相続放棄の期限はいつまで?延長はできる?

コラム

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

相続放棄の期限はどれくらい?

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に手続きをしなければならないとされています(この3か月という期間のことを「熟慮期間」といいます。)。熟慮期間中に相続放棄の手続きをしなかった場合、遺産を相続したものとみなされ、相続放棄をすることができなくなります。

起算日はいつから?

上記のとおり、相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」を起算日として、3か月以内に手続きをしなければなりません。「自己のために相続の開始があったことを知った」といえるためには、被相続人の死亡と、自己が被相続人の相続人に当たることを知っていなければなりません。そのため、基本的に、これらの事情を知った日が起算日となります。
相続人に当たるか否かは、被相続人との関係性や被相続人の子の有無などによって変わることになりますが、例えば、被相続人の配偶者や子は、第1順位の相続人となりますので、被相続人が死亡したことを知った日が熟慮期間の起算日となります。

相続放棄の期限は伸長できることもある

相続放棄の熟慮期間については、伸長することが認められています。
相続をすると、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も全て引き継ぐことになります。そのため、相続するか否かは慎重に検討しなければなりません。一方で、親族といえども、被相続人の財産を完全に把握しているとは限りません。被相続人との関係性によっては、財産がどこにあるのか見当がつかない場合もあるでしょう。このように被相続人の財産を調査の期間が3か月では足りない場合において、熟慮期間の伸長をすることが考えられます。
この伸長できる熟慮期間について、法律上、定めがあるわけではありませんが、長くても3か月の期間が認められる傾向にあります。

期限を伸長する方法

熟慮期間の伸長は、家庭裁判所(被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所)への申立てが必要となります。
申立てには、申立書、被相続人の住民票除票又は戸籍附票、伸長を求める相続人の戸籍謄本、被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本などの資料が必要となります。
また、申立てに当たっては、収入印紙(相続人1人つき800円)、郵便切手(各家庭裁判所によって異なります。)といった費用が必要となります。
なお、熟慮期間の伸長は、申立てをした相続人の熟慮期間のみが伸長され、他の相続人の熟慮期間には影響を与えません。そのため、伸長をしたい相続人が複数いる場合、それぞれの相続人が熟慮期間の伸長手続きを行う必要があります。

相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書(裁判所)

再伸長はできる?

熟慮期間の伸長については、再伸長することもできます。ただし、一度伸長した期間を、さらに伸ばすことになるため、最初の伸長のときよりも、厳格に判断されると考えられます。再伸長の申立てをする場合には、再伸長が必要な理由を十分に説明しましょう。

熟慮期間の伸長が必ず認められるわけではありません

熟慮期間の伸長についは、必ず認められるわけではありません。熟慮期間を伸長しなければならない相当の理由が必要となります。そのため、熟慮期間の伸長をする際には、家庭裁判所に対し、被相続人との関係性や被相続人の財産の内容などを伝えて、財産を調査する必要があることや、その調査には3か月以上の期間が必要となることなどを説明するようにしましょう。このような事情が認められて、初めて熟慮期間の伸長が認められることになります。

弁護士なら、ポイントを押さえた申立てを行うことが可能です

上記のとおり、熟慮期間の伸長は必ず認められるわけではありません。どのような事情を主張すべきかは、個々の状況によって異なるため、適切な主張をするためには、法的知識が必要となります。
弁護士は、法的知識を有しており、伸長が認められるための事情も熟知しています。熟慮期間の伸長を、お考えの場合には、一度、弁護士にご相談をいただければと思います。

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相続放棄の期限を過ぎてしまったらどうなる?

相続放棄の熟慮期間が経過すると、相続したこととみなされ、それ以後、相続放棄をすることはできません。そのため、被相続人の死亡を知った時は、被相続人の財産を調査するなどし、期限内に、相続するか否かの判断を行うようにしましょう。

理由によっては熟慮期間後の相続放棄が認められる場合も

上記のとおり、相続放棄の熟慮期間が経過すると、相続放棄をすることはできません。
ただし、事情によっては、熟慮期間の起算日を後にずらせる場合もあります。例えば、被相続人の死亡を知っていたが、相続するような財産があるとは知らなかった場合、事情により自分には相続するような財産がないと思って何も手続きをしなかったような場合などにおいては、実質的に、相続放棄をするか否かを判断する機会が与えられていないことになります。そのため、このような事情がある場合、熟慮期間の起算日をずらせることがあります。
熟慮期間の起算日がずれると、被相続人の死亡を知った時から3か月が経過していても、熟慮期間が経過していませんので、相続放棄が認められることになります。

こんな場合は相続放棄が認められません

上記で相続放棄の熟慮期間の起算日をずらせる場合があるとお伝えしましたが、例えば、相続放棄という仕組みを知らなかった、相続放棄できる期限を知らなかったというような場合でも、熟慮期間の起算日をずらすことができるでしょうか。
最終的には個々の事情によりますが、基本的に法の無知を理由として、熟慮期間の起算日をずらすことはできないと考えられます。知らなかったでは済みませんので、迷うことがあった場合には、専門家に相談するなどした方が良いでしょう。

相続した後に多額の借金が発覚したら

被相続人の死亡を知ってから3か月が経過した後に、多額の借金があることが発覚したという場合は少なくありません。このような場合、相続放棄はできないのでしょうか。
このような場合、借金が発覚した時点を、熟慮期間の起算日とすることができるかもしれません。なぜならば、借金は相続放棄をするか否かに際しての重要な事情であるところ、これを知らない限り、相続放棄に関して適切な判断ができないためです。
もちろん、個々の事情によりますが、後に多額の借金が発覚した場合でも、相続放棄が認められることもありますので、相続放棄も検討含めてすべきでしょう。

熟慮期間後の相続放棄が認められた事例

ここで、熟慮期間経後に相続放棄が認められた事情をご紹介します。
ご相談者(以下、「Aさん」とします。)は、被相続人の子であるところ、長らく海外生活をしており、被相続人の世話などは、Aさんの兄弟がしていました。Aさんは、被相続人が死亡したこと、財産があったことは知っていましたが、その兄弟がすべて相続するものと認識しており、何も手続きをしませんでした。そのまま10年以上が経過したところ、被相続人が連帯保証人になっていたということで、その履行を求められました。
これに対して、Aの兄弟が全て相続すると認識しており、Aには具体的に相続するものがないという認識であったことなどを主張して相続放棄の申述をしたところ、無事に相続放棄が認められました。

相続放棄の期限に関するQ&A

以下では、相続放棄の期限に関するご質問にお答えします。

相続放棄の期限内に全ての手続きを完了しないといけないのでしょうか?

相続放棄は、起算日から3か月以内に行う必要がありますが、これは、起算日から3か月以内に家庭裁判所に申述をしなければならないという意味です。例えば、起算日から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をしたが、家庭裁判所の判断が未了という場合であっても、相続放棄手続きの期間を徒過したことにはなりません。
上記のとおり、期限内に家庭裁判所の判断まで得なければならないということではありませんので、期限内に全ての手続きが完了している必要はありません。

相続順位が第2位、第3位の場合でも、相続放棄の期限は亡くなってから3ヶ月なのでしょうか?

相続順位が第1位の相続人が相続放棄等をしない限り、第2位の相続人には相続権はありません。同様に、第2位までの相続人が相続放棄等をしない限り、第3位の相続人には相続権がありません。そのため、被相続人が亡くなった時点においては、相続順位が第2位、第3位の方は、自分が相続人なったということを知らなかったことになります。
したがって、相続順位が第2位、第3位の方については、被相続人の死亡の事実と、自分に相続権が回ってきたということを知った時が基準日となります。そのため、相続放棄の期限は、被相続人が亡くなったことを知った時から3か月とは限りません。

相続放棄の期限に関する疑問・お悩みは弁護士にご相談ください

ここでは、相続放棄の期限に関してご説明をしました。上記でも触れましたが、事情によっては、相続放棄の熟慮期間の起算日が変わる可能性があります。しかし、これを、判断することは容易ではありません。また、十分な知見と経験なく、熟慮期間の起算日を変えるべきとの主張をすることは容易ではないでしょう。
相続放棄の期限に関して、疑問点やお悩みのことがありましたら、一度、弁護士にご相談いただければと思います。

離婚をする際、それまでの婚姻生活を振り返り、配偶者に慰謝料を請求したいと考える方は少なくないと思います。しかし、慰謝料を請求するには一定の条件を満たす必要があります。以下、その条件についてご説明いたします。

離婚慰謝料を請求できる条件

離婚慰謝料とは、「離婚」に伴う精神的苦痛に対する損害賠償です。法律上は、不法行為に基づく損害賠償請求と位置付けられるため、慰謝料を請求するためには、不貞行為やDV等「不法行為」法的に評価できる事実が配偶者に認められることが必要となります。

性格の不一致でも慰謝料請求は可能?

既述のとおり、慰謝料を請求するためには、配偶者の不法行為が必要となります。
性格の不一致は、夫婦の価値観や夫婦関係の在り方等が齟齬を起こした結果ですので、夫婦が相互に相手方の権利を侵害したとは認められないことになります。
そのため、性格の不一致を理由として離婚する場合には、慰謝料請求をすることはできません。

離婚慰謝料を請求する前にすべきこと

離婚慰謝料を請求するのであれば、そもそも請求をすることができる場合にあたるのか、また請求できるとしてその請求の根拠となる事実を立証するだけの証拠が確保できるのか確認する必要があります。

時効が成立していないかを確認する

離婚慰謝料を請求することは、既述のとおり、法律的には、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)です。そのため、離婚慰謝料請求は、不法行為から3年で時効となってしまいます。
そのため、離婚慰謝料を請求する根拠である不法行為が相当程度過去の事情である場合には、時効が成立していないか確認する必要があります。

請求に必要な証拠を集める

慰謝料を請求するために必要となる証拠は、離婚原因となる事実により異なります。例えば、配偶者の不貞行為を離婚原因とする場合には、配偶者が他の異性と肉体関係を持っている証拠が必要となりますし、DVを離婚原因とする場合には、配偶者に暴力を振るわれた証拠(怪我をしている写真、診断書、警察の相談記録等)が必要となります。

 

離婚慰謝料の相場を把握する

離婚慰謝料の相場としては以下の表のとおり考えられます。ただし、高額な慰謝料が認められるのは、複数の離婚原因が重なった場合(例えば、悪意の遺棄と不貞行為等)であることが大半です。そのため、一概に以下の表のとおりとはいかない場合の方が多いでしょう。

離婚原因 慰謝料の相場
浮気・不貞行為 150~300万円
悪意の遺棄 50~300万円
DV・モラハラ 50~200万円
セックスレス 50~100万円

離婚慰謝料を請求する方法

離婚をする方法としては、当事者双方の話し合いで離婚をする協議離婚、家庭裁判所に調停を申し立てて行う調停離婚、調停で解決できない場合に申し立てる裁判離婚の3つがあり得ます。
離婚慰謝料はいずれの方法による離婚の場合でも請求することは可能です。

話し合いによる協議離婚で請求

協議離婚は、当事者双方の話し合いで離婚する方法になります。お互いがするのであれば、離婚条件をある程度自由に決定することが可能となります。そのため、他の方法に比べて高額な慰謝料を獲得する可能性があるのがこの方法です。

離婚協議書の作成

当事者間の協議で離婚条件がまとまった場合には、離婚協議書を作成すべきです。口頭での約束では言った言わないと争いになる可能性もあります。
また、慰謝料について記載するのであれば、だれが、誰に対して、いくら、どのように(手渡しか、振り込みか。一括か分割か。)、いつまでに支払うのか等を明記すべきです。

話し合いで決まらない場合は離婚調停で請求

当事者間の協議では決まらない場合には、裁判所に離婚調停を申し立てることになります。離婚調停では、3人一組の調停委員会を通して、話し合いをすることになります。あくまで話し合いですので、双方が離婚条件に合意しなければ、離婚は成立しません。

それでも解決しなければ離婚裁判へ

離婚調停でも条件に折り合いがつかなければ、離婚訴訟を提起することになります。離婚訴訟では、離婚原因(慰謝料の根拠となる事実)を証拠によって立証することが必要となります。そのため、証拠による立証が不十分であれば、離婚も慰謝料の請求も認められないことになります。

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内容証明郵便での請求について

内容証明郵便に法的効力はありませんが、相手方に請求したことを証拠として残すためには有効な方法となります。

内容証明郵便に記載する内容

既述のとおり内容証明郵便そのものには、法的効力はありませんが、将来的に証拠として使用することを想定して記載内容を考える必要があります。
そのため、事実関係を詳細に記載する必要はありませんが、どのような理由で慰謝料を請求しているのか、いくら請求しているのか程度は記載している必要はあるでしょう。
また、相手方を誹謗中傷し、又は脅迫するような内容を記載してはいけません。そのような内容とならないよう、内容証明郵便の本文を作成する場合には慎重に内容を遂行する必要はあります。

相手が離婚慰謝料を支払わないときの対処法

相手方が慰謝料を支払わない場合、こちらがすでに債務名義(判決文、調停調書、公正証書)を持っているのであれば、債務名義をもって、相手方の預貯金、給料等の資産を差し押さえることが考えられます。
もっとも、資産がない相手方に対しては強制執行をしたとしても、回収できる金銭が微々たるものである可能性もあります。そのような場合には、相手方と協議の上、分割払い等を検討することも考えられます。

よくある質問

子供がいた場合、離婚慰謝料の相場より多く請求することはできますか?

未成年の子供がいる場合等には、有責ではない配偶者に負担や不利益が著しい場合には、慰謝料が増額される可能性があります。

不倫の慰謝料は離婚しないと配偶者に請求できませんか?

不倫の慰謝料は、不倫をしたことに対するものですので、離婚をするか否かに寄らず、請求することは可能です。ただし、離婚をするか否かで被害の程度は考慮されますので、慰謝料の金額を減額される可能性はあります。

モラハラを理由に離婚した場合、慰謝料の相場より高く請求する方法はありますか?

モラハラを理由とする場合には、その態様が悪質である場合やそのモラハラの結果深刻な被害が出ている場合等は、詳細な事実関係を主張立証することができれば、慰謝料が増額される可能性があります。

離婚の慰謝料請求の時効が迫っているのですが、時効を止める方法はありますか?

早急に時効の完成猶予及び更新にあたる手続きをする必要があります。事項の完成猶予及び更新の手続きの方法は複数あり、個々の事情によりとるべき方法が異なります。そのため、弁護士等専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

離婚時の慰謝料請求についてわからないことがあれば弁護士に相談しましょう。

上記のとおり、慰謝料請求をするためには、それまでの婚姻生活中に生じた出来事のうち、どのような事情が慰謝料の対象になるのかを判断し、その出来事を立証していく必要があります。また、請求すべき慰謝料の金額を決定するにあたっても、過去の裁判例は考慮する必要があります。
このような判断や知識等をお持ちの方は少ないと思いますので、ご自身の負担を減らし、適正な慰謝料を獲得する為にも、一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

相手方からモラハラを受け続けていると、心のバランスを崩してしまい、回復までに相当な時間がかかるおそれがあります。「このまま我慢し続けるよりは」と離婚を決断する方もいると思います。実際は、モラハラを受け続け、自分が悪いのではないかと正常な判断ができなくなり、自分のやっていることに自信が持てないまま相談に来られる方は少なくありません。
それでは、モラハラを理由に離婚することはできるのでしょうか。そもそもモラハラとはどのような行為を言うのか、モラハラをする相手方と離婚するときの注意点などについて説明していきます。

モラハラを理由に離婚できるのか?

協議や調停では、話し合いで結論を出すため、お互いが了承すれば離婚は可能です。ただし、モラハラをする相手方の場合、そもそも話し合い自体が難しいです。
また、訴訟に移行した場合、法律が定める離婚原因に該当するかが争われます。そして、離婚原因があるというのは、客観的な証拠をもとに証明する必要があります。
ここで、モラハラとは、殴る・蹴るなどの直接的な暴力はないけれども、発言や態度などで精神的に追い詰める行為を指し、精神的暴力の一種とされています。
モラハラは、直接的な暴力ではないため、あざや傷などの目に見えるものではないため、証明しづらく、離婚するのが難しいケースもあります。

モラハラをしているのが姑の場合

基本的に、訴訟で認められる離婚理由は、夫婦間の事情に基づいたものの必要があります。そこで、姑からモラハラを受けているのみでは、離婚理由として認められにくいです。しかし、姑からモラハラを受けている場合に、絶対に離婚できないというわけでもありません。
この場合でも、相手方が姑と一緒になって攻撃したり、姑からモラハラを受けていることを知っているにもかかわらず相手方が放置したりしたときには、相手方の態度を問題として離婚理由になることがあります。

子供がモラハラされている場合

子どもがモラハラされている場合、相手方が離婚に応じない場合でも、子どもへのモラハラの内容・程度から、訴訟で離婚が認められる可能性があります。
これは、子どもへのモラハラそれ自体が相手方からの心理的虐待に当たり、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という法律上の離婚事由に該当する可能性があります。
ただし、子どもを理由にすると、相手方は認めない方向に走る可能性が高いため、訴訟にまで行きつく可能性も高いです。そのため、相手方が子どもに対してモラハラをしていたという証拠を固める必要があります。子どもを怒鳴りつけている場面の動画や録音データ、警察や児童相談所への相談記録など、証拠になり得るものは取得しておきましょう。
まずは、子どもの身の安全が第一です。子どもの身の安全を確保するために、別居や児童相談所への一時保護の要請、公的機関への相談などをしておくべきかと思います。

モラハラの慰謝料はもらえる?

モラハラに寄って離婚する場合には、相手方から受けた精神的苦痛に対し、慰謝料がもらえる可能性があります。
ただし、慰謝料を請求できるのは、モラハラが不法行為に当たる場合です。そのため、モラハラが証明できたとしても、内容や程度によっては慰謝料を請求しても認められないケースもあります。
例えば、夫婦げんかの中で暴言を吐かれた、普段から多少物言いがきついといった程度では難しいです。
慰謝料を請求する際、モラハラの証拠は欠かせません。相手方が「事実ではない」と否定してくる可能性が高いからです。証拠がなければ、裁判で慰謝料を得るのは困難です。

モラハラを理由に離婚する場合の進め方

そもそも、離婚は、夫婦で話し合いを行い、離婚の同意を得られなければ調停で第三者をはさんだ話し合いを行い、それでも同意を得られなければ訴訟を行うという流れで行うのが一般的です。
協議や調停ではお互いが了承すれば離婚が可能です。しかし、モラハラの場合は、そもそも相手方との当事者同士での話し合いが難しい場合が多いのが実情です。
また、調停は第三者を挟みますが、モラハラの加害者は外面が良いことが多く、調停での話し合いも難しいです。そのため、調停の舵をとるために、弁護士に相談して調停の準備をすることをお勧めします。
ただ、それでも離婚の同意を得られなければ、最終的には訴訟を行うということになりますが、訴訟では、法律が定める離婚原因に該当するかどうかが争点になります。そのため、訴訟で離婚するためには、モラハラの証拠が重要になります。
証拠が十分ではなく、モラハラがあったと認定してもらえなければ、離婚を認めてもらうのは難しいということになります。

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モラハラの証拠として有効なもの

モラハラを立証するには、客観的な証拠が必要です。
すでにご紹介したように、モラハラは、目に見えない精神的暴力なので、立証しづらいという特徴があります。
決定的な証拠を手に入れることは難しいので、いくつかの証拠を積み重ねて立証していくことになります。
離婚訴訟でモラハラの証拠として有効になる可能性があるのは、次のようなものです。これらのうちいくつかを積み重ねてモラハラを認定してもらえるかどうかというのが勝負です。

  • 日々のモラハラの内容を記録した日記・メモ(後から作成したものでなく、されたことをその日のうちに書き綴ったものに限ります。)
  • モラハラを受けている場面の動画、録音データ等
  • モラハラをする相手方からのメール・LINEなどのメッセージ類(モラハラ発言が含まれているもの)
  • 医師の診断書、通院履歴(モラハラが原因で精神科や心療内科を受診した場合)
  • 親族や友人等、第三者の証言(相手方との関係が悪くなっても証言してくれるという方を探す必要があります。)
  • 警察・公的機関への相談履歴

モラハラ配偶者が離婚してくれない場合の対抗手段

相手方がなかなか離婚してくれない場合、モラハラを受け続けていると、どんどん精神的に追い込まれ、正常な判断ができなくなってきます。そのため、モラハラ加害者が離婚してくれない場合にも、できるだけ早く行動を起こすことが必要です。
ここでは、なかなか離婚してくれない場合にどうすれば良いかという点について、考えてみます。

思い切って別居する

まずは、自分の心身の安全を確保することが第一です。それは、モラハラを受け続けていると、どんどん心が追い込まれ、酷い場合にはうつ病になったり、体調不良等の原因になったりすることもあるからです。
こうした事態を防ぐために、ひとまず距離を置いてみる(=別居)というのも重要になります。これは、自分の精神を守るということに加え、仮に証拠が揃わなかった場合でも離婚事由の足掛かりになる別居の開始時期を早めるためでもあります。

別居したいけれどお金がない場合

別居したいけれどお金がない場合、別居中の生活費が心配になると思います。この場合、自分の収入より相手方の収入の方が多ければ、「婚姻費用」を請求し、別居中の生活費を支払ってもらうことができます。
一般的には、まずは相手方と直接交渉して請求していきますが、家庭裁判所の手続きを通して請求することも可能です。
ただし、相手方が任意に支払ってこない場合には、家庭裁判所の手続きで額が決まるまで受け取ることができない可能性がありますので、当面の生活費については親族の援助を得るなどの必要がある可能性があります。

別居にあたっての注意点

モラハラを理由に別居する場合、手紙やメールで良いので、別居理由を明確にしておく必要があります。また、警察へ相談を入れておき巡回を増やしてもらったり、親族や共通の友人、モラハラ加害者に連絡先を知られている友人に対して、モラハラ加害者に自分の居場所を知らせないように理由とともに伝えておくことも必須です。
というのも、理由を知らせないで別居した場合、モラハラ加害者は、自身の外面を利用して、警察署に捜索願を出したり、友人知人に片っ端から連絡したりして、あなたを連れ戻そうとする可能性が高いです。そのため、モラハラ加害者に居場所を隠し、身の安全を確保するためにも、上記の注意が必要です。

相手が下手に出ても受け入れない

モラハラを含むDVには、次のような3つのサイクルを繰り返す傾向があります。
①緊張期:些細なことで苛立ち、家庭内の緊張が高まる時期
②爆発期:高まった緊張が、暴言や威圧的な態度などという形で爆発する時期
③ハネムーン期:爆発期の出来事について大げさに謝罪する、機嫌をとる等、①②が嘘のように優しくなる時期
相手方が下手に出るときは、③のハネムーン期で、自分から離れないようにつなぎとめるためだけの行動の可能性が高いです。
モラハラかもしれないと思ったときは、まずは暴言の内容を録音したり、書き留めたりして記録に残しましょう。暴言を吐かれた時期とたまに優しくされた時期とを見比べると、サイクルが見えてきます。サイクルを繰り返すうちに、その繰り返す速度が上がり、モラハラの程度も深刻化すると言われています。
そのため、相手方が下手に出ても、簡単には受け入れず、分析してみましょう。

話し合いは第三者に介入してもらう

不本意かもしれませんが、相手方からモラハラを受けている場合、当事者間で上下関係ができてしまっている場合がほとんどです。そのため、離婚について話し合おうとしても、とても公平な話し合いができる状況ではない場合が多いです。
そこで、離婚の話し合いをするときは、全部自分でしなければと思い込まずに、公平な話し合いができる第三者に託すことをお勧めします。後の訴訟等のことを考慮するのであれば、専門家の介入がおすすめです。

モラハラでの離婚について不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう

相手方からのモラハラを受けるうちに、どんどん心は疲れて行き、正常な判断ができなくなってくる方もいらっしゃるでしょう。
それでも離婚を決意したら、モラハラの証拠を集めておくなど、万全の対策が必要になります。弁護士にご依頼いただければ、こうした事前準備の段階からアドバイスができるかと思います。また、相手方に言いくるめられないように、直接やり取りせずに済むよう交渉を代理で行うこともできます。
モラハラを理由とした離婚についてご不安な点があれば、まずは弁護士にご相談ください。

退職金は高額になりやすいため、「離婚時にしっかり財産分与したい」と思われる方も多いです。
特に、離婚後の生活に不安がある方や、仕事が見つかっていない方は、できるだけ多くのお金を確保したいと思うことでしょう。
しかし、退職金を財産分与するにはいくつか条件があり、必ず認められるものではありません。また、退職金全額を分け合えるわけではないので、請求時は注意が必要です。
本記事では、退職金を財産分与する際の流れやポイントを解説していきます。離婚を検討中の方は、ぜひご覧ください。

退職金は財産分与の対象になる?

退職金は給与の後払いと考えられるため、毎月の給与や貯金と同じように財産分与することができます
すでに退職金が支払われていれば問題ないですが、将来支払われる“予定”の場合は注意が必要です。
というのも、退職金はその後の勤続年数によって変わるため、確実にいくら支払われるか分かりません。また、会社の状況や退職理由によっては一切支給されない可能性もあります。

そのため、未払いの退職金は、確実に支給が見込まれる場合しか財産分与できないのが基本です。
また、受け取れる金額についても、退職金全体のうち婚姻期間に相当する部分のみが対象となります。

自己都合かどうかによる影響はあるか

自己都合退職による影響の有無は、退職金の支払い状況によって異なります。

●まだ退職金が支払われていない場合
財産分与の対象となるのは、「離婚時に自己都合退職した」と仮定して算出した金額になります。
通常、退職が自己都合による場合、定年退職よりも退職金額が低くなるため、財産分与できる部分も小さくなるのが一般的です。
もっとも、定年が近い場合、「定年退職時の金額」が対象になることもあります。

●すでに退職金が支払われている場合
自己都合退職と定年退職では金額が異なるため、当然分割できる金額も変わってきます。
定年まで働いたうえで(または定年間際で)離婚する“熟年離婚”のような場合、財産分与できる金額も大きくなるでしょう。

退職金を財産分与するときの計算方法

では、退職金を財産分与する際の計算方法を具体的にみていきます。なお、計算方法は裁判例によって異なることもありますが、最も一般的なものをご紹介します
「実際いくらもらえるの?」というのが一番気になるところだと思いますので、ぜひご自身のケースにあてはめてみてください。

すでに支払われている退職金について

すでに支払われた退職金のうち、婚姻期間に相当する部分が財産分与の対象となります。具体的には、以下のように算出するのが一般的です。

【財産分与の対象=退職金×婚姻期間÷勤続年数】

例えば、夫の退職金が2000万円、勤続年数が40年、そのうち結婚していた期間が30年だった場合、以下の金額となります。

【2000万円×30年÷40年=1500万円

また、最終的に夫婦で半分ずつ分けるのが基本なので、妻が受け取れるのは750万円となります。

ただし、他の預貯金と同じ口座に入れており、退職金がいくら残っているのか特定できない場合、預貯金全体で財産分与することになります。
また、すでに退職金を使い切っている場合、基本的に財産分与の対象外となります。

まだ支払われていない将来の退職金について

退職金がまた支払われていなくても、基本的な考え方は〈前項〉と同じです。
ただ、未払いの場合、「離婚時に自己都合退職した」と仮定して計算することになります。具体的には、以下の計算式で求めます。

【財産分与の対象=離婚時に自己都合退職した場合の退職金×婚姻期間÷勤続年数】

通常、定年退職の方が退職金は多くなるので、自己都合退職だと財産分与できる部分も少なくなるのが一般的です。

なお、定年が近い場合は、上記の式に定年退職時の退職金をあてはめることもあります。
この場合、本来定年退職時にもらうはずだったお金を前倒しで受け取ったとみなすので、その分の利息を控除しなければなりません。この点、ライプニッツ係数(中間利息の控除率)をかけることで簡単に計算できます。

また、婚姻期間中に別居していた場合、別居期間は婚姻期間から除く必要があります。
つまり、計算式の婚姻期間は、【結婚していた期間-別居期間】となります。

退職金の請求方法

話し合い

まずは相手と話し合い、同意を目指します。ここで同意できればすぐに離婚も可能ですし、何より穏便に解決することができます。

同居している場合、「退職金も財産分与してほしい」と相手に直接伝えるのが一般的です。
また、具体的な金額が分かるよう、退職金の算定方法を聞き出すことも重要です。会社の就業規則や人事部に確認してもらうと良いでしょう。

一方、別居中であれば、メールやLINE、電話などで請求します。これらは請求した履歴が残りますので、脅すような文面・口調は避けましょう。

相手と合意できたら、後のトラブルを防ぐため、合意内容を公正証書に残すことをおすすめします。
相手が頑なに応じなかったり、話し合いを拒否したりした場合、弁護士に相談することも有効です

離婚調停での話し合い

相手と合意できない場合、裁判所に調停を申し立てます。調停では、裁判所の調停委員という中立な第三者を挟んで相手と話し合うため、よりスムーズに解決できる可能性が高いです。

離婚前であれば、夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立て、ほかの離婚条件とあわせて話し合います。例えば、財産分与のほか、慰謝料や親権、養育費、年金分割などについて取り決めます。

一方、離婚後に財産分与だけ請求する場合、離婚後2年以内財産分与請求調停を申し立てることになります。

なお、調停の申立てには、以下書類の提出が必要です。

  • 申立書
  • 夫婦の戸籍謄本(財産分与請求調停の場合、離婚により夫婦の一方が除籍されたもの)
  • 夫婦の財産に関する資料

調停のあとは離婚裁判

調停の成立には当事者の合意が必要なので、両者がまったく譲らなければ“調停不成立”となります
この場合、離婚裁判を申し立て、裁判所に判断を委ねるのが最終手段です。裁判では、お互いの主張や夫婦の事情をすべて考慮したうえで判断が下されるため、終局的な解決ができます。

ただし、裁判で勝つには「いかに有力な証拠を提示できるか」がカギとなります。相手の預金通帳の写し給与明細の写し財産目録などを十分揃えて臨むことが重要です。
また、退職金がまだ支払われていない場合、将来支給されるのが明らかであることも証明しなければなりません。
これらの立証は難しいことも多いため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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財産分与でもらえる退職金の割合

財産分与の割合は、すべて2分の1が基本です。つまり、退職金でも預貯金でも、結婚後に築いた“共有財産”はすべて夫婦で半分ずつ分け合うことになります。

また、専業主婦でも、共有財産はきっちり半分受け取ることができます。専業主婦には仕事による収入自体はないものの、夫が長く働けるのは妻のサポートがあってこそだと考えられるからです。

ただし、例外的に2分の1とならないケースもあります。
例えば、どちらかが退職金を浪費してしまった場合、他の財産でもう一方の取り分を増やすなどの対応がとられることがあります。
逆に、一方が特殊なスキルを活かして退職金を得た場合、本人の取り分が多くなる傾向にあります。例えば、医者や弁護士、スポーツ選手、会社の経営者などが代表的です。
ただし、財産分与の割合を2分の1から変更するというのは非常に例外的な取り扱いであることに注意が必要です。

退職金の仮差押

仮差押とは、判決が出る前に相手の財産を差し押さえる制度です。
調停や裁判が長引くと、その間に退職金が支払われ、相手が浪費したり隠したりしてしまうリスクがあります。
そこで、調停や裁判の前(または手続き中)に財産を“仮に”差し押さえ、財産を保全することを目的としています。

退職金の場合、仮差押によって会社からの支給がストップするため、使い込まれる心配がありません。また、すでに退職金が支払われている場合も、財産分与の対象については仮差押が可能です。

なお、似た制度に「差押え」もありますが、仮差押とは別物です。
差押えとは、調停や裁判で支払いが命じられているにもかかわらず、相手が支払いに応じないときに、相手の財産を差し押さえて“強制的に”お金を回収する方法です。主に強制執行手続きの中で行われます。

仮差押の方法

仮差押は、以下の流れで行います。

  • 仮差押の申立て
    離婚調停や離婚裁判を行う裁判所に申し立てます。このとき、申立書や申立て費用の提出が必要です。
  • 審尋
    裁判官との“面接”のことです。「なぜ仮差押が必要なのか」という保全の必要性と、「どんな権利を保全すべきなのか」という被保全権利を説明し、裁判官に納得してもらう必要があります。
    なお、退職金の場合、被保全権利は財産分与請求権となります。
  • 保全決定
    申立人が担保金を納めたあと、仮差押が実行されます(担保金は、最終的に返金されるケースが多いです)。

注意点として、仮差押の申立て前に、相手の財産を特定しなければなりません。未払い退職金の場合、相手の勤務先や退職金の見込み額などを明らかにする必要があるでしょう。
また、仮差押は相手の反感を買うこともあるため、申し立てるかは慎重に判断してください。

退職金についてのQ&A

夫が公務員の場合、退職が10年以上先でも財産分与してもらえますか?

公務員の場合、退職金の支給がほぼ確実なので、退職が10年以上先でも財産分与の対象となることが多いです。
というのも、公務員は途中で退職する可能性が低く、民間企業のように倒産のリスクもほぼありません。また、退職金規定が明確なので、金額も争いになりにくいといえます。
夫が公務員であれば、退職がかなり先でも財産分与を請求してみると良いでしょう

もっとも、退職が20年も30年も先だと、さすがに財産分与の対象外となる可能性が高いです。
また、財産分与が認められても、実際に支払われるのは退職時(退職金の支給時)となるケースもあります。

もらえる予定の退職金を財産分与で前払いしてもらうことは可能ですか?

退職金の支給がほぼ確実であれば、財産分与の確定時に、退職金の支払い時期に先立って自身の取り分をもらうことは可能であることがあります。

もっとも、相手の資力によっては前払いできないこともあります。その場合、実際に支払われるのは、「相手に退職金が支給されたとき」となることがあります。

別居中に相手に退職金が出ていることが分かりました。財産分与できますか?

別居中も婚姻関係は継続しているので、その間に支払われた退職金は財産分与の対象になります

ただし、分割できるのは、退職金全体のうち“婚姻期間”に相当する部分のみです。また、この“婚姻期間”には“別居期間”が含まれないことに注1意が必要です。
つまり、別居歴があると、その期間分財産分与できる部分も減ることになります。

また、別居中に退職金が支払われると、相手が使い切ったり隠したりするおそれがあるため、仮差押の申立ても検討すべきでしょう。

共働きの夫婦が離婚するときも退職金は財産分与の対象ですか?

共働きの夫婦でも、財産分与のルールは変わりません。よって、退職金が支給されるのが確実であれば、婚姻期間に相当する部分を折半するのが基本です。

また、両方の退職金が財産分与の対象になる場合、2人の退職金を合わせた分から婚姻期間に相当する部分を分け合うことになるでしょう。

退職金は財産分与の判断が難しいので弁護士に相談して確認してもらいましょう

退職金は必ず財産分与できるわけではないので、相手ともめることも少なくありません。話し合いで折り合いがつかず、調停・裁判に発展すれば、離婚の成立がどんどん遅くなってしまいます。
また、その間に相手が退職金を使い切ってしまうおそれもあるため、迅速な対応が求められるでしょう。
弁護士であれば、相手方との交渉煩雑な手続き裁判での主張などをすべて引き受けることができます。また、適切な金額を請求できるため、不利な条件のまま離婚してしまう心配もありません。
きちんと離婚を成立させるには、弁護士に相談・依頼するのがとにかく安心です。弁護士法人ALGには離婚問題に詳しい弁護士が揃っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

民法上、相続人が2人以上いる場合、相続財産はその相続人で共有することになります。これを「共同相続」といいます。
共同相続が続くことは、それぞれの財産が誰のものになるのかが具体的に確定していないということです。誰の者かが確定していない財産が存在することそれ自体が、トラブルのもとになってしまうことが多いです。 共同相続とはどのような状態なのか、その状態で何ができるのかを詳しく見て行きましょう。

共同相続とは

人が死亡すると、自動的に相続が発生します。遺産分割が終わるまでは、それぞれの財産が誰のものになるのか確定せず、相続財産は相続人全員の共有財産となります。この共有状態を「共同相続」と言います。
遺産分割の完了までは、共同相続が継続します。共同相続のままでは、共同相続人全員の同意がなければできない行為があるなど、制約が多い状態が続きます。

共有財産とは

相続人全員の共有財産になる相続財産の範囲は、遺産分割協議の対象になるものです。わかりやすいものを挙げると、不動産、株式、預貯金、自動車などです。
死亡保険金は入らないのかと思われる方もいるかもしれませんが、死亡保険金などは受取人が「相続人」とされていない限り、相続財産とはならず、受取人固有の財産になるため、そもそも遺産分割の対象にはなりません。

共同相続人と法定相続人の違い

共同相続人は、複数の相続人がいるときに、遺産分割をまだしていない状態の相続財産を共有している人のことをいいます。法定相続人は、民法に寄って相続人となることが定められている人のことで、複数でなくても法定相続人たり得ます。
法定相続人が1人しかいない場合、そもそも共有する人がいない状態なので、共同相続人は観念できません。
一方、法定相続人が複数いて、法定相続人が遺産分割をまだしていない状態の相続財産を共有している場合には、法定相続人=共同相続人となります。

共同相続人ができること

共同相続人は、単独でできる行為とできない行為があります。

単独でできる行為

  • 持ち分に応じた使用については、他の相続人を害する恐れがないため、単独でできます。例えば、不動産の家賃収入を持分に応じて分配し受領することができます。
  • 保存行為(共有財産の価値を維持するような行為)は、他の相続人にとっても利益となるため、単独で行うことができます。例えば、倒壊しそうでクレームが来ている不動産の修繕や、無効な登記の抹消をすることができます。
  • 共同相続登記(共同相続人が法定相続分通りに相続登記を行うこと)については、法律に従った状態を維持するもののため、単独で行うことができます。

全員の同意書が必要な行為

売却、担保設定、預金の払戻しは、対象となる財産の状態を根本的に変えてしまうため、相続人に不利益を与えてしまう可能性があります。そのため、相続人全員の同意のもとでなければ、これらの行為はできません。
なお、相続法改正により、遺産分割が完了していなくても、共同相続人が単独で預金の一部を払い戻すことができるようになりました。ただ、あくまで一部に限られるので、払戻しには注意が必要です。

共同相続人を辞退する方法

共同相続人は、法定相続人となります。共同相続人を辞退したいのであれば、相続人の地位を放棄する必要があります。これが相続放棄です。相続放棄には家庭裁判所を使った手続きが必要で、口頭や書面で単に「共同相続人から外れます」という意思を共同相続人間で表明するだけでは足りません。
相続放棄は、事故のために相続の開始があったことを知ったときから『3か月以内』という短い期間内に行う必要があります。そのため、相続放棄をするか否かは、相続開始後速やかに判断する必要があります。

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遺産分割協議をしないと共同相続状態が解消できない

共同相続状態を解消するには、遺産分割を終える必要があります。遺産分割には、協議や調停、審判、訴訟があります。
共同相続人の一部が不参加のまま終わらせた遺産分割は、無効になります。すなわち、話し合いによる場合には、共同相続人全員が参加し、納得する内容でなければ、共同相続状態は解消することはできません。

限定承認したい場合は共同相続人全員の同意が必要

限定承認とは、相続財産の範囲内で相続した負債を弁済し、残った部分を承継することをいいます。これには、共同相続人の全員が共同して行う必要があります。
すなわち、共同相続人のうち、一人でも単純承認してしまえば、その他の共同相続人は限定承認の手続きをとることができなくなってしまいます。
そのため、限定承認の手続きをとることを検討するのであれば、共同相続人全員と足並みをそろえる必要があります。

共同相続した家に住み続けることはできるのか

相続財産の中に不動産が含まれており、それが被相続人と相続人のうちの一人が同居していた自宅だったなどというケースは、よく見られます。
このような場合、自宅に住み続けることは可能です。共同相続しており、自分の持分に応じて使用することができるからです。自分以外の共同相続人から自宅を出るように言われたとしても、問題なく住み続けられます。
ただし、共同相続した不動産にその後長年住み続けたからと言っての時効取得の主張は非常に困難なものになりますし、他の共同相続人に対して、持分に応じた使用量相当損害金を支払う義務が生じます。

共同相続人が不動産を売ってしまった場合

共同相続人のうち一人が、遺産分割前にその相続分を第三者に売却してしまったときは、他の共同相続人は、その価額と費用を償還してその相続分を譲り受けることができます。この権利を相続分取戻権といいます。これは、遺産分割協議において、相続人以外の第三者が関与することを防ぐために認められました。この価額は、『取戻権を行使するとき』の時価額です。
注意が必要な点としては、無償で相続分を渡していたとしても、取り戻すときには時価相当額を支払う必要があることです。また、『1か月以内』という短い期間のうちに請求する必要があることにも注意が必要です。

共同相続はトラブルになりやすい

相続人の中でも考え方は多種多様で、共有財産の管理方法で揉めるというケースの相談が多くあります。また、処分するにも相続人全員の同意が必要になるということで、共同相続の状態を継続させることで、紛争を巻き起こす可能性が高まります。
共同相続の状態を解消せずトラブルが生じた結果、もともと仲の良かった兄弟姉妹でも関係性にひびが入ってしまうこともあります。また、トラブルが長引き相続人が死亡し、子や孫の代まで共同相続の状態を引き継がせることになったケースもあります。
そのため、可能な限り早期に遺産分割をし、共同相続の状態を一刻も早く解消したいものです。

共同相続は早めに解消を。弁護士にご相談ください。

これまで見てきたように、共同相続の状態を解消するためには、遺産分割を完了させることが必要です。
遺産分割協議は、一人が早く完了させたいと行動しても、他の共同相続人が多忙である、連絡が取れないなど、足並みがそろわず、なかなか協議が完了しないことも多くあります。また、全然介護を手伝ってくれなかった、学費を出してもらっていたなど、感情が先に立ってしまうなどして、建設的な議論が全くできず、協議が進まないケースも多くあります。
遺産分割をどのように進めて行けばよいか、不安なことがあれば、一度専門家であるALGの弁護士にご相談ください。より良い方法を、一緒に考えて行きましょう。

亡くなった方に財産があった場合には、その相続人は、お互いに話し合うなどして遺産分割をします。しかし、その相続人の中に未成年者がいる場合には、特別の手続きが必要となります。
相続人に未成年者がいる場合には、成人とはどう違うのか、以下に説明します。

未成年者は原則、遺産分割協議ができない

前提として、未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない(民法5条)とされています。法律行為とは、契約の締結等の財産上の行為とされています。
そして、遺産分割協議も契約の一種と言えますので、未成年者は、法定代理人の同意を得ることが必要となります。

成年年齢の引き下げについて(2022年4月1日以降)

平成29年の民法改正により、成年年齢は、20歳から18歳に引き下げられ、令和4年4月1日に改正民法が施行されました。この法律の施行により、令和4年4月1日時点で18歳になっていた人は、その時点で成人に達したことになっています。

成人になるのを待って遺産分割協議してもいい?

未成年者では、遺産分割協議ができないことから、成人になるのを待って遺産分割協議をすることを考える方もいるかもしれません。未成年者が来月成人になるというような場合であれば、待つことができる場合もあります。
しかし、相続をする際には、相続税が課せられることがあり、相続税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税をしなければなりません。期限を過ぎると、延滞税がかかったり、相続税を軽減するための特例の適用を受けられなくなったりという不利益が生じます。そのため、未成年者が成人になるまで長期間遺産分割協議をしないままにしておくことは、難しいでしょう。

相続人に未成年者がいる場合は法定代理人が必要

既述のとおり、未成年者が遺産分割協議をするためには、法定代理人の同意が必要となります。では、ここでいう法定代理人とはどのような人をいうのでしょうか。

法定代理人になれるのは親権者(親)

一般に未成年者の法定代理人と言えば、未成年者の親権者となります。両親がそろっている未成年者の場合には、両親が法定代理人となりますし、両親が離婚又は死別している場合には父母のいずれかのみが法定代理人となります。

親も相続人の場合は特別代理人の選任が必要

未成年者自身とその親のいずれも相続人になっている場合(未成年者の両親の片方が亡くなった場合等)には、未成年者とその親で利益が相反するため、親は未成年者の法定代理人として遺産分割協議をすることはできません。
そのため、裁判所に対して特別代理人選任の申立てをする必要があります。

親がいない場合は未成年後見人を選任する

親が亡くなるなどして、親権者がいない未成年者には、法定代理人がいないことになります。そのような未成年者に対しては、法定代理人となる未成年後見人を選任することになります。

未成年の相続人が複数いる場合は、人数分の代理人が必要

相続人の中に複数の未成年者がいる場合には、未成年者それぞれに法定代理人が必要となります。そして、未成年者同士は利益が相反するため、一人が複数の未成年者の法定代理人を兼任することはできません。

特別代理人の選任について

既述のとおり、未成年者と親がいずれも相続人である場合などには、特別代理人の選任が必要となります。以下では、特別代理人について詳述します。

特別代理人とは

親権者が未成年者のために特別代理人を選任する場合(民法826条)の特別代理人とは、親権者が未成年者の法定代理人として代理権を行使することが不適切な場合に、この利益を保護するために家庭裁判所が選任する代理人のことを言います。

申立てに必要な費用

申立てに必要な費用としては、

  • 収入印紙 800円分
  • 郵便切手(申し立てる裁判所により異なります。)

が最低限必要な費用となります。
また、場合によっては特別代理人の報酬として予納金を収めるよう指示される場合もあります。

必要な書類

特別代理人を申し立てるには、子供の住所地を管轄する裁判所に対して、以下の資料を提出することになります。なお、裁判所の判断によっては、追加の資料が必要となる場合もあります。

  • 申立書
  • 未成年者の戸籍謄本
  • 未成年者の法定代理人(親権者又は未成年後見人)の戸籍謄本
  • 特別代理人の候補者がいる場合には、候補者の住民票又は戸籍の附票
  • 利益相反に関する資料
  • 利害関係人が申立をする場合には、申立人に利害関係があることを証明する資料

申し立ての流れ

特別代理人の選任の申立ては、未成年者の住所を管轄する家庭裁判所に対して記述の必要書類と費用を提出することで行います。提出の方法は、窓口に直接持参しても、郵送でも構いません。 必要書類提出後、裁判所の手続き状況にもよりますが、2週間から1か月程度で裁判所から連絡があるのが一般的です。

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未成年後見人の選任について

既述のとおり、親権者がいない未成年者に対しては、未成年後見人を選任する制度があります。 以下では、未成年後見について詳述します。

未成年後見人とは

未成年後見人は、親権者が亡くなった等の事情により、未成年者に法定代理人がいない場合に、家庭裁判所に申し立てることにより、選任される者をいいます。

申立てに必要な費用

申立の費用としては、

  • 収入印紙 800円分
  • 郵便切手代(申し立てる裁判所により異なります。)

必要な書類

未成年後見人の申立ての際には、以下の資料を提出することになります。

  • 未成年者の戸籍謄本
  • 未成年者の住民票又は戸籍の附票
  • 未成年後見人の候補者がいる場合にはその戸籍謄本
  • 未成年者に対して親権を行うものがいないことを証する書面
  • 未成年者の財産に関する資料
  • 利害関係人からの申立ての場合、申立人の利害関係を証する資料
  • 親族からの申立人の場合、申立人の戸籍謄本

申し立ての流れ

未成年後見人の選任申立ては、未成年者の住所地を管轄する裁判所に対して既述の資料、収入印紙及び郵便切手を提出して申し立てます。提出の方法は、窓口に持参して提出しても、郵送しても構いません。
裁判所からは、申し立ててから、裁判所の状況によりますが、2週間から1か月程度で連絡があるのが一般的です。

未成年の相続人が既婚者の場合は代理人が不要

民法改正前は、未成年者が婚姻をしたときは、これにより成年に達したものとみなされていました(改正前民法735条)。 そのため、婚姻している未成年者は、法定代理人がいなくとも遺産分割協議をすることが可能となっていました。
民法改正により、婚姻は、18歳にならなければ、することができない(民法731条)ことになったため、今後は、未成年者が婚姻することはできなくなります。(なお、令和4年4月1日時点で、すでに婚姻していた16歳以上18歳未満の未成年者の女性は、依然として成人として取り扱われます。また、同日時点で16歳以上18歳未満であった女性は依然として婚姻でき、婚姻した場合には、成人に達したものとみなされるとの経過措置が設けられています。)

未成年の相続人が離婚している場合

未成年者が、婚姻によって成人に達したものとみなされた場合、その後、未成年者が離婚したとしても、成人に達したとみなされた法的効果は消滅せず、依然として成人として取り扱われます。

親が未成年の相続人の法定代理人になれるケース

親が相続放棄をした場合

親も未成年者も相続人だった場合でも、親が相続放棄をした場合には、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。そのため、相続放棄をした後は、親と未成年者の利益が相反することはなくなりますので、親が未成年者の法定代理人として遺産分割協議をすることが可能となります。

片方の親がすでに亡くなっており、未成年者が代襲相続人になった場合

孫が代襲相続する場合

例えば、父親をすでになくしている未成年者の父方の祖父母が亡くなった場合には、未成年者は代襲相続人となります。この場合、未成年者の母は、未成年者の父方の祖父母の相続人とはなりませんので、未成年者と利益が相反することはなく、法定代理人として行動することが可能となります。

未成年者を含む遺産分割協議を弁護士に依頼するメリット

相続人に未成年者がいる場合には、その親権者が代理権を行使することができるのか否か、判断することは難しいと思います。そのような場合に、弁護士にご相談いただければ、適切な手続きや分割方法をご提案させていただくことが可能です。
お悩みの際には、是非お気軽にご相談ください。

協議離婚とは、夫婦間の話し合いで合意し、離婚届を提出して受理されることによって成立する離婚をいいます。話し合いで合意できない場合や、そもそも話し合い自体出来ない場合には、裁判所を通じて調停や裁判による離婚を目指すこととなります。日本では離婚全体の約90%が協議離婚ですので、最も一般的な方法といえます。以下では、この協議離婚について、その進め方や流れについて解説していきます。

協議離婚の進め方や流れ

①離婚およびその条件について話し合う
②離婚及びその条件について互いに合意する
③合意した内容について文書を作成する
④離婚届を作成して役所に提出する

相手に離婚を切り出す

協議離婚のためには離婚やその条件について夫婦の話し合いによる合意が必要です。そのために、離婚を切り出す際は、感情的にならず、冷静に話すよう努めましょう。相手方を説得するための離婚理由を伝えてください。事前に財産分与の話し合いに備えて、結婚後に築いた財産がどれくらいあるかを把握したり、(主に金銭面で)離婚後の生活の見通しを立ててその準備をしたりしておくことも重要です。

離婚に合意したら協議離婚で話し合うべきこと

慰謝料:
慰謝料は、相手から暴力を受けたり不貞行為をされたりした場合に請求することができます。この慰謝料については、放棄の意思を示していなければ、離婚成立後でも請求できます。離婚を急ぐあまり、慰謝料は請求しないなどという合意をすることは避けましょう。これにより、慰謝料請求権を放棄することになってしまうためです。

財産分与:
財産分与とは、結婚後に夫婦が取得した財産をそれぞれに分け合うことをいいます。結婚後、夫婦の協力により築いた財産の全てが財産分与の対象となりますので、マイナスのものも含めて、これらをすべてリストアップしてください。分与の割合は、話し合いにより自由に決定できますが、原則として二分の一ずつとするのが基準です。

年金分割:
厚生年金については、国民年金と異なり、年金分割制度の対象となります。年金分割制度においては、最大二分の一までの範囲内で夫婦の合意により分割の割合を決めることができます。年金分割は離婚後でも請求できますが、その期限は離婚成立時から2年となっていますので、注意が必要です。

養育費:
養育費は、未成年の子の衣食住・教育・医療等に必要な費用です。このような養育費の重要性から、養育費については、金額だけでなく、支払期間や支払方法を具体的に決めておくようにしましょう。また、支払いを確保するために、強制執行認諾文言付公正証書にしておくことも有効です。

親権:
親権とは、子の監護・教育を行ったり、子の財産を管理したりする権限をいいます。未成年の子がいる夫婦が離婚する場合、離婚前に子の親権者を決めなければならず、協議離婚の場合も、親権者を記載しないと、離婚届は受理されません。親権者の決定の話し合いにおいては、子の利益を最優先に考えるようにしましょう。

面会交流:
離婚の際には、面会交流について取り決める必要があります。子に対する虐待があるなど、子にとってマイナスとなる場合を除いて、原則として面会交流を拒むことはできません。離婚前の協議においては、できるだけ交流の頻度や時間、方法等について具体的に取り決めておきましょう。この場合も、子の利益を最優先に考えるようにしてください。

離婚協議書の作成と公正証書の作成

離婚協議書は、離婚やその条件について夫婦で合意した場合に、その内容を記載した書面です。離婚協議書に決められた書式はありませんが、合意の証拠とするために、作成の日付と夫婦双方の署名捺印のあるものを2通作成し、それぞれが保管しておきましょう。離婚協議書は、決められた書式もないため、当事者間で作成することができ、作成自体に費用はかかりません。もっとも、離婚協議書は仮に取決めが守られなかった場合に、直ちに強制執行することができません。一方、公証役場において公証人に一定額の手数料を支払って公正証書を作成してもらい、その中に強制執行認諾文言を付け加えた場合、これにより、約束違反があった場合に、裁判を経ずに強制執行をすることが可能となります。

離婚届けを役所に提出する

協議離婚の場合、離婚届の提出の際に運転免許証当の本人確認書類以外に離婚協議書を提出する必要はありません。そのため、離婚の成立時期を急ぐ場合などには、先に離婚届を提出してその後速やかに離婚協議書を作成することもあります。(もっとも、現実には、離婚協議書作成後に離婚届を提出するのが一般的です。)一方、子どもの親権者については、離婚届に記入がない場合、離婚届は受理されないため、提出に先立って決定してください。

離婚届を提出するタイミングに注意

上記のように、大まかな離婚条件を決めて先に離婚の届出をして離婚を成立させた後に、速やかに離婚協議書を作成することがあります。離婚に伴う子どもの転校などの事情から、離婚の条件に大きな争いがなく、離婚の成立時期を急ぐ場合などです。しかし、双方の住居が遠く離れることにより話し合いが遅れて合意までに時間を要したり、離婚後に話し合いがつかなくなったりするリスクもあります。

離婚に応じてくれない場合や協議が決裂した場合の進め方

協議離婚は夫婦間の話し合いによる合意を前提とするため、相手が離婚に応じない場合や、協議が決裂した場合には成立しません。この場合、別居や調停離婚を視野に入れることも有効です。

別居を考える

離婚協議成立前に別居することは、冷静に話し合うための手段として有効です、離婚後の生活についてイメージできるため、離婚が正しいか判断する機会も得られます。また、短期間の別居は夫婦関係の修復に役立つ場合もあります。相手方によるDVやモラハラを受けている場合には、これらから逃れるために、すぐにでも別居すべきでしょう。

調停離婚を視野に入れる

夫婦間の協議で合意に至らなかった場合や、そもそも協議できない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停では第三者である調停委員を間に立て、互いの言い分を調整しながら合意を目指します。合意が成立すれば、協議離婚が成立します。相手に調停離婚を検討していることを伝えることにより、真剣に離婚を考えているということを相手に伝えることができますので、話し合いに応じる可能性が高まることも考えられます。

別居中やDV・モラハラがある場合の協議離婚の進め方

別居中や配偶者からDV・モラハラを受けている場合については、夫婦間において直接話し合うことが困難又は不可能です。このような場合の協議離婚の進め方については、以下のような注意点がありますので、個別に解説します。

別居している場合

別居中で直接相手と話し合う機会がない場合、電話やメールなどにより話し合いを求めます。相手がこれに応じない場合は、離婚調停を申し立てましょう。また、相手が生活費を支払わない場合、自らの収入次第では死活問題となります。相手の収入次第では支払いを請求できる場合がありますので、婚姻費用分担請求調停を申し立てるとよいでしょう。

DVやモラハラを受けている場合の協議離婚の進め方

配偶者からDVやモラハラを受けている場合には、離婚の話合いを求めても、身体的・精神的・経済的な暴力や嫌がらせを受けるなどして、まともに応じてもらえない可能性が高いでしょう。このような暴力や嫌がらせを受けた場合には、被害から逃れるために、すぐにでも別居すべきです。別居先を自力で確保することが困難な場合には、各都道府に設置されている配偶者暴力相談支援センターなどに相談すれば、支援を受けることができます。

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協議離婚を進める際の注意点

協議内容を録音しておく

協議内容を録音しておけば、相手の発言を確認して適切に反論でき、また、協議中に行われた暴力やモラハラについて証拠として記録しておくことができます。録音について、相手に伝えて同意を得れば、何ら問題はありません。もっとも、この場合、相手が警戒して本当のことを話さなくなる可能性もあります。

離婚届不受理申出を提出しておく

離婚のための協議をしている間に、相手により勝手に離婚届を提出された場合であっても、離婚届に形式的に不備がない場合、受理されて離婚が成立してしまいます。このような事態の発生を防止するために、離婚届不受理申出の制度があります。この申出は、離婚届不受理申出書を市区町村の役場に提出することにより行います。

不貞やDV等の証拠を出すタイミング

不貞やDV等の証拠については、これを見せられた相手方は、その後さらなる証拠を取られないように警戒することが考えられます。また、全部の証拠を見せられた場合、相手方は、これに対応すべく、虚偽も含めた主張をしてくる可能性があります。これらの点を考慮して、不貞やDV等の証拠については、十分に収集した後に、必要なものを相手方に示すのがよいでしょう。

協議離婚の子供への影響

子が離婚の意味を理解できる年齢である場合、子の前で離婚の協議を行うと、子に精神的な悪影響を及ぼすことが考えられます。協議は子のいない場所で行うようにしてください。その他、離婚後に旧姓に代わることなどによる子への影響などについても配慮が必要です。

男性でも有利に協議離婚の進められるのか

現時点においては、男性が主に働いて家計を支え、女性が主に家事・育児を分担するという家庭が多いのが実情です。このような事情から、育児をしている女性が親権者となることがほとんどで、収入の多い男性が

養育費や婚姻費用を支払うことがほとんどです。その意味で、協議離婚においては、親権やお金の面で男性に不利であることが多いといえます。ただ、不利である場合にこそ、話し合いをして不利な点を減らすことが重要です。

よくある質問

協議離婚ではなくいきなり離婚調停をすることはできますか?

夫婦間の話し合いを経ることなく、離婚の調停を申し立てることも可能です。配偶者からDVやモラハラを受けている場合には、離婚の話合いを求めても、身体的・精神的・経済的な暴力や嫌がらせを受けるなどして、まともに応じてもらえない可能性が高いです。そのため、夫婦間の話し合いを経ることなく、離婚調停の申立てを行い、裁判所の関与のもと、第三者を間に立てて冷静に話し合いを行うことが必要かつ有効といえます。

離婚届を提出した後に行う手続きは、どのようなものがありますか?

離婚により姓と住所が変わった場合、離婚前の氏名と住所を登録しているものについては変更の手続きが必要です。免許証やパスポートなどは、身分証明書として使えますので、優先的に変更してください。配偶者の扶養から外れた場合、健康保険や年金について手続きをし直す必要があります。財産分与により財産を得たり失ったりした場合、不動産、自動車等について名義を変更する必要もあります。扶養していなかった子の親権者となった場合、自己の扶養家族とする手続をします。子の戸籍を移動する場合は、氏の変更手続が必要です。

協議離婚の証人には誰がなれるのでしょうか?

協議離婚の場合、離婚届に夫婦の署名捺印の他に、成人2名の証人の署名捺印が必要となります。証人は成人であれば誰でもよく、友人や職場の上司もなることができます。周囲に証人になってくれる人がいない場合、離婚届の証人となるサービスを行う業者もあります。

協議離婚を進める際、第三者の立ち合いは必要ですか?

協議離婚を進めるに際して、第三者の立会いは必要ではありません。ただ、夫婦だけでは感情的になってしまい冷静に話し合いができないということも考えられます。このような場合には、第三者に立ち会ってもらうことも有効であると考えられます。もっとも、自分の親や義両親などが立ち会った場合、自分の子の味方をするおそれがあり、かえって協議を困難なものとしてしまう可能性があります。そのため、立ち会ってもらう第三者には、利害関係がなく、中立の立場で夫婦相互の意見を公平に聞くことのできる者を選ぶことが重要です。

協議離婚を適切に進められるかご不安な場合は弁護士へご相談ください

以上、協議離婚の進め方について解説してきました。ただ、協議離婚を考えていらっしゃる方であっても、これまで離婚のための協議をしたことはないという方がほとんどであると思います。上記のような知識を得ただけで、全ての不安が解消されて、これから自信をもって離婚協議を進めていけるということにはならないのではないでしょうか。弁護士にご依頼いただければ、豊富な知識と経験に基づいて、的確にサポートすることができます。協議離婚についてわからないこと、ご不安なことがありましたら、何でもお気軽にご相談ください。

親権者指定に似て非なる制度として、「監護者指定」という制度があります。離婚前に、両親の一方が子供を監護する場合や、離婚後に父を親権者、母を監護者とするような場合など、現実に子供と同居して監護をすることになります。以下では、監護者指定について、詳しく解説していきます。

監護者指定とは

監護者指定とは、別居時に、子供を監護する者を指定する手続きをいいます。これは、親権者とは別のものです。夫婦が離婚する場合、どちらかが親権者となりますが、離婚前の別居の段階では、親権は両親がともに有しています。そこで、子供を監護する親を指定することにより、その親は子供と同居することが可能となり、後の離婚の際に親権が争われても、有利になると考えられます。

親権者指定と監護者指定の違いについて

親権者指定は、離婚後に子供の親権者となる者を決める手続きです。親権者は、基本的には父親か母親しかなることができません。
監護者指定は、離婚までの別居中に子供を監護する者を決める手続きです。監護者は、親権者の場合と異なり、両親以外の第三者もなることが可能です。例えば、両親から育児放棄や虐待があり、祖母や祖父が監護者となるような場合です。

親権者と監護権者は分ける場合がある

親権は、身上監護権と財産管理権で構成されています。原則的には、親権者が身上監護権及び財産管理権を有することになります。しかし、例外的に、身上監護権者と財産管理権者を分けることもあります。例えば、子供がまだ幼いため母親が身上監護権者となるが、経済的な事情で父親が財産監護権者になるような場合です。なお、一般的には、身上監護権者と財産管理権者は分けるべきではないと考えられています。

親権者と監護権者が実際に分けられた判例

申立人は父親、相手方は母親です。相手方が、申立人と子供との面会交流を積極的に認めることを前提として、親権者を相手方とする調停が成立したにもかかわらず、相手方が子供に対して、申立人との面会交流を拒否させた事例において、親権者と監護権者を分けるという判断をしました(福岡家庭裁判所平成26年12月4日審判)。

監護者指定の判断基準

親側の事情

  • 子供の監護実績
  • 経済状況
  • 精神状況
  • 子供への愛情、関心
  • 面会交流の機会を設ける意思の有無
    など

子供側の事情

  • 年齢
  • 父母のどちらと同居したいと思っているか
  • 生活環境の変化の有無
    など

子供の年齢によって監護者を判断する場合もある

監護される子供の年齢が15歳未満の場合は、基本的に母親が優先されることが多いと考えられています。その中でも、10歳以下の場合はそれが顕著で、10歳以上の場合は、子供の意思も考慮されます。また、子供の年齢が15歳以上の場合は、基本的に子供の意思が尊重されます。

離婚時・離婚後の監護者指定の流れ

離婚時に監護者指定をする場合、基本的に、親権者指定と同時に行われます。そして、親権者指定の場合と同様に、監護者の指定も、当事者の合意のみで行うことができます。一方、離婚後の監護者指定は、家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。しかし、家庭裁判所は、子供に対する虐待や育児放棄などがある場合には親権者でない親を監護者として指定する可能性がありますが、このような事情がない場合には、基本的には親権者と監護者を別にするという判断をしないと考えられます。

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監護者の指定調停

監護者指定の調停は、夫婦での話し合いによって監護者を決めることができない場合に、家庭裁判所の調停委員を介入させて、話し合いを行う手続きです。以下では、監護者指定の調停について解説していきます。

指定調停を申し立てるためには

監護者指定の調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意により決めた家庭裁判所に申し立てます。申し立てにかかる費用としては、子供1人につき1200円と、連絡用の郵便切手が挙げられます。必要書類は、申立書(写しも)、当事者目録、未成年者の戸籍謄本です。

監護者指定調停の流れ

調停は、家庭裁判所の調停委員を介して、相手方と話し合いをする手続きになります。そして、調停では、当事者の一方が調停委員と話をしている間は、もう一方の当事者は待合室で待機します。
しかし、調停は、当事者の合意がないと成立しないため、いつまで経っても合意に至らないことはあります。そのため、このような時は、調停不成立とし、審判に移行します。

別居中でも監護者指定することはできます

別居中でも監護者指定をすることができます。むしろ、離婚前の別居中に、監護者指定を求めるケースが多いです。離婚前の別居中に監護者として指定され、監護実績を積むことができれば、離婚時の親権争いで有利になります。

監護者指定審判の流れ

監護者指定の審判は、離婚の場合とは異なり、調停を経ずに最初から申し立てることが可能です。監護者指定の審判を申し立てると、基本的には、家庭裁判所調査官の調査が行われます。そして、審判期日に出席し、裁判官からの審問を受けます。その上で、審理が終結し、審判が下されます。

どのくらいの期間がかかるのか

監護者指定の審判は、具体的なケースにもよりますが、通常、半年程度かかります。そのため、保全手続きを利用することにより、相手方に監護実績を作らせないことが有用であると考えられます。

審判後の流れについて

監護者指定の審判により監護者に指定された場合、相手方に対して子供の引渡しを求めることができます。しかし、相手方がこれに応じない場合もあります。このような場合には、強制執行を求めることになります。強制執行は、裁判所の執行官が子供が居住する場所に赴き、子供を説得し、引渡しを強制的に実現する手続きです。

監護者指定審判の即時抗告について

監護者指定の結果に異議がある場合には、裁判所に対し、即時抗告を申し立てることができます。即時抗告は、審判書の送達を受けてから2週間以内に、審判を行った家庭裁判所に対しすることになります。そして、即時抗告に対する判断は、高等裁判所が行います。

監護者指定・子の引き渡しの審判前には保全処分をする

監護者指定の審判には時間がかかることから、審判の申立てと同時に、緊急手続きとして保全手続きを申し立てることがあります。保全手続きは、子供の安全の確保の為に申し立てることもあります。保全処分が認められれば、子供の引渡しを受けることができます。そして、保全処分が認められれば、高い確率で審判でも監護者指定を受けることができると考えられます。なお、相手方が即時抗告をしても、保全処分の効力は失われません。

よくある質問

監護者指定審判では父親と母親はどちらが有利ですか?

具体的状況にもよるため一概にいうことはできませんが、基本的には母親が有利であると考えられます。ただ、監護者指定は、子供の監護状況や、子供の年齢等、様々な事情を考慮してなされます。そのため、父親が主で子育てを継続して行ってきたという事情があれば、父親が監護者に指定されるということもあります。また、子供が15歳以上であり、子供自身が父親に育てられることを希望している場合にも、父親が監護者として指定されることはあります。

子供が配偶者に連れ去られた場合、監護者はどちらになりますか?

子供が相手方に連れ去られた場合は、連れ去った方が監護実績を積んでそのまま監護者に指定される可能性があります。一方で、連れ去られた方がこれまで子供の養育をしっかりと行ってきており、連れ去られた方にDV等の事情がない場合などには、連れ去り自体に正当な理由がないと評価され、連れ去られた側が監護者に指定される可能性もあります。このように、単に子供を連れ去って現在子供と同居しているという事実のみで、連れ去った方が親権者に指定されるわけではありません。

監護者指定がされて面会交流後に子どもが連れ去られた場合は今後も面会交流をしないといけませんか?

監護者指定がされて面会交流後に子供が連れ去られた場合には、連れ去られた方は、面会交流禁止の申立てをすることができます。
面会交流後に子供を連れ去られた側としては、子供を取り返すという気持ちになりがちですが、このような行為は避けてください。両親が自分を取り合うという事実だけで子供にとっては心身に悪影響を与えますし、未成年者略取・誘拐罪に該当する場合もあるからです。

祖父母が監護者になることはできますか?

監護者については、第三者もなることが可能なので、祖父母がなることができます。両親が育児放棄をしている場合などに、祖父母が監護者になるケースがあります。しかし、祖父母が、自らを監護者に指定することを家庭裁判所に求めることはできません。これは、祖父母が監護者になれるという規定が法律上存在しないからです。そのため、養子縁組によって、養親子になっておくなど、後のために備えておくことが有用であると考えられます。

調停離婚と監護者指定の調停は同時に申立てることができますか?

離婚調停と監護者指定の調停を同時に申し立てることは可能です。ただし、必ずしも同時進行で調停が進んでいくわけではありません。親権について争いがある場合には、先に監護者指定の調停を進めて、審判に移行させた上で結論を出し、その後に離婚について結論を出すことがあります。

離婚時の監護者指定について経験豊富な弁護士に相談してみましょう

離婚前の別居時や、離婚後の子供の監護については、大変重要な事項です。そのため、どのような場合に監護者となることができるかや、監護者に指定されるためにどのように備えるべきかは、専門家である弁護士にアドバイスを受けることをお勧めします。配偶者が子供を監護している状況で、「最終的には親権を争うから」と考えて、この状況を放置すべきではありません。これまで述べてきた通り、監護者指定と親権は密接に関係しており、監護者として指定されなかった方が最終的に親権者となるのは、容易ではありません。このように、監護者指定に関しては、早期に対応する必要もあります。
子供の監護についてお悩みの方は、是非一度弁護士にご相談ください。

ある人が亡くなって、その遺産を分けるとき、現金だけなら分けるのは簡単ですが、実際には金銭化が難しいものなど、分けるのが難しい遺産もあります。
この記事では、分けるのが難しい遺産について、どうやって分けていくのかを見て行こうと思います。

遺産分割の方法は複数ある

遺産を分けたいという場合、現金や預金だけなら1円単位で分けることができます。しかし、実際に相続が生じた場合、自宅不動産や買い手のつかない不動産、貴金属やマニアックなコレクションなど、人によって特別な価値があるものが出てきます。
遺産の中にはこれらのように分けるのが困難なものもあるため、法律的に、①現物分割、②換価分割、③代償分割、④共有分割という4つの分割方法が用意されています。 以下、それぞれについて見て行きます。

分割方法1:現物分割とは

現物分割とは、個々の財産の形状や性質を変更することなくそのまま分ける分割方法を言います。
具体的に言うと、自宅不動産については妻、預金は長男、骨とう品は二男、アクセサリーは長女というように、現にある物をそのまま分ける方法です。

現物分割のメリット

現物分割には、
①現にある物の中でどれを誰が取得するかを決めるため、分割の内容がわかりやすいこと、
②現にある物をそのまま分けるため、手間がかからないこと、
③故人が使用していた思い出の品をそのまま手元に残すことができること、
というようなメリットがあります。

現物分割のデメリット

他方で、現にある物をそのまま分けるということは、物によって価値が異なるため、平等にわけることが難しいというデメリットがあります。

分割方法2:換価分割とは

換価分割とは、遺産を売って現金に換えてから、その現金を分ける方法のことをいいます。
具体的に言うと、自宅不動産やアクセサリー、骨とう品や家具など、売れるものはすべて売って、その売却で得た現金を分ける方法です。

換価分割のメリット

換価分割のメリットは、価値が出そうなものについても売却のうえで、その売却で得た現金を分けることになるので、公平に分けることができることにあります。また、維持管理のための費用を支払う必要がなくなることにあります。このように、公平に分けることができ、また、負担が減るので、不満は出にくくなるでしょう。

換価分割のデメリット

他方で、デメリットとして、不動産や自動車など、買い手がつかないことには売却ができないうえ、高額の売却になることが多いため、売却に時間がかかることが多いことが挙げられます。また、売却となると、処分費用や譲渡所得税等がかかる場合があります。
思い出の品や自宅を手元に残すことができなくなるため、故人と同居していた方にとっては自宅を失うことになり、また、思い出の品も手元に残すことができなくなることも挙げられます。

分割方法3:代償分割とは

代償分割とは、一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させたうえ、外の相続人に対して債務を負担させる方法のことをいいます。
例えば、故人と同居していた相続人が自宅不動産を取得する代わりに、外の相続人との公平を図るために、代償金を支払うという方法です。

代償分割のメリット

代償分割のメリットとしては、自分の取得したい遺産を確保しつつ、公平な遺産分割ができることにあります。
故人が賃貸アパートを所有していた場合や、相続人の一人が故人と同居していた場合に、そのままその不動産を所有し続けることができます。これと引き換えに代償金として法定相続分より多く取得した部分について他の相続人に支払うため、他の相続人からの不満も出にくくなります。

代償分割のデメリット

他方で、代償分割をする場合は、不動産等金額が大きいものを取得するために行われる場合が多いと思われますので、遺産を受け取る人の負担が大きくなるというデメリットがあります。また、代償金としていくら支払うのかの基準となる、遺産の評価方法について争いになることがあり、分割までに長い時間を要する場合もあります。

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分割方法4:共有分割とは

共有分割とは、対象となる遺産を誰が取得するとは限定しないで、相続人全員で相続分に応じて共有する分割方法です。
例えば、遺産としてある不動産があり、相続人が妻と子2人の場合、法定相続分は妻1/2、子2人1/4ずつです。そのため、当該不動産は、妻1/2、子2人1/4ずつの持分割合で共有することになります。

共有分割のメリット

共有分割のメリットは、不動産等高額な遺産を形を変えずにそのまま残すことができ、代償金等金銭の移動なく、公平な分割ができることにあります。

共有分割のデメリット

他方で、一旦共有分割をしてしまうと、売却等の処分をしたくなった場合、共有者全員の許可が必要なので、なかなか処分ができなくなるというデメリットがあります。
また、共有している人が亡くなると、その人の相続人が共有することになるので、権利関係が複雑になります。
実際、共有分割をした結果、相続人の一人に何回か相続が発生し、結局数十名の方の署名を集めなければ売却等の処分ができないという事態に陥ったという案件もありました。

遺言書に遺産分割方法が書かれている場合は従わなければならない?

遺言書に遺産の分割方法が指定されている場合、相続財産を遺した故人の意思を尊重するために、基本的には遺言書に従って遺産を分けることになります。
ただし、相続人全員が遺言書に反対しているような場合など、例外的に従わなくて良い場合もあります。
また、相続人の最低限の相続分(遺留分)を侵害するような遺言がなされている場合は、遺言書のとおりに遺産の分割をすることにはなりますが、後ほど遺留分の請求がなされることは念頭に置いておいた方が良いでしょう。

遺言書がない場合の遺産分割方法

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産の分割方法について話し合うことになります。
具体的に、どんな遺産があって、どれを誰が取得するのか、どう分けるのかなど、詳細に話し合うことになります。
話し合いがまとまらなければ、遺産分割はいつまで経っても進みません。

遺産分割の方法でお困りのことがあったら、弁護士にご相談ください

すでに争いが生じているわけではなくても、遺産を分割する方法について複数考えられる場合には、争いが生じることを防ぐため、また、すでに争いが生じてしまっている場合でも長引くことを防ぐためには、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
弁護士に相談することで、お一人お一人の事情に応じた適切な遺産分割の方法について、アドバイスを受けることができます。また、弁護士に依頼することで、遺産分割協議に代理人として参加してもらうこともできます。仮に話がまとまらずに遺産分割調停や遺産分割審判に至ってしまっても、代理人として弁護士に参加してもらうことができるため、精神的・時間的な負担も軽減されるでしょう。
そのため、遺産分割の方法で迷われた場合には、後に相続人間で争いが起こらないよう、できるだけ早く弁護士にご相談下さい。

皆さん、遺贈という言葉をご存でしょうか。
例えば、相続人以外の方に財産を残したいと思っている方や、お亡くなりになられた方の遺言書に「遺贈」と書かれていた方など、遺贈に関わる方は少なくありません。
遺贈に関心のある方も、そうでない方も、今後遺贈に関わることがあるかもしれません。
本稿では、遺贈についてお話ししたいと思います。

遺贈とは

遺贈とはわかりやすく言うと、お亡くなりになった方が遺言によってご自身の財産を他の人に譲り渡すことです(民法964条)。遺贈を受ける人のことを「受贈者」といいます。ここでいう「他の人」には、相続人以外の人も含まれます。そのため、相続人以外の人にも財産を譲り渡すことができます。

遺贈と贈与の違い

遺贈と似たものとして、贈与があります。
贈与は契約であるため、譲り受ける側の同意も必要です。しかし、遺贈は単独行為であるとされ、譲り受ける側の同意は不要です。このように、遺贈と贈与は、法律上大きく異なっているといえます。

遺贈と相続の違い

遺贈と相続についても似た制度ではありますが、以下のように異なる点があります。
相続の対象は、相続人のみですが、遺贈の場合、その対象は相続人に限られません。また、相続の手続きや相続税にも違いが出てくることがありますのでご注意ください。

遺贈の種類

遺贈には、いくつかの種類があります。遺贈の種類によって取り扱いが異なってきますので、注意が必要です。以下では、包括遺贈・特定遺贈・負担付遺贈について解説させていただきます。それぞれの遺贈について、違いに着目しながらお読みください。

包括遺贈(割合で指定されている場合)

包括遺贈は、相続財産の全部または一部の割合(「相続財産のうち、4分の1を●●に遺贈する。」など)を譲り渡すものです。この場合、その割合に応じて借金も背負うこととなります。包括遺贈を受けた者は、民法上相続人と同じ権利義務を有するとされている(民法990条)ことから、遺産分割協議への参加が必要となります。

特定遺贈(財産が指定されている場合)

特定遺贈は、相続財産のうち、特定の財産を指定して(「●●の土地を●に遺贈する。」など)譲り渡すものです。この場合、その特定された財産がマイナスの財産(借金など)でない限り、負債を背負うことはありません。また、包括遺贈と異なり、遺産分割協議に参加する必要もありません。

負担付遺贈

負担付遺贈は、受贈者に一定の負担をさせることを内容とする遺贈(「●が存命中生活の世話をすることと引き換えに、●●の土地を遺贈する。」など)です。また、遺贈の価額を超えない限度においてのみ負担した義務を負うので、遺産の価値以上の義務を負担することはありません。なお、この負担を履行しない場合は、遺贈の取消し請求がされる可能性がありますので、ご注意ください。

遺贈の放棄はできる?

遺贈は、受贈者の同意なくなされるものですので、受贈者は、遺贈を放棄することが可能です。そして、放棄の手続きは、遺贈の種類によって異なります。包括遺贈の場合は、遺贈があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に放棄の申し立てを行う必要があります。特定遺贈の場合は、遺言者の死亡後は、いつでも放棄することができます。この放棄の意思表示は、遺言執行者あるいは相続人に対して行うことで足ります。また、負担付遺贈についても放棄は可能です。この場合も特段手続きは不要です。

遺産の寄付もできる(遺贈寄付)

遺贈により、NPO法人などに自身の財産を寄付することも可能です。しかし、寄付先や寄付する財産の範囲が不明確であったりすると、相続人との間でトラブルになりかねません。そのため、この点に注意して遺贈寄付を行う必要があります。また、手続きが煩雑になったり、受け取りを拒否される可能性もあるため、寄付先にも伝えておくことをお勧めします。

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遺贈の効力がなくなるケース

遺贈したい相手が先に死亡した場合

受贈者の方が先に亡くなってしまった場合は、民法上、その遺贈は無効になるとされています。そして、この場合は、遺贈の対象となっていた資産は法定相続人間の遺産分割の対象となります。

遺贈の対象財産が相続財産にない場合

遺贈するはずの財産を誰かにあげてしまったり、処分してしまったりした場合、原則として、その遺言は無効となります。また、例えば、負担付遺贈で介護が引き換えになっているが介護対象が既に亡くなっている場合など、負担付遺贈の負担がそもそも不可能であるときは、負担が無効であれば遺贈はしなかっただろうというような場合を除き、負担のない遺贈として効力を有することとなります。

遺贈にかかる税金

遺贈には相続税がかかります

遺贈は、相続と同様に、相続税の対象になります。そして、遺贈により財産を取得したのが、亡くなった方の配偶者・子・父母以外である場合には、税額が2割加算されるといったことがあります。そのため、遺贈をするにあたっては、税金についてもお気をつけください。

不動産を取得した場合はさらに税金がかかる可能性も

遺贈により、相続人以外の方が不動産を取得した場合には不動産取得税がかかります。さらに、登記手続きの際には登録免許税がかかります。この登録免許税については、取得したのが誰かに関わらずかかるものなので、注意が必要です。このように、不動産の場合は、相続の方が税金がかさまずに済むため、この点も考慮してご検討ください。

遺贈の注意点

遺留分を侵害している場合は請求可能

遺留分とは、法律上一定の法定相続人に相続財産の一部の取得を認めるものであり、遺言等によってそれが侵害されている場合には、侵害されている相続人は、遺留分としてそれを主張することができるというものです。遺贈を行う際に、この遺留分を侵害していると、その侵害された相続人との間でトラブルになることもありますので注意が必要です。遺贈を行うにあたっては、遺留分を侵害していないかどうかを考慮するべきでしょう。

不動産の遺贈は遺言執行者を指定しておいた方が良い

不動産の遺贈を受けた場合、登記手続きが必要になります。そして、遺言執行者がいない場合、この登記手続きは、相続人全員で行わなければならないとされています。一方、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者と受贈者で行うことができます。そのため、遺言執行者を指定しておく方が良いでしょう。

受遺者が単独で名義変更できないのはなぜ?

遺贈により不動産を取得した場合、受贈者は、単独で登記申請をすることができません。これは、遺贈が相続とは異なり、亡くなった方の法律行為によって効果が生じるものと考えられているからです。つまり、相続のように、亡くなることで当然に効果が生じるものではないという点から、このような違いがあると考えられています。

遺贈登記(遺贈による所有権移転登記)の手続き方法

遺贈があった場合の登記手続きについて、以下、遺言書の検認から始まり、登記の確認をし、書類を集めて申請するという流れで解説していきます。

遺言書の検認

遺言書は、公正証書遺言などを除き、家庭裁判所による検認手続きを行う必要があります。この検認手続きは、遺言の効力そのものに影響を与えるものではありませんが、遺言の内容に沿って手続きを進める際に、相続人間のトラブルになりかねません。そのため、遺言書を発見した場合は、検認手続きを行うようにしましょう。

登記簿を取りよせて内容を確認する

亡くなった方の住所が死亡時と異なる場合は、住所変更をする必要があります。そのため、まずは現在の登記を取り寄せて確認する必要があります。

書類を集める

不動産の移転登記手続きをする場合、遺言書の他、亡くなった方の住民票、土地の権利証など、様々な書類が必要となります。そのため、一般の方が不動産の移転登記手続きを行うのは容易ではありません。一度専門家にご相談されることをお勧めします。

申請書を作成して提出する

不動産の移転登記手続きを行う場合、申請書を作成して提出する必要があります。この申請書については、法務局のホームページにテンプレートがありますので、これを利用すれば作成しやすいかと思いますので、ぜひご参考にしてください。

遺贈についての疑問点は弁護士にご相談ください

以上、遺贈についてご説明させていただきました。相続とは少し異なり、遺贈についてはなかなか馴染みのない制度かと思います。遺贈については、問題点は多岐にわたりますが、事前に知っておくだけでも後のトラブルを防止することができます。そのため、遺贈をすることを検討されている方も、遺贈を受けた方も、事前に弁護士にご相談されることをお勧めします。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。