通勤手当の不正受給が発覚したら?会社がとるべき対応と防止策を解説

通勤手当の不正受給が発覚したら?会社がとるべき対応と防止策を解説

通勤手当は、不正受給の発生しやすい手当であると考えられます。
そのため、実は従業員が通勤手当を不正受給していたという事態に直面することも少なくないものといえます。

今回は、そのような通勤手当の不正受給が明らかになった場合に、会社としてどんな対応が必要となってくるのか、また、そもそもそのような不正受給を防ぐためにはどうすればよいのかについてお話します。

通勤手当の不正受給でよくある3つのパターン

まずは、よく起こりがちな不正受給の3つのパターンについてご説明します。

①会社に申請した経路よりも安い経路で通勤している

まずは、従業員が、実際には会社に申請している経路では通勤しておらず、それよりも安い経路で通勤しているというケースです。
つまり、虚偽の通勤経路の申告がなされているケースです。

②途中から通勤経路が変わっているにもかかわらず、変更の申請をしていない。

当初は、真実に即した通勤経路を申告して、通勤手当を受け取っていたが、その後、引っ越しや交通手段の変更等によって、通勤経路が変更され、必要な通勤費が減額しているにもかかわらず、変更の申請をせず、従前の通勤手当をもらい続けているという場合です。

③申請した住所地と異なる場所から通勤している

これは、そもそも、通勤手当の申請をするにあたって申請した住所が、真実とは異なっており、実際には申請している住所とは別のところから通勤しているため、本来必要な通勤費よりも高額の通勤手当を受け取っているというケースです。

通勤手当の不正受給が発覚した場合の会社側の対応

次に通勤手当の不正受給が発覚した場合に取るべき会社の対応についてご説明します。

不正受給の証拠を集める

まず、不正受給の事実を確認するためにも不正受給の証拠となるべきものを集めましょう。

具体的には、不正受給したと思われる従業員が通勤手当の申請をするにあたり提出した申請書類等 やこれに添付されていた交通費に関する領収書、会社が通勤手当を支払ったことやその金額がわかる書類(給与明細等)、当該従業員が会社に申請している住所のわかる書類(公的書類(免許証等)やその写しの提出がなされている場合はその書類も)を集めて確認することが考えられます。

場合によっては、当該従業員の同僚や上司等からの聞き取りをすることも考えられます。

本人に確認する

次に、きちんと証拠が集まり、不正受給の事実が確認できた場合や、疑いが強まった場合は、本人に確認することとなります。

この場合において、特に懲戒処分を検討している場合には、必ず本人に弁明の機会を与えるようにする必要があります。
一方的に責め立てたりするのではなく、冷静に事実を確認するようにしてください。

不正受給額の返還を求める

本人の弁明も確認したうえで、不正受給の事実が認定できた場合には、不正受給金額の返還を求めていくこととなります。

この際、証拠となる資料等から、返還を求めるべき不正受給の金額を算定し、不正受給した従業員と間でも、返還すべき金額の認識を共通にしておく必要があります。

このような金額についての認識が共通となったら、きちんと返還に関する合意書を当該従業員と締結するようにしましょう。

懲戒処分を検討する

不正受給の事実が明らかとなった場合、不正受給金額の返還だけではなく、懲戒処分を検討することが考えられます。

どのような懲戒処分を下すべきかは、会社の就業規則や不正受給した金額の大きさ、不正の悪質性の高さなどにもよります。

なお、懲戒処分を検討せずに、漫然と事態を放置してしまうことは、同一の従業員が同じことを繰り返したときに重い懲戒処分をすることの妨げとなったり、会社の規律を守るうえでの問題が生じることも考えられますので、この点はきちんと検討する必要があります。

再発防止策を策定する

最後に、今後、そのような不正受給が発生しないように、再発防止策を講じることが考えられます。

もしも、これまで会社が、通勤手当の支払いに当たり、従業員から提出された申請書類等をきちんと確認せずに漫然と支払っていたということであれば、申請書類や添付された領収書等の資料の確認を徹底する必要があります。

そもそも適正な申請であるのかについて確認できる資料が不足していたというのであれば、今後は不足していた資料(例としては交通費の領収書や通勤定期券のコピー等)を提出させることも考えられます。

その他にも懲戒処分の規定等も含めた就業規則の見直しや申請内容の確認等を容易にし、不正の有無を確認しやすくする等の意味で、必要な経費の精算等のためのシステムを導入するといったことも考えられます。

また、不正受給がどのようなもので、これが懲戒の対象や刑事罰の対象ともなりえることについて、社内回覧や研修その他の方法によって、従業員への教育や周知徹底を行うことによって、従業員の意識を高め、不正受給はしてはならないという意識を高めることも再発防止につながります。

通勤手当の不正受給を理由に懲戒解雇できるか?

通勤手当の不正受給のみで懲戒解雇することは基本的には難しいものといえます。

もっとも、不正受給した金額やこれまで不正受給を繰り返していたかどうか、行為の悪質性、返還の意志の有無などといった事情の総合的な考慮により、懲戒解雇が認められる可能性もあります。

裁判例から見る不正受給と懲戒解雇

先ほども述べたように、通勤手当の不正受給のみで懲戒解雇をすることは一般的に難しいものといえます。

しかし、東京地方裁判所令和5年3月28日判決は、従業員が、住所の届出義務に違反して正確な住所を会社に届け出ないまま、虚偽の通勤経路が記載された通勤手当支給申請を繰り返し、21年間にもわたって170万円を超えるもの不正受給をしたケースにおいて懲戒解雇は、客観的に合理的で、社会通念上相当であるから有効であるとしています。

このように、金額も多額で不正受給が長期間にわたって繰り返されていたような悪質なケースでは、不正受給による懲戒解雇等も十分に認められるものといえます。

また、不正受給以外にも懲戒事由となるべき非違行為等がある場合には、これらと合わせて解雇の有効性が認められたケースもあります。

通勤手当の不正受給で詐欺罪は成立する?

通勤手当の不正受給について詐欺罪が成立するケースも考えられます。

特に明確に故意をもって虚偽の申請をし、これによって会社が騙されたために本来払うべき通勤手当よりも高額の通勤手当の支払いを受けたケースでは十分に詐欺罪が成立することが考えられます。

不正受給が故意に基づく悪質なケースでは、被害届の提出や刑事告訴も行うことも考えられますので、一度弁護士にご相談ください。

通勤手当の不正受給への対応や予防策でお困りの際は弁護士にご相談下さい。

最初にもお話した通り、通勤手当の不正受給は、類型的にも発生しやすい不正であるといえます。

個別に生じた不正受給に関する対応方法はもちろん、今後そのようなことが起きないためにどのようにすればよいのかといったことについても、十分な経験や法的知識のある弁護士に相談することが有効であるといえます。

不正受給に関する問題でお悩みの場合には、一度、弁護士にご相談ください。