監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
相続税を節税するために、養子縁組をするという方法があります。
生前贈与や生命保険等制限が合ったり、不動産投資等により節税をしたりといった場合と異なり、養子縁組をするだけと聞けば、簡単と思われるかもしれません。
しかし、養子縁組による相続税対策にも制限やデメリットもあります。
養子縁組により相続税を節税するための注意点についてご説明します。
目次
養子は相続税対策になる?
相続税については、「3000万円+600万円×法定相続人の人数」の基礎控除額(遺産総額のうち非課税となる金額)認められています。
また、死亡保険・死亡退職金等も相続財産として相続税の課税対象となりますが、それぞれ「500万円×法定相続人の人数」は非課税額となっています。
したがって、養子縁組により、法定相続人の人数を増やせば、非課税となる金額が増えるため相続税対策となります。
ただし、上記の法定相続人の人数の対象となる養子は、被相続人に実子がいる場合には1人、被相続人に実子がいない場合には2人までとなっているため、養子を増やすほど非課税対象額が無限に増えるというものではない点には注意が必要です。
相続税対策として行われる養子縁組にはどんなものがある?
孫と養子縁組
相続税対策として、被相続人が孫と養子縁組をしていた場合、先述した相続税の基礎控除の対象となります。
その結果、相続税が発生しない場合(遺産が基礎控除額の範囲内であった場合)には問題ありませんが、相続税が発生してしまう場合は、当該養子縁組をした孫の相続税には相続税の2割が加算されるため、注意が必要となります(相続税法18条)。
子の配偶者と養子縁組
被相続人の子の配偶者は、相続人にはなりませんので、被相続人の遺産を相続することはできません。しかし、養子縁組をすれば、子の配偶者も相続人となることができます。
養子縁組をすれば、相続税の基礎控除額算定の対象となりますし、法定相続分どおりに遺産分割をするとしても、子の家庭により多くの遺産を相続させることができます。
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相続税対策のために養子縁組することの注意点
他の相続人とトラブルになることがある
被相続人が、法定相続人以外の人と養子縁組をして、法定相続人を増やせば、他の法定相続人の遺産の取り分が減り、養子以外の相続人は不満を感じることになります。
そのため、実際に相続が発生した場合には、養子と他の相続人(配偶者、実子)との間でトラブルになってしまうことになります。
これを防ぐためには、養子縁組について他の相続人に対して予め説明して、理解を得ることが望ましいと考えられます。
基礎控除の枠として有効な養子の数には制限がある
上記のとおり、相続税の基礎控除は、「3000万円+600万円×法定相続人の人数」で算出されます。しかし、これは、養子縁組により法定相続人増やせばいくらでも基礎控除額が増やせるということではありません。
相続税法15条第2項によれば、基礎控除の算定にあたって考慮される養子の数を限定しています。
具体的には、
- 被相続人に実子がある場合:1人
- 被相続人に実子がない場合:2人
となっています。
相続税が2割加算されるケースもある
上記のとおり、実子や配偶者等の法定相続人にとっては、法定相続人の増加により基礎控除額が増えることで遺産総額中非課税金額が増えることで、相続税の負担が減ります。
ただし、養子縁組により相続人となった人が被相続人の孫の場合は、養子縁組により遺産を相続することができるようになる一方で、上記のとおり、相続税が発生する場合には、他の相続人とは異なり相続税が2割増しになります。
そのため、養子となった被相続人の孫にとっては、節税効果は薄くなってしまいます。
節税目的の養子縁組は否認されることがある
過去の判例によれば、節税目的であったとしても養子縁組自体は有効と判断されています。
相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合においては、基礎控除の算定の基礎となる相続人の人数から養子の数を算入しないで相続税の課税価格、及び相続税額を計算されることがあり得ます(相続税法63条)。
養子縁組により相続人を増やしたとしても、節税効果が認められない可能性があるため注意が必要です。
相続税対策として養子縁組する方法
節税対策として養子縁組をする場合は、特別養子縁組ではなく普通養子縁組をするのが一般的です。
普通養子縁組をする手続は、役所で入手するか、インターネットでダウンロードして印刷した養子縁組届に養親と養子、2名以上の証人が署名捺印をして役所に届出することによって効力を生じます。
なお、養親となる者が20歳以上であること、養子となる者が15歳未満である場合には法定代理人の合意があることが必要となります。
相続についてのお悩みは弁護士にご相談ください
節税対策のための養子縁組は、養子となる人にとってメリットもデメリットもあり、また、相続が発生した時点で、他の相続人との間でトラブルが生じたりと法律面でも、税金面でも問題が生じる可能性があります。
節税目的の養子縁組のトラブルを回避するためにもぜひ専門家にご相談ください。

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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
