親権とは | 親権を決める流れと獲得のポイント

コラム

離婚するご夫婦に未成年のお子様がいらっしゃる場合、必ず「親権」について決めなければなりません。

しかし、結果によってはそれまで愛情を込めて育ててきたお子様との関係性を大きく変えるため、親権は揉めやすい問題といえます。親権者を決める際には、それまでの育児の状況や離婚後の生活環境などさまざまな要素が考慮されます。

また、養育費や面会交流といった将来的な問題も取り決めなければなりません。したがって、親権を獲得するための条件や相場について、知識をつけておくことが重要です。このページでは「離婚の際の親権」に焦点を当てて、概要や親権を獲得しやすくするための方法など、詳しく解説します。

親権とは

親権とは、未成年の子供がいる場合に発生する権利・義務です。具体的には、子供の監護・養育や教育を行ったり、子供の代わりに財産の管理や法律行為を行ったりします。通常、婚姻関係にある親はどちらも親権を持ちます。

しかし、離婚するときは、必ずいずれか一方のみを親権者に決めて離婚届に記入する必要があります。この記入が漏れたまま離婚届を提出しても受理されないため、注意が必要です。とはいえ、実際のケースでは、夫婦で話し合ってもどちらが親権者になるか決められず、調停などに発展することも多いです。

親権の種類

財産管理権

「財産管理権」とは、親権者が、未成年の子供の財産を本人に代わって管理する権利・義務のことです。

具体的には、子供名義の銀行口座や預貯金といった金銭の管理、子供の入院手続や大学への入学手続、交通事故に遭った際の示談など、子供の代わりに法定代理人として行うことが、「財産管理権」の内容となります。なお、基本的に未成年の子供名義の財産であれば財産管理権の対象になりますが、例外的に、「親権者が許可した営業行為や、子供自身が結んだ労働契約によって得た財産」「親権者が子供に処分までを許可した財産(お小遣いなど))」「第三者が、親権者に管理させないと定めたうえで、無償で子供に与えた財産」は、財産管理権の対象外とされています。

身上監護権

「身上監護権」とは、未成年の子供の身の周りの世話や教育をする権利・義務のことです。例えば、子供と一緒に暮らして食事を与えたり、学校に通わせたりするといったことが想像しやすいでしょう。なお、身上監護権を持つ者を「監護者」といいます。

身上監護権は、具体的に「子供の身分行為(婚姻や離婚など)を同意・代理する権利」「子供の居住地を指定する権利」「子供が仕事に就くことを許可する権利」「子供の懲戒・しつけを行う権利」という4つの権利に分けられており、子供の日常生活や成長に広く、また直接かかわる権利であるとわかります。そのため、身上監護権は、権利だけでなく重要な義務ともいえます。

親権と監護権について

監護権は親権に含まれるため、基本的には親権者が監護権を持ちます。ただし、親権者が子供を監護できないなどの事情があれば、例外的に親権者と監護者を分けることもあります。例えば、「親権者が海外赴任中で子供と暮らすことができない場合」や「親権者が一向に決まらず、子供のためにも早く収拾した方が良い場合」などが挙げられます。

ただし、子供からすると、親権者と監護者が同じであるに越したことはありません。また、親権者と監護者を分けると、監護者は子供のお金や法律行為について都度親権者の同意を得なければならないといったデメリットもあるため、注意が必要です。

親権が有効なのはいつまでか

親権は、子供が未成年の期間のみ有効です。よって、子供が20歳になった時点で親権はなくなります(2022年4月1日からは、18歳に変更されます)。

ただし、未成年者であっても、結婚すれば成人とみなされます。そのため、未成年の子供が結婚した場合にはその時点で親権が消滅するといった例外もあります。また、離婚時に子供が成人していれば親権について取り決める必要がないため、子供の成人を待って離婚するケースも多くなっています。

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離婚の際に親権を決める流れ

離婚時に親権者を決めるには、まずは夫婦で話し合います。しかし、親権はお互いが譲らず揉めやすい傾向があるため、話し合いで決まらないケースも多いです。その場合、家庭裁判所に調停を申し立て、夫婦の仲介役となる調停委員を交えて協議をしていきます。

調停でも夫婦の合意がなされなかった場合、自動的に審判に移行します。審判では、調停での夫婦の意見や調停委員からの報告をもとに、裁判所が親権者を決定します。そして、審判での決定に納得がいかなければ、訴訟を起こして再度裁判所の判断を仰ぐことになります。

親権獲得のためのポイント

親権を獲得するには、自身が相手よりも子供と一緒に過ごし、相手方よりも子供を主として監護をしてきたと証明することがポイントとなります。裁判所は「これまでの主たる監護者がどちらであるか」という点を考慮し、「子供は離婚後もできるだけ離婚前と同じ環境で生活させるべき」と考える傾向にあります。そのため、親権を獲得したいのであれば、従前からできる限り子供の監護を主体的に行っている必要があります。

これは、親権者となりたい者が、男性・女性にかかわらず当てはまる考え方です。そのため、親権者となりたいのであれば、別居をした場合でも、主たる監護者として子供の生活を維持し問題なく監護できる実績を積む必要があるでしょう。

父親が親権を取得することは可能?

父親の親権獲得は難しく、実際の獲得件数も少ないのが現状です。裁判所は、父親は仕事のため子供との時間が取りにくいことや、子供(特に乳幼児)には母親による世話が不可欠だとする「母親優先の原則」などから、母親を親権者に決定することが多いためです。しかし、離婚前に父親がしっかりと育児を行ってきた実績や、父親と暮らした方が子供の成長に良いことが主張できれば、父親が親権を獲得することも可能です。

親権争いでは、相手方の誹謗中傷合戦になりやすい傾向がありますが、それよりも、具体的に父親がどれだけ積極的に子育てにかかわってきたかについて、記録(日記や育児記録など)等に沿って、主張・立証していく必要があります。また、離婚後に子供と長く過ごすため、自主的に転職や時短勤務を行うといったことも、子供の監護のためには必要となる場合があるでしょう。

無職でも親権を獲得したい場合

無職の場合、経済的に不安定なことから親権者にはなれないと思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、無職の方でも親権を獲得することは十分に可能です。というのも、親権を決める際には、経済的な事情よりも、それまでの育児の実績や離婚後の子育て環境が重視されるためです。

また、親権者になれば相手からの養育費や公的支援によって収入がカバーできるため、無職であること自体が親権獲得において不利に働くことは、滅多にありません。特に専業主婦の方は、メインで子育てをするなど育児の実績において有利に働きやすいため、無職であっても親権者と認められやすい傾向があります。ただし、経済的に自立するに越したことはなく、また、養育費の金額が十分でないおそれもあります。そのため、離婚後に仕事に就く意欲を見せたり、親族のサポートを受ける環境を整えたりしておくことも重要です。

親権を決める際に注意すべきこと

安易に決めると後々の変更は困難です

とにかく早く離婚したいとお考えであっても、離婚後に親権者を変更するのは非常に難しいため、親権については慎重に決めてから離婚することが重要です。というのも、一度決まった親権はその後父母の合意や書面の提出のみでは変更することができません。

必ず裁判所に「親権者変更調停」を申し立てなければならず、時間と費用がかかります。また、基本的に親権の変更が認められるのは、「親権者が子供の虐待や、育児放棄をしている」「親権者の海外赴任がきまり、子供と暮らせなくなった」など、子供の健全な成長が阻害される相当な理由がある場合に限られます。

親権者が変わることで、子供は同居人や生活環境が変わり大きな影響を受けてしまうため、親権者の変更は簡単には認められないのです。なお、たとえ離婚時に「子供が〇〇歳になったら親権者を変える」などと合意していても、変更時には上記手続が必要なため、注意が必要です。

親権獲得後の養育環境で、親権停止・喪失する場合も

親権者が無責任な育児をしていると、裁判所の判断によって、親権が喪失・停止する場合があります。まず、親権の喪失は、親権者が「著しく子供の利益を害する場合」や「親権の行使が著しく難しい場合」に認められます。

具体的には、食事を与えない、病院に連れていかないなど、子供の健康にダメージを与える場合です。また、親権者が重い精神疾患にかかったり、服役したりすることも、親権が喪失する事由になります。ただし、親権の喪失は無期限で認められるため、親子関係に重大な影響をもたらすとして、裁判所も慎重に判断する傾向があります。

一方、親権の停止は、親権者が「子供の利益を害する場合」や「親権の行使が難しい場合」に認められます。代表的なのは、子供を虐待している場合です。親権の停止期間は最長2年となっており、その間に親権者に改善がみられたり、親子関係が修復したりすれば、再び親権者と認められます。

子を連れた勝手な別居は不利になる場合も

離婚協議中は相手との関係も悪化するので、子供を連れて別居したいと思われることもあるでしょう。しかし、「相手の同意もなく無理やり子供を連れて別居した」「子供を待ち伏せて強引に連れ去り別居した」というような場合、いわゆる「連れ去り」として違法性が問われ、親権獲得において不利に働くおそれがあります。

さらに、相手が、連れ去りの違法性を根拠に「子の引渡し請求」の審判手続を取れば、子供を連れ戻される審判が出ることもあります。ただし、子供を相手の不法行為(暴力・モラハラ・虐待など)から守るための連れ去り別居であるなど、その正当性が認められれば、親権争いでも不利にはなりません。このような場合でも、相手の不法行為の証拠をしっかりと集めておくなど別居の正当性を主張できるよう準備しておくことが重要です。

親権を獲得できなかった場合の養育費について

「養育費」とは、子供が社会的に自立するまでにかかる費用全般(生活費や学費など)のことです。親権を獲得できなかった場合、離婚後は、子供と同居する相手側に養育費を支払わなければなりません。子供と一緒に生活しないのに、なぜ養育費だけ支払う必要があるのか疑問に思われるかもしれません。

しかし、もともと父母には協力して子供を扶養する義務があり、この義務は離婚しても親子関係が続く以上変わりません。そのため、離婚後に子供と別居する場合でも、養育費を分担して子供の成長を支える必要があるのです。

親権が取れなかった側の面会交流について

親権が取れなかった場合でも、面会交流によって子供とつながりを持つことが可能です。面会交流とは、別居している親と子供が交流する制度のことをいいます。交流の方法は、実際に会うというのが原則ですが、手紙やプレゼントの交換などで交流することもあります。

たとえ離婚しても親子関係は変わらず、また、子供を健やかに成長させるには両親からの愛情を与え続けることが不可欠とされています。そのため、面会交流は、親権を持たない親と子供の重要な権利であり、裁判所は面会交流に積極的な傾向にあります。ただし、離婚後には面会交流に関する問題が多く起こるのが現状です。そのため、離婚前に面会交流のルール(どこで会うか、月に何回会うか、どの程度の交流まで認めるかなど)まできちんと取り決めておきましょう。

親権問題は弁護士に相談して入念な準備をしましょう

親権は、離婚時には特に揉めやすい問題のひとつです。親権者を判断する際には、それまでの育児実績や経済状況などさまざまな要素が考慮されるため、親権者になりたいとどれだけ強く主張しても認めてもらえない場合もあります。

そのため、親権争いを有利に進めるには、親権を獲得するための条件を知り、適切な対策を練ることが重要です。しかし、具体的にどのような対策や準備をすれば良いのか、その他の離婚手続と並行できるのかといった多くのご不安もあるでしょう。

そこで、弁護士に依頼することをおすすめします。離婚問題の経験が豊富な弁護士は、親権獲得を有利に進めるノウハウを備えており、ご依頼者様にとって有益なアドバイスやサポートができるでしょう。離婚時の親権についてお悩みの方、今後の進め方にご不安がある方は、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

夫婦が別居した場合、別居期間中の生活費は「婚姻費用」として相手に請求することができます。

別居中であっても婚姻費用の分担は夫婦の義務であり、収入が少ない側にとっては特に重要です。その一方で、別居しているにもかかわらず、なぜ相手に婚姻費用を負担しなければならないのかと疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。このページでは、婚姻費用の請求方法などについて、詳しく解説します。婚姻費用についてお知りになりたい方や請求を検討中の方など、ぜひご参考になさってください。

婚姻費用とは

婚姻費用とは、夫婦が暮らしていくために必要な生活費全般(食費・住居費・医療費・子供の学費など)のことを指します。夫婦はそれぞれの収入や財産に応じて婚姻費用を分担することが義務付けられており、戸籍上の夫婦であれば、たとえ別居していてもこの義務を負わなければなりません。

そのため、夫婦が別居している場合でも、基本的に収入の少ない側は収入の多い側に対して、婚姻費用の分担金を請求することができます。

婚姻費用の分担義務(生活保持義務)について

夫婦には、同居別居にかかわらず、相手と未成熟子(被扶養者)に自身と同水準の生活をさせる義務があります。これを「生活保持義務」といい、婚姻費用の分担も生活保持義務のひとつとされています。たとえ借金があるなどして自身の生活に経済的余裕がない状況であっても、生活保持義務に基づいて、被扶養者に対して同水準の生活を保障しなければなりません。

そのため、婚姻費用の分担義務は、収入が多い側にとっても影響が大きい義務といえます。なお、よく生活保持義務と比較されるものに「生活扶助義務」がありますが、これは、自身の生活に余裕がある場合には被扶養者の生活費をサポートするという義務に留まります。

婚姻費用の内訳

婚姻費用には、具体的には次のような費用が含まれます。

  • ・生活費(食費、光熱費など)
  • ・住居費(家賃、家の修繕費など)
  • ・医療費(病院にかかった際の診察費、薬代など)
  • ・未成熟子にかかる費用(学費、習い事の費用など)
  • ・友人との交際費、娯楽費(ギャンブルへの散財などを除き、一般的に必要とされる範囲内)

婚姻費用を請求できるケースとできないケース

別居中の夫婦は、収入が少ない側が多く収入を得ている側に婚姻費用を請求できるのが原則です。しかし、別居の理由などよっては請求が却下される場合があるため、注意が必要です。以下では、婚姻費用を請求することが認められるケースと認められないケースを、それぞれご紹介します。

婚姻費用を請求できるケース

まず、相手の浮気や暴力、モラハラといった行為が原因で別居に至った場合には、婚姻費用を請求することができます。なお、「性格の不一致」による別居や、一時的に距離を置くための別居など双方に責任があるケースでも、基本的には婚姻費用を請求することができます。

また、夫婦関係が悪化してくると、相手が理由も告げず一方的に家を出ていったり、同居していても婚姻費用を支払わなくなったりすることも起こり得ます。このようなケースでは、相手が意図的に夫婦関係を破綻させているとして、婚姻費用だけでなく慰謝料も請求できる可能性があります。

婚姻費用を請求できないケース

婚姻費用を請求する側が、浮気や暴力をした責任がある場合、つまり、有責配偶者にあたる場合、原則として婚姻費用の請求は認められません。なぜならば、自ら別居の原因を作っておきながら婚姻費用まで請求することは、権利の濫用にあたり許されないと考えられるためです。

例外的に、婚姻費用を請求する側が有責配偶者でも、別居後に子供と暮らし監護している場合、子供にかかる生活費や学費など養育費に相当する部分については請求することができます。

婚姻費用の計算方法

婚姻費用の分担金額は、夫婦間で自由に決めることができます。一般的には、生活費や家計簿の記録、婚姻費用算定表を参考にして話し合います。婚姻費用算定表とは、夫婦それぞれの年収や子供の人数などをもとに婚姻費用の相場を定めた表です。

調停や審判でも用いられるため、参考にするとより客観的な話し合いができるでしょう。もし夫婦間の話し合いで決まらなければ、調停や審判を申し立て、家庭裁判所を交えた手続に移行することになります。調停や審判では、婚姻費用算定表と、さらに詳細な夫婦の個別事情をもとに、婚姻費用の分担金額を決めていきます。

婚姻費用の請求の流れ

婚姻費用を請求する場合、まずは夫婦で話し合い、金額や支払い方法を決めていきます。この際、後のトラブルを防ぐため、決まった内容は必ず書面に残しましょう。話し合いで決まらなければ、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てます。

調停では、調停委員が仲介役となり夫婦それぞれの意見を聞きながら、協議を進行していきます。もし調停でも夫婦が合意できなければ調停不成立となり、自動的に審判に移行します。審判では、調停のように夫婦の合意を目指すのではなく、調停での夫婦の意見や事情をもとに、家庭裁判所が最終的な判断を下します。

婚姻費用を請求できるのはいつからいつまで?

婚姻費用を請求した場合、まず、支払い期間の始期は「婚姻費用を請求したとき」になります。実務上では、調停または審判の申立て時とされています。したがって、別居後しばらく経ってから婚姻費用を請求しても、原則、別居開始時まで遡って支払ってもらうことはできません。

そのため、別居後に婚姻費用が支払われない等の問題があれば、すぐに調停または審判を申し立てることが重要です。また、婚姻費用の支払い期間の終期は、「離婚成立時または別居解消時」になります。

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一度決めた婚姻費用を増額・減額することは可能?

一度決めた婚姻費用でも、夫婦間の合意があれば変更することができます。また、夫婦が協議によって変更について合意できなくても、双方の経済事情に大きな変化があった場合には、調停や審判によって婚姻費用の増額・減額が認められることがあります。

経済事情の変化としては、それぞれの解雇や就職、収入の増減、子供が独立して養育費が不要になったこと等が挙げられます。ただし、婚姻費用の増額・減額は申立てによって必ず認められるものではなく、原則として、当初取り決めた時点では予測できなかった変化が生じた場合にのみ認められます。

取り決めた婚姻費用が支払われなかった場合、どうしたらいい?

決められた婚姻費用を支払おうとしない相手には、「強制執行」の手段をとるのが有効です。強制執行とは、支払い義務に従わない相手の財産を差し押さえ、強制的に回収する手続のことです。婚姻費用の強制執行では、相手の給与や預金・貯金などを直接差し押さえ、そこから婚姻費用を回収するのが一般的です。

メリットとして、他の強制執行では給与の4分の1までしか差し押さえられないのに対し、婚姻費用については給与の2分の1まで差し押さえられるという点が挙げられます。また、未払い分のみならず将来の支払い予定分までも同時に回収することができるため、決められた婚姻費用をしっかり得るために効果的な方法です。

勝手に別居した相手にも婚姻費用を支払わなければならない?

相手が勝手に別居した場合でも、自身の収入がより多ければ婚姻費用を支払うのが原則です。

ただし、相手が有責配偶者(浮気や暴力など夫婦関係を悪化させる原因を作った側)でありながら勝手に別居し、さらに婚姻費用まで請求してきたといった場合にも、道徳的な観点から、婚姻費用の支払い義務の免除や大幅な減額ができる可能性があります。

婚姻費用と養育費の違いは?

婚姻費用と混同されやすいものとして、「養育費」があります。この2つの違いは、「離婚の前後どちらで発生する費用か」ということです。「婚姻費用」は、離婚前の別居期間に、請求できる生活費をいいます。

基本的には、「婚姻費用」の中には配偶者の生活費と子供の養育費相当分が含まれます。一方で「養育費」は、離婚後にかかる子供の生活費や学費のことで、子供と別居する側が子供を監護する側に支払うものです。なお、婚姻費用には別居期間中の子供の養育費相当額も含むため、子供を連れて別居した場合には、婚姻費用は、養育費よりも高額になる傾向があります。

離婚調停と婚姻費用分担請求の関係

離婚調停と婚姻費用分担請求調停は、同時に申し立てることができます。2つの調停を同時に進めるメリットは、主に経済面にあります。別居の場合、離婚していれば受けられる公的支援(児童扶養手当や医療費免除など)が受けられないため、経済的に苦しくなりがちです。

そこで、2つの調停を同時に申し立てておけば、もし離婚調停が不成立となっても相手からの婚姻費用は確保できます。また、婚姻費用は調停や審判を申し立てた時点から請求できるため、離婚調停が不成立になってから婚姻費用分担請求調停を申し立てるよりも長期間分の請求ができます。さらに、2つの調停を同時に行えば調停の回数や期間が減るため、手間を省くこともできます。一方で、離婚についてすぐに合意しそうであれば離婚調停の成立が優先され、婚姻費用分担請求調停の申立てが無駄になったり、反対に、婚姻費用の協議が長引き離婚の成立が遅れたりするといったデメリットも起こり得ます。

婚姻費用の様々なご相談は経験豊富な弁護士へお任せください

婚姻費用の分担は、夫婦が別居する際にはきちんと取り決めることが重要です。しかし、別居前の夫婦は関係が悪化しやすく、話し合いでは決着がつかない場合も多いです。また、細かな婚姻費用のルールを決めるには専門知識も必要になるため、弁護士への依頼をおすすめします。

離婚問題の知識と経験が豊富な弁護士に依頼することで、スムーズかつ適切に協議や調停手続を進められるなど、様々な面で心強いサポートを受けることができるでしょう。婚姻費用についてご不安がある方や、これから協議を進める方は、ぜひ弁護士へご相談ください。

離婚を決意したとき、まずはどのように離婚の手続を進めていくか検討しなければなりません。離婚の方法には、主に協議離婚、離婚調停、審判離婚、離婚裁判の4つがありますが、進め方やどの方法を選ぶべきかは、ご夫婦の個別事情により異なります。

このページでは、4つの方法のうち「協議離婚」に焦点をあてて、メリットとデメリット、手続の方法などを詳しく解説します。協議離婚を検討中の方や、離婚の進め方にお悩みの方など、ぜひご覧ください。

協議離婚とは

協議離婚とは、夫婦間の話し合いのみによって離婚する方法です。夫婦間で、離婚することや未成年の子供がいる場合の親権者について争いがなければ、市区町村に離婚届を提出するだけで離婚が成立します。

裁判所の手続を利用する離婚方法(調停離婚・審判離婚・離婚裁判)と比べて手間や費用がかからないことや、離婚の法的理由や細々とした取り決め事項も問われないという手軽さから、離婚した夫婦の実に約90%が協議離婚を選んでいます。

協議離婚のメリット、デメリット

メリットについて

協議離婚は、夫婦間の合意と離婚届の提出のみで済むという手軽さが特徴です。他の離婚方法のような裁判所での手続は不要であるため、短期間で離婚を成立させることもできます。加えて、他の離婚方法とは異なり、基本的に費用は発生しないので、余計な出費もかかりません。

また、離婚の法的理由が問われないことや、慰謝料や財産分与といった取り決めを相場に関係なく柔軟に決められるという自由さもポイントです。穏便に、かつ簡潔に離婚を成立させたい場合は、協議離婚が適しているでしょう。

デメリットについて

離婚条件や離婚後のルールについて揉めていたり、相手が感情的になったりするなど話し合いがスムーズに進まない場合には、他の離婚方法よりもかえって離婚成立までに時間がかかるおそれがあります。また、慰謝料や財産分与、子供がいる場合の親権や養育費といったややこしい法的問題をすべて夫婦間で決めなければなりません。

これらの取り決めが漏れていたり、面倒でいい加減に決めてしまったりすると、適切な財産を受け取れない事態や将来のトラブルにつながるため、注意が必要です。

協議離婚の流れや進め方

離婚を切り出し合意を得る

協議離婚の成立に向けていざ離婚を切り出すときは、伝える内容をあらかじめ整理しておくことが重要です。離婚したい理由や離婚後の生活プランを明確にしておいたり、離婚原因が相手にあればその証拠を揃えておいたりすることで、話し合いが円滑に進み、相手も合意しやすくなるためです。

また、喧嘩中や仕事後で疲れている状況で切り出すとお互いが感情的になり話し合いが進まないおそれがあるため、落ち着いて話し合えるタイミングを慎重に見計らって、冷静に切り出しましょう。

離婚条件についての話し合い

相手が離婚に合意したら、離婚条件を話し合います。具体的には、慰謝料・財産分与・年金分割・子供に関する権利(親権・養育費の請求権・面会交流権)などの内容を決めていきます。なお、離婚するときに取り決めが必須なのは「親権」のみであり、その他の離婚条件については離婚後でも決めることができます。

ただし、離婚後では、相手が話し合いに応じないおそれがあり、そうすると調停等を申し立てなければならなくなるため、できる限り離婚時に決めておきましょう。また、特に金銭に関わる離婚条件は、口頭での合意のみだと離婚後のトラブルにつながりかねません。そのため、取り決めた内容は、後述する離婚協議書といった書面に記録しておくことが重要です。

話し合いをメールで済ませることは可能?

協議離婚では、最終的に夫婦間での合意があれば良いため、離婚条件の話し合いはメールのみでも可能です。相手と直接会うと感情的になり、円滑な話し合いがまったく見込めない場合や、すでに別居しており対面での話し合いが難しい場合には、メールは良い選択です。

ただし、協議内容の記録がメールのみだと、合意が十分にできているのかが不明確であったり、本人の意思である証拠としては弱くなったりする場合があります。そのため、メールのみで話し合う場合も、取り決めた内容は書面にし、署名捺印をしておくと良いでしょう。

離婚協議書の作成

離婚協議書とは、夫婦間で取り決めた内容を記載しておく書面です。離婚協議書を作成しておけば、さまざまな取り決め事項について言った言わないの争いを防ぐことができます。また、離婚条件が守られなかったときに、作成した離婚協議書を証拠に裁判を起こすこともできます。

もっとも、相手が離婚条件を守らないおそれがあるときは、離婚協議書は「強制執行認諾文言付の公正証書」にしておくと安心です。この公正証書は非常に強い拘束力を持つため、相手が条件を守らない場合には裁判を行うことなく強制執行ができます。そのため、未払いのお金を速やかに回収できます。

離婚届の提出

夫婦間で合意したら、離婚届を提出します。離婚届の提出先は、夫婦の本籍地または一方の所在地の市区町村役場です。ただし、一方の所在地の市区町村役場に提出する場合には、夫婦の戸籍謄本1通も提出が必要です。

なお、提出する人は、夫婦の一方や代理人でも良いとされています。また、協議離婚では夫婦それぞれと証人2名の署名・押印や、未成年の子供がいる場合には親権者の指定と記入が必須になります。記入に漏れがあると受理されないおそれがあるため、提出前には必ず確認しましょう。

協議離婚の証人になれる人

協議離婚では、証人2人を決め、離婚届に署名・押印してもらわなければなりません。なお、証人になってもらう人は、20歳以上であれば誰でも構いません。一般的には、夫婦それぞれの両親や兄弟、友人など身近な人に頼むケースが多いですが、極端にはまったくの他人でも問題ありません。

そのため、離婚に詳しい弁護士に相談・依頼し、証人になってもらうのも一つの方法です。証人になってくれそうな2名を協議中から探しておけば、夫婦間で離婚の合意に達したあと、すぐに離婚届を提出することができるでしょう。

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協議離婚で決めておいた方が良いこと

協議離婚では、さまざまな離婚条件を夫婦間の話し合いのみで決めていきます。そのため、第三者を挟む離婚調停・審判離婚・離婚裁判よりも柔軟に、また相場に縛られることなく自由に決めることができます。

しかしその手軽さゆえに、決めるべきことが漏れていたり、いい加減に決めたまま離婚してしまったりして、後のトラブルに発展するケースは少なくありません。そこで本項目では、協議離婚をするときに決めておくべきポイントを整理していますので、ご参考ください。

財産分与

財産分与とは、結婚後に夫婦で共に築いてきた財産を、夫婦で分け合い清算することです。原則、結婚生活の中で築いた財産は名義人にかかわらず財産分与の対象になり、例えば、住宅・自動車・生命保険などが挙げられます。

分割する割合は、財産を形成したそれぞれの貢献度によって決めるとされていますが、実際の貢献度を明らかにすることは難しいため、実務上は半分ずつ分けることが多くなっています。この点、協議離婚であれば、夫婦の話し合いでより自由に割合を調整することができます。

子供がいる場合

親権

親権とは、未成年の子供の監護や養育をしたり、財産を管理する権利です。また、親権を持つ者を親権者といいます。親は夫婦であればどちらも親権者になりますが、離婚するときは、必ずどちらか一方を親権者に指定しなければなりません。

協議離婚では、どちらが親権者となるかを話し合って決め、離婚届に記入する必要があります。親権はお互いが譲らず揉めやすい傾向があり、夫婦間の話し合いのみでは決まらないケースも多いです。その場合には、調停や審判・裁判に移り、第三者を交えて争っていくことになります。

養育費

父母には、離婚後も子供にかかる監護費用(生活費や学費など)を分担していく義務があります。そのため、子供と別居し監護者にはならない側(非監護者)であっても、子供と一緒に暮らす監護者側に対して子供の監護費用を支払う必要があり、この費用を「養育費」といいます。

協議離婚では、主に支払金額支払期間支払日などを個別具体的に決めておく必要があります。特に、子供が何歳になるまで養育費を負担するのかについては、将来揉めやすい事項ですので、「令和〇年〇月まで養育費を負担する」「大学卒業時まで養育費を負担する」など、具体的な支払期間を記載するのが望ましいでしょう。

なお、離婚後に父母の経済状況や子供にかかる費用が大きく変わることもあるでしょう。その場合、父母の話し合い等によって、離婚前に取り決めた養育費の支払いルールを変更できる場合があります。

面会交流

面会交流とは、監護者にならなかった親が、離れて暮らす子供と交流することです。交流の方法は、直接会うことはもちろん、手紙のやり取りなども含まれます。面会交流は、子供が両親からの愛情を受け続けて健全に成長していくために必要とされています。

そのため、非監護者または子供が面会交流を希望すれば、原則、監護者であっても拒否することはできません。協議離婚するときは、離婚後にトラブルにならないよう、面会交流の回数(月に何回かなど)・時間・場所以外にも、どの程度の交流まで認めるのかを夫婦で細かく決めておくことが重要です。

離婚慰謝料は請求できるのか

離婚で慰謝料が問題になるケースは多いですが、必ずしも請求できるとは限らないため注意が必要です。慰謝料とは、なんらかの精神的苦痛を受けた場合に請求できる賠償金です。そのため、離婚においては、相手の不法行為(浮気、暴力など)によって精神的ショックを受け、その結果離婚に至った場合には、慰謝料が請求できます。

なお、協議離婚で多くみられる「性格の不一致」による離婚の場合、基本的には、離婚原因は双方にあると考えられており、慰謝料の請求はできないと考えておくと良いでしょう。

協議離婚にかかる期間

協議離婚は、平均的には数ヶ月で成立することが多くなっています。ただし、お互いがすぐに離婚に合意し争いもなければ即日にでも成立させることができますし、反対に、親権や慰謝料など揉め事が多ければ数年かかる場合もあるため、夫婦の事情により期間はさまざまです。

ただ、すぐにでも離婚したいとお考えであれば、協議離婚を急いでしまうこともあるでしょう。しかし、離婚条件をきちんと決めないまま離婚届を提出してしまうと、離婚後のトラブルを招きかねません。短期間で離婚することも可能な協議離婚であっても、焦らず、じっくりと話し合うことが重要です。

協議離婚で成立しない場合

ここまでの説明のとおり、協議離婚は、夫婦での話し合いと合意のみによって成立します。そのため、一方が離婚したくない場合や、どちらも親権を譲らない場合、また慰謝料や財産分与など金銭面での折り合いがつかない場合には、いつまで経っても協議離婚は成立しません。

以下では、そのように協議離婚が難航してしまった場合に有効な対処方法をご紹介します。

別居する

別居によって、離婚についてじっくり考える期間ができるため、改めて冷静に話し合える可能性が高くなります。また、別居してみることで、離婚を拒否していた側も離婚に前向きになる場合もあります。そのため、お互いが感情的になり話し合いが進まないときや、一方が離婚を拒否しているときには、一度別居してみることが有効です。

また、別居が一定期間続き、婚姻関係は破綻していると認められれば、法的に離婚を成立させることができます。

離婚調停へ

離婚の話し合いがどうしても決着しない場合は、協議離婚を断念し、離婚調停に移ることもご検討ください。離婚調停も基本的には夫婦の合意によって離婚が成立しますが、協議離婚とは異なり、調停委員会が話し合いを仲介してくれます。

そのため、相手を説得してくれたり、話し合いを円滑に進めてくれたりする可能性があります。また、決めるべき離婚条件もしっかり整理されるため、離婚後のトラブルも回避できるでしょう。ただし、調停は数回にわたって行われることが多いため、協議離婚に比べて、離婚の成立までに時間がかかりやすい傾向があります。

夫婦だけでのやり取りとなる協議離婚は難航する場合が多くあります。不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう

解説してきたとおり、協議離婚では、離婚にあたってのさまざまな条件を夫婦間の話し合いのみで決めていかなくてはなりません。そのため、どちらかが離婚に応じなかったり、話し合いに折り合いがつかなかったりするなど、協議が難航するケースも多いのが現状です。

また、財産分与や慰謝料といった金銭問題や、面会交流の細かなルールを夫婦間で漏れなく決めていくのは難しいでしょう。そんなとき、弁護士に依頼し介入してもらうことで、協議離婚をスムーズに、かつ適切に進められるようサポートが受けられます。また、離婚調停や離婚裁判となった場合には、特に法的な知識や技術が必要となるため、弁護士の手を借りることをお勧めします。協議離婚がうまくいかず悩まれている方や、これから離婚を検討している方は、ぜひご相談ください。

養育費について取り決めたにもかかわらず、きちんと支払われないケースは少なくありません。

離婚後にひとりで子供を育てる方にとって、養育費が支払われないのは相当な痛手となってしまうため、早めに相手に請求する必要があります。とはいえ、離婚した以上、「相手と連絡がとりにくい」「自身から催促してもなかなか支払いに応じてくれない」といった事情から、どのように養育費を回収すれば良いか悩まれる方も多いでしょう。本記事で、未払いの養育費が発生している場合の対処法を確認していきましょう。

調停・審判・訴訟で決められた養育費が不払いになった場合

調停・審判・訴訟など、裁判所の手続きで取り決めた養育費が支払われない場合、以下のような対処法が挙げられます。順番に確認していきましょう。

対処法1.履行勧告

「履行勧告」は、家庭裁判所の調停・審判・訴訟などで取り決めた義務を相手が守らないときに、裁判所に申し立てることで、裁判所から相手に「義務を履行しなさい」と勧告してくれる制度です。裁判所からの勧告によって、相手がプレッシャーを感じ自発的に養育費を支払ってくる可能性があります。

履行勧告の申立て方法は、調停などを行った家庭裁判所の窓口や電話で申請をし、必要書類(申立書・調停証書などのコピー・養育費が未払いだと証明できる通帳のコピーなど)を提出するだけです。申し立てる際に費用もかからないため、手軽に利用できるのがメリットです。

ただし、履行勧告は相手に勧告するだけであり、支払いの強制まではできません。また、履行勧告を利用できるのは、養育費の取り決めを調停など家庭裁判所の手続きで行った場合のみです。夫婦の協定証書や公正証書しかない場合は利用できませんので、ご注意ください。

対処法2.履行命令

履行勧告をしても相手が養育費を支払わない場合の手段として、「履行命令」があります。履行命令とは、家庭裁判所の調停・審判・訴訟などで取り決めた金銭的な義務が守られない場合に、裁判所に申し立てることで、裁判所が、一定の期間内に義務を履行するよう相手に命令してくれる制度です。

履行命令は、履行勧告よりも厳しい制度で、正当な理由(仕事を辞めて収入がないといった事情)なく命令に従わない相手には10万円以下の過料が科されます。そのため、相手が自ら養育費を支払ってくる可能性が高くなるでしょう。ただし、履行命令も、相手に支払いを強制させることまではできません。なお、履行命令の申立て先は、調停などを行った家庭裁判所ですが、申し立てる際に、手数料として収入印紙500円分と郵便切手(金額は裁判所によって異なります)の予納が必要になります。

対処法3.強制執行

履行勧告や履行命令をしても相手が養育費を支払わない場合、最終手段として「強制執行」を行いましょう。強制執行とは、決められた支払い義務を守らない相手の財産(預金,給与など)を差し押さえ、強制的にお金を回収する制度です。強制執行の特徴は、養育費を取り決めるのに家庭裁判所(調停・審判・訴訟)の手続きを経て取り決めた場合だけでなく、夫婦で話し合った内容を「強制執行認諾文言付き公正証書」にしていれば、差し押さえができるということです。

また、強制執行では、未払いの養育費だけでなく、将来支払われる予定の養育費まで同時に差し押さえることができるため、履行勧告や履行命令よりも、速やかかつ実効的に養育費の回収が可能になります。

民事執行法改正で未払い養育費に対応しやすくなりました

強制執行で相手の給与や預貯金を差し押さえるには、申立を行う側で相手の勤務先や銀行口座を把握しておく必要があります。しかし、かつてこれらの情報は相手に直接聞くなどして自身で調べるほかなく、相手が教えてくれないと、せっかく強制執行をする条件が揃っていても差し押さえができないという問題がありました。

そこで、2020年4月の民事執行法改正によって導入されたのが「第三者からの情報取得手続き」という制度です。これにより、一定の条件はありますが、債権者(お金を支払ってもらう側)が裁判所などに申し立てることで、裁判所が、市区町村や年金事務所に照会して相手の勤務先を調べられるようになりました。

また、金融機関の本店に対し、相手の口座の支店名・口座番号・預貯金額などを開示させることも可能となりました。そのため、相手の正確な情報がすぐに把握できたり、相手が「財産がない」と言い逃れることを防止できたりと、差し押さえしやすくなることが期待されています。

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口約束で決めた養育費が突然支払われなくなった場合

養育費の取り決めが口約束だけだった場合、突然支払われなくなったからといって、強制的に養育費を回収することはできません。そのため、以下の方法を順番に踏み、適正額の養育費を支払ってもらうのが良いでしょう。

まず、相手に連絡を取る

まずは、ご自身から相手に連絡し、養育費を請求しましょう。連絡手段は、電話・メール・手紙など何でも構いません。この際、支払いが滞っている養育費の金額や支払い期限、支払いがないと困る事情などを具体的に伝えると効果的です。

また、単に養育費を振り込み忘れていた場合などは、この方法によって支払ってもらえる可能性があります。ただし、いきなり「支払わないと法的手続きをとる」と脅したりすると、お互いが感情的になり争いとなりやすいため、注意が必要です。

内容証明郵便を出すのも1つの手

内容証明郵便とは、いつ・誰が・誰に・どんな手紙を出したのかを、郵便局が証明してくれる制度です。送った内容や日時が公的に記録されるため、証拠として有効なことや、相手に心理的圧力を与えられる可能性があることなどがメリットです。

内容証明郵便を出すには、相手に送る文書とその謄本2通(差出人と郵便局の保管用)・差出人と相手の住所が書かれた封筒・必要な郵便料金(重さや文書の枚数によって異なります)を郵便局の窓口に提出します。なお、弁護士に依頼し、内容証明郵便を作成してもらうのもひとつの方法です。弁護士に依頼すると、差出人が弁護士になり、相手に事の重大さがより伝わりやすいでしょう。

交渉・調停で養育費を請求する

どうしても相手が養育費を支払わない場合、弁護士に依頼して、相手に請求するのが得策でしょう。弁護士から相手に対し、適切な養育費を支払うよう直接交渉する場合もあり得ますが、そもそも交渉で養育費を支払うケースが少なく,実効性も弱いため、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立て、「養育費を払うのかどうか」「養育費の金額・支払い期間」などを、調停委員を挟んで決めていくのが一般的です。

この際、口約束で決めた養育費の内容を証明するのは困難なため、金額や支払い期間などは、父母それぞれの年収・子供の年齢・子供の人数などを総合的に考慮して決めることになります。

養育費の未払い分はどこまで遡って請求できる?

養育費の請求権には消滅時効があるため、注意が必要です。消滅時効は、養育費についてどのように取り決めたかによって異なります。父母で取り決め、その内容を書面に残した場合は支払い期限から5年、調停・審判・訴訟など家庭裁判所の手続きで決まった場合は支払い期限から10年で消滅時効となり、遡って請求できるのは、まだ消滅時効が成立していない分のみとなります。

なお、現在の子供の年齢が、養育費が支払われる年齢の上限を超えている場合でも、消滅時効が成立していなければ、未払いの養育費を遡って請求することができます。ただし、養育費について取り決めていなかったり、口約束だけだったりした場合は、養育費が請求できるのは「請求する意思表示をした日(請求する書面を送った日や、養育費請求調停を申し立てた日など)」からとなるのが一般的なため、過去の未払い分を請求することは難しいでしょう。

養育費未払いの理由が環境の変化によるものだった場合

どちらかが再婚して子供と養子縁組をした・どちらかの収入が大幅に増減したなど、離婚時には予測できなかった「事情の変更」が発生しても、それだけで養育費の支払い義務がなくなることはないため、未払いの養育費は請求することができます。

ただし、環境の変化を理由に相手が「養育費減額請求調停」を申し立てた場合、たとえ離婚時に書面を取り交わしていても、減額が認められる可能性があります。実務上、減額されるのは「相手が減額の意思表示をした日(減額を求める書面を郵送した日・養育費減額請求調停を申し立てた日など)」からとされているため、それまで未払いだった養育費は全額請求できるのが一般的ですが、場合によっては「事情の変更が発生した時点」まで遡って減額されるおそれがあるため、相手から養育費の減額を主張された場合、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

未払い養育費にお困りなら弁護士にお任せください

養育費がきちんと支払われないと、子供の成長や生活に支障が出てしまうため、大きな不安を抱えられるでしょう。そんな中、離婚後に相手と連絡・交渉をしたり、慣れない裁判所への手続きをしたりすることは、精神的にも大きな負担になります。

養育費問題の知識と経験が豊富な弁護士に依頼することで、相手との交渉を任せられるだけでなく、もし調停に発展した場合にも、効果的な主張をしてもらえるなど、ご自身で進めるよりもさまざまなメリットがあります。未払いの養育費で困っている方、相手との交渉の仕方に悩まれている方などは、おひとりで悩まず、まずは弁護士にご相談ください。

離婚時に子供の親権を譲ってしまったが、やはり取り戻したいと考えることは珍しくありません。

とはいえ、いざ離婚後に親権を変更したいと思ったときはどうすれば良いのかなど、疑問も多いでしょう。実際、離婚後の親権変更は、離婚の手続きのようにスムーズには進まないため、入念な準備と対策が必要になります。そこで、本記事では、離婚後に親権を変更するための条件・方法・ポイントなどを詳しく解説しますので、参考になさってください。

離婚後に親権者を変更することはできる?

離婚後でも、親権の変更は可能です。しかし、親権は子供の生活や精神に大きな影響を与えるため、父母の話し合いだけで簡単に変更することはできません。

原則、家庭裁判所に「親権者変更調停又は審判」を申し立て、親権の変更を認めてもらう必要があります。とはいえ、裁判所は、親権の変更に消極的な傾向があるため、それ相応の理由と準備を揃えないと、認めてもらうのは難しいでしょう。

親権変更が可能な場合とは

親権の変更が認められるのは、「子供の健康や幸せを守るために必要な場合」が強く認められる場合のみです。例えば、以下のようなケースが挙げられます。

  • ・親権者が子供に虐待をしている
  • ・親権者が育児放棄をしている(ギャンブルに明け暮れて世話をしない、食事を与えないなど)
  • ・親権者が子供の世話を続けられなくなった(長期入院や海外転勤がきまった、重い精神病を患ったなど)
  • ・子供に判断能力があり(約15歳以上)、かつ親権者の変更を強く望んでいる

親権を変更する方法

離婚時は夫婦の合意だけで親権を決定できますが、離婚後に親権を変更したい場合、たとえ父母で合意していても、一定の法的手続をとる必要があります。具体的には、まず家庭裁判所に「親権者変更調停又は審判」を申し立てます。

そして、調停(または審判)において、裁判所が親権の変更は妥当だと判断した場合のみ、親権を変更することができます。では、親権者変更調停とはどのようなものか、以下でご説明します。

親権者変更調停とは

親権者変更調停とは、父母が調停委員会(裁判所)を挟み、親権の変更について話し合う場のことです。具体的には、調停委員が父母それぞれから意見を聞き、双方の合意を図ったり、親権の変更を認めるか検討したりします。

また、調査官が子供の意向を聞いたり、家庭訪問や学校訪問によって子供の生活環境を確認したりして、親権の変更が必要か慎重に判断していきます。

親権者変更調停の手続き方法

ここで、親権者変更調停の手続きについてご説明します。調停を申し立てる際に必要な書類や費用もあるため、あらかじめ確認しておくことが重要です。なお、親権者変更調停は、子供の両親だけでなく、子供の祖父母・叔父叔母といった親族であれば、誰でも申し立てることができます。

申立てに必要な書類

親権者変更調停を申し立てる際に必要な書類は、以下のとおりです。

  • ①申立書の原本・写し各1通(写しは相手方に送付されます)
  • ②当事者目録1通
  • ③連絡先等の届出書1通
  • ④事情説明書1通
  • ⑤進行に関する照会回答書1通
  • ⑥非開示の希望に関する申出書1通(相手方に開示されたくない情報がある場合のみ)
  • ⑦申立人・相手方・未成年の子供の戸籍謄本(全部事項証明書)各1通

※①~⑥は、裁判所のホームページから入手できます。⑦は、それぞれの本籍地である市区町村役場に申請します。
※⑦について、原則、同じ戸籍謄本は1通で足ります。例えば、相手方と未成年の子供が同じ戸籍に入っている場合、2通申請する必要はありません。

申立てに必要な費用

親権者変更調停を申し立てる際は、書類のほかにも以下の費用がかかります。

  • ①子供1人につき、収入印紙1200円分
  • ②連絡用の郵便切手(約1000円前後)

※②は、裁判所によって金額が異なりますので、管轄の裁判所のホームページまたはお電話でご確認ください。

書類を提出したら調停期日の案内が届くのを待つ

必要な書類が揃ったら、調停を行う裁判所に提出します。提出先は、「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」または「当事者(父母)で合意した家庭裁判所」のいずれかです。

ただし、当事者で合意した家庭裁判所を希望する場合、併せて「管轄合意書」の提出が必要な場合があります。提出した書類が受理されたら、約2週間で、申立人と相手方に「第1回調停期日」の案内が届きます。

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親権者変更調停の流れ

親権者変更調停の流れは、まず、裁判所が決定した「第1回調停期日」の日時に裁判所に出向き、調停を行います。1回目の調停で合意できなかった場合、その場で「第2回調停期日」の日程調整が行われます。

2回目の調停でも終着しなければ、第3回、第4回・・・と調停が続いていきます。最終的に、相手方と合意でき、かつ裁判所に親権の変更が認められれば、調停成立で終了します。一方、いつまでも相手と合意できなかったり、調停委員会が、親権の変更は不要と判断したりした場合、調停不成立で終了します。

調停成立後の手続き

調停が成立すると、合意内容が書かれた「調停調書」が裁判所によって作成されます。新たに親権者となった方は、この調停調書謄本(または省略謄本)を、調停成立日を含めて10日以内に、自身の本籍地または所在地の市区町村役場に届け出ることが義務付けられています。なお、併せて「父母それぞれの戸籍謄本」の提出が必要な場合があるため、事前に役所に確認し、早めに取り寄せておきましょう。

調停が不成立になった場合

相手方と合意できなかったり、裁判所に親権の変更が認められなかったりして調停が不成立に終わった場合、自動的に審判に移ります。審判では、調査官が作成した「調停の調査報告書」や子供の意向をもとにさらに審理したうえで、親権を変更するかどうか、裁判所が判断を下します。

審判でも親権の変更が認められなかった場合は、子供との面会交流権の獲得や、面会交流の条件を改善してもらうことも視野に入れ、相手方と交渉すると良いでしょう。

親権者変更調停の申立て~成立にかかる期間

親権者変更調停にかかる期間は、親権変更について父母が合意したかで異なります。父母が合意し、裁判所も親権変更が妥当だと認めた場合、調停の開始から約1ヶ月で調停が成立します。一方、父母が親権変更について対立している場合は、調停期日を何度も設けたり、調査官が子供の意向や子供の生活環境を細かく調査したりする必要があるため、長期化しやすくなります。

その場合、調停が成立するまでには半年~約1年かかるのが一般的です。

親権者変更にあたって裁判所が重視していること

裁判所が重視するポイントは、「親権を変更した方が、子供にメリットのある度合いが高いかどうか」です。実際には、子供の年齢・精神状態・生活環境といった「子供側の事情」や、現在の養育状況・父母の経済状況・子供への愛情・親権変更の動機といった「親側の事情」を総合的に考慮し、判断していきます。

そのため、現状で子供の交友関係が充実していたり、今の養育環境に問題がなかったりすれば、わざわざ親権を変更する必要はないと判断される可能性が高いでしょう。なお、子供が15歳以上の場合、裁判所は子供の意向を聞くことが義務付けられており、その意思を尊重する傾向があります。また、子供が乳幼児などの場合、育児に不可欠とされる母親を親権者とすることが多いです。

親権者の再婚相手と子供が養子縁組したあとでも親権変更できる?

親権者の再婚相手と子供が養子縁組をしてしまうと、基本的に、非親権者から親権変更を申し立てることができなくなります。これは、法律上、親権の変更が認められるのは「単独親権」の場合のみだと考えられるためです。養子縁組によって、親権者は再婚相手と「共同親権」を持つため、単独親権という条件を満たさなくなります。

離婚後に親権者が死亡した場合、親権はどうなる?

離婚後に親権者が死亡した場合、自動的にもう一方の親が親権者になることはありません。原則、家庭裁判所によって未成年後見人が選任され、亡くなった親権者の代わりに親権を行使することになります。

ただし、もう一方の親が親権者変更の審判を申し立て、新たな親権者になることを主張してくることも考えられます。その場合、裁判所は、子供の年齢・生活環境・財産・意思などを総合的に考慮したうえで、誰が親権を持つのが子供にとって最善かを判断していきます。

親権者を祖父母に変更したい場合は?

祖父母が親権者になる方法は、孫と養子縁組をすることです。養子縁組をすると、祖父母は孫の養親となり、親権を持つことができます。また、祖父母と孫は直系卑属にあたるため、原則として裁判所の許可なく養子縁組をすることが可能です。

ただし、孫が未成年の場合、祖父母の両方が養子縁組をしなければならないという注意点があります。さらに、孫が15歳未満の場合、養子縁組をするには現親権者の承諾が必要である点にも注意が必要です。

親権者の変更を希望するなら弁護士に依頼したほうがスムーズにすすみます。

子供のために親権を取り戻したいと思われるのは、ごく自然なことです。とはいえ、「自身の状況で親権が変更できるのか」「親権を変更するには、どう対策を練れば良いか」など、さまざまなご不安があるでしょう。

そこで、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。離婚や親権に詳しい弁護士であれば、豊富な知識と経験から、親権の変更をより有利に進めるためのアドバイスをすることができます。また、親権者変更調停で効果的な主張をしたり、調停委員を味方につけたりするためのノウハウを熟知しているなど、さまざまなメリットがあります。「子供のために親権を変更したい・・・」とお悩みの方は、諦めずにまずは弁護士へご相談ください。

離婚する際は、「財産分与」について決める必要があります。財産というからには「お金」を分け合うイメージが強いかもしれませんが、実際には、お金以外にもさまざま検討しなければなりません。

また、ローンや税金など複雑な問題も絡むため、ある程度の知識をもって決めていくと良いでしょう。本記事では、離婚時の財産分与の概要や知っておくべきこと、注意点まで詳しく解説します。これから財産分与を進める方や、財産分与でお困りの方など、ぜひご一読ください。

財産分与とは

財産分与とは、夫婦が結婚後に協力して築いた財産を、離婚にあたり分け合うことです。

基本的に、結婚している間に得た財産はすべて夫婦共有の財産となり、財産分与の対象になります。よって、夫の収入だけで購入したものや、夫・妻どちらかが名義人のものであっても、離婚時には夫婦で分け合うことになります。なお、財産の分け方は、夫婦それぞれが財産形成・維持のためにどれだけ貢献したかで決まるため、たとえ浮気やDVといった離婚原因を作った側(有責配偶者)であっても、財産分与を請求することが認められています。

財産分与の種類

財産分与には3つの種類があり、それぞれ目的が異なります。これは、離婚時に夫婦間でお金の支払いや賠償が生じた場合、それらも財産分与に含み、全体の金額を調整することがあるためです。3つの財産分与について、以下でご説明します。

清算的財産分与

夫婦が結婚生活の中で築いたあらゆる財産を、離婚にあたって分け合うことを「清算的財産分与」といい、財産分与の最も大きな目的になります。財産を築くまでのそれぞれの貢献度(お金を稼ぐ、家事を担うなど)に応じて公平に分け合うという特徴があるため、浮気やDVといった離婚原因を作った側からでも請求することができます。

なお、離婚前に別居した場合、別居後に増えた財産はもはや夫婦で協力して築いたとはいえないため、別居開始前までに築いた財産が財産分与の対象になります。

扶養的財産分与

離婚後に夫婦一方の生活が苦しくなる場合、経済的に自立できるまで、もう一方が離婚後の生活費を援助する(扶養する)ことがあります。これを「扶養的財産分与」といいます。例えば、「離婚前まで専業主婦だった」「高齢・病気である」などから、離婚後すぐに仕事に就くのが難しい場合に行われます。

なお、費用・期間・支払い方法などは、まずは夫婦で話し合って決めていくため法的なルールはありませんが、一般的には離婚後半年~3年程度の期間で認められることが多いです。支払い方法は、基本的に一括払いですが、困難な場合には「毎月〇円」といった低額を支払うと定めることもあります。ただし、扶養的財産分与は義務ではないため、請求したからといって必ず受け取れるものではない点に注意が必要です。

慰謝料的財産分与

夫婦の一方が、浮気やDVなどの離婚原因を作った有責配偶者の場合、もう一方は、精神的苦痛の補償として「慰謝料」を請求することができます。この慰謝料を財産分与の中で支払うことを「慰謝料的財産分与」といい、金銭以外の財産を渡して慰謝料の支払いに代えることができるという特徴があります。

例えば、高額な慰謝料を支払う代わりに、世間的な価値は低いが夫婦にとって思い出のある品物を譲るなど、柔軟に解決できるのがメリットです。ただし、慰謝料的財産分与によって支払われた金額や財産が不十分の場合、不足分は慰謝料として追加で請求することができます。

財産分与の対象となる資産

離婚時に財産分与されるのは、夫婦が婚姻中に協力して築いた「共有財産」です。実質的に夫婦が協力して築き、維持してきたといえるものは、名義人がどうであれ、すべて共有財産になります。ただし、婚姻中でも、別居期間に得た財産については、夫婦で協力して築いたとはいえないため、基本的に財産分与の対象になりません。では、具体的に何が共有財産にあたるのか、以下で紹介していきます。

預貯金

婚姻中に貯めた預貯金は、夫婦の収入から貯められたものであれば、共有財産になります。注意点は、共同名義でも、それぞれの名義でも、すべて財産分与されるという点です。対して、結婚前に一人で貯めた預貯金や、結婚後にどちらかが相続したお金などは、共有財産にはなりません。

しかし、結婚前と婚姻中の預貯金の線引きがわからなくなり、どこまでが共有財産なのか揉めるケースは多いです。そのため、結婚した時期の預貯金残高を、あらかじめ金融機関に確認しておくことをおすすめします。

家やマンションなどの不動産

家やマンションなどの不動産を財産分与する方法は、「不動産を売却して、売却金を夫婦で分け合う」「どちらかが、相手に評価額(不動産の価値)の半額の代償金または評価額相当の財産を渡して、住み続ける」などがあります。

ただし、売却しても住宅ローンが完済できず、債務というマイナスの財産だけが残る場合、原則として財産分与の対象にはなりません。つまり、財産分与されるのは、基本的に売却によってプラスの財産が残るアンダーローン(評価額が残ローンよりも高額)の場合のみであり、売却してもマイナスの財産だけが残るオーバーローン(評価額が残ローンよりも低額)の場合、財産分与の対象にならない点に注意が必要です。

自動車

自動車を財産分与する方法は、不動産と同じく「売却して売却金を分け合う」「どちらかが、相手に評価額の半額の代償金または評価額相当の財産を渡し、乗り続ける」などがあります。なお、当事者が所有権を有しない場合、売却の際に、まずは所有権を持っているローン会社やディーラーに連絡をし、所有権解除をしてから売却する必要があります。

子供の財産分与について(学資保険、貯金)

子供名義の貯金や学資保険も、夫婦の収入や資産によって積み立てられたものは財産分与されます。ただし、子供に贈与したもの・子供が自由に使えるよう渡したもの(お年玉など)などは、もはや夫婦が所有する財産とはいえないため、財産分与の対象から外れるのが一般的です。

へそくり

へそくりは、お金の出所が夫婦の共有財産の場合、財産分与の対象になります。例えば、専業主婦が夫の収入を管理しつつ余りをへそくりとして貯めていた場合や、共働きでも、夫婦の収入を一方がやり繰りし、余りをへそくりとして貯めていた場合です。

婚姻後に取得した株式は、夫婦の収入や協力によって取得した場合、すべて共有財産になります。一方、どちらかが結婚前に貯めたお金で購入した株式や、婚姻後にどちらかが相続した株式は、財産分与の対象にはなりません。

財産分与の対象にならない資産

一方が結婚前から所有する財産(結婚前の預貯金)や、夫婦の協力とは関係なく得た財産(相続・贈与されたもの)は、「特有財産」として、財産分与されないのが原則です。しかし、結婚前の預貯金については、婚姻中の預貯金との線引きがわからないと、すべて共有財産として財産分与されてしまうおそれがあるため、注意しましょう。

また、特有財産でも、「夫婦の協力によりその価値が高まったり、利益が生まれたりした場合」は、例外的に財産分与の対象になることがあります。例えば、夫が結婚前から所有していた建物を店舗に改装し、妻が売上や経営に貢献したケースなどが挙げられます。

マイナスの資産(住宅ローン、借金)も財産分与の対象になる場合がある

借金などのマイナスの資産は、夫婦の共同生活のために生じたものであれば、財産分与の際に考慮されます。代表的な例は、住宅ローン・自動車ローン・生活費や子供の教育費の借り入れなどです。通常、プラスの資産からマイナスの資産を差し引いた金額を財産分与することになります。

ただし、ギャンブル代や高級な宝飾品の購入費など、どちらかが個人的な都合で作った借金は、財産分与の際に考慮されないことが一般的です。なお、マイナスの資産がプラスの資産総額を上回っている債務超過の場合、実務上、分け合える財産がないとして財産分与は行われません。よって、債務超過の場合、婚姻中に積み立てた預貯金や借金は、離婚後はそれぞれの名義人が持つことになります。

熟年離婚をするときの財産分与

熟年離婚の場合、離婚後に家計の収入が大きく減ったり、経験や年齢から仕事が見つかりにくかったりするおそれもあります。そのため、財産分与でどれほどの財産・お金が得られるか離婚前に知り、離婚後の生活に備えることが重要です。以下では、熟年離婚ならではの財産についてご説明しますので、ご確認ください。

退職金

退職金も給与のため、基本的に財産分与されます。ただし、退職金が支払われる時期によっては、財産分与されない可能性があります。また、財産分与されるのは、退職金のうち、婚姻期間に相当する部分のみとなります。

退職金が既に支払われている場合

既に支払われている退職金のうち、婚姻期間に相当する部分が財産分与されます。婚姻期間に相当する部分は、婚姻期間・勤続年数などをもとに算出していきます。ただし、退職金をすべて使ってしまった場合、分け合う退職金がないため、財産分与の対象になりません。

また、退職金をほかの貯金と同じ口座に入れており、退職金自体がいくら残っているか不明な場合、口座の残高すべてを預貯金とみなして財産分与する場合があります。

退職金がまだ支払われていない場合

退職金が離婚時に支払われていない場合でも、将来的に支払われるのが確実であれば、財産分与の対象にすることができます。支払いの確実性は、就業規則における退職金の説明・会社の経営状況・勤続年数などから判断されます。

そのため、もう少しで定年退職であったり、長年同じ会社に勤めていたりすれば、未払いの退職金でも、離婚時に財産分与される可能性が高いでしょう。なお、この場合の財産分与について、計算方法のルールはなく実務上でもさまざまです。ご自身の状況でどれほど財産分与されるのかご不安な場合、弁護士に相談されることをおすすめします。

年金

財産分与と似たものに、「年金分割」という制度があります。年金分割とは、夫婦のうち収入が多い側が少ない側に対して、婚姻中に支払った年金保険料納付記録(年金額の算定の基になる報酬額)を分け与え、それぞれが受け取る年金額の差を減らすための制度です。

注意点は、受け取れる年金額そのものが分割されるのではなく、年金額を算定するための報酬額が分割されるということです。また、分割対象は「厚生年金と共済年金の保険料納付記録のみ」であり、国民年金や企業独自の年金は対象外である点も注意が必要です。

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離婚したときの財産分与の割合

離婚時の財産分与の割合は、夫婦それぞれで半分ずつとなるが原則です。なぜなら、お金や財産を積み立てることができたのは、働く側と家事をする側、両方の協力があってこそだからです。そのため、基本的に、多く稼いだからといって離婚時に多くの財産を受け取れるわけではありません。

ただし、夫婦の個別事情によっては、財産分与の割合が変わる場合があります。例えば、一方が専門的な仕事(医師、弁護士、スポーツ選手など)をして高額な収入を得ていた場合、その能力を考慮して、相手よりも多くの財産を受け取るケースなどが挙げられます。

専業主婦、専業主夫

専業主婦(主夫)であっても、財産分与の割合は半分になるのが原則です。もう一方が働きお金を稼ぐことができたのは、専業主婦(主夫)が家事や家計の管理をしていたからこそであり、夫婦それぞれの貢献度は等しいと考えられているためです。

共働き

共働きの夫婦も、財産分与の割合は、原則半分ずつです。ただし、夫婦生活で一方がより多くの役割を担っている場合、ただ折半するのは不公平として、相手よりも多くの財産を得られる可能性があります。

例えば、それぞれの収入や勤務時間は同程度なのに、一方がすべての家事を行っていたケースや、一方が専門的な仕事をしており、家計への貢献度が明らかに大きいケースなどが挙げられます。

財産分与をする前にやっておくこと

離婚時の財産分与でより多くの財産を手に入れるためには、まず、夫婦の共有財産をすべて洗い出すことが重要です。ここで漏れがあると、受け取るべき財産を見落とし、損をしてしまうおそれがあります。しかし、そもそもどこまで洗い出す必要があるのか、相手が密かに蓄えた財産はどうやって明らかにするべきかなど、ご不安もあるでしょう。

そこで、財産分与をする際、事前に確認しておくべきポイントを以下でご紹介します。

隠し資産(へそくり)がないか調べる

夫婦の収入といった共有財産から貯められたへそくりは、財産分与することができます。とはいえ、へそくりは現金で家の中に隠すだけでなく、隠し口座やネットバンクに貯める手口も多いため、見つけ出すのは容易ではありません。

財産分与調停において調査嘱託の申し立てを行うことで口座残高を明らかにできる場合もあります。相手がへそくりを隠しているという疑念がある場合、まずは弁護士に相談されると良いでしょう。また、離婚時に財産分与は終了したものの、その後隠されていたへそくりの存在が判明した場合、そのへそくりについては、改めて財産分与をすることができます。

相手の預貯金を知っておく

夫婦それぞれが自身の口座に貯めた預貯金も、財産分与の対象です。その際は、お互いに通帳などを見せ合い、2人の合計金額を分け合うのが一般的です。しかし、相手がほかの口座に預貯金を隠している可能性もあるため、相手の預貯金額が明らかに少なかったり、お金を不自然に引き出した履歴があったりする際は、要注意です。

この場合も、財産分与調停において調査嘱託の申し立てを行うことで相手の預貯金額や銀行の取引履歴を確認できることもあります。弁護士に依頼することで、金融機関に照会をかけて相手の正確な預貯金額を調べられる可能性があります。とはいえ、事前に相手の口座情報を把握しておく必要があるなど注意点も多いため、まずは早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

財産分与の方法と手続き

離婚時に財産分与を行う流れは、まずは夫婦間で、何をどのように分け合うか協議します。協議で解決できない場合、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立て、調停委員会を間に挟んで協議していきます。それでもお互いが合意できなければ訴訟を起こし、「離婚裁判」を行い、裁判所に判断を委ねることになります。

なお、とにかく早く離婚したいとお考えの場合、離婚届の提出だけは済ませ、財産分与については離婚後ゆっくり取り決めたいと思われるかもしれません。この方法も可能ではありますが、離婚後には相手が協議に応じてくれなかったり、原則として離婚成立後2年以内でなければ財産分与の請求ができなかったりするなどリスクがあるため、できるだけ離婚時に解決しておきましょう。

財産分与したときにかかる税金がある

財産分与では、財産を受け取る側・受け渡す側それぞれに税金がかかる可能性があります。また、分け合う財産の種類によってもかかる税金が変わってきます。実際にどんな税金がかかるのか、財産を受け取る側・受け渡す側ごとに確認しましょう。

財産を受け取る側にかかる税金

財産を受け取る側に税金がかかるのは、相手名義の不動産を受け取った場合です。不動産の名義を変更するための「登録免許税」と、毎年の「固定資産税」を支払う必要があります。一方、財産分与は財産を分け合うことであり、もらうことではないため、「贈与税」はかからないのが原則です。

とはいえ、婚姻中にかかる税金を免れるために偽装離婚したケース・理由もなく相場を大幅に超えた財産を受け取ったケースなどでは、贈与税がかかることがあるため注意しましょう。また、共有財産を分け合う目的ではなく、慰謝料や離婚後の生活保護の目的で不動産を受け取った場合、別途「不動産取得税」がかかり得ます。

財産を受け渡す側にかかる税金

自身名義の財産を受け渡す側は、無償で渡したとしても、「譲渡所得税」がかかります。譲渡所得税とは、土地や家などの不動産・株式・会員権といった資産(現金を除く)を譲渡した際にかかる税金です。譲渡する資産の現在の価値が購入金額を上回っている場合、その上回った金額に課税されます。

ただし、譲渡する資産が実際に住んでいる自宅であり、かつ譲渡相手が親族等特別な関係にある者以外の場合、最大3000万円まで譲渡所得税が控除されます。つまり、購入時から3000万円以上値上がりしていない自宅であれば、離婚して夫婦(親族)関係がなくなった後に所有権を移すことで、譲渡所得税が回避できます。さらに、10年以上所有した自宅を譲渡する場合も、要件を満たせば、住民税・所得税が軽減されるという特例などもあるため、財産分与で不動産を譲渡する前に確認すると良いでしょう。

財産分与の支払い方法

財産分与での支払い方法は、夫婦で自由に決めることができます。とはいえ、財産の内容や金額によっては、どのように、またいつまでに支払うか揉めることも多いでしょう。以下では、財産分与の主な支払方法をご紹介しますので、参考になさってください。

現物払い

不動産・株式・自動車などをそのまま受け渡す方法です。現物払いは、離婚後に、財産の名義変更が必要な場合があります。離婚時に名義人を確認し、名義変更するのであれば、変更手続の書類などもきちんと渡しておくことがポイントです。

一括支払い

財産分与の支払いは、一括払いが最も望ましいとされます。一括払いであれば、取り決めた金額を確実に、また速やかに回収することができるためです。そのため、離婚時に財産分与するお金が手元にあるのであれば(預貯金を分け合う場合や、財産を換金して現金を分ける場合など)、一括払いをおすすめします。

分割支払い

支払う金額が高額な場合(不動産や車をもらう代わりに相手に代償金を支払う場合や、未払いの退職金を支払う場合など)、分割払いとなることがあります。ただし、分割払いでは、取り決めた金額が支払われないといった後のトラブルが起こり得ます。そのため、離婚時には、支払回数・支払いが滞った際の措置などもしっかり決め、取り決めた内容は公正証書に残しておくと安心です。

財産分与は請求期限が決まっているのでできるだけ早く手続しましょう

財産分与は、お金に関することゆえ揉めやすい項目です。きちんと話し合わないまま離婚し、その後思わぬ共有財産が判明することもあります。離婚後でも財産分与の請求はできますが、「離婚後2年」という時効があるため、早めに行動しなければなりません。

もっとも、そのような事態を防ぐためには、離婚時に共有財産をきちんと整理し、適切な財産をすべて受け取っておくことが何よりも重要です。とはいえ、財産分与では不動産やローンなど複雑な問題も多いため、夫婦だけで解決するのが難しいのも現状です。弁護士であれば、豊富な専門知識・経験から、よりスムーズで適切な協議をサポートすることができます。財産分与の進め方に不安がある方やお悩みの方は、まずは弁護士にご相談ください。

離婚前に別居を検討中という方には、「早く夫や妻のもとを去りたい」「別居しておけば離婚が認められやすくなると聞いた」など、さまざまな考えがおありでしょう。

しかし、離婚を決意したとはいえ、夫婦関係があるうちに衝動的に家を出たり、確認事項が漏れたまま別居したりすると、かえって離婚時に不利になるおそれがあるため、きちんと準備を整えてから別居することが重要です。本記事では、離婚に向けた別居の注意点やポイントについて、解説していきます。

別居すると離婚が認められやすくなるのは本当か

一般論として、別居した場合の方が、同居していた場合よりも離婚が認められやすくといえます。

別居が一定期間続くと、裁判などでは「夫婦関係はもう破綻(夫婦関係が修復できず、改善の見込みもないこと)しており、結婚生活を続けるのは困難である」と判断されやすくなるためです。この判断は、法的に離婚が認められる「その他婚姻を継続し難い重大な事由」という要件に該当するため、別居によって離婚が認められやすくといえるでしょう。

どれくらいの別居期間があれば離婚できる?

一般的に、約3~5年ほど別居が続いていれば、別居による離婚が認められやすいでしょう。ただし、これは一般的な目安にすぎないため、同居期間や別居理由によっては、3年未満の別居でも離婚が認められるケースもあります。

なお、浮気や暴力など別居の原因を作った側(有責配偶者)からの離婚請求は基本的に認められませんが、別居期間が長期(10年程度)に渡っている・未成熟の子供がいない・離婚しても相手を精神的、社会的、経済的に苦しませないといった事情があれば、有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性があります。

単身赴任や家庭内別居も別居として認められる?

単身赴任は、仕事の都合などにより仕方なく別々に住んでいるにすぎず、夫婦関係の悪化による別居とは異なります。そのため、原則、法律上の離婚原因(夫婦関係が破綻しており、結婚生活を続けるのが困難であること)と評価されるような別居とは言えません。

ただし、単身赴任前から一方に離婚の意思があり、あらかじめ書面で伝えていたなどの事情があれば、単身赴任でも前記のような別居であると評価される可能性があります。また、家庭内別居は、「同じ家で生活している」という点で別居とは大きく異なります。それぞれの生活費や食事・炊事などが完全に分かれていたと証明するのが難しいため、原則、前記のような別居としては認められません。

正当な理由なしに別居すると、離婚時に不利になる

夫婦は、同居して助け合い生活しなければならないという「同居義務」を負っています。

そのため、相手の同意を得ないまま別居してしまうと、相手から「同居義務違反」を指摘され、有責配偶者になってしまうおそれがあります。有責配偶者になると、基本的にこちらからの離婚請求が認められないなど、かえって不利になりかねないため注意が必要です。ただし、以下のような「正当な理由」があって別居した場合、通常、同居義務違反にはあたりません。

正当な理由とはどんなもの?

別居しても同居義務違反にならない「正当な理由」には、以下のものが挙げられます。

  • ・相手からDVを受けている
  • ・相手からモラハラやネグレクト(無視)を受けている
  • ・相手が不倫や浮気をした
  • ・夫婦関係が完全に冷え切っており、お互いが別居することに同意している
  • ・親の介護や、単身赴任による別居

不利にならない別居の方法

夫婦関係が悪化すると、一刻も早く相手のもとを去りたいと思われる方は多いでしょう。しかし、相手に無断で別居したり、気持ちが先走り何の準備もせずに別居したりしてしまうと、離婚時に不利になってしまうおそれがあるため、注意が必要です。そこで、以下では、別居する際の注意点やポイントについてご説明します。

相手に別居の同意を得る

まず、相手に別居したい旨と理由を伝え、同意を得ましょう。正当な理由もなく一方的に別居した場合、夫婦関係を意図的に破綻させたとして、相手から「悪意の遺棄」を主張されるおそれがあるためです。悪意の遺棄にあたると、有責配偶者になり、こちらからの離婚請求が認められない・相手から慰謝料を請求されるなどのリスクあるため注意が必要です。

また、別居の同意を得たメールなどを保存したり、同意した内容をお互いの署名捺印がある書面に残したりしておくと、後のトラブル防止につながります。

親権を獲得したい場合は子供と一緒に別居する

離婚後に親権を獲得したい場合は、なるべく子供と一緒に別居するとよいでしょう。というのも、離婚時に親権者を決める際、裁判所は「どちらが主たる監護者だったか」という点や、「子供は離婚後もできるだけ離婚前と同じ環境で暮らすべき」と考える傾向にあります。

そのため、別居した場合でも、主たる監護者として問題なく子供の監護をしたという実績を積んでおくことが重要になります。ただし、相手の同意を得ずに子供を連れていったり、子供が強く嫌がっているのに無理やり連れ去ったりすると、違法性が問われ親権争いで不利になるおそれがあるため、注意しましょう。

相手が浮気していた場合は証拠を確保しておく

相手の浮気が原因で別居・離婚したい場合、浮気の証拠を確保したうえで別居することが重要です。

相手の浮気を理由に離婚を認めてもらうには、証拠(写真、メールのやり取り、領収書など)を示すことが非常に重要になりますが、別居後は相手の行動を把握したり、相手の携行品を調べたりする機会が減るため、これらの証拠を集めるのが難しくなってしまいます。相手と同居しているうちに、できるだけ浮気の証拠を集めておきましょう。

別居のメリットとデメリット

ここまで、別居するための流れやポイントについてご説明してきました。しかし、離婚前に別居することにはメリットだけでなくデメリットもありますので、本項目で整理しておきます。別居しようか悩まれている方など、あらかじめご確認ください。

メリット

  • ・離婚原因があると評価され得るため、離婚が認められやすくなる
  • ・離婚の意思が固いと相手に伝わるため、相手も離婚に応じやすくなる
  • ・将来について、お互いが冷静に考えることができる

デメリット

  • ・相手とやり直したいと思っても、元に戻せない場合がある
  • ・別居を切り出したことで有責配偶者にされ、慰謝料を請求される場合がある
  • ・婚姻費用(別居中の生活費)が支払われず、生活が苦しくなる場合がある
  • ・離婚時に分けるべき財産(預貯金、不動産など)を隠されてしまい、きちんと受け取れないまま離婚してしまうおそれがある
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別居の際に持ち出すべきもの

別居する際には、以下のものを忘れずに持ち出しましょう。置き忘れた結果、相手に捨てられてしまったということがないよう、あらかじめ確認しておくことが重要です。なお、相手名義のものの原本や共有財産(家具、車など)を勝手に持ち出すとトラブルになりかねないため、注意しましょう。

【貴重品など】

  • ・現金
  • ・自身名義の銀行通帳、キャッシュカード、クレジットカード、保険証券
  • ・実印、銀行印
  • ・運転免許証、パスポート、健康保険証
  • ・宝石、アクセサリー、貴金属

【生活用品など】

  • ・常備薬、処方箋のデータ
  • ・衣類
  • ・子供が学校で使う教材やノート
  • ・思い出、記念品

【離婚時に必要となる可能性があるもの】

  • ・源泉徴収票、給与明細
  • ・共有財産に関する資料の写し
  • ・相手の浮気の証拠
  • ・DVやモラハラの証拠(録音データや病院の診断書など)

別居に伴う手続き

別居前には、以下のような手続を行っておきましょう。

別居する旨の通知:別居前に、後のトラブルを防ぐため、別居したい旨と理由を相手に伝え同意を得ます。なお、DVに遭っているなどで話し合うのが難しい場合、置手紙やメールで伝えておくとよいでしょう。

相手の課税証明書の取得:相手の年収を確認し、別居中の適正な婚姻費用(生活費)を請求できるようにしておきます。なお、住民票を移したあとは、取得には本人の同意が必要になります。

住民票の異動:別居していることの確実な証明になります。引っ越し日から14日以内に移す必要があります。

児童手当の受給者変更:子供と一緒に住民票を移すと、自身が受給者になることができます。

乳幼児医療証・子ども医療証の住所変更:住民票を移し、転居先の役所で新たに発行してもらいます。

子供の転園・転校手続:転居前と自治体が異なる場合、住民票を移すことでスムーズに手続ができます。ただし、前記のように、相手の同意を得ずに転園・転校手続を行なったり、子供が強く嫌がっているのに無理やり行ったりした場合、不利益になる可能性があるため、十分に注意して下さい。

別居後、荷物を取りに行きたくなった場合

別居中に、相手が居住する家に勝手に入ると、夫婦であっても「住居侵入罪」に問われるおそれがあります。また、たとえ同居中には自身が使っていた日用品などであっても、別居後に相手に無断で持ち出すとトラブルになりかねないため、やめましょう。

別居後に荷物を取りたい場合、まずは相手に連絡をして送ってもらえるか確認しましょう。応じてくれない場合は、取りに行くものと日時を伝えて了承を得たうえで、ご自身で取りに行きましょう。なお、夫婦関係がひどく悪化していて荷物を引き取らせてもらえない場合や、別居の原因がDVなどで相手に相談するのが難しい場合、弁護士に依頼して代理で交渉してもらうことをご検討ください。

別居後、生活が苦しくなってしまった場合

まず、相手に婚姻費用を請求できる可能性があります。婚姻費用とは、夫婦生活に必要な生活費全般のことをいい、同居別居を問わず、夫婦はそれぞれの収入に応じて婚姻費用を分担する義務があります。そのため、ご自身の収入が相手よりも少ない場合、相手から婚姻費用を受け取ることができます。

なお、相手が一向に婚姻費用を支払わない場合、一定の条件(親族からの援助が受けられない、自身の収入では生計が立てられないなど)を満たせば、生活保護を受給できる可能性もあります。

有利な結果と早期解決へ向けて、離婚に詳しい弁護士がアドバイスさせて頂きます

離婚前に別居したいと思う理由はさまざまですが、衝動的に別居してしまうと離婚時に不利になるリスクがあるため、別居前には適切な手順を踏むことが重要です。しかし、夫婦関係が悪化しているなかで相手と話し合いつつ、必要な手続や準備をご自身で行うのは限界があるでしょう。

そこで、離婚問題の知識や経験が豊富な弁護士に依頼すれば、別居から離婚まで、ご依頼者様の事情に応じた幅広いサポートを受けることができます。また、相手が離婚に応じず調停や裁判となった場合にも、弁護士が手続や主張を代行してくれます。別居や離婚についてお悩みの方は、ぜひ一度、弁護士へご相談ください。

夫や妻の不貞を知ったとき、怒りや悲しみから、慰謝料を請求したいと思う方は多くいらっしゃいます。また、ご自身の不貞が知られてしまい、高額な慰謝料を請求されてお悩みの方も少なくないでしょう。

いざ不貞慰謝料を請求したり、減額を主張したりする際は、相場などを確認して適切な手順を踏まないと、トラブルや不利な結果を招くリスクがあるため、注意が必要です。そこで、本記事では、不貞慰謝料の概要や請求の流れなどについて詳しく解説しますので、確認していきましょう。

不貞慰謝料とは

婚姻中に、配偶者以外の人と肉体関係を持つことを、「不貞」といいます。よって、ただ一緒に出かけたり、食事したりするだけでは、基本的に不貞にはなりません。

また、慰謝料とは、相手の行為によって受けた何らかの精神的苦痛に対して請求できるお金のことです。「不貞慰謝料」とは、婚姻中の相手の不貞行為によって受けた精神的苦痛に対して請求できる慰謝料ということになります。

不貞慰謝料と離婚慰謝料の違い

離婚する際の慰謝料には、「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」の2つがあります。

それぞれの違いは、「何によって精神的苦痛を受けたのか」です。不貞慰謝料は、相手の不貞行為によって受けた精神的苦痛の補償として、受け取ることができます。

対して、離婚慰謝料は、自身に落ち度はないうえに、望んでもいなかった離婚をする羽目になった精神的苦痛の補償として受け取るものです。とはいえ、一方の不貞行為がきっかけで離婚することになった場合、実務上、2つの慰謝料を分けて考えるのではなく、1つの慰謝料として計算・請求するケースがほとんどです。

不貞慰謝料の請求権には時効があるため、注意が必要です。具体的には、「相手の不貞行為があったこと、かつ不貞相手の人物(名前や住所など)を知った日より3年」または「相手の不貞行為があった日より20年」が経つと時効が成立し、原則、それ以降の請求は認められません。よって、相手が不貞行為をしてから20年以上経った後にその不貞行為が発覚しても、基本的には慰謝料の請求はできないということになります。

不貞行為に対する慰謝料の相場

「相手の不貞行為はあったが、離婚まではしなかった」という場合でも、精神的苦痛を受けたことに変わりはないため、不貞慰謝料を請求することができます。

ただし、離婚したかどうかで金額の相場は異なります。以下の表から、不貞慰謝料の相場は、離婚した場合の方が高いことがわかります。また、離婚しなかった場合は、別居の有無によって相場が異なります。

不貞慰謝料の相場
離婚の有無 慰謝料の相場
離婚も別居もしなかった場合 50万~100万円
離婚しなかったけど別居した場合 100万~200万円
離婚した場合 200万~300万円

不貞慰謝料額の判断基準

不貞慰謝料の金額は、相場こそあるものの、明確な計算方法はありません。そのため、以下のようなさまざまな要素を考慮し、個別具体的に算出するのが一般的です。

  • ・不貞行為が判明したときの夫婦関係が良好だったかどうか
  • ・婚姻期間や、不貞行為をしていた期間の長さ
  • ・夫婦間の子供の有無
  • ・不貞行為が判明したときの、不貞相手からの謝罪の有無
  • ・不貞行為が判明したときの、不貞相手に対する社会的影響の有無
  • ・不貞行為の悪質性(不貞相手が、こちらが既婚者と知りながら、またこちらの家庭を壊そうとしていたかどうかなど)

不貞慰謝料を請求したい方

不貞慰謝料は誰に請求できる?

不貞慰謝料の請求先は、「配偶者のみ」「不貞相手のみ」「配偶者と不貞相手」の3つが考えられ、どれを選ぶかは請求者の自由です。ただし、「配偶者と不貞相手」に請求する場合、それぞれに全額を請求し、二重で受け取ることはできません。

不貞慰謝料を請求する前に確認すべきこと

不貞慰謝料を請求する前に、まずは、請求するための条件や請求内容が妥当かどうかを確認しておきましょう。不当な条件で、また相場よりも大幅に高額な慰謝料を請求すると、請求した側が不利になるおそれもあるため、注意が必要です。具体的に確認する点は、以下の項目が挙げられます。

  • ・請求できる時効は成立していないか
  • ・相手の不貞行為を裏付ける証拠が揃っているか
  • ・請求する慰謝料金額は、相場と比べて適正か
  • ・請求方法は適切か

証拠になるもの

不貞慰謝料を請求する場合、相手の不貞行為を客観的に証明する必要があります。また、適正な金額で受け取るには、不貞行為の期間や頻度、悪質性についても立証が必要です。そのため、あらかじめ、以下のような有力な証拠を集めることがポイントです。

【写真・動画】
写真や動画は、不貞行為の特に有力な証拠となります。例えば、性行為の場面や不貞相手と裸体でいる場面の写真や動画は、決定的な証拠です。また、ラブホテルに出入りしている写真や動画なども、有効な証拠のひとつです。
一方で、ビジネスホテルに別々に出入りする写真や動画の場合、それだけでは肉体関係があったと示す証拠としては弱いでしょう。そのため、例えば、ビジネスホテルで異性と同室に泊まったことを示す証拠なども追加で揃え、相手の不貞行為を主張する必要があります。

【メール・SNS】
肉体関係があったと容易に推測できる内容のメールやSNSのメッセージも、有力な証拠になります。例えば、2人でラブホテルに行ったことや、性行為の内容について書かれたものが有効です。また、複数回のやり取りを押さえておけば、不貞行為が繰り返し行われていた証拠にもなります。

【領収書】
領収書やクレジットカードの明細書なども、不貞行為の証拠になる可能性があります。例えば、ラブホテルの領収書や旅行先での2人分の領収書、異性用の高価な装飾品を購入したクレジットカードの明細書などが挙げられます。これらからは、配偶者以外の人と肉体関係があったことや親密な交際をしていることが推測できるため、有力な証拠となり得ます。

不貞慰謝料を請求する方法

不貞慰謝料を請求する際は、まず請求相手に「慰謝料を支払ってほしい」と伝えましょう。伝え方にルールはありません。

離婚協議中であれば、対面や電話で直接伝えても良いですし、メールや書面を送っても良いでしょう。話し合いで決まらなければ、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停では、不貞慰謝料を支払うかどうか・不貞慰謝料の金額などを、調停委員を挟んで協議します。調停でも夫婦間の折り合いがつかなければ、訴訟を起こし、裁判所に判断を仰ぐことになります。相手の不貞行為について十分な証拠があれば、裁判所から相手に対し、不貞慰謝料を支払う旨の判決を得ることが可能です。

内容証明郵便での請求について

配偶者と別居中などで直接会うのが難しい場合、電話・メール・内容証明郵便などで慰謝料を請求するのが一般的です。特に、内容証明郵便にはいくつかメリットがあるため、ご紹介します。まず、相手に手渡しで郵送されることから、相手に受領をさせ易いという点があります。さらに、内容証明郵便は、送った内容や日時が公的に記録されるため、慰謝料を請求した事実を証明することができ、後の請求手続で有利に働く場合があります。一方、内容証明郵便のデメリットとして、送る手間や費用がかかることや、強制力はないため相手に支払いの強制まではできないことなども覚えておきましょう。

内容証明郵便に記載する内容

内容証明郵便に記載するべき内容は、以下のとおりです。なお、内容証明郵便には文字数や行数に制限があるため、作成する前によく確認しておきましょう。

  • ・不貞行為の事実(いつ・どこで・誰となど)
  • ・上記の不貞行為が、不法行為にあたること
  • ・慰謝料を請求すること
  • ・慰謝料の請求金額、支払期日、支払方法、振込先など
  • ・慰謝料が支払われなかった場合の対応(法的措置をとるなど)

離婚後でも慰謝料請求は可能?

離婚後でも、慰謝料を請求することは可能です。離婚後に慰謝料を請求するには、まずは相手の不貞行為の証拠を集めたうえで相手と話し合います。話し合いで決まらなければ調停を申し立て、調停でも合意ができなければ訴訟を起こすことになります。

ただし、離婚時に清算条項(離婚後はお互いにお金の請求をしないという取り決め)を設けるなど、慰謝料の請求権を放棄していた場合には、基本的には離婚後に慰謝料を請求することはできません。また、離婚後は相手が話し合いに応じにくくなる傾向があり、スムーズに支払ってもらえる可能性が低くなるため、注意が必要です。

相手が慰謝料を支払わないときの対処法

慰謝料の支払いを書面で約束しても、相手が支払ってくれないという事態も起こり得ます。その場合、強制執行を行うと良いでしょう。

慰謝料の取り決めが書かれた拘束力のある書面(強制執行認諾文言付き公正証書、離婚時の調停調書や判決書など)があれば、裁判を起こすことなく相手の財産を差し押さえ、未払いの慰謝料を回収することができます。なお、差し押さえる対象は、相手の給与や預貯金といった現金のほか、車、不動産なども含まれます。

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不貞慰謝料を請求されている方

慰謝料を請求されたらまず確認すること

相手から慰謝料を請求された場合、急いで支払わなければいけないと焦ってしまうこともあるでしょう。しかし、まずは冷静に以下の点を確認し、相手からの請求が適切なものかどうか確認しましょう。

  • ・誰から請求されているのか(相手方個人からか、相手が依頼した弁護士からかなど)
  • ・相手が主張する内容は事実か
  • ・慰謝料の金額は妥当か
  • ・時効が成立していないか
  • ・不貞行為が発覚したとき、夫婦関係はすでに破綻していなかったか

内容証明郵便で請求された場合の対処法

内容証明郵便によって慰謝料を請求される場合、封筒に「内容証明郵便」と赤いハンコが押されて届くため、普通郵便よりも重要な連絡だとすぐに察することができるでしょう。

内容証明郵便を受け取ると、急いで慰謝料を支払わなければと焦ってしまうでしょうが、まずは冷静に適切な対応を取ることが重要です。そこで以下では、内容証明郵便で慰謝料を請求された場合の対処法をご説明します。

回答書を送付する

内容証明郵便で慰謝料を請求されたら、まずは内容や相手の請求が妥当かどうかを確認したうえで、合意・反論・減額の希望など、請求に対する返答を記載した書面(回答書)を相手に送ります。

このとき、必ずしも内容証明郵便で送る必要はありません。しかし、どんな形であれ回答した内容は交渉の流れにおける証拠になるため、安易に回答書を送るのは危険です。そのため、内容証明郵便で慰謝料を請求された場合には、ご自身だけで進めるのではなく、対応について弁護士に相談されることをおすすめします。

内容証明を無視することは避けるべき

内容証明郵便は、その記載内容が法的に正しいと証明するものではなく、実際には手紙のひとつにすぎません。そのため、記載された支払期日や回答期日に従わなかったからといって、すぐに差し押さえや罰則を受けることはありませんが、無視すると交渉に応じる気がないと判断されて裁判を起こされるおそれがあるため、きちんと返答しましょう。

代理人を通して請求されたら

弁護士が相手の代理人となっている場合、いきなり高額な慰謝料を請求してくることが想定されます。これに1人で太刀打ちするのは難しいため、こちらも弁護士を代理人に立てて対等に交渉すると良いでしょう。

一方、相手が行政書士に依頼して内容証明郵便を送ってきた場合、交渉相手は、行政書士ではなく相手方本人になります。基本的に、行政書士は書面作成の専門家であり、弁護士のように法的な交渉をする権利はないからです。弁護士ではなく行政書士に依頼した相手は、裁判などをせずに、当事者間で解決したいと考える傾向があります。そのため、こちらが現実的な金額の慰謝料を支払うと伝えれば、穏便に収束できる可能性があります。

請求された慰謝料を減額するには

慰謝料を減額する方法

請求された慰謝料金額を減額するには、まずは相手と話し合って減額の交渉をします。この際、減額を主張する根拠をしっかりと伝えることが重要です。

例えば、慰謝料の請求金額が相場よりも高いことや、裁判となっても相場を大幅に越えた慰謝料は認められにくいこと、また相手が主張する不貞行為の事実に誤解があれば修正することなどが挙げられます。交渉によっても相手が慰謝料の減額に応じない場合、調停を申し立て、調停委員会を挟んで協議します。なお、調停でも合意ができなければ、訴訟を起こして裁判所に判断を仰ぐことになります。

慰謝料が減額されやすいケース

慰謝料を減額するには、いくつかのポイントを押さえて主張することが有効です。具体的には、以下のような場合に慰謝料の減額が認められやすくなっています。

  • ・請求する側にも過失があった
  • ・相場以上の慰謝料を請求された
  • ・支払う側の財産や収入が少ない
  • ・不貞行為に対して消極的であった(相手がしつこく誘ってきた場合、上司に不貞行為を強要された場合など)
  • ・不貞行為の期間や回数が少ない

合意後、慰謝料を支払わないとどうなる?

合意した金額の慰謝料を支払わずにいると、さまざまな問題が起こり得ます。まず、合意内容の書面を「強制執行認諾文言付き公正証書」にしていた場合、強制執行により財産(給与、預貯金、車、家など)を差し押さえられるおそれがあります。強制執行認諾文言付き公正証書には強い拘束力があり、相手はすぐに強制執行ができるため、注意が必要です。

また、合意内容を公正証書にしていない場合でも、相手が、慰謝料請求訴訟・強制執行の許可を得るための訴訟を起こす可能性があります。もし、ご自身の収入などから慰謝料を支払うのが難しいようであれば、確実に支払える金額まで減額してもらったり、分割払いで支払う旨をあらかじめ取り決めておいたりすることが重要です。なお、分割払いで支払うと決める際には、支払う期間、一度の支払金額、支払方法などまで具体的に決めておくと、後のトラブルを防げるでしょう。

不貞慰謝料について悩んだら弁護士に相談してみましょう

不貞慰謝料は、お互いが感情的になり、話し合いや調停でなかなか決まらないことも多いです。相手に不貞行為をされた方は、「十分な慰謝料を支払ってほしい」「減額に応じたくない」と思われることでしょう。

納得のいく慰謝料を獲得するためにも、まずは弁護士へご相談することをご検討ください。また、慰謝料を請求されている方も、きちんと根拠を固めたうえで反論・主張をすれば、支払う慰謝料を減額できる可能性もあります。相手とスムーズに交渉し、穏便に解決するためにも、不貞慰謝料でお悩みの方は、弁護士に相談されることをおすすめします。

交通事故の被害に遭った場合、最終的に加害者側(保険会社)から損害に対する賠償がなされます。
具体的な賠償の内容及び金額は一様ではありませんし、賠償金額の算出方法(基準)も一様ではありません。

適切な賠償を実現するためには、様々な基準の中でも弁護士基準に基づく必要があります。
そこで、以下、弁護士基準について解説いたします。

弁護士基準とは

弁護士基準とは、裁判になった際に請求する金額を前提とした金額を指し裁判基準ということもあります。慰謝料等の損害賠償の算出方法は一様ではありませんが、最終的には裁判所が認定しない金額を算出しても意味はありません。

そのため、弁護士は裁判所が認定する可能性がある金額によって計算します。そして、この金額が理論上請求できる限界値を意味します。その意味において弁護士基準とは賠償額を算出するうえで最も高い基準となります。

弁護士基準の入通院慰謝料相場は2種類ある

多くの弁護士が慰謝料を算出する際に用いる基準はですが、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」(通称「赤い本」といいます。)に記載されている表に基づきます。 この表は、通院期間と入院日数に基づいて日割り計算によって算定されます。そして、この表は、通常の怪我の場合に用いる表(別表Ⅰ)とむち打ち症で他覚所見がない場合に用いる表(別表Ⅱ)に別れます。

ただし、これらの表はあくまで裁判所が参考にしているに過ぎないため、この表に従って機械的に慰謝料が算出されるわけではないことに注意が必要です。

通常の怪我の場合

通常の怪我の場合は別表Ⅰを使用します。
下記表に従って、入院1カ月かつ通院期間が4カ月の場合それぞれの項目が交差する部分が慰謝料となり、具体的な金額として130万円と計算されます。

他覚所見のないむちうち等、比較的軽傷の場合

通常の怪我の場合は別表Ⅱを使用します。
下記表に従って、入院1カ月かつ通院期間が4カ月の場合それぞれの項目が交差する部分が慰謝料となり、具体的な金額として95万円と計算されます。

弁護士基準の後遺障害慰謝料

後遺障害等級慰謝料は、後遺障害が残存したことに対する慰謝料です。
後遺障害慰謝料についても、後遺障害の内容と認定された等級によって支払額が決まっています。

具体的には、下記の表のように各等級に従って慰謝料が支払われることになります。

後遺障害等級後遺障害慰謝料
1級2800万円
2級2370万円
3級1990万円
4級1670万円
5級1400万円
6級1180万円
7級1000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円
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弁護士基準の死亡慰謝料

死亡慰謝料は、亡くなった被害者の方がどのような方であったによって、大きく異なります。

亡くなった方が一家の大黒柱である場合には、死亡慰謝料が最も高額になります。次に、亡くなった方が母親や配偶者の場合、死亡慰謝料は、一家の大黒柱の方が無くなった場合と比べると低くなります。そして、その他(独身の方、幼児等)の場合には、死亡慰謝料は更に低くなる傾向があります。

死亡慰謝料については、以下の表を参照してください。

亡くなった被害者の属性死亡慰謝料
一家の支柱2800万円
母親、配偶者2500万円
その他(独身の男女、子供、幼児等)2000万~2500万円

自力で弁護士基準による交渉をするのは難しい

相手の任意保険会社は、交渉の相手が被害者本人である場合、自社の独自の基準又は自賠責基準を用います。情報社会において、任意保険会社基準や自賠責基準と裁判基準が異なることを知っていても、保険会社の担当者から、「納得できないのであれば裁判を提起して下さい。」と言われてしまうと、対応することができません。

しかしながら、弁護士は、法律の専門家でもあり、裁判のスペシャリストです。弁護士であれば、保険会社の提示に納得できないのであれば、裁判を提起することが可能です。ゆえに、保険会社の担当者も、前記のようなことが容易に言えないため、裁判基準での交渉に応じることになります。

弁護士基準の慰謝料請求はお任せください

前記のとおり、裁判基準による場合とその他の基準による場合で慰謝料金額は大きく異なります。そして、裁判基準の金額を知っていても、任意保険会社の担当者が当該基準で交渉をしてくれるわけではありません。

交通事故における適切な慰謝料金額を請求したい場合には、専門家である弁護士にご相談下さい。

他人が運転している車に乗っている時に事故に遭った場合、治療費や慰謝料等は誰に請求できるのでしょうか。

だれに請求をすることができるのか、請求することができるとして、どの程度の金額を請求することができるのかについては、過失割合、乗っていた車の運転者との関係性、その他事故に遭った際の具体的な事情等により異なります。

以下においては、よくある事例について、説明していきます。

同乗中に事故に遭ったら、だれに損害賠償を請求すればいい?

例えば、車2台が衝突した事故において、どちらかの車に乗っていた人が治療費を請求する対象となると考えられるのは、「乗っている車の運転者」と「その車にぶつかった車の運転者」の2人が考えられます。

この2人のどちらにも請求ができるのか否か、請求できるとすればどの程度の金額を請求することができるのかは、過失割合、運転者との関係性等の事情により異なります。

運転者に過失がない場合

例えば、自分の乗っていた車に後続車が衝突してきた事故の場合、自分が乗っていた車の運転者には、自己に対する責任(過失)がありません。責任がない以上は、治療費等の損害賠償請求をすることはできません。

一方、この事故の責任(過失)は、衝突してきた後続車の運転者にありますので、損害賠償請求をするとしたら、後続車の運転となります。

運転者と加害者双方に過失がある場合

例えば、交差点で出会い頭に車同士が衝突した場合、自分が乗っていた車の運転者と衝突した車の運転者のいずれにも責任(過失)があります。

もっとも、車に乗っていただけの人には、過失がありません。この場合、乗っていただけの人は、2人の運転者によって損害を被ったことになります。そのため、乗っていた人は、運転者のいずれにも損害賠償請求をすることができます。

請求するにあたっては、どちらかの運転者に対して損害の全額を請求することもできますし、それぞれの運転者に対して分割して請求をすることもできます。

単独事故、または相手に過失がない場合

例えば、乗っていた車が壁に衝突したり、センターラインオーバーで対向車に衝突した場合、事故の責任(過失)は、乗っていた車の運転者にあります。

その他にこの事故の責任を負うべき人はいませんので、乗っていた車の運転者にのみ損害賠償請求ができることになります。

家族が運転する車への乗車や好意同乗の場合でも損害賠償を請求できる?

これまでは、事故の責任(過失)がだれにあるかにより、事故に遭った車に乗っていた人が、損害賠償請求をすることができる対象者を説明してきましたが、上記に述べたとおり、自分が乗っていた車の運転者に損害賠償請求をすることができるか否かについては、運転者との関係性も影響します。

例えば、乗っていた車の運転者が自分の家族であり、かつその運転者である家族に過失がある場合には、他の車の運転者に対して全損害を請求したとしても、事後的に運転者である家族に求償(過失割合に応じた損害の負担分を請求)されることになるため、迂遠であるため、損害賠償請求をできないとされます。

また、好意同乗(他人の運転する自動車に好意的に乗車していた場合)の場合においては、損害賠償請求をすることはできますが、運転者が負担すべき損害額について減らされることが通例とされます。

被害者側の過失の有無と損害賠償への影響

例えば、家族の運転する車に乗っている際に事故に遭った場合、運転者である家族に過失があるか否かで、以下のとおり衝突した車両の運転者(相手方運転者)に請求できるか否か等が異なります。

・運転者である家族に過失がない場合→相手方運転者に全額請求できます。
・運転者である家族にのみ過失がある場合→相手方運転者に請求はできません。
・運転者である家族と相手方運転者双方に過失がある場合→相手方運転者の過失割合に応じた金額に限り請求することができます。

同乗者が子供でも慰謝料はもらえる?

事故に遭った際、車にお子様が乗っていた場合にも慰謝料を請求することはできます。

金額は、怪我の程度により異なりますが、子供であることを理由として減額されることはありません。

なお、お子様が未成年である場合には、法的にお子様本人が請求をすることはできませんので、親権者が法定代理人として請求していくことになります。

同乗者の慰謝料相場

他人(家族ではない人)が運転する車に乗っている際に事故に遭った場合、仮に運転者に過失があったとしても、乗っていただけの人の慰謝料が減額されることはありません。

もっとも、以下のような場合には、請求をすることができる損害額が減額される可能性はあります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故被害者専用ダイヤル 通話無料・24時間受付・年中無休・全国対応

過失により賠償金が減額されることもある

他人(家族ではない人)が運転する車に乗っている際に事故に遭った場合に、運転者に過失があったとしても、そのことを理由として乗っていただけの人の慰謝料が減額されることはありません。

しかし、以下のように、同乗者が事故を誘発した、事故を起こす原因を看過していた等の事情がある場合には、そのことを理由として請求することができる損害額が減額されることがあります。

運転者が飲酒運転だと知っていた

運転者が飲酒をしていることを知りつつ、その運転する車に乗って事故に遭った場合には、事故が生じる可能性が高いことをわかって車に乗っているわけですから、乗っていただけであるとしても、ある程度責任が生じます。

この場合には、概ね10~30%程度の過失を認められ、過失割合分の損害を減額されます。

運転者が無免許だと知っていた

運転者が無免許運転であるということは、そもそも、運転者に運転技術・知識がないため、事故が生じうる可能性が免許を持っている者より高いことは明らかです。とすれば、運転者が無免許であることを知りながら、その運転する車に乗って事故に遭った場合には、10~30%程度の過失が認められる可能性があります。

危険な運転を止めなかった・煽った

運転者が危険な運転をしているのを止めなかった場合、又は危険な運転をするように煽った場合には、どうでしょうか。

運転者が危険な運転をしていることを単に止めなかったのか、運転者との関係上止めることができなかったのか、自ら危険な運転をするように煽ったのかで、同乗者の過失は異なります。悪質な

同乗者も弁護士費用特約を使える?

他人(家族を含みます)の運転する車で事故に遭った場合、運転者の契約している自動車保険の弁護士特約を使用することはできます。そのため、自分で車を持っていない場合、車を持っていたとしても自動車保険に弁護士特約がない場合でも弁護士特約を使用することは可能です。

ただし、損害賠償請求をする対象が、乗っていた車の運転者である場合には、運転者の自動車保険の弁護士特約を使用することはできません。このような場合には自分が契約している自動車保険の弁護士特約を使用するしかありません。

同乗者の賠償金に関する判例

同乗者の賠償金が減額された判例

運転者が、同乗者に呼び出されて2時間以上にわたって飲酒をした後、運転者が運転する車で移動している最中、運転者が居眠り運転の上、法定速度を20㎞以上のスピード違反をした結果、路上で駐車中の大型貨物車に衝突したため、同乗者が死亡した事案において、裁判所は、同乗者が、運転者を呼び出して2時間以上一緒に飲酒した上、運転者が運転する車に乗っているのであるから、自ら交通事故発生の危険性が高い状況を招来し、そのような状況を認識して車に乗っていると認められることに加え、事故時に同乗者がシートベルトをしていなかったことから、損害が拡大する危険性が高い状況を作り出したことから、これらの事情を併せて25パーセントの損害を減額しました(東京地裁平成19年3月30日判決)。

同乗者の賠償金が減額されずに済んだ判例

運転者が、時速120㎞に急加速し、その後約30秒以内片手運転や前方不注視により先行車に衝突した事故において、同乗者は、急加速後約30秒以内に発生した本件事故において、同乗者がスピード違反を注意していなかったとしてもスピード違反を容認していたとまでは認められず、その他賠償金額を減額する事情もないとして、同乗者の賠償金額を減額すべきでないと判断しました(札幌地裁平成22年12月3日判決)

同乗者の事故は揉めやすいので弁護士にご相談ください

他人が運転する車に乗っていただけの人は、過失割合によって、だれに請求をすることができるのか、どの程度請求することができるのかが変わってしまいます。

過失割合は、事故の態様によって様々に変わってしまいます。そのため、一度弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長弁護士 井本 敬善
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。