求の方法と注意点

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

遺留分侵害額請求とは、相続財産のうち、被相続人による自由な処分に対して制限が加えられ、一定の範囲の相続人に法律上認められている最低限の取得が留保されている部分(遺留分)に相当する金額の請求をすることをいいます。

遺留分侵害額請求の方法

遺留分侵害額請求権は、遺留分を侵害されている本人が、相続の開始(被相続人の死亡)と遺留分があることを知ってから1年以内又は相続が開始してから10年以内に、受遺者や受贈者に対して請求します。請求の流れとしては、次のとおりになります。

①相手方に遺留分侵害額請求の意思表示を行う
②相手方と話し合う(協議)
③合意できたら和解書合意書を作成し、遺留分を受け取る。
④協議で合意できなかったら調停を行う。
⑤調停でも合意できなかったら訴訟を行う。

相手方に遺留分侵害額請求の意思表示を行う

遺留分侵害額請求権を行使するには、まず、相手方になる受遺者又は受贈者に対して、遺留分侵害額請求をするという意思表示をすれば足ります。

内容証明郵便について

遺留分侵害額請求権の行使に当たっての意思表示をしても、言った言わないの水掛け論になる可能性があり、また、時効が1年と短いため、意思表示をしたことが証明できないとそもそも遺留分侵害額請求権を行使できないということになりかねません。これについては、意思表示を内容証明郵便で行うことで回避できます。内容証明郵便は、いつどのような内容を誰に送ったのかが証明できるため、積極的に利用していくべきでしょう。

相手方と話し合う(協議)

遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をしたら、次は、相手方と話し合います。話し合いの内容としては、遺留分としていくらをお支払いいただくのかについて、相続財産の内容を整理したうえで計算し、その内容について話し合います。

合意できたら和解書合意書を作成し、遺留分を受け取る。

相続財産の額や遺留分の額について合意ができ、支払方法についても合意ができた場合には、合意書を作成し、合意の内容を残します。そして、合意の内容に基づいて、遺留分の支払いを受けます。

合意できなかったら調停を行う。

合意ができないまま放っておくと、いつまで経っても遺留分は支払われません。遺留分を受け取るためには、遺留分侵害額請求調停をする必要があります。調停では、調停委員を挟んで話し合うことになります。調停で合意できた場合には、その内容が調停調書に記載されます。そして、調停調書記載のとおりの方法で支払われることになります。

調停でも合意できなかったら訴訟を行う。

交渉で合意が出来ず、調停でも合意ができなかった場合には、裁判所の判断を求める「訴訟」という最後の手段に出ることになります。
合意なんて、そもそも形成できる相手ではないから、最初から訴訟をしたいという方もいるかもしれません。しかしながら、遺留分侵害額請求の判断については、調停前置主義が採用されているため、調停を挟まないと、訴訟で判断を得ることはできません。

特別受益・生前贈与がある場合の遺留分侵害額請求の注意点

遺留分侵害額請求は、被相続人の死亡により残された相続人の生活を守ることを目的にしています。そうすると、この目的が達成されていると判断される場合には、遺留分侵害額請求自体が認められない可能性があるため、注意が必要です。
例えば、特別受益や生前贈与がある場合です。
特別受益とは、被相続人から共同相続人に対して、婚姻や養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与された財産、及び遺贈された財産のことをいいます。
生前贈与とは、被相続人が亡くなる前、主に相続対策で行われる特定の者への贈与をいいます。
特別受益や生前贈与で財産を得ていた場合、遺産を事前に受け取っていたと判断され、遺留分がなくても相続人の生活を守ることができるということになります。そのため、特別受益や生前贈与を受け取っていると、遺留分が減額され、最悪の場合0円ということにもなってしまうかもしれません。

複数の人に対して遺贈や生前贈与を行っている場合

被相続人が、複数の人に対して遺贈や生前贈与を行っている場合、遺贈を受けた者→生前贈与を受けた者の順で遺留分減殺請求を行います。これは、遺贈が相続財産から支出されるのに対して、生前贈与は相続財産になる前に支出されているので、直接相続財産から支出される遺贈の方が侵害の程度が大きいと考えられているからです。
遺贈を受けた者又は生前贈与を受けた者が複数いるときは、遺贈の額、生前贈与の額に応じた割合で遺留分を按分して負担することになります。

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税金がかかるケース

遺留分侵害額請求により金銭を得ることになった相続人には、相続税がかかります。仮に、すでに相続税の申告を遺留分侵害額請求の前にしていた場合、修正申告することになります。
逆に、金銭を失った側の相続人は、相続税の負担が軽くなります。すでに申告済みであるときは、更正の請求をすべきです。
また、遺留分侵害額請求を受けて、お金に代えて資産の移転を行った場合は、行った側は譲渡所得税を負担することになり、受けた側は取得費として税務上計算されることになります。

請求には時効がある

遺留分侵害額請求には、相続が始まったこと及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間遺留分侵害額請求を行使しないときは、遺留分侵害額請求をすることができなくなります。また、相続が開始したことを知らなくても、相続開始から10年経過したときも、遺留分侵害額請求をすることができなくなります。
しかしながら、この時効は、遺留分侵害額請求の意思表示をするまでの期間です。遺留分侵害額請求の結果遺留分を受け取るまでに1年で済ませなければならないわけではありません。そのため、意思表示をしたという証拠を残すために、速やかに内容証明郵便で意思表示をすべきです。

遺留分侵害額請求のお悩みは弁護士にご相談ください

これまで述べてきたように、遺留分侵害額請求は、1年という短い期間の中で遺留分があるかどうか判断し、適切な意思表示をしなければなりません。
この判断を誤ると、遺留分がないにもかかわらず意思表示をし、かえって相続人間の争いを激化させる危険もあります。
そのため、遺留分侵害額請求については、資料をそろえたうえで弁護士などの専門家に相談し、遺留分の有無を判断してもらうのが適切といえます。なお、弁護士に相談した場合には、遺留分があった場合の交渉、調停、訴訟も任せることができます。
ぜひ、遺留分については弁護士にご相談ください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。