離婚慰謝料を減額したい!請求された場合にすべき対応とは

離婚問題

離婚慰謝料を減額したい!請求された場合にすべき対応とは

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

離婚慰謝料は、通常、離婚協議中に請求されることが多いですが、なかには離婚後に突然、元配偶者から離婚慰謝料を請求されることもあります。

もっとも、必ずしも相手方の請求どおりに支払わなければいけないものではなく、離婚慰謝料の支払いを拒否できる場合や減額できる場合もあります。

以下では、離婚慰謝料を請求された場合の対応や、離婚慰謝料が支払えない場合の対処法、慰謝料の支払いを拒否できるケース、減額できるケースなどについて解説します。

離婚慰謝料を請求された!減額はできる?

離婚慰謝料は、相手方の有責行為によりやむなく離婚するに至った精神的苦痛に対する賠償を求めるものです。離婚慰謝料が請求できるのは、配偶者に不貞行為やDV・モラハラなどの不法行為があった場合です。

もっとも、これらの行為があったことを理由に離婚慰謝料を請求されたとしても、慰謝料を減額できる場合があります。

離婚慰謝料を減額できるケース

前述のとおり、相手方から離婚慰謝料を請求されても、相手方の請求金額から減額できる場合があります。具体的には、相手方も不貞をしていた等、相手方にも落ち度がある場合、自分の収入と比較して相手方の請求額が多い場合などがあげられます。

以下では、離婚慰謝料を減額できる可能性がある事由として代表的なものを解説します。

相手にも過失がある

離婚慰謝料を請求してきた相手方にも落ち度がある場合には、離婚慰謝料を減額できる可能性があります。

たとえば、不貞行為があったことを理由に慰謝料を請求されている場合であっても、婚姻期間中、相手方からDVやモラハラを受けていたといった事情があれば、相手方にも落ち度があるといえます。

このような場合には、お互いに過失がありますので、それぞれの過失が相殺され、慰謝料を減額できることがあります。

なお、こちら側の過失と相手方の過失の大きさが同程度であれば、各々の過失が相殺された結果、慰謝料を支払わなくてすむ場合もあります。

相場以上の慰謝料を請求された

離婚慰謝料にはそれぞれ相場があります。

たとえば、不貞行為が原因で離婚に至った場合は200万円~300万円、DV・モラハラが原因の場合は100万円~300万円、悪意の遺棄が原因の場合には100万円~300万円となっています。

これらの相場よりも高額な慰謝料を請求されている場合には、減額できる可能性があるといえます。

自分の資産・収入が少ない

裁判所が離婚慰謝料の金額を決定する際には、当事者各々の資産や収入も考慮することがあります。したがって、離婚慰謝料を請求されている側の資産・収入が少なければ、離婚慰謝料が減額される可能性があります。

もっとも、前述のとおり、離婚慰謝料は相手が被った精神的苦痛に対する賠償の性質であるため、資産・収入がないからといって慰謝料を支払わなくてもよくなるということではありません。

自分のした行為の有責性が低い

自分のした行為の有責性が低い場合には、離婚慰謝料を減額できる可能性が高まります。

有責性が低いと判断される可能性がある場合としては、不貞の期間が短い、肉体関係を持った回数が数回程度と少ない等があげられます。もっとも、どのような場合に有責性が低いと判断されるかは事案によって異なることに注意が必要です。

慰謝料の支払いを拒否できるケースもある

相手方から離婚慰謝料を請求されたとしても、必ず支払わなければならないとは限りません。

たとえば、相手方の主張が虚偽であったり、証拠に基づかないものである場合、時効が完成している場合、離婚慰謝料の原因となった事由が発生したときには既に婚姻関係が破綻していた場合には、離婚慰謝料の支払いを拒否できます。

相手が主張する内容が虚偽である・証拠がない場合

離婚慰謝料の支払いを請求する相手方が主張する内容が虚偽である場合には、離婚慰謝料を支払う原因がないことになるため、慰謝料を支払う必要はありません。

また、離婚慰謝料は「相手方の有責行為によりやむなく離婚に至った場合」にその精神的苦痛の賠償として請求するものですが、「相手方に有責行為があったこと」については慰謝料請求をする側が立証する必要があります。

そのため、有責行為があったことについての証拠がない場合には、実際に一方の有責行為があったかどうかの認定ができないため、離婚慰謝料の支払いを拒否することができる可能性があります。

時効がすでに成立している場合

離婚慰謝料の時効は、「離婚が成立した日の翌日」から3年間です。

そのため、相手方から離婚慰謝料を請求されたのが、離婚した日の翌日から3年経っていた場合には、相手方の請求する債権(=離婚慰謝料請求権)は時効にかかり消滅しているため、離婚慰謝料の支払いを拒否することができます。

なお、時効により債権が消滅したことを主張するためには、時効が完成する期間が経過したことだけでなく、その時効を援用する旨の意思表示が必要です。

そのため、時効が完成していることを理由に離婚慰謝料の支払いを拒否するためには、「時効が完成していること」に加え、「その時効を援用する旨の意思表示」をする必要があることに注意してください。

婚姻関係が破綻していた場合

冒頭で述べましたとおり、離婚慰謝料は「相手方の有責行為によりやむなく離婚に至った場合」にその精神的苦痛に対して賠償する性質のものです。

そのため、こちらに有責行為があったとしても、その行為の前にすでに相手方との婚姻関係が破綻していた場合には、当該有責行為によって離婚に至ったとはいえません。

そのため、このような場合には、離婚慰謝料を請求できる場合にあたらないといえ、離婚慰謝料の支払いを拒否することができる可能性があります。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います

離婚問題ご相談受付

0120-519-116

24時間予約受付・年中無休・通話無料

メール相談受付
離婚問題の経験豊富な弁護士にお任せください

離婚慰謝料を請求された場合の対応

突然離婚慰謝料を請求された場合、どうしたらいいか分からず、困ってしまうかもしれません。また、弁護士からの書面の場合、支払わないと大変なことになる気がして、つい支払いに応じてしまうことも考えられます。

このように、ご自身の行動によっては、その後不利な状態になりかねませんので、適切な対応をする必要があります。

離婚慰謝料を請求された場合の対応としては、主に以下のものが考えられます。

慰謝料請求を無視しない

まず、離婚慰謝料を請求された場合、相手方の請求を無視することはおすすめしません。

慰謝料請求を無視しても、相手方が請求を諦めることはないことがほとんどですし、むしろ、相手方は無視されたことでさらに怒りを強め、裁判所に訴えを提起する可能性もあります。

裁判になれば、時間も手間もかかりますし、裁判所の呼び出しも無視して出廷しなければ、基本的には、訴えられた側が敗訴してしまいます。そうなると、相手方の請求する額全額を慰謝料として支払う義務が発生してしまいます。

慰謝料の減額交渉をする

請求された慰謝料が高額すぎて支払えそうにないときは、合意してしまう前に相手方に慰謝料の減額の交渉をすることが必要です。

ご自身が相手方に対して、高額な慰謝料を支払う旨を合意した後に、やっぱり高すぎて支払えないから減額してもらいたいと思っても、合意後にその内容を変更することはかなり難しくなってしまいます。

「自分が悪いから…」と相手方が請求してきたままに高額な慰謝料を支払う必要はありません。慰謝料について合意する前に、慰謝料額として適正な金額なのかを確認しましょう。

相手の気持ちを考えた対応をする

離婚慰謝料を請求してきた相手は、深く傷付き、場合によっては怒りを感じている場合が多いでしょう。

このような相手に対して、適当に対応したり、その気持ちを逆なでするような対応をすると、相手の怒りが増して、話し合いがこじれるばかりか、さらに離婚慰謝料を増額して請求されてしまう可能性もあります。

自分に非がある場合は、まずはそれを認め、しっかり謝罪して、真摯に対応することをお勧めします。そうすることで相手も少し落ち着いて、慰謝料の減額の話をする余地が出てくるかもしれません。

交渉を弁護士に任せる

交渉を弁護士に任せれば、弁護士が相手とやり取りをすることになります。そのため、自分が直接相手とやり取りをする必要がありません。

また、感情的になることもなく、婚姻期間や離婚に至った経緯など、個別の事情を考慮して、法的な観点から適正な慰謝料を提示することができます。

加えて、弁護士は多くの交渉事件を扱っているため、交渉の進め方に精通しており、早期解決が望めます。

離婚慰謝料が支払えない場合の対処法

離婚慰謝料が高額になる場合、一括で支払えないこともあるでしょう。その場合、分割での支払いを提案する方法も考えられます。

もっとも、相手方は、慰謝料の分割払いを認めたら、途中で支払われなくなるのではないかという不安から、なかなか分割払いの提案を受け入れてくれないことも考えられます。

そのため、「分割払いを1回でも遅滞したら、残額を一括で支払う」など、相手方の不安を少しでも解消できるような条件を併せて提示しましょう。

離婚慰謝料を減額した事例

依頼者は、離婚とともに、依頼者の不貞行為が婚姻関係破綻の原因であるとして、相手方から慰謝料300万円を請求されていました。
また、弁護士介入前に、依頼者は自身の不貞の事実を相手方に自白しており、依頼者の不貞の証拠として、その内容の録音データが残っていました。

しかし、婚姻期間中、相手方は依頼者に無断で投資のために相手方の年収に比して高額の借金をし、多額の夫婦共有財産を費消したことで、住宅ローンの返済が困難になったという事情があったことで、裁判において当方はこの点を主張し、婚姻関係破綻の原因は当事者双方にあるという主張をしました。

その結果、慰謝料は100万円相当であるとして訴訟上の和解が成立しました。

離婚慰謝料を請求されてお困りなら弁護士に相談してみましょう

離婚慰謝料を請求された理由や経緯等、事情によっては、離婚慰謝料を減額または支払わなくてよいこともあります。

弁護士にご依頼されれば、弁護士が代わりに相手とやり取りすることになりますので、お互いに感情的になって、その対応に心をすり減らすということも避けられます。また、感情的にならず、法的な観点をふまえて相手と交渉することで、妥当な解決が望めます。

離婚慰謝料を請求されて、どうしたらよいか分からないとお困りの場合は、お一人で抱え込まず、弁護士にご相談ください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。