単純承認とは|借金相続のリスクについて

コラム

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善

監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士

相続の方法には、3つの方法があります。具体的には、単純承認、限定承認、相続放棄の3つです。簡単に説明すると、単純承認は何ら留保を付けずに相続をすることであり、相続放棄は相続をしないというものです。また、限定承認は、プラスの相続財産を限度として、マイナスの相続財産(借金など)について責任を負うというものです。
単純承認は、何も留保を付けずに相続するというものであり、皆さんが遺産相続と聞いた際に一番イメージする相続の方法だと思います。このページでは、単純承認について、ご説明しています。

単純承認とは

単純承認とは、「無限に被相続人の権利義務を承継する」(民法920)ということです。「無限に」と言われてもピンとこないと思いますが、例えば、被相続人の遺産に300万円の預金(プラスの相続財産)と、500万円の借金(マイナスの相続財産)があり、相続人が一人しかいないとします。この場合において、相続人が単純承認をすると、その相続人は、300万円の預金と500万円の借金のすべてを相続することになります。つまり、単純承認をした相続人は、マイナスの相続財産がプラスの相続財産の額を超えたとしても、そのすべてについて責任を負うことになります。
このように単純承認をすると、相続人は、相続財産のすべてについて相続します(ただし、相続人が複数の場合には、その相続分に応じて相続をすることになります。)。

単純承認のメリット

プラスの相続財産しかない場合や、プラスの相続財産がマイナスの相続財産を上回る場合、単純承認によって、相続によって、自己の財産を増やすことができます。これが単純承認のメリットです。
このメリットは、限定承認の場合でも同じです。なぜならば、限定承認というのは、遺産がトータルでプラスの場合は、そのプラスを相続する一方、トータルでマイナスの場合は、プラスの相続財産からマイナスの相続財産を返済すればそれ以上マイナスの相続財産について責任を負わないという相続の方法だからです。
もっとも、限定承認は、相続財産の目録を作成した上で裁判所への申述が必要など一定の手続きを必要とします。そのため、単純承認は、限定承認と比較して、簡易な方法でプラスの資産を得ることができるという点にメリットがあります。

単純承認のデメリット

マイナスの相続財産しかない場合、または、マイナスの相続財産がプラスの相続財産を上回る場合、単純承認をすると、その相続人は、プラスの相続財産の額にかかわらず、マイナスの相続財産すべてについて責任を負うことになります。その結果、相続人は、相続によって自己の資産が減らしてしまうことになります。
一方、相続放棄をすれば、プラスの相続財産も相続できない代わりに、マイナスの相続財産も相続することはありません。また、限定承認の場合においても、プラスの相続財産を超えてマイナスの相続財産を相続することはありませんので、相続をして自己の資産を減らすことにはなりません。
上記のとおり、単純承認のデメリットとしては、相続の結果、自己の資産が減ることがあることです。

単純承認と見なされるケース(法定単純承認)

単純承認をしていない場合でも、一定の行動をした、または行動をしない場合、単純承認をしたとみなされることがあります。これを法定単純承認と言います。法律上、3つの場合に単純承認したとみなされています。以下において、具体歴を用いて、法定単純承認に当たる場合をご説明します。

相続財産の全部または一部を処分した場合

法定単純承認の一つ目は、相続財産の全部または一部を処分した場合です。例えば、被相続人名義の預金を勝手に引き出して、使ってしまった場合や、被相続人名義の不動産を売ってしまった場合などがこれに当たります。
相続財産の全部または一部を処分するというのは、本来、単純承認をした相続人でなければ行うことができません。そのため、相続人が相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認をしたものとみなされています。

不動産の名義変更を行った場合

不動産の名義変更を行った場合も、相続財産の一部を処分した場合に当たるため、単純承認をしたとみなされることになります。つまり、この場合における「処分」とは、本来、単純承認をした相続人でなければできない行為を意味しており、具体的には、相続財産を捨てること、相続財産を使うこと、相続財産を貸すなどして収益を上げることなどが「処分」に当たります。
不動産の名義変更というのは、自身が所有者であるということを示すものであり、本来、単純承認をした相続人でなければ行うことができない行為に当たります。したがって、不動産の名義変更は、相続財産の一部の処分に当たり、単純承認をしたものとみなされます。

熟慮期間内に何も行わなかった場合

法定単純承認の2つ目は、熟慮期間中に相続放棄及び限定承認のいずれも行わなかったことです。
では、いつから、どの期間、相続放棄及び限定承認をしないと単純承認をしたとみなされるのでしょうか。つまり、「熟慮期間中」とはどういう意味なのでしょうか。
これについては、多くの場合、相続人が被相続人が亡くなったことを知った時点から3か月間が熟慮期間であり、この期間に相続放棄も限定承認も行わないと単純承認をしたものとみなされます。
以上のとおり、一定期間、相続放棄や限定承認をしない場合には、単純承認をしたものとみなされますので、相続放棄や限定承認をしたい場合には注意が必要です。

相続放棄や限定承認後に財産の隠匿・消費などがあった場合

単純承認とみなされる3つ目は、限定承認や相続放棄をした後に、相続財産の全部もしくは一部を隠匿したり、ひそかに消費、悪意で相続財産の目録中に相続財産を記載しなかったりすることです。つまり、仮に限定承承認や相続放棄をした後であったとしても、相続財産を隠匿するなど、単純承認した相続人でなければできない行為をした場合(隠匿、消費)などにおいては、単純承認をしたものとみなされています。
そのため、限定承認や相続放棄をした後においても、相続財産の取り扱いには注意が必要となります。

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単純承認にならないケース

上記において、法定単純承認について、ご説明いたしました。もっとも、相続財産を使用したような場合であってもt、一定の場合には、法定単純承認には当たらない場合があります。以下においては、法定単純承認に当たらない場合のご説明をいたします。

葬儀費用を相続財産から出した場合

被相続人が亡くなった場合、一般的には、葬儀が行われることとなります。この葬儀費用を遺産から支払った場合、相続財産の一部の処分に当たるのでしょうか。
これについては、葬儀費用の支出については、社会的見地から不当なものではなく、相続財産の処分に当たらないと判断した裁判例(大阪高決平成14年7月3日(平成14年(ラ)第408号))があります。そのため、高額な葬儀費用の支出などでなければ、単純承認をしたものとはみなされないと考えられています。

生前の入院費を相続財産から支払った場合

生前の入院費を相続財産から支払った場合について、過去の裁判例(大阪高決昭和54年3月22日(昭和53年(ラ)第447号))において、火葬費用並びに治療費残額の支払いに充てたのは、「人倫と道義上必然の行為であり、公平ないし信義則上やむを得ない事情に由来するものであつて、これをもつて、…債務承継の意思を明確に表明したものとはいえない」として、相続財産の一部を処分したとはいえないと判断したものがあります。
ただし、この裁判例は、被相続人と音信不通であったところ、警察からの連絡で被相続人の死亡を知らされて火葬場に行った際に治療費と火葬費用を請求されたため、相続人が治療費(1万2000円)と火葬費用(3万5000円)をその場で支払ったという特殊な事情があります。
そもそも、治療費を相続財産から支払うことについては、相続財産の一部を使用するものであり、単純承認をした相続人でなければ行えない行為と考えられます。また、相続人と被相続人との関係性や、治療費の額も様々であり治療費の支払いが、必ずしも「人道や道義上必然の行為」とまではいえないでしょう。
したがって、生前の入院費を相続財産から支払うことは、場合によっては単純承認したとはみなされないことがあると考えられますが、相続財産の一部を使用するものであり、単純承認したとみなされる可能性も十分にあります。そのため、相続放棄等を考える場合は、生前の治療費を相続財産から支払わない方がよいと思われます。

形見分けを受けた場合

形見分けに関して、単純承認とみなされる場合と単純承認にはみなされない場合の両方が考えられます。
そもそも形見分けは、被相続人が大切にした物を分けることですが、「被相続人が大切にしていた物」も遺産であるため、形式的には相続財産の一部を処分したといえそうです。もっとも、例えば、被相続人が長年愛用していた衣類など、経済的な価値がない物を形見分けしても、相続財産の価値を減らしたとはいえません。そのような形見分けを、単純承認をした相続人しか行えないような処分と考えることはできないため、、単純承認とはみなされないと考えられます。
一方で、形見分けといっても、高級腕時計など、経済的価値がある物を形見分けした場合においては、相続財産を減少させており、単純承認をした相続人しか行い得ないような行為に当たると考えられます。
したがって、形見分けで経済的価値が高い物をもらい受ける場合は、単純承認とはみなされる一方、経済的価値の低い物をもらい受ける場合は、単純承認とはみなされない可能性が高いといえます。

単純承認するかどうかはどうやって決める?

単純承認は、プラスの相続財産もマイナスの相続財産も無限定に相続します。そのため、マイナスの財産の方が大きい場合は、単純承認をすべきではなく、相続放棄又は限定承認を考えるべきです。
そのため、基本的には、単純承認するか否かは、相続財産がトータルで見てプラスになっているのか、マイナスになっているかで判断すべきといえます。
もっとも、相続放棄をすると、例えば、被相続人の自宅不動産(相続人にとっての実家)を相続できなくなります。このような場合は、金銭的な問題だけではなく、思い出や思い入れなど、心情的な問題も伴います。そのため、基本的には、相続財産がトータルでプラスなのか、マイナスなのかで単純承認をするかを決めることになりますが、それ以外にも、一定の財産を引き継ぎたいという希望があるのかなども考慮して決めることになります。

単純承認したくない場合

単純承認をしたくない場合は、熟慮期間中に相続放棄又は限定承認をする必要があります。相続放棄又は限定承認をした場合は、単純承認をしたことにはなりませんので、単純承認をすることを回避することができます。なお、上記のとおり、相続放棄や限定承認をした場合でも、後に財産の隠匿等を行うと、単純承認したとみなされることがありますので、注意が必要です。

単純承認についてお悩みの方は弁護士へご相談下さい

このページでは、単純承認について、ご説明させていただきました。単純承認すべきか否かが判断できない、そもそも相続財産が分からない、単純承認をしたいが、他の相続人と揉めている、単純承認後どうしたらいいのか分からないなど、相続に関して、お悩みの方は、専門家である弁護士に、一度ご相談いただければと思います。

離婚時にきちんと養育費を取り決めても、離婚後に生活環境や収入が変化することは十分あり得ます。そのため、「養育費が足りない」と悩まれる方も多いでしょう。
その場合、「養育費の増額請求」を行うという方法があります。一度取り決めた養育費であっても一定の要件を満たせば増額できる可能性があるため、どのような手続きなのかしっかり押さえておくことをおすすめします。
本記事では、離婚後に養育費を増額するための流れやポイントを解説していきます。子供の幸せや健全な成長のためにも、ぜひ参考になさってください。

一度決めた養育費を増額してもらうことはできる?

一度取り決めた養育費でも、増額することは可能です。養育費の金額は離婚時の経済状況をもとにしているため、離婚後の生活環境・収入の変化に応じて見直すべきだからです。
ただし、養育費を増額するには合意当時に予測できなかった事情の変更があり、変更をせずに変更前の養育費の金額の維持をすることが衡平を害するような例外的な場合にあたることが必要になります。その際、増額の必要性について根拠をもって主張しなければならないため、しっかり対策する必要があるでしょう。
では、養育費の増額が認められるのはどういった場合でしょうか。以下で解説します。

養育費の増額請求が認められる場合

養育費の増額が認められるケースには、以下のようなものがあります。

  • 子供の進学が決まり、授業料がかかる
  • 子供や権利者(養育費を受け取る側)が病気になり、高額な医療費がかかる
  • 権利者が病気、怪我、リストラで働けなくなり、収入が減った
  • 義務者(養育費を支払う側)の収入が大幅に増えた
  • 物価が急上昇し、生活が苦しくなった

ただし、義務者が扶養する家族が増えている場合や義務者の収入も減っていたりする場合など、上記のようなケースでも増額が認められない可能性があります。

養育費算定表を参考に増額額が決まる

養育費の増額が認められた場合、具体的な金額は「養育費算定表」に沿って決めるのが一般的です。
養育費算定表とは、当事者の収入や雇用形態ごとに養育費の相場を定めた表のことで、実際の調停や裁判でも用いられています。なお、実際の算定表は裁判所のホームページで公表されています。
また、養育費算定表は令和元年12月に改定され、令和元年12月以前の基準より高額な相場が定められました。お互いの収入によっては、改定前の基準で定めた養育費よりも1~2万円増額されているため、確認されると良いでしょう。
ただし、算定表の改定自体は、養育費を増額する理由にはならないとされています。生活環境や収入の変化が前提となりますので、ご注意ください。

養育費の増額請求の方法について

養育費の増額請求は、以下の流れで行いましょう。
適切な手順を踏まないと、相手方とトラブルになったり、かえって不利な結果になったりする可能性があるため注意が必要です。

まずは話し合いを試みる

まずは相手に連絡し、「養育費を増額してほしい」と直接伝えましょう。手段は、電話でもメールでも郵送でも可能です。相手と合意できればすぐに養育費を増額できますし、穏便に解決することもできます。
話し合う際は、増額を希望する理由をきちんと説明したり、子供のために養育費を増額してほしいと伝えたりするのがポイントです。感情的になると話し合いが難航しやすいため、あくまでも冷静に臨むことを意識しましょう。
相手と合意できたら、後のトラブルを防ぐため、書面を取り交わしておくことが重要です。例えば、後述する「公正証書」を作成しておくと安心でしょう。

内容証明郵便を送る

“相手に連絡を無視された”“相手とまったく折り合いがつかない”といった場合、内容証明郵便を送るのが有効です。内容証明郵便とは、いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったかが公的に記録される郵便のことです。
そのため、受け取った相手がプレッシャーを感じ、話し合いに応じてくる場合があります。また、“養育費の増額を請求した”という事実の証拠になり、調停や審判に発展したときに役立つこともあります。
ただし、内容証明郵便を送ると、「請求に応じなければ法的措置も辞さない」という強気の姿勢が相手に伝わるため、穏便に解決できない可能性があります。そのため、話し合いではどうしても合意できない場合の手段と考えておくことをおすすめします。

合意を得られなかったら調停・審判へ

内容証明郵便を送っても相手と合意できない場合、「養育費増額調停」を申し立て、裁判所を挟んで話し合うことになります。
調停では、調停委員が当事者それぞれの意見を聞きながら話し合いを進めたり、解決策を提案してくれたりします。そのため、当事者だけで話し合うよりもスムーズに解決できる可能性が高いでしょう。
とはいえ、調停は話し合いに過ぎないため、当事者が合意できなければ不成立となります。調停不成立となった場合、自動的に「養育費増額審判」に移行し、裁判所が“養育費の増額を認めるか”“いくら増額するか”を判断することになります。

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養育費の増額について決まったら公正証書を作成する

相手と話し合って合意できたら、合意内容を「公正証書」に残しておきましょう。口約束だけだと、後に言った言わないのトラブルになるなど、増額後の養育費が未払いになったりするリスクがあるためです。
公正証書は、公証人が当事者の意思を確認しながら作成する、信用性が高い書面ですので、合意内容の強力な証拠になり、後のトラブルを防ぐのに有効といえます。
また、作成された公正証書は基本的に公証役場で20年間保管されるため、紛失の心配もありません。
さらに、「強制執行認諾文言」を付けておけば、将来養育費が未払いになった場合、裁判所の手続きを踏まずに相手の財産を差し押さえることができますので、ポイントとして覚えておくとよいでしょう。

養育費の増額が認められた判例

【東京家庭裁判所立川支部 令和2年10月27日審判】
離婚時、「義務者は3人の子供が満20歳に達するまで(大学に進学していれば満22歳に達したあとの3月まで)、1人につき3万円(合計9万円)の養育費を支払う」と取り決めたが、離婚後に権利者が増額請求を申し立てたという事案です。
裁判所は、

  • 権利者は、開腹子宮全摘出の手術を受けて経過観察中であること
  • 権利者は、うつ病などが悪化して仕事を継続できなくなり、収入が減少したこと

により、権利者の収入が減少したことを認め、養育費を増額すべき事情の変更に該当するべきであると判断しました。
また、裁判所は、当事者双方の収入を踏まえ、義務者は未払い分のほか、令和3年3月までは合計12万円、令和4月からは合計11万円の養育費を支払うのが相当と判断し、当初取り決められた養育費9万円からの増額を認めました。

よくある質問

養育費の増額請求を拒否された場合はどうしたらいいですか?

話し合いで増額を拒否された場合や、相手に話し合う意思がまったくない場合、速やかに調停や審判を申し立てるのもひとつの方法です。
調停や審判の確定後に作成される「調停調書」や「審判書」には強い法的拘力があるため、相手がその内容に従わない場合、速やかに「強制執行」の手続きをとることができます。強制執行は、相手の財産を差し押さえるなどして養育費を回収できる有効な手段です。 また、養育費の強制執行では将来にわたって相手の給与を差し押さえることができるため、未払いを防ぐこともできます。

相手側が養育費増額調停を欠席した場合は増額が認められますか?

相手が調停を欠席したからといって必ず増額できるわけではありませんが、こちらに有利に働く可能性があります。
相手が何度も調停を休んだり、呼出に応じなかったりした場合、調停不成立となり審判に移行します。審判では、裁判所がさまざまな事情を考慮して養育費の増額について判断を下します。
このとき、相手からの主張や反論がなければ、裁判所はこちらの主張を重視するため、有利な結果となりやすいでしょう。
ただし、適切な金額を認めてもらうには、主張を裏付ける証拠が必要です。例えば、給与明細や源泉徴収票・医療費の明細書・学費の書面・相手の収入がわかる資料などを揃えると良いでしょう。なお、相手の収入がわからない場合、「賃金センサス」という平均賃金のデータを用いて金額を決定するのが一般的です。

今月15歳になる子供がいます。一律と決めた養育費を算定表に合わせて増額するよう請求することは可能ですか?

養育費の増額が認められるのは、基本的に離婚後に“事情の変化”があった場合のみです。
当事者が合意できれば問題ありませんが、調停や審判で争う場合、「取り決めた養育費が相場より低い」という理由で増額を認めてもらうのは難しいでしょう。
ただし、以下のようなケースでは、事情の変化がなくても例外的に適正額まで増額が認められる可能性があります。

  • 相手に脅されて合意書にサインした
  • 相手が収入を偽っていた

養育費の増額請求を行う場合は弁護士にご相談ください

養育費は子供の成長にとって重要ですので、一度取り決めた内容でも事情に応じて変更すべき場合があります。しかし、養育費の増額は簡単に認められるものではありません。効果的な主張や証拠を準備するには、個人で対応するには限界があるでしょう。また、離婚した相手と話し合うのは精神的負担も大きいといえます。
そこで、養育費の増額を希望する方はぜひ弁護士にご相談ください。弁護士であれば、ご依頼者様の代わりに相手方と交渉したり、増額の必要性を裏付ける証拠集めをサポートしたりすることができます。
また、調停や審判に発展した際も、ご依頼者様の事情に応じて適切な養育費をしっかり請求することができるため、自身で行うよりも有利に進む可能性が高いでしょう。
弁護士法人ALGには、これまで養育費の取り決めを含む多くの離婚問題を扱ってきた弁護士が揃っています。おひとりで悩まず、まずはお気軽にご相談ください。

離婚前に別居するとき、「子供だけは手放したくない」と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、子供を連れた別居には注意点があり、知らずにいると親権争いでかえって不利になりかねません。また、別居後の生活で苦しまないよう、収入や生活環境を整えておくことも重要です。
そこで本記事では、「子供を連れて別居したい」とお考えの方に向け、事前準備や対策を具体的に紹介していきます。子供の幸せのためにも、別居に踏みきる前にぜひご確認ください。

離婚しないで子供を連れて別居をするときの注意点

子供を連れた別居では、さまざまな準備を行う必要があります。急いで別居に踏み切ると、きちんと子供を監護できず、後の親権争いで不利になる可能性があるため注意が必要です。
具体的にどんな準備をすべきなのか、以下でみていきましょう。

別居後の養育環境

別居後、現在の家に住み続けられるとは限りません。実家に帰ったり、賃貸物件を契約したりするなど、引っ越し先を確保しておく必要があります。
また、引っ越し先によっては子供の保育園や幼稚園、学校の学区が変わる場合があります。転園や転校の手続きには“住民票の異動”などが必要ですので、役所に必要手続きをご確認いただき、別居後すぐに済ませることをおすすめします。

婚姻費用や養育費

別居中は、「婚姻費用」をしっかり請求しましょう。
婚姻費用とは、収入の少ない側が相手に請求できる生活費のことです。また、子供を連れて別居する場合、自身の生活費だけでなく、子供の生活費や学費も含む養育費相当分も婚姻費用の一部として請求できます。
しかし、関係性が悪化した相手に婚姻費用を請求しても応じてくれないおそれもあります。この点、弁護士が交渉することで支払いに応じる可能性がありますので、不安のある方は弁護士への相談を検討するのも一つの手です。

児童手当、児童扶養手当

児童手当を受けている場合、同居中は収入が多く世帯主である夫が受給者になっているのが一般的です。しかし別居後は、“子供と一緒に暮らす側”に受給者を変更することができます。児童手当は子供を育てるための貴重な収入源ですので、忘れずに変更手続を行い、自身名義の口座に振り込まれるようにしておきましょう。なお、変更する際は、基本的に自身と子供の住民票を異動する必要があります。
なお、離婚により1人で子供を監護するようになった方は「児童扶養手当」を受給できる場合があります。ただし、受給条件は市区町村によって異なるため、一度ご確認ください。

面会交流

面会交流は、子供の権利ですので、別居の前後で面会交流の条件を定めることが必要になることがあります。
「別居した相手に子供を会わせたくない」という心情もあるでしょうが、離れて暮らす親とふれ合う面会交流は“子供の権利”として認められており、基本的に拒むことはできません。これは、離婚せずに別居した場合も同様です。
ただし、面会交流が子供のためにならない場合、面会交流を行わなくて良いと判断される可能性があります。例えば、相手が子供を虐待していたケースや、子供が面会交流を強く拒絶するケースなどです。

別居と子供の連れ去り

子供がいる家庭では、別居する際に「連れ去り別居」とならないようご注意ください。
連れ去り別居とは、“相手が承諾しないまま、子供を連れて勝手に別居すること”をいいます。連れ去り別居をすると、違法性が問われ、親権争いで不利になるおそれがあります。

違法な連れ去り別居と判断されないための注意点

「相手と子供を会わせたくない」といった身勝手な理由で子供を連れ去った場合、子供の連れ去り方によっては、“違法”な連れ去り別居と判断されることがあります。例えば、以下のようなケースです。

  • どちらが子供の監護者になるか折り合いがつかず、勝手に子供を連れ出した
  • 保育園や幼稚園、学校から子供を連れ去った
  • 子供を待ち伏せて連れ去った
  • 面会交流のあと、子供を監護者の元に帰さなかった

一方、子供の身の安全を守るために必要だった場合、“正当”な連れ去り別居と判断され、違法とならない場合があります。例えば、以下のようなケースです。

  • 相手が子供に虐待をしていた
  • 自身がDVを受けており、子供にも影響が及ぶ危険があった

別居中に子供を連れ去られた場合

子供を連れて別居後、相手に子供を連れ去られてしまうことがあります。その場合、と「監護者指定」及び「子の引渡し」の審判を申し立て、子供を取り戻すことを目指しましょう。
このとき、「審判前の保全処分」も一緒に申し立てることをおすすめします。これにより、早期に“子供の仮の引渡し”が認められる可能性があるためです。
これらの手続きは、“相手方の住所地がある家庭裁判所”に申し立てることになります。
一方、自力で子供を取り戻すことは避けましょう。このような“自力救済”にあたる行為は、違法性が問われたり、親権争いで不利になったりするリスクがあるためです。

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DV、モラハラ加害者との別居

子供が相手からDV・モラハラ・虐待を受けている場合、すぐに子供を連れて別居すべきです。
また、別居後は、子供の身の安全を守るための対策をとる必要があります。例えば、裁判所に「保護命令」を申し立てるという方法があります。保護命令が認められると、裁判所から相手に対し、自身や子供に接近しないよう命じてもらうことができます。
また、相手に離婚を請求することも検討しましょう。「子供が幼いうちは両親が揃っていた方が良い」と考え、離婚をためらうかもしれませんが、暴力があるような家庭環境はかえって子供の成長に悪影響を与えます。親権・財産分与・慰謝料といった離婚条件をできるだけ有利に取り決め、離婚後の生活を整えておきましょう。また、面会交流のルールも、子供の幸せを最優先して取り決めることが重要です。
ただし、相手と直接話し合うのが危険な場合、弁護士に相談して交渉を任せることをおすすめします。

別居後の子供とのかかわり方

両親の別居は、子供にとって大きなストレスとなります。「自身が捨てられるのではないか」と不安を抱いたり、「両親が別居したのは自身のせいだ」と思い込んだりするケースもあります。
このような状況を防ぐため、別居後は“子供のケア”に注力することが重要です。具体的には、以下の点を意識するようにしましょう。

  • 仕事で忙しくても、子供と過ごす時間を十分作る
  • 子供の些細な話にも耳を傾け、笑顔で会話する
  • 子供と相手の面会交流の機会を作る

よくある質問

家庭内別居する際に子供に対して注意することはありますか?

家庭内別居中は、“子供に両親からの愛情を惜しみなく注ぐこと”“子供が安心して暮らせるよう配慮すること”を意識しましょう。
幼い子供であっても、両親の不仲や距離感・不穏な雰囲気を察することは十分あり得ます。それにより不安な気持ちを抱えたり、両親の顔色をうかがいストレスを抱えたり、コミュニケーション不足になったりするなど、さまざまな悪影響がおこる可能性があるため注意が必要です。「子供のために、離婚せず家庭内別居する」という夫婦もいますが、子供がストレスを抱えることにかわりないということを理解しましょう。
また、家庭内別居後にトラブルとならないよう、子供の身の回りの世話(食事の準備・洗濯・学校への送迎など)の役割分担を決めておくのもポイントです。

別居中から自分の扶養に子供を入れておいたほうがいいですか?

別居中から、子供を自身の扶養に入れることをおすすめします。というのも、以下のような金銭的メリットを受けられる場合があるためです。

  • 会社から扶養手当が支給される(勤務先での定め方によります)
  • 住民税が非課税になる(所得額や扶養する子供もの人数によります)
  • 学校の授業料や、公営住宅の家賃が安くなる(所得額や扶養する子供もの人数によります)
  • 離婚後の“児童扶養手当”の支給額が上がる(別居時と離婚時とで年度をまたぐ場合に支給額が変わってきます)

ただし、相手が子供の扶養を外すことに応じてくれるとは限りません。子供の扶養を外すと、会社に別居した事実を知られる可能性があるためです。別居時の子供の扶養で揉めた場合、弁護士に相談し、交渉してもらうのも有効でしょう。

配偶者に黙って子供を連れて別居をした場合は慰謝料請求されますか?

相手に無断で別居した場合、慰謝料を請求される可能性があります。なぜなら、「同居義務違反」や「悪意の遺棄(相手を見捨てる行為)」をした“有責配偶者”にあたると判断されるためです。
ただし、相手のDV・モラハラ・虐待などから子供を守るために別居した場合、別居に正当性が認められるので、慰謝料を請求される可能性は低くなるでしょう。
なお、慰謝料の金額は夫婦が話し合って決められますが、折り合いがつかない場合、調停や裁判といった裁判所の手続きを利用して取り決めることになります。同居義務違反や悪意の遺棄の慰謝料相場は50万~300万円となっています。

子供を連れての別居が違法とならないためにまずは弁護士にご相談ください

どちらが子供と暮らすかは、別居時に特に揉めやすい問題です。お互いに譲らなかったり、冷静に話し合えなかったりして、なかなか決着しないことも少なくありません。とはいえ、相手と合意できないまま別居すると親権争いで不利になりかねないため、じっくり話し合う必要があります。

そこで、子供を連れた別居をお考えの方は、弁護士にご相談ください。子供と一緒に別居をすることが不適切な場合もありますが、記載したケースに限らず子供と一緒に別居をすることが違法ではないと判断される場合もあります。弁護士は、このような場合を含めて適切にアドバイスできますし、ご依頼者様の代わりに相手と交渉できるため、スムーズかつ有利に進められる可能性があります。
適切な方法で別居に踏み切り、愛する子供とずっと一緒に暮らすためにも、ぜひ弁護士法人ALGへご相談ください。

交通事故で後遺障害が残った場合、精神的損害に対する賠償金である「慰謝料」の他に、将来稼げるはずであった減収分に相当する「逸失利益」を請求することができます。 算定方法によっては金額が大きく変動する項目なので、大まかなことは知っておくと安心です。

後遺障害逸失利益とは

交通事故が原因で後遺障害が残った場合、仕事や日常生活に様々な支障が出てきます。その支障が労働能力が喪失したからと捉え、労働能力の喪失の結果、被害者が将来得られたであろう収入を失ったことによる損害を指して、後遺障害逸失利益といいます。

後遺障害逸失利益の計算方法

後遺障害逸失利益は、交通事故前の収入又は収入とみなされる額(基礎収入)に、後遺障害による労働能力の喪失した割合(労働能力喪失率)と、労働能力喪失期間に対応した中間利息を控除して現在価値に修正するための係数(ライプニッツ係数)を乗じて求めることができます。
計算式にすると、
後遺障害逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
となります。
各項目については、後ほど見ていきましょう。

基礎収入の算出方法

基礎収入とは、年間にどれくらいの収入を得られたのかを言います。
原則として、被害者が交通事故に遭う前の収入を基準にしています。ただし、現実的には収入のない主婦(主夫)や学生でも認められることが多く、その場合には前年度の収入を観念できないため、賃金センサスによる平均賃金を基準とすることもあります。
また、年金や家賃収入、株式の配当等の不労所得に当たるものについては、後遺障害の影響(減収)を受けないため、基礎収入には含まれません。

給与所得者(会社員など)

原則として、交通事故の前の現実収入(賞与等を含む)を基準とします。
一般的には、交通事故の前年度の源泉徴収票に記載してある金額を基礎収入として計算します。

個人事業主(自営業など)

原則として、交通事故の前の申告所得を基準とします。
一般的には、交通事故の前年度の確定申告に記載のある所得金額に青色申告特別控除等現実に支出していない金額を加えた額を基礎収入として計算します。

会社役員

原則として、会社から受け取る役員報酬のうち、利益配当部分(実際に働いたかどうかで金額が変わらない部分)については基礎収入に当たらないとされています。
実際の労働状況から、役員報酬のうち労務の対価に当たると認められる部分があることを証明できる場合には、この労務対価部分のみを基礎収入とすることができます。

家事従事者(主婦・主夫など)

原則として、賃金センサスによる女性労働者の全年齢平均賃金を基準とします。現実収入がなくても、家事労働は金銭的に評価できるものとして、経済的利益の損失が認められるからです。現実収入という基準がないので算定不能かとも思われますが、家事労働という労働内容から、「主夫」であっても、女性労働者の全年齢平均賃金を基準とします。
兼業主婦(主夫)等、現実収入がある場合には、パート収入等算定可能な基準を用いることが多いです。
なお、一人暮らしの家事労働については、原則として逸失利益は認められません。そのため、家事労働についての逸失利益を求める場合には、住民票や自認書等、同居家族がいることの証明が必要です。

無職

現実に被害者の収入が減少していないため、原則として、後遺障害逸失利益は存在しません。
しかし、被害者に労働意欲や労働能力があり(休職中等)、将来的に就労する蓋然性を証明できる場合には、就労後の収入や交通事故前に就労していたときの収入を参考に基礎収入を計算します。

学生

原則として、賃金センサスによる男女別全年齢平均賃金を基準とします。現在時点では現実収入がなくても、将来的に就労する可能性が高いと認められるからです。
大学生や、大学進学の可能性が見込まれる場合には、賃金センサスによる大卒の男女別全年齢平均賃金を基礎収入とすることがあります。

高齢者

有職者か無職者かによって変わります。
有職者の場合は、上記のとおり計算します。
無職者である場合には、労働意欲や労働能力があり、将来的に就労する蓋然性を証明できる場合には、賃金センサスによる男女別年齢別平均賃金を基礎収入とすることがあります。

幼児・児童

原則的には、学生と同じです。
しかし、女子については、出産や育児による離職等を要因とする男女間の賃金格差を適用されるいわれはないため、全年齢平均賃金で計算することもあります。

労働能力喪失率

労働能力喪失率とは、後遺障害により労働能力が喪失した割合のことです。
原則として、労働能力喪失率表(自動車損害賠償保障法)に基づいて、後遺障害逸失利益を計算することになる。
被害者の年齢・性別・後遺障害の部位・職務内容等によって、実際に被害者の労働能力がどれほど喪失したか異なるため、被害者それぞれの事情を考慮して最終的な労働能力喪失率を決めることになります。
また、同じ等級内でも、号数によって労働能力がどれほど喪失したかが異なり、いくつかの等級が併合している場合にも異なるため、後遺障害等級に応じて定められた労働能力喪失率よりも低い割合で計算されることもあります。

等級別労働能力喪失率
等級 労働能力喪失率
第1級~第3級 100%
第4級 92%
第5級 79%
第6級 67%
第7級 56%
第8級 45%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第13級 9%
第14級 5%

労働能力喪失期間の算出方法

労働能力喪失期間とは、後遺障害によって労働能力が喪失してしまうと考えられる期間のことをいいます。
原則として、労働能力喪失期間の始期を症状固定日、労働能力喪失期間の終期を67歳としています。後遺障害の程度によっては、労働能力喪失期間の終期を67歳よりも短い期間で計算することもあります。

幼児~高校生

始期は18歳、終期は67歳とすることが多いです。
交通事故時に将来的に大学進学が見込まれる場合には、始期を22歳(医学部等卒業年によっては異なる)、終期を67歳とする場合もあります。

大学生

始期を22歳(医学部等卒業年によっては異なる)、終期を67歳とする場合もあります。

会社員

症状固定時の年齢から67歳までの年数を労働能力喪失期間とします。

高齢者

68歳以上である場合は、簡易生命表(厚生労働省作成)による平均余命の2分の1の年数を労働能力喪失期間とします。
67歳以下の場合は、症状固定時の年齢から67歳までの年数と、平均余命の2分の1の年数のどちらか長い方を労働能力喪失期間とします。

中間利息の控除

中間利息の控除とは、将来受け取る予定だった収入を現在の価値に修正することです。
後遺障害逸失利益は、将来数年~数十年かけて受け取るはずだった収入を、一括で受け取ることになります。そうすると、預金等した場合に利息が付き、将来受け取る予定だった収入を上回る額を受け取ることになってしまいます。これを修正し、過剰な賠償請求にならないようにするために調整するのが、中間利息の控除です。

ライプニッツ係数

ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するために用いられる、労働能力喪失期間に対応した係数のことです。
令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、改正前の民法の法定利率5%が適用されます。令和2年4月1日以降に発生した事故の場合は、法定利率の3%を用います。

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後遺障害逸失利益の計算例

16歳の高校生 後遺障害等級8級に該当した場合

16歳の男子高校生(1年生または2年生)・大学進学予定なしの場合
基礎収入は賃金センサスによる男性全年齢平均賃金、労働能力喪失率は表の後遺障害等級第8級の値に基づき45%、労働能力喪失期間は高校卒業時の18歳~67歳の47年間で計算します。

(基礎収入)545万9500円
(労働能力喪失率)45%
(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)24.038(47年間+2年の無収入期間)
545万9500円×45%×24.038=5905万5957円

50歳の公務員 後遺障害等級12級に該当した場合

50歳の男性公務員・年収600万円の場合

基礎収入は前年度の源泉徴収票記載の収入金額(今回の例では600万円)、労働能力喪失率は表の後遺障害等級第12級の値に基づき14%、労働能力喪失期間は50歳~67歳の17年間で計算します。

(基礎収入)600万円
(労働能力喪失率)14%
(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)13.1661(17年間)
600万円×14%×13.1661=1105万9524円

※会社員は上記の計算になることが多いですが、公務員は会社員より身分保障が手厚い場合が多いので、定年までは労働能力喪失率を低くし、定年後は通常通りとする場合があります。

30歳の主婦 後遺障害等級14級に該当した場合

基礎収入は賃金センサスによる女性労働者の全年齢平均賃金、労働能力喪失率は表の後遺障害等級第14級の5%、労働能力喪失期間は30歳~67歳の37年間で計算します。

(基礎収入)381万9200円
(労働能力喪失率)5%
(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)22.167(37年間)
381万9200円×5%×22.167=423万3010円
むち打ち等の場合には、労働能力喪失期間を5年で計算するため、
381万9200円×5%×4.580=87万4597円
となります。

後遺障害逸失利益を増額させるポイント

後遺障害等級が上級であるほど労働能力喪失率が高くなり、現実の収入に近づくことになるので、適切でない場合には異議申立てをしましょう。ただし、後遺障害の等級認定の基準にのっとって判断されるため、基準に該当しない場合には異議申立てをしても等級は上がりません。
基礎収入は、これまで見てきたとおり、職業や年齢で計算方法が異なるため、適切な計算方法で算出されたものでない場合は、交渉すべきです。
労働能力喪失率についても、これまで見てきたとおり、個々の事情によっては定められた労働能力喪失率どおりにならないこともあるので、十分に精査して交渉すべきです。

減収がない場合の後遺障害逸失利益

原則として、減収がない場合には後遺障害逸失利益は認められません。ただし、どのような場合でも認められないとすると、妥当な結果とならない場合があるため、例外的に「特段の事情」がある場合には、後遺障害逸失利益が認められます。
被害者自身の努力によって減収が生じていない場合や、勤務先の配慮によって減収が生じていない場合は、特段の事情がある者として、後遺障害逸失利益が認められます。

後遺障害逸失利益に関する解決事例・裁判例

耳鳴りなどの症状から後遺障害等級12級相当の認定が受けられ、後遺障害逸失利益などの増額に成功した事例

依頼者は頸椎捻挫、腰椎捻挫、両耳鳴りの症状が生じ、約8か月間の通院治療を受けることとなりました。
担当弁護士は、依頼者が症状固定を迎えた後、後遺障害等級認定申請を行った結果、両耳鳴症につき、後遺障害等級12級相当の認定を受けました。
12級相当の認定を受けたため、それを前提に相手方と賠償額の交渉に臨んだところ、相手方は、両耳鳴症は事故直後に発症した症状ではない等と主張し、頚椎捻挫、腰椎捻挫のむち打ち症相当の14級相当として、後遺障害逸失利益について労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は3年と、非常に低水準といえる回答をしてきました。
担当弁護士は、医療記録等の精査や、依頼者の本件事故前後の稼働内容を整理して主張立証を行った結果、当方主張に近い内容で和解が成立しました。

弁護士が介入したことで学生の後遺障害逸失利益と後遺障害等級14級9号が認められた事例

自転車対車の事故で、依頼者は頚椎捻挫、腰椎捻挫、左上腕骨近位不全骨折等と診断され、延長交渉を行いながら約8か月間の通院治療を受けることになりました。
肩の痛みや可動域制限、首や腰の痛みが残存したため後遺障害申請を行いましたが、自賠責からは後遺障害非該当との回答が返ってきたため、異議申立てをすることにしました。異議申立てに当たっては、カルテの記載や事故当時の状況から後遺障害に認定されるべきことを積極的に主張した結果、肩と腰の痛みの症状につき後遺障害14級9号が認定されました。
示談交渉においては、依頼者が症状固定時高校2年生であること等から、逸失利益の発生は認められないとの反論もありましたが、高校在学時にはアルバイトで月数万円の収入があったことから逸失利益は発生し、卒業後は進学せず働く可能性もある以上当然逸失利益は発生すると主張して請求を行ったところ、請求通りの後遺障害逸失利益が認められました。

後遺障害逸失利益は弁護士に依頼することで増額できる可能性があります

後遺障害逸失利益は、将来の生活を補償するための大切な賠償金の一つです。被害者請求で適切な後遺障害等級の認定を受け、基礎収入の計算方法を適切に選ぶことで、増額できる可能性があります。
弁護士は、後遺障害逸失利益の獲得だけでなく、治療中は窓口の交代、交渉に入ってからは全般の賠償金の獲得についても尽力しますので、まずはご相談ください。

相続においては、プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する「単純承認」(相続人が複数いる場合は遺産分割協議を行うこととなります)、プラスの財産もマイナスの財産も全て放棄する「相続放棄」の二つだけでなく、相続によって得たプラスの財産の分だけマイナスの財産も相続するという「限定承認」という制度があります。

限定承認とは

限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続の承認を行うという制度です。相続財産のうち、プラスの財産は相続したいが、既にマイナスの財産がプラスの財産を上回ることが明らかな場合、又はマイナスの財産の総額が不明で、単純承認してプラスの財産もマイナスの財産も全て相続してしまうと、あとからマイナスの財産がプラスの財産を上回ってしまう可能性がある場合などに、マイナスの財産を引き継ぐのは、引き継いだプラスの財産の金額までとしておくことができます。

限定承認のメリット

限定承認のメリットは、相続財産において、マイナスの財産の方が大きいか、マイナスの財産の総額が不明でマイナスの財産の方が大きくなる可能性がある場合に、引き継ぐマイナスの金額を、引き継ぐプラスの財産の金額までにとどめることができます。

プラスの財産以上の負債を負うことがない

限定承認は、相続したプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する制度ですので、原則として、相続人の手出しによる相続債務の弁済はしなくてよいこととなります。もっとも、限定承認を選択する場合、相続財産である不動産等を残したいという目的ですることも多いかと思われますが、この場合、先買権の行使をすることになります。この場合は、全体としてみれば、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続していることには変わりはありませんが、相続人の固有財産からの支出は生じるということにはなります。

連帯保証人の地位は受け継ぐことに注意が必要

限定承認の場合も、連帯保証人としての地位は相続することになります。つまり、被相続人が何らかの債務について連帯保証債務を負っていた場合、限定承認を行った相続人も連帯保証債務を引き継ぐこととなります。もっとも、弁済の義務を負うのは相続したプラスの財産の範囲内であることはかわりません。

特定の財産を残せる

限定承認という制度は、相続財産をお金に換え、その範囲で相続債務を弁済し、清算する制度です。
よって、不動産や自社株などといった財産も原則売却することになります。
もっとも、限定承認を行った相続人には、「先買権」という権利が認められており、本来売却する相続財産のうち、相続人にとって必要な財産だけ、正当な対価を支払って優先的に取得することができます。

限定承認のデメリット

このように、限定承認は、プラスの財産の範囲でのみマイナスの財産を負えばよく、しかも必要な財産は「先買権」で取得することができますので、メリットの大きい制度であるように見えます。
しかし、一方で、限定承認にもいくつかデメリットがあります。以下ご説明いたします。

相続人全員が限定承認する必要がある

まず、限定承認は、相続人全員が行う必要があります。
つまり、複数いる相続人の中に、限定承認に反対する相続人がいる場合、原則、限定承認はできないことになります。

相続放棄した人がいる場合

限定承認は、相続人全員で行う必要がありますが、相続放棄した人は除きます。つまり、相続人の中で相続放棄した人がいる場合には、当該相続放棄した人を除いて残りの相続人全員で限定承認の手続きを行えばよいこととなります。

相続財産に手を付けることができない

限定承認を行う場合には、定められた手続きにより、相続財産を換価したり、先買権行使して取得したりする必要があります。このような法定の手続きが完了する前に相続財産を勝手に処分等してしまうと、単純承認したものとみなされ、無限定に相続債務を相続することとなりかねません。
限定承認の完了までには長期間かかることもありますが、その間は自己判断での財産の処分等はできません。

税金がかかってしまう場合がある

限定承認を行うと、相続財産は被相続人から相続人に売却されたことになります。
よって、相続財産の中に、当該財産の取得時から値上がりしているものがあれば、当該値上がり分についてみなし譲渡所得税がかかり、被相続人に代わって、相続人が準確定申告を行う必要が生じます。

申請までに手間や時間が掛かる

これまで述べたように限定承認の手続きは清算のための手続きであるという側面があり、特段の手続きが必要のない単純承認や比較的簡単な手続きで終わる相続放棄に比べ、手続きは複雑であるといえ、時間もかかります。
そのため、限定承認を行うまでの準備も、他の手続きと比べて負担が重いといえます。また、そもそも限定承認は相続人全員で行う必要があるため、相続人全員の意向が統一されるまでに時間がかかる場合もあります。

受理された後も、更に手続きがある

限定承認の申述が受理されると、今度は限定承認の制度に従った清算の手続き等を進めていく必要があります。
そのためには、限定承認について官報等に載せる公告の手続きを行ったり、債権者への実際の弁済案(分配案)を作成したりと様々な手続きを行う必要があります。
なお、限定承認の制度に従った清算のための手続きには、原則裁判所の指導等の関与はなく、相続人ないし相続人の代理人である弁護士が適切に進めていく必要があります。

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限定承認の手続き方法

今度は、実際に限定承認を行う際の手続きの方法についてご説明します。

限定承認に必要な書類

限定承認の申述をする際は、以下の書類が必要となります。

  • 申述書
  • 被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本及び相続人の範囲がわかる戸籍
  • 被相続人の住民票(除票)または戸籍の附票
  • 限定承認の申述をする相続人全員の戸籍謄本
  • 財産目録
  • 財産目録記載の財産に関する証拠書類
  • その他家庭裁判所に提出を求められる書類

限定承認の手続きの流れ

限定承認を行う場合、相続人は、相続があったことを知ってから3か月以内に、被相続人の最後に住所地を管轄する家庭裁判所に対して、上記申述書等の書類を提出することとなります。
限定承認の申述が受理されると、公告や換価等の手続きが行われ、最終的に相続債権者等への弁済が行われることとなります。

費用

限定承認にかかる費用としては、裁判所への手数料、予納郵券、公告のための費用、財産評価や換価のための費用、戸籍等の収入のための費用が考えられます。限定承認は手続きが複雑で、清算のための制度という側面も有するため、実際に必要となる費用は、案件ごとに変わり得ます。

限定承認の期限は3ヶ月

先ほどもご説明した通り、限定承認は、相続開始を知った時から3か月以内にしなければなりません。3か月以内には限定承認をするかどうか判断がつかなかったり、必要な調査が終わらない場合には、この3か月の期間を伸長する手続きをとることも考えられます。
なお、3か月の期間について伸長する手続きをとることなく、3か月の期間が徒過してしまった場合、原則として限定承認を行うことはできません。

限定承認についてご不明な点はぜひご相談下さい

これまで限定承認をご説明してきましたが、お話しした通り、限定承認は他の相続手続きと比べても複雑な手続きです。公告や財産の換価、適切な弁済案の作成と実際の弁済などといった様々な手続きを行う必要があります。
お困りになられた際には、ぜひ一度弁護士に相談してみてください。

面会交流は、離れて暮らす親子がふれ合う貴重な機会です。自身や子供の幸せのため、定期的に面会交流を行いたいと思うのが親心でしょう。一方、離婚や別居した相手と子供を会わせることに抵抗を感じることもあります。
このように、面会交流は子供にかかわるゆえ父母が話し合っても決着しないことが多いです。そこで、「面会交流調停」を検討しましょう。面会交流調停を行うことで、スムーズかつ適切な解決が図れる可能性があります。
本記事では、面会交流調停の流れや手続き、ポイントなどを解説していきます。愛する子供との未来のため、ぜひ参考になさってください。

面会交流調停とは

面会交流とは、離婚後や別居中に、子供と離れて暮らす親(非監護親)が子供と交流することです。例えば、直接会って一緒に遊んだり、手紙やメールをやりとりしたりする交流などがあげられます。子供の健全な成長のため、両親とふれ合える面会交流は重要な権利として認められています。
この面会交流をめぐってトラブルが起きた場合、「面会交流調停」を申し立てることをおすすめします。調停は裁判所を挟んで話し合う手続きですので、父母で話し合うよりスムーズに解決できることがあります。例えば、以下のようなケースで面会交流調停を行うと良いでしょう。

  • 面会交流の条件について、相手と合意できない
  • 子供と一緒に暮らす親(監護親)に、面会交流を拒否されている
  • 取り決めた面会交流の条件を変更したい
  • 子供が虐待や育児放棄されていないか、養育環境に不安がある

面会交流調停の流れ

面会交流調停は、以下のような流れで進みます。

①裁判所への申立て
まず、管轄の裁判所に調停を申し立てます。申立先は、“相手方の住所地がある家庭裁判所”または“お互いに合意した家庭裁判所”です。

②調停期日の指定
裁判所が調停期日の日程を決め、申立人と相手方に通知します。基本的に、申立てから約2週間で通知されます。また、1回目の調停期日は、申立ての約1か月後に設定されるのが一般的です。

③調停の実施
指定された日時に裁判所に出向き、調停を行います。調停では、調停委員が父母の意見を聞きながら話し合いを進め、合意を目指していきます。

④-1.調停成立
父母が合意できれば、“調停成立”で終了します。また、合意内容に沿った“調停調書”が作成されます。

④-2.調停不成立
何度調停を行っても父母が合意できなければ“調停不成立”となり、自動的に審判に移行します。審判では、さまざまな事情を考慮し、裁判所が判断を下すことになります。

申立てに必要な書類や費用について

面会交流調停の申立てには、以下の書類の提出が必要です。

  • 申立書とそのコピー:各1通
  • 連絡先等の届出書:1通
  • 事情説明書:1通
  • 進行に関する照会回答書:1通
  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書):1通

また、申立てにかかる費用は以下のとおりです。

  • 収入印紙:子供1人につき1200円
  • 連絡用郵便切手:約1000円(具体的な金額は裁判所によって異なります。)

申立書の書き方と書式

申立書は、裁判所のホームページから入手できます。記入例も載っているので、そちらに沿って作成されると良いでしょう。
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_30/index.html

ただし、申立書のコピーは相手方に送付されます。そのため、相手方からDVやモラハラを受けていたなど、こちらの住所を知られたくない事情がある場合、申立書と一緒に「非開示の希望に関する申出書」も提出しておきましょう。

家庭裁判所調査官の調査

調停や審判では、必要に応じて家庭裁判所調査官による調査を行ったうえで、「面会交流を行うべきか」「面会交流の条件をどうすべきか」などを判断します。
調査官は、以下のような調査を通し、「どうすれば子供が幸せになるか」を見極めていきます。

  • 子供から直接意見を聞く
  • 学校訪問を行い、子供の日常生活を観察する
  • 家庭訪問を行い、親子のコミュニケーションや生活環境を観察する
  • 父母それぞれの収入や生活リズムを調べる

なお、子供から意見を聞く際、基本的に親は同席できません。子供が親を気にすることなく、本心を伝えられるようにするためです。

面会交流調停で決められる内容

面会交流調停では、以下のような点について取り決めます。

  • 面会交流を行うかどうか
  • 面会交流の日時、頻度、場所
  • 子供の受け渡し方法
  • 父母(または子供と非監護者)の連絡方法

これらを決める際に重視されるのは、「子供の幸せや健全な成長」「子供の意思」です。また、子供の年齢・性別・生活環境なども考慮されます。

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面会交流調停を拒否や欠席するとどうなるのか

面会交流調停を申し立てられた場合、基本的に拒否することはできません。
一度調停を欠席したくらいでペナルティーはありませんが、何度も無断欠席したり、呼出を無視したりすると、“調停不成立”となり審判に移ります。審判では、父母の意見などを踏まえて裁判所が決定を下すため、調停を欠席すると、自身の意見が反映されず不利な結果になるおそれがあるため注意しましょう。
また、正当な理由なく調停を欠席した場合、5万円以下の過料が科せられる可能性もあります。
やむを得ず欠席する場合、必ず裁判所に連絡して事情を説明するようにしましょう。

調停不成立の場合と不服申立てについて

調停不成立となると、自動的に審判に移行します。審判では、当事者の主張や調査官調査の結果、その他一切の事情を考慮し、裁判所が決定を下します。
なお、審判の内容に不服がある場合、「即時抗告」によって再び判断を求めることができます。即時抗告の申立ては、“審判書が届いた日の翌日から2週間以内”に、“審判を行った家庭裁判所”に行います。
ただし、即時抗告の注意点は、「当初の審判より申立人に不利な結果になる場合がある」ということです。そのため、即時抗告を行うかどうかは慎重に検討する必要があります。

面会交流調停の取り下げ

申立人はいつでも、“調停取り下げ”によって調停を終了させることができます。このとき、基本的に相手の同意を得る必要はなく、家庭裁判所に「取下書」を提出することで手続きがなされます。
なお、一度調停を取り下げても、再び調停を申し立てることも可能です。とはいえ、取り下げ後すぐに調停を申し立てると、不当な取り下げと判断されて受理されない可能性があるので注意しましょう。一般的に、取り下げの半年~1年後に申し立てることをおすすめします。

面会交流調停(審判)に関するQ&A

離婚調停と面会交流調停を同時に行うことは可能でしょうか?

2つの調停を同時に行うことは可能です。その場合、2つの調停を併合して1つの手続きとみなしたり、調停期日を同日にしたりして、同時進行していくのが一般的です。
ただし、離婚調停と面会交流調停が別の裁判所に申し立てられた場合、どちらの裁判所で調停を行うか揉めることがあります。その場合、それぞれ別日に実施せざるをえないでしょう。
また、別々の事件であることに変わりないので、一方が先に終了することもあります。例えば、面会交流調停のみ先に不成立となり、審判が下されるといったケースです。

面会交流調停の成立にかかる回数と1回の時間はどのくらいですか?

面会交流調停は、平均3~5回で終了しています。1ヶ月~1ヶ月半に1回のペースで行われるので、申立てから終了までは半年ほどかかるでしょう。ただし、父母の対立が激しかったり、事情が複雑だったりすると、1年以上かかる場合もあります。
また、1回の調停は、約2時間かかるのが通常です。調停の流れは、まず父母が調停委員と交互に話し合います(約30分ずつ)。その後、調停委員から父母に相手方の意見が伝えられ、合意を図ります(約30分ずつ)。

面会交流について取り決めたルールを変更したい場合や守られなかった場合はどうしたらいいですか?

面会交流の条件が守られなかったり、条件の変更について相手方と揉めたりした場合、面会交流調停で改めて話し合うことをおすすめします。
面会交流は、子供の成長や生活リズム、父母の事情に合わせて都度条件を見直す必要があります。きちんと調整を図るためにも、調停を申し立て、裁判所の力を借りてしっかり話し合うことが重要です。
なお、調停で決まった内容が守られない場合、裁判所から相手に義務を履行するよう説得・勧告してもらう「履行勧告」という手続きを利用できます。履行勧告に強制力はありませんが、裁判所からの連絡にプレッシャーを感じ、相手が面会交流に応じる可能性があります。また、面会交流を拒む相手に罰金を科す「間接強制」をいう手続きを利用できる場合もあります。

面会交流調停について悩んだら弁護士に相談してみましょう。

子供の健全な成長やご自身の幸せのため、面会交流はきちんと行うべきです。相手方と折り合いがつかない場合、面会交流調停を申し立て、裁判所の力を借りてしっかり取り決めることが重要です。
しかし、調停に慣れていない方がひとりで進めようにも、手続きや書類の準備に戸惑ってしまうでしょう。また、調停を有利に進めるためのポイントを抑え、ご自身で調停委員に主張するのも難しいです。
そこで、面会交流調停の申立ては弁護士にご相談ください。弁護士は、裁判所への手続きをすべて代行するだけでなく、ご依頼者様の事情に応じ、調停を有利に進めるためのアドバイスができます。また、調停に同席して適切な主張のサポートができるため、不安なお気持ちも軽くなるでしょう。
良好な親子関係を築き、愛する子供とのつながりを維持するためにも、面会交流のお悩みは弁護士法人ALGへお気軽にご相談ください。

離婚前に別居する夫婦は、「どちらが子供と暮らすか」で揉めやすいです。親は、愛する子供と一緒にいたいと思うのが自然です。また、「子供と別居すれば、親権争いで有利になりそう」と何となくお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、子供を連れて別居する、いわゆる「子連れ別居」のメリットや注意点、親権争いを有利に進めるポイント等を解説します。子供がいて別居を検討中の方は、ぜひご覧ください。

子供を連れて別居した場合の親権への影響は?

別居する際に子供を連れていくかどうかは、離婚後の親権に大きく影響します。経緯などによっては、親権争いで不利になりかねないため、慎重に判断・対応しなければなりません。
なお、親権を獲得するためには、「子供の幸せ」が最も重要視されます。別居に際しどんなことを意識すればよいのか、具体的にみていきましょう。

子供を連れて別居した方が親権獲得に有利?

子供を連れて別居すると、親権獲得で有利になりやすいです。なぜなら、別居中の監護に問題がなければ、離婚後も子供の生活環境はそのまま維持した方が良いと考えられているからです。これを「現状維持の原則」といいます。
したがって、親権を獲得するには、別居中に子供と暮らして監護実績をしっかり積んでおくことが重要です。

子供を勝手に連れて別居した場合

いくら子連れ別居が親権獲得に有利といっても、そこに「違法性」があると親権争いで不利になるおそれがあります。以下のようなケースでは「子連れ別居」が違法である、又は、違法な連れ去りに類する行為であると認定されるおそれがあるため注意が必要です。

  • 相手に無断で子供を連れ去る
  • 子供を待ち伏せて無理やり連れ去る
  • 別居中の面会交流後、子供を返さない

これらの行為をすると、相手に法的措置をとられ、子供を取り戻される可能性があるため注意が必要です。

監護者指定について

別居中にどちらが子供を監護するか揉めたり、相手が勝手に子供を連れて別居することになったりした場合は、「監護者指定調停(または審判)」の申立てを行いましょう。この手続きにより、裁判所を挟んで別居中の監護者を決めることができます。なお、監護権とは、親権のうち「子供の世話・教育をする権利義務」をいいます。婚姻関係があるうちは父母が共同して監護権を含む親権をもちますが、別居中はどちらか一方を監護者に指定することが可能であり、監護権をもつ方が子供と暮らすこととなります。

別居中の面会交流について

子供と別居しても、面会交流によって子供と触れ合うことができます。
面会交流は、子供の健全な成長につながるという意味で重要です。
また、面会交流は、親権獲得においてもポイントになります。
別居中、現に子供を監護している親(子供と同居中の親)が、子供を監護していない親(子供と別居している親)の面会交流に寛容であることは、親権獲得において有利な事情として判断されます。
また、子供を監護していない親(子供と別居している親)は、面会交流によって子供への愛情を示すことができるため、親権獲得に有効です。

子連れ別居は実家に行くことで親権獲得に有利になることも

別居後の引っ越し先も、親権獲得のポイントです。
母親が子供を連れて別居する場合、経済的な事情から、賃貸物件を借りたり家賃を支払ったりすることが難しい場合があります。収入を増やすために仕事に追われれば、子育てに十分な時間を費やすことができなくなることもあるでしょう。
そこで、母親の実家に引っ越せば、実家の家族や親族からのサポートが受けられるため安心です。また、これらのサポートが得られることが離婚後の子供の養育環境が整っているというアピールにもなり、親権獲得に有利に働くことがあります。

住民票の移動

別居後は、住民票を必ず移しましょう。引っ越し後に住民票を移すことは法律で義務付けられているためです。また、子供を連れて別居する場合、住民票を移さないと、基本的に引っ越し先の公立学校・幼稚園・保育園には転入できません。
ただし、別居の原因が相手のDV・ストーカー・虐待といった場合、住民票を移すと相手にこちらの住所を知られるリスクがあります。そのため、住民票を移す際は、住民票や戸籍の附票の閲覧を制限できる「DV等支援措置」を利用することをおすすめします。住民票を移す前に役所に手続きについてあらかじめ相談しておくとよいでしょう。

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親権者となるための条件

親権者となるには、主に以下の点が考慮されます。

それまでの監護実績

別居中に安定した子供の監護ができていれば、「現状維持の原則」によって親権者に認められやすくなります。

親の心身の健康状態や監護能力

「重度の精神疾患がないか」「収入が安定しているか」といった点が重視されます。離婚前に就職先を決めておくと安心です。また、離婚後に子供と過ごす時間を十分とるため、時短勤務をするのも良いでしょう。

子供の養育環境

「子供に寂しい思いをさせないか」「子供が健全に成長できるか」といった点も重視されます。実家で暮らしたり、保育園を探したりして、周囲のサポートが受けられる環境を整えておきましょう。

子供の年齢、意思

子供が一定の年齢であれば、その意思が重視されます。別居中に子供と過ごす時間を作ったり、面会交流によって絆を深めておいたりすると良いでしょう。

よくある質問

母親が子供を置いて別居した場合、父親が親権を取れるのでしょうか?

子供が乳幼児や幼い場合、母親が親権者となる可能性が高いでしょう。これは「母性優先の原則」といい、乳幼児や幼い子供には、母性溢れるきめ細やかな世話が不可欠だとするものです。
ただし、別居中に父親が安定した監護をしていれば、父親が親権を獲得することも可能です。それまでの養育環境が安定していれば、現状を維持した方が子供のためになるという「現状維持の原則」が妥当し、「母性優先の原則」よりも優先される場合があるからです。
また、子供の年齢によっては子供の意思が尊重されます。同居中の父親を親権者に選ぶ子供も多いでしょう。
さらに、母親が子供を置いて一方的に別居した場合、母親が育児放棄したとみなされ、父親が親権者に認められる可能性もあります。

高校生の子供と一緒に別居した場合は子供が親権者を選ぶことができますか?

子供の年齢が15歳以上であれば、基本的に子供の意思を尊重して親権者を決めます。子供が15歳以上であれば、判断能力が十分備わっていると考えられるためです。よって、高校生の子供と一緒に別居した場合、子供が親権者を選べる可能性が高いでしょう。
なお、実際の調停でも、裁判所は15歳以上の子供から意見を聞くことが義務付けられています。
ただし、「15歳以上」というのは目安にすぎません。子供の発達状況などによっては10歳前後でもその意思を聞き、親権者の判断に反映する場合があります。

母親が子供を連れて別居しても親権者争いで負けることはありますか?

母親が子供を連れて別居しても、「子供の健全な成長を阻害するおそれがある」場合、母親の親権が認められないことがあります。例えば、以下のような場合です。

  • 母親が子供に虐待、育児放棄をしている
  • 母親がアルコール、ギャンブル、薬物依存症である
  • 母親が重度の精神疾患である
  • それまでの監護は主に父親が行っていた
  • 子供が父親と暮らすことを強く望んでいる

別居後の親権についての不安は一人で悩まず弁護士へご相談ください。

子供を連れて別居し、親権を獲得したいと考える方は多いでしょう。しかし、親権は離婚時に揉めやすい問題ですし、子供の未来にもかかわるため、安易に子連れ別居に踏み切るのは危険です。また、親権争いとなった場合、ご自身で効果的な主張を行うのは難しいでしょう。
親権をしっかり獲得するためにも、ぜひ弁護士にご相談ください。弁護士であれば、別居する前の注意点や親権を獲得するためのポイントを熟知しているため、心強い味方となります。
弁護士法人ALGには、離婚問題に詳しい弁護士が揃っています。おひとりで悩まず、まずはお気軽に弊所へご相談ください。

交通事故の慰謝料の算定基準とは?

慰謝料の算定基準は、事故による精神的苦痛という目に見えない実損のない損害の金額を算定するために用いられる基準です。
慰謝料は、入院をしているか否か、治療期間、実治療日数、怪我の程度、治療の内容等事故による怪我に関する諸事情を考慮して算定します。

そもそも、なぜ算定基準が必要なの?

慰謝料は、休業損害等のように実損があるわけではなく、また、精神的苦痛という目に見えないものを金銭で算定することは極めて困難です。そのため、一定の基準がなければ、類似の事案でも金額にばらつきが生じたり、立証の困難性から解決までに時間がかかることになります。そこで、類似の事案で金額のばらつきを生じさせ、不公平な結果が生じないように、また、立証の負担を軽減することで、解決までの時間を短縮するために、一定の基準が必要となるのです。

3つの算定基準の違い

慰謝料の算定基準としては、大別して自賠責保険基準と任意保険基準と弁護士基準があります。各基準の詳細については、以下で説明いたします。

自賠責保険基準について

自賠責保険基準は、自賠責保険からの保険金の支払いの際に適用される基準です。傷害に関する損害については120万円、後遺障害に関する損害ついては等級に応じてそれぞれ上限額が存在しますので、他の基準に比べて相対的に低額になる傾向にあります。
もっとも、過失割合が大きい場合には、他の基準で算定するよりも賠償を受けられる金額が大きい場合がありますので、ご注意ください。

任意保険基準について

任意保険基準は、各保険会社が独自に設定している基準です。慰謝料の算定基準の計算式などは、明らかにしていないことが多いため、どのような根拠で計算しているかは、わかりませんが、概ね自賠責基準よりやや高い基準を提示されることが多い傾向にあります。

弁護士基準について

弁護士基準は、裁判基準とも呼ばれることがありますが、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(赤本)と「交通事故損害額算定基準」(青本)の2種類に加え、地域によっては、各弁護士会が作成する基準が使用されることがあります。これらは、いずれも、過去の判例の傾向を基に作成された基準であること、自賠責保険基準や任意保険基準より算定される慰謝料よりも高額になる傾向にあることは共通しています。

赤本と青本とは?

赤本と青本は、上記のとおりそれぞれの書籍の名称は、上記のとおり「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」と「交通事故損害額算定基準」です。慰謝料については、いずれも入院期間、通院期間を基準として算定しますが、赤本の基準は、入院期間、通院期間に応じて決まった金額が算出できるのに対し、青本はある程度幅のある金額を算出することになります。

交通事故慰謝料の相場比較

慰謝料の算定基準は、3種類あることは上記のとおりです。次は具体的な事例において、それぞれの算定基準で慰謝料を算出した場合の金額を比較していきます。

入通院慰謝料の相場

慰謝料は、治療期間に応じて算定されるため、怪我をして治療していれば、入院をしていなくとも請求をすることが可能です。具体的な慰謝料の金額は、治療期間、入院をしていたか否か、入院の日数、通院の日数などによって変動します。
具体的には、自賠責保険基準の場合には、「総治療期間の日数」と「実治療日数の2倍の日数」の少ない日数に対して1日当たり4300円(令和2年3月31日以前の事故については4200円)で算定されます。
一方、弁護士基準の場合には、原則として総治療期間を基準として慰謝料を算定しますが、総治療期間に対して実通院日数が少ない場合には、赤い本の場合には、「実通院日数の3倍又は3.5倍の日数」、青い本の場合には、「実通院日数÷2/7÷30の月数」を基準に慰謝料を算定します。

通院期間が2か月(実通院日数15日)の場合の慰謝料の相場

通院期間2か月に対し、実通院日数15日の場合の慰謝料相場は以下のとおりになります。
まず、自賠責保険基準によれば、通院期間3か月(60日)よりも実通院日数15日の2倍の日数(30日)の方が少ないため、30日を基準として慰謝料を算定します。
次に、弁護士基準(赤い本)による場合には、総治療期間2か月(60日)よりも実通院日数15日の3.5倍の日数(約53日)の方が多いため、総治療期間60日を基準として慰謝料を算定します(下記表の入院0か月、通院2か月の欄を参照)。

自賠責基準の入通院慰謝料弁護士基準の入通院慰謝料
30日×4300円=129,000円52万円
入院0か月、通院2か月

入院期間1か月と通院期間が6ヶ月だった場合(実通院日数70日)の慰謝料の相場

入院期間1か月と通院期間6か月(合計210日)に対し、実治療日数が入院30日、通院70日の場合について検討します。
自賠責保険基準による場合には、総治療期間210日よりも実治療日数(100日)の2倍の日数(200日)の方が少ないため、200日を基準として慰謝料を算定します。
弁護士基準(赤い本)による場合には、通院期間6か月(180日)に対して、実通院日数(70日)の3.5倍の日数の方が多いため、入院期間1か月、通院期間6か月を基準として慰謝料を算定します(下記表の入院1か月、通院6か月の欄参照)。

自賠責基準の入通院慰謝料弁護士基準の入通院慰謝料
200日×4300円=860,000円 149万円
入院1か月、通院6か月

むちうちになった場合の慰謝料の相場

例として、むち打ち症で入院期間2か月、通院期間4か月で治療し、通院期間4か月中の実通院日数が80日だった場合について検討します。
自賠責保険基準による場合には、総治療期間180日(入院60日、通院120日)よりも実治療日数(入院60日、通院80日)の2倍の日数280日の方が多いため、総治療期間を基準に算定をします。
弁護士基準(赤い本)による場合には、通院期間4か月(120日)に対して、実通院日数(80日)の3倍の日数の方が多いため、入院期間2か月、通院期間4か月を基準として慰謝料を算定します(下記表の入院2か月、通院4か月の欄参照)。

自賠責基準の入通院慰謝料弁護士基準の入通院慰謝料
2180日×4300円=774,000円119万円
入院2か月、通院4か月

後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料は、獲得した等級ごとで慰謝料の金額が異なります。自賠責保険基準と弁護士基準(赤い本)による慰謝料の金額は以下のとおりです。
また、任意保険基準による後遺障害慰謝料については、基準が公表されていないため、割愛します。

後遺障害等級自賠責基準弁護士基準(赤い本)
1級1150万円2800万円
2級998万円2370万円
3級861万円1990万円
4級737万円1670万円
5級618万円1400万円
6級512万円1180万円
7級419万円1000万円
8級331万円830万円
9級249万円690万円
10級190万円550万円
11級 136万円420万円
12級94万円290万円
13級57万円180万円
14級32万円110万円

死亡慰謝料の相場

被害者の方が亡くなっている場合にも、遺族の方だけではなく被害者の方本人に対する慰謝料が発生します。
まず自賠責保険基準は、一律350万円と決まっています。
一方弁護士基準(赤い本)は、被害者の方が一家の支柱であった場合には2800万円、被害者の方が母親又は配偶者であった場合には2400万円、被害者が上記のいずれにも該当しないその他の場合には、2000万円~2200万円となります。

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弁護士に依頼しないと、弁護士基準での慰謝料獲得は難しい?

慰謝料は、上記のような基準で算定されますが、保険会社は、個人が弁護士基準で算出された慰謝料を請求したとしても、これに応じることはないようです。
そのため、弁護士に依頼しなければ、弁護士基準で算出された慰謝料を獲得することは難しいようです。

弁護士の介入によって弁護士基準に近い金額まで増額できた解決事例

開放骨折や事故によるPTSDによる長期の治療が必要となった事案について、残存した後遺障害や、治療期間、事故態様の重大性から、一般的な裁判基準により算定される慰謝料に割増をして請求をしたところ、上記のような事情や当方の強い姿勢から、割増した慰謝料全額とはいかないまでも、通常の交渉で予想される金額よりも高い金額での示談に成功した事例もあります。

交通事故慰謝料を適正な算定基準で計算するためにもまずは弁護士にご相談ください

上記のように、弁護士基準で算出された慰謝料を獲得するには、弁護士が交渉することが近道となります。また、それだけではなく、事案に応じて慰謝料の算定基準は使い分けることも必要となります。
基準の使い分けについては、個別具体的な事情によるため、交通事故慰謝料を適正な金額で計算するには、専門知識有する弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

人が亡くなった場合、その子や配偶者、両親、兄弟姉妹などが亡くなった方(被相続人)の財産を相続することになります。しかし、プラスの財産よりも借金の方が多くて相続すると損をしてしまう、何年も前から交流がなく今更財産を引き継ぎたくないという場合もあります。このような場合、相続放棄をすることで、被相続人の財産を引き継がないということができます。このページでは、相続放棄についてご説明をいたします。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続開始後に、相続人が相続を拒否することをいいます。相続人が相続放棄をすると、被相続人の全ての財産(プラスもマイナスも)を相続しないこととなります。特定の財産のみを放棄するとすることはできませんので、相続放棄をするか否かは、全ての相続財産から判断をする必要があります。
なお、似たようなもので「相続分の放棄」というものもあります。これは自身の相続分をほかの相続人に渡すことをいい、相続放棄とは別のものです。相続分の放棄においては、マイナスの財産は放棄することができませんので、注意が必要です。

相続放棄の手続き方法

相続放棄は、家庭裁判所の申述などの手続きが必要となります。ここでは、相続放棄の手続きについて、ご説明します。

必要書類を集める

相続放棄をするにあたっては、まず必要な書類を集めることが必要です。共通で必要となる資料としては、被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票、被相続人の戸籍謄本、申述人の戸籍謄本、相続放棄申述書があります。
また、相続人が配偶者、子以外の場合、上記の資料以外に自身が被相続人の相続人に当たることを証明する資料が必要となります。例えば、相続人が被相続人の両親の場合、上記に加え、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などが必要となります。
戸籍謄本、戸籍の附票は被相続人の本籍地を管轄する役所、住民票の除票は被相続人の最後の住所地を管轄する役所で取得することができます。また、相続放棄申述書は、裁判所のページなどから書式を取得することができます。

家庭裁判所に必要書類を提出する

必要書類を取得したら、家庭裁判所に必要書類を提出して、相続放棄の申述を行います。家庭裁判所は、どこでもよいわけではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出しなければなりません。 なお、提出方法としては、持参して提出する方法、郵送で提出する方法のいずれでも可能です。

家庭裁判所から届いた書類に回答し、返送する

家庭裁判所に必要書類を提出すると、家庭裁判所の裁判官が、相続放棄申述書を確認して相続放棄を認めるか否かを判断します。この際、相続放棄の不許可事由がないかを確認するために、相続放棄照会書といわれる書面が送られてくることがあります。相続放棄照会書が送られてきたら、その内容に沿って回答をし、家庭裁判所に送り返しましょう。なお、この相続放棄照会書は、各家庭裁判所の運用もあり、必ずしも送られてくるわけではありません。

返送期限内に照会書を送れない場合

相続放棄照会書は、裁判官が相続放棄を認めるか否かを判断するための資料であり、必要書類というわけではありません。そのため、返送期限内に照会書を送らないからといって直ちに相続放棄が不許可となるわけではありません。
しかし、相続放棄を認めるべきか否かの重要な資料であることから、期限内に照会書が送れない場合、不利益に取り扱われる可能性はあります。
期限内に送れない場合は、家庭裁判所に一報を入れるなどして、対応をした方がよいでしょう。

相続放棄申述受理通知書が届いたら手続き完了

相続放棄が認められた場合、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。相続放棄受理通知書は、相続放棄が認められたことの証拠となりますが、再発行ができません。そのため、相続放棄受理通知書の原本を大切にとっておいてください。
場合によっては、債権者から相続放棄の証明書が欲しいと言われることもあります。この場合は、「相続放棄受理通知書」のコピーや、「相続放棄受理証明書」(家庭裁判所から取得できます。)を渡すようにしてください。
なお、どれくらいの期間で相続放棄受理通知書が届くかは、家庭裁判所の処理能力の問題もあり、一概には言えません(一般的には、都市部の方が時間を要する傾向にあります。)。

相続放棄の期限は3ヶ月

相続放棄の申述ができるのは、相続を知ってから3ヶ月以内とされています。この3ヶ月を過ぎた場合、相続放棄が認められなくなりますので、期間には十分注意をしてください。
なお、この3ヶ月というのは、相続放棄の申述期間ですので、相続放棄申述書の提出が期間内に間に合えば大丈夫です。必要書類が足りずに書類の追完等を求められることもありますが、追完の書類は3ヶ月を超えていても問題ありません(ただし、いつまでも放置してもいいわけではないので、速やかに追完することが必要です。)。

3ヶ月の期限を過ぎそうな場合

相続放棄をすると、全ての相続財産を相続しないこととなります。そのため、通常は、相続財産を調査した上で、相続放棄するか否かを決めますが、3ヶ月では調査が足りないこともあります。このように3ヶ月の期限を過ぎてしまいそうな場合、家庭裁判所に、「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を求めることができます。この伸長が認められると、通常は、3か月程度、期間を延ばせることができます。

3ヶ月の期限を過ぎてしまった場合

相続を知ってから3ヶ月を過ぎてしまった場合、相続放棄は認められなくなってしまいます。しかし、例えば、相続人に財産がないと思っていたとか、自身が引き継ぐべき財産がないと信じていたような場合においては、3ヶ月を過ぎても相続放棄が認められることがあります。期限を超えているため、通常の相続放棄よりは認められづらいことは間違いありません。しかし、事情によっては、相続放棄が認められることもありますので、弁護士に相談をするのがよいでしょう。

相続放棄の申し立ては一度しかできない

相続放棄の申述は一度きりであり、却下された後に、再度、相続放棄の申述をしても認められません。被相続人が亡くなって3ヶ月以内であり、かつ、相続財産を何ら使用していなければ、多くの場合、相続放棄の申述が受理されると思います。しかし、裁判官も書面のみで判断するため、相続放棄申述書や相続放棄照会書の記載の仕方が悪くて、相続放棄の不許可事由があるように誤解させる内容になっていると不許可となることもあり得ます。やり直しができませんので、弁護士などの専門家に依頼した方が間違いはないでしょう。

相続放棄が無効・取消しになるケースがある

相続放棄の申述が受理されたとしても、無効・取消しとなる場合はあります。
例えば、他人が勝手に相続放棄の申述をしているような場合は、相続人に放棄をする意思がありませんので、無効となります。
また、他の相続人に脅迫されたり、騙されたりして相続放棄をした場合には、相続放棄の申述を取り消すことができます。ただし、取消しには、期間制限があり、追認をすることができる時(例えば、騙されていた場合は、騙されたことに気付いた時)から、6ヶ月以内に取り消す必要があります。なお、相続放棄が受理された時から10年を限度とするため、相続放棄が受理された時から10年を超えたら相続放棄を取り消すことができません。

後から財産がプラスだと分かっても撤回できない

相続放棄の申述が受理された後に、被相続人にプラスの財産があると分かったとしても、相続放棄を撤回することはできません。そのため、相続放棄をするか否かは、慎重に判断するべきです。後悔しないように、プラスの財産がないかを調査するなどして、相続放棄するか否かを決断した方がよいでしょう。

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相続放棄は一人でもできるがトラブルになる場合も…

相続放棄は単独でできますので、複数の相続人がいる場合であっても、ほかの相続人の許可や同意なく法族放棄を行うことができます。もっとも、相続放棄をすると、ほかの相続人が取得する財産が増えるなど、ほかの相続人に影響を及ぼします。ほかの相続人に知らせずに相続放棄をするとトラブルになることもあり得ますので、事前に、ほかの相続人に知らせるなどした上で、相続放棄をする方がよいでしょう。

明らかに相続放棄したほうがいい場合

被相続人に多額の借金がある場合、多額の負債を背負うことになるため、相続放棄をした方がよいと考えられます。この場合、相続放棄をすると、相続放棄をした相続人は借金を相続しないことになりますが、ほかの相続人が相続する借金は、より多くなります。このような場合、ほかの相続人に相続放棄をすることを伝えないと、ほかの相続人が想定以上に借金を背負うことになります。また、被相続人の子全員が相続放棄をした場合は、被相続人の両親が相続人となりますが、被相続人の両親は、知らないうちに相続人となっており、突然、債権者から督促状が届くということにもなりかねません。多額の借金があるような場合は、ほかの相続人や相続人となり得る者に相続放棄をすることを伝えた方がよいでしょう。

把握していない相続人がいる場合がある

相続人になり得るのは、基本的に、配偶者、子、両親、兄弟姉妹です。つまり、一定の親族関係がある者が相続人となるため、ほかの相続人を把握できていることが多いでしょう。しかし、被相続人が知らぬ間に養子縁組をしている場合や、認知していない子がいる場合など、把握できていない相続人がいることもあります。このような場合においては、ほかの相続人に相続放棄を伝えることは困難ですので、連絡しないまま相続放棄をするほかないでしょう。

相続放棄後の相続財産について

相続放棄をしても、相続財産と全く無関係になるというわけではありません。そこで、相続放棄後の相続財産に関して、ご説明します。

墓や生命保険など、相続放棄しても受け取れるものはある

仏壇、墓などの祭祀、墳墓については、相続財産に含まれないとされています。相続放棄は、相続財産を承継しないというものであるため、相続放棄をしたとしても、仏壇や墓などといったものを引き継ぐことは可能です。
また、生命保険金は、受取人が受領するものであり、相続人の相続財産には含まれません。そのため、受取人は、相続放棄をしたとしても、生命保険金を受け取ることができます。ただし、保険金の受取人が被相続人になっている場合においては、生命保険金は、相続財産の一部ですので、受け取ることができません。生命保険金については、受け取れない場合もありますので、注意が必要です。

全員で相続放棄をしても家や土地の管理義務は残る

相続放棄をしても、次の相続人が相続財産の管理を始めることができるまで、その財産の管理を継続しなければならないとされています。
例えば、被相続人には、子が一人と両親がおり、相続財産として持ち家(家・土地)があるとします。そして、子が、被相続人の持ち家で被相続人と一緒に生活をしていた場合、子は、相続放棄をしても、次の相続人である被相続人の両親が、この持ち家の管理を始めるまでは、持ち家の管理をしなければなりません。このように相続放棄をしても一定の管理義務が残りますので、注意が必要です。
なお、相続人の全員が相続放棄をした場合、相続財産を引き継ぐ者がいなくなってしまいます。この場合、相続財産管理人の選任申立てをして、相続財産管理人が相続財産が管理を始めるまでは、相続放棄をした相続人が相続財産の管理をし続ける必要があります。

相続放棄したのに固定資産税の請求がきたら

固定資産税について、被相続人が亡くなる前に発生していたものに関しては、相続財産の一部であり、相続放棄をするのであれば、支払う必要はありません。
一方で、被相続人が亡くなった後に発生した固定資産税については、相続人が納税義務者に当たる可能性があります。過去の裁判例において、被相続人の債権者が不動産の仮差押えを行い、その仮差押えに基づいて相続人を所有者とする登記をしたことから、相続人に固定資産税が課税されたという事案に対して、相続人が固定資産税の納税義務者に当たると判断したものがあります。このように、被相続人が亡くなった後に発生した固定資産税に関しては、相続財産ではなく、相続人の義務であることがありますので、注意が必要です。

相続放棄手続きにおける債権者対応

債権者から、債務の履行を求めてくることがあります。このような場合において、誤った対応をすると、相続放棄ができなくなったり、相続放棄の効力が否定されてしまうことがあります。債権者の対応については、本当に対応してよいものなのかどうかをしっかりと考える必要があります。

「とりあえず対応しよう」はNG

上記のとおり、誤った対応をしてしまうと相続放棄が認められなくなるリスクがあります。請求が来ると、その煩わしさからついつい請求に応じて支払ってしまおうなどと考えることもあるかもしれません。しかし、支払いをすると相続財産の承継をしたと判断され、相続放棄ができなくなってしまいます。そのため、相続放棄をするのであれば、支払いに応じてはいけません。これは、相続放棄をした後であっても同様です。請求が来たからといって、安易に「とりあえず対応しよう」などと考えるのはやめましょう。

「利子だけ払っておこう」はNG

利子の支払いについても、相続財産を承継していなければ支払う必要がないものです。そのため、利子のみの支払いであったとしても、相続財産の承継をしたと判断され、相続放棄が認められなくなってしまいます。相続放棄をするのであれば、利子も支払うべきではありません。
元本同様、安易に支払いをすると相続放棄が認められなくなりますので、支払いをしないようにしましょう。

サインはしないようにしましょう

場合によっては、債権者から、相続財産の処分のためとしてサインを求められたり、債務を承継した証拠としてサインを求められることがあります。しかし、このような書面にサインをしてしまうと、相続財産を承継したと判断されるおそれがあり、相続放棄が認められなくなることがあります。
債権者からサインを求められた場合も、安易にサインをしようとせず、何の書面なのか、どうして必要なのか、サインをしたらどうなるのかなどを十分に確認しましょう。

相続財産に触れないようにしましょう

上記のとおり、相続財産を承継したと判断された場合は相続放棄が認められなくなってしまいます。相続財産を使用したり、利用したり、捨てたりしたりすると、相続財産を承継したと判断されかねません。基本的には、相続財産には、手を触れないようにして、そのままにしておくのがよいでしょう。

相続放棄に関するお悩みは弁護士にご相談下さい

相続放棄は、不許可事由がなければ認められるものですが、被相続人の戸籍謄本、住民票の除票などいくつもの必要書類を収集・提出する必要があり、手間がかかります。また、被相続人が亡くなった後、3ヶ月が経過している場合には、期間制限内に相続放棄の申述をしているということが分かるように申述をしなければ、相続放棄が不許可となってしまうおそれがあるため、注意が必要となります。相続放棄に関して、お困りのことがあれば、弁護士法人ALG&Associatesまで、ご相談をいただければと思います。

養育費は子どもの成長にかかわる重要なお金です。しかし、離婚後に養育費が支払われなくなるケースは残念ながら後を絶ちません。
そこで、離婚時の取り決めは「公正証書」に残すことをおすすめします。公正証書は、当事者間の強力な契約書になるため、養育費の未払いを防ぐのに効果的です。
とはいえ、「公正証書は大げさじゃないか」「手続きが面倒」などと思われる方も多いでしょう。そこで本記事では、公正証書のメリットやポイント、手続きなどを詳しく解説します。子どもの未来のためにも、離婚前にしっかり確認しておきましょう。

養育費を公正証書に残すべき理由とは?

公正証書とは、公証人が法律にもとづいて作成する公文書のことです。
公正証書は強い拘束力をもつため、合意内容の有力な証拠になります。また、離婚後に未払いとなった養育費を速やかに回収するのに役立ちます。
この点、「離婚協議書や合意書に残しておけば十分」と思われる方もいるでしょう。しかし、離婚協議書や合意書は私文書で強制力に欠けるため、公正証書に残しておくのが安心です。

養育費に関することを公正証書に残すことのメリット

養育費を公正証書に残すメリットは、主に3つあります。以下で詳しくみていきましょう。

合意した条件について争いにくくなる

公正証書は、公証人が当事者に内容を確認しながら作成されるため、後日言った言わないのトラブルになりにくいです。
また、公証人は元裁判官や元検察官といった法律の専門家が就くことが多く、作成された公正証書の内容には信ぴょう性があります。そのため、後に公正証書に記載した内容で揉めるということは考えにくいでしょう。
さらに、作成された公正証書の原本は、長期間保管されるため、相手に改ざん・破棄される心配もありません。

養育費の支払いが滞ったときに強制執行ができる

養育費を公正証書に残しておくと、離婚後に養育費が支払われなくなっても裁判を起こすことなく強制執行ができます。強制執行をすれば、相手の給与や貯金といった財産を差し押さえ、未払いの養育費を強制的かつ速やかに回収することが可能です。
ただし、強制執行をするには、公正証書を「強制執行認諾文言付公正証書」にする必要があるためご注意ください。

財産開示手続きが利用できる

強制執行をするには相手の財産を特定する必要があるため、「財産開示手続き」が利用できます。財産開示手続きとは、相手を裁判所に呼び出し、どんな財産を持っているのか開示させる手続きです。
かつて、財産開示手続きを利用できるのは判決書や調停調書がある場合のみでしたが、2020年4月の民事執行法改正により、公正証書がある場合も財産開示手続きが利用できるようになりました。
また、相手が財産開示手続きに応じない場合、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられることになりました。
これにより、未払いの養育費を回収しやすくなることが期待されています。

養育費に関することを公正証書に残すことのデメリット

一方、養育費を公正証書に残すことにはデメリットもありますので、以下で確認しておきましょう。
主に「公正証書の作成時」にデメリットがあるようです。

作成費用がかかる

公正証書の作成には費用がかかり、その目的価額により金額が異なります。基本的には「取り決めた養育費の総額」が目的価額となりますが、養育費の場合は長期にわたる場合でも10年分が目的価額の上限となります。詳しい金額は下表をご覧ください。なお、この手数料以外にも文書料や送達料が数千円程かかることがあります。
また、公正証書の作成は弁護士に依頼することもできます。弁護士に依頼すれば、文案の作成や公証役場への手続きを代行してもらえるため安心でしょう。なお、弁護士費用はご依頼内容によって異なるため、まずはご相談ください。

目的の金額(養育費の合計金額)公正証書作成の手数料
100万円以下5,000円
100万円超、200万円以下7,000円
200万円超、500万円以下11,000円
500万円超、1,000万円以下17,000円
1,000万円超、3,000万円以下23,000円
3,000万円超、5,000万円以下29,000円
5,000万円超、1億円万円以下43,000円

作成するのに時間がかかる

公正証書は、申し込んだらすぐに受け取れるものではなく、完成までに2週間ほどかかるのが一般的です。また、養育費などについて、協議・合意のうえ申し込む必要があります。
完成までの流れとしては、文案を用意のうえ申込みを行い、公証人から指示された書類を集めつつ、当事者双方が公証役場に出向いて、公証人と内容を確認しながら作成することとなります。

作成するのは夫婦で協力しなくてはいけない

公正証書は、公証役場の窓口が開いている平日9~17時の間に、“当事者双方が”出向く必要があります。
このため、相手が公証役場に行くのを拒否したり、お互いの都合が合わなかったりするなど、協力し合うのが難しい場合は、公正証書の作成も自ずと難しくなってくるでしょう。

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養育費と公正証書の書き方

ここから、養育費について取り決めるべき項目や相場をご紹介します。
公正証書は、当事者が話し合い合意した内容をもとに作成されます。話し合いで漏れがあると、せっかく公正証書を作成しても離婚後にトラブルとなりかねないため、しっかり確認しておくことが重要です。

毎月の支払額

養育費の支払いは長期にわたるため、「毎月○円支払う」と定額を決めて支払うのが基本です。
金額は夫婦で合意できればいくらでも良いですが、相場を知りたい場合、実際の調停や裁判でも使われる「養育費算定表」で調べることができます。
養育費算定表の見方は、まず子どもの人数に合った表を選びます。その表に、当事者双方の雇用形態と年収・子どもの人数と年齢をあてはめ、交わる枠が養育費の相場となります。
以下で2つの具体例を記載しますので、参考になさってください。

【(例1)権利者:専業主婦/義務者:会社員、年収、500万円/0~14歳の子供1人 →相場:6~8万円】

権利者が専業主婦、義務者が年収500万円の会社員、14歳以下の子供1人の場合の養育費相場

【(例2)権利者:会社員、年収200万円/義務者:会社員、年収300万円/0~14歳の子供2人 →相場:2~4万円】

権利者が年収200万円の会社員、義務者が年収300万円の会社員、14歳以下の子供2人の場合の養育費相場

養育費の支払日

養育費を定期的に支払う場合、支払日を決めておくのがポイントです。支払日を決めておけば、滞りなく支払われているかチェックしやすくなりますし、期日通りに支払われなかったときの証拠になり得ます。
例えば、毎月支払うのであれば「毎月○日」「毎月末日」などと取り決めましょう。一般的に、給与支払日の5日以内を支払日とするケースが多いようです。

支払開始日

「いつから養育費を支払うのか」も取り決める必要があります。
離婚前の夫婦であれば、「離婚が成立した月の翌月から」とするのが一般的です。また、離婚後に養育費を取り決める場合、「○年○月から」と支払開始日をはっきり決めておきましょう。

支払終了日

養育費は、子どもが経済的に自立するまでにかかるお金のため、現在の成人年齢である「20歳まで」支払うケースが多いです。ただし、家庭の事情によっては「大学卒業まで」「高校卒業まで」とするケースもあります。
しかし、「大学卒業まで」とする際は注意が必要です。なぜなら、浪人や大学院進学など予期せぬことがあると、支払期間が長くなってしまうためです。そのようなトラブルを防ぐため、「○歳の○月まで」と具体的に取り決めることもあります。

支払方法

養育費の支払方法は「口座振り込み」にするのが一般的です。このとき、養育費として支払ったと証明するため、子ども名義の口座を作って振り込むのも良いでしょう。
ただし、口座振り込みでは、振込手数料をどちらが負担するかで揉めやすいです。振込手数料をどちらが負担するかは、まれに争いになるため、義務者負担と明記しておくことをお勧めします。

養育費の変更について

離婚後は、失業・病気・子供の進学といった「事情の変化」が起こり得ます。そのため、公正証書では「養育費の変更」についても記載しておきましょう。例えば、「離婚後に事情の変化があった場合、改めて協議する」という文言を入れておくと安心です。
なお詳しくは後述しますが、この文言がなくても、家庭裁判所に認められれば一度取り決めた養育費を変更することができます。

強制執行について

養育費の取り決めに際しては、支払われなくなってしまうことも想定しなくてはなりません。この対策として、公正証書は、「強制執行認諾文言付」にすることを徹底しましょう。
これにより、養育費が支払われなくなっても速やかに強制執行を申し立て、お金を回収できる可能性を高められます。

一度公正証書に養育費のことを残したら、金額は変更できない?

公正証書に残している場合でも、以下のような「事情の変化」があれば、養育費の金額を変更できる場合があります。

  • 義務者、権利者の収入の変化
  • 子どもの進学や病気により、高額なお金がかかる
  • 義務者が再婚し、扶養家族が増えた
  • 権利者が再婚し、子どもと再婚相手が養子縁組をした

なお、公正証書の有無にかかわらず、当事者が合意すれば基本的に養育費の金額を変更することは可能です。合意に至れば、後々のトラブルを避けるためにも新たに公正証書を作成することをおすすめします。一方、合意できなければ、家庭裁判所に養育費の変更を求めて調停や審判を申し立てる必要があります。

よくある質問

養育費について公正証書を作成したいのですが、相手に拒否された場合はどうしたらいいですか?

公正証書は、当事者双方が揃って作成するため、相手に拒否されると作成は困難です。その場合、「離婚調停または審判」を申し立て、養育費を取り決めましょう。調停や審判で作成される調停調書・審判書があれば、養育費が支払われなくなってもすぐに強制執行ができます。
とはいえ、すぐにでも離婚したい方もいるでしょう。その場合、せめて「離婚協議書」や「合意書」を作成し、双方の署名・捺印をしておきましょう。離婚協議書だけでは強制執行はできませんが、合意した内容の証明にはなります。そのため、離婚後に養育費請求調停や審判を申し立てた際に、証拠として役立つ可能性があります。

養育費の公正証書はどこで作成することができますか?

公正証書は、各都道府県にある公証役場であれば、どこで作成しても構いません。
ただし、養育費の支払いが途絶えて強制執行する可能性を踏まえると、便宜上、権利者の住んでいる所に近い公証役場を選ぶべきでしょう。というのも、強制執行する際は、公正証書を作成し原本が保管されている公証役場に、権利者が出向いて手続きを行う必要があるためです。

離婚の際に公正証書を作成したいのですが、養育費に関して書けないことなどありますか?

公正証書には、「法的に無効なもの」「公序良俗に反するもの」「明らかに実現不可能なこと」は書くことができません。養育費の場合、以下のようなことは記載できません。

・養育費を一切支払わないこと
・給与に対して、養育費が高額すぎること

当事者双方が合意できれば何でも記載できるわけではないため、取り決める際は注意が必要です。
なお、公正証書に記載できるか不明なことがある場合、作成の申込み後に公証人に確認されると良いでしょう。

公正証書がないと養育費がもらえませんか?

離婚時に公正証書を作成していなくても、養育費は請求できます。なぜなら、養育費を請求するのは子どもの権利であり、夫婦間の合意がないからといって失われるものではないからです。
公正証書がなく養育費を請求する場合、まずは相手に支払ってほしい旨を伝えましょう。連絡方法は、電話・メール・手紙など何でも構いません。
相手が応じない場合、「内容証明郵便」を送るのも効果的です。内容証明郵便は、送った内容や日時が公的に記録されるため、相手にこちらの本気度が伝わりやすいでしょう。
それでも相手が応じなければ、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立て、裁判所を挟んで取り決めることになります。

養育費の公正証書を作成する際は弁護士にご相談ください

養育費の公正証書はご自身でも作成できますが、すべての項目を漏れなく記載するのは困難です。また、相手と合意できても、法的に不適切な内容だとせっかく作成しても後のトラブルになりかねません。
そこで、養育費の公正証書の作成は弁護士にご相談ください。弁護士は、法律のプロとして適切な公正証書を作成できるのはもちろん、ご依頼者様が有利になるようアドバイスをすることができます。また、書類の準備や手続も弁護士に代行してもらえるため、負担が軽くなるでしょう。
子どもの生活や未来のためにも、養育費の公正証書をしっかり作成しておくことはとても重要です。おひとりで悩まず、まずは弁護士法人ALGへお気軽にご相談ください。

名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
監修:弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。