監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
交通事故において、相手方又は相手方の保険会社と示談するとなったとき、早くこの件を片づけたい一心で示談に応じたいと考える方もいるかもしれません。
もっとも、一度示談をしてしまえば、その後、何らかの理由でその示談をなかったことにしたいと思ったとしても、どうにもならなくなる可能性があります。
では、示談のやり直しが認められうるのはどんな場合で、このような示談後のトラブルや紛争を防ぐためにはどうすれば良いでしょうか?
本記事では、示談後のやり直しに関してよくトラブルになる内容や、そのトラブルを回避するためのポイント、弁護士としてできることのほか、示談後によく相談されることについても解説いたします。
示談後のやり直しや追加請求は基本的にできない
示談は契約の一種ですので、この内容で示談することを双方が合意することで示談が成立し、当事者に拘束力が生じます。
示談では、通常「加害者は、被害者に対し、交通事故により発生した損害の賠償金として、金●●円の支払義務があることを認める」ことが内容とされますので、示談金の内容を変えるようなやり直しをすることは難しいでしょう。
また、示談の際には、「示談書に定めるもののほか何らの債権債務がないことを相互に確認する」といった内容の清算条項が設けられることが一般的です。
これは、示談の内容となっている(=示談書に定めている)、交通事故が原因の損害賠償請求権以外には、他の請求権・義務はないことを明らかとするものですので、追加請求をすることも難しいことが多いです。
交通事故の示談後にやり直しや追加請求ができるケース
判例には、交通事故についての示談が成立した後、示談当時には予測できなかった不測の再手術や後遺症がその後発生した場合の損害について、その損害賠償請求を認めたものがあります(最判昭和43年3月15日)。
そのため、示談当時には予測できなかった不測の再手術や後遺症が発症した場合には、示談のやり直しや追加請求が認められることがあります。
また、示談書には、「将来、被害者に当該事故を原因とする後遺障害が生じた場合は、別途協議して解決する」といった条項が設けられることがあります。
この条項がある場合は、将来後遺障害が発生した場合に、追加の損害賠償請求ができる可能性があります。
その他、相手方から脅されたり騙されたりして示談に合意させられた場合なども、やり直しが認められる可能性があります。
示談後に後遺障害が発覚した場合の対処法
示談後に後遺障害に発覚した場合、その後遺障害が示談当時予測できなかったといえる必要があります。
これは、示談当時までに作成された診断書や示談の際に作成された示談書などから立証することになると思います。
また、交通事故での損害賠償請求をする場合では、その後遺障害が当該交通事故によって生じたものであること(因果関係)が必要です。
この因果関係の立証では、後遺障害診断書の存在が重要になりますので、後遺障害診断書を取得するべきでしょう。
後遺障害診断書は、雛形を保険会社から送ってもらったりインターネット上でダウンロードしたりして入手し、医師に渡して作成を依頼することで、作成してもらうことができます。
示談後のトラブルを回避するためのポイント
示談後に後遺症が発症するなどして示談のやり直しがしたい・追加請求がしたいと思ってもできない、ということを回避するためには、以下の2点に気を付けるべきでしょう。
- 示談の際、示談後に後遺症が発症した場合に対応できるようにしておく。
- 示談するにあたり、請求をし忘れているものかしっかり確認する。
示談後の後遺症に対応できるようにする
示談の際、示談成立後に再手術が必要になった場合、または後遺症が発生した場合は、別途協議して解決するなどの条項を設けておけば、この場合に示談のやり直し・追加請求ができないといったトラブルを回避できることがあります。
ただ、この条項は、加害者や加害者の保険会社としては、追加でお金を支払う可能性を残すものになります。そのため、この条項を設けることを加害者側がなかなか合意してくれない可能性があります。
請求し忘れているものが無いか確認する
傷害部分について示談をする場合、その損害項目に漏れがないかをしっかりと確認することが大事です。
この損害項目としては、治療費、通院費、休業損害、傷害慰謝料、付添看護費、入院雑費、文書料、装具や器具の購入費などがあります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
示談後のトラブルを防ぐために弁護士ができること
すでに示談書の作成がされているが、まだ示談が成立していない段階であれば、示談書の記載に不備や抜けがないかを確認することができます。
損害賠償額の計算方法は一部複雑なところがあり、個人で示談書に記載された金額が適正なものかどうか判別することが難しいことが多いです。
また、損害賠償額の基礎となる損害項目について、損害項目に当たりうるものを過不足なく指摘されているかどうかの確認も、個人で行うのは容易でないでしょう。
弁護士であれば、示談書の記載の不備や抜けがないかを確認することができ、仮に不備や抜けがある場合には、不備や抜けの修正について加害者側と交渉することができます。
また、示談書が作成される前の段階であれば、弁護士は示談の具体的内容についてアドバイスをすることができます。
示談書が作成された後にその記載に不備や抜けがあったことが発覚したとしても、相手方がその修正に応じない可能性があります。
示談書が作成される前に弁護士に示談の内容を相談することで、不備や抜けのある示談書が作成されることを防ぎ、このようなリスクを避けることができるでしょう。
交通事故の示談後に関するQ&A
示談成立後の今も加害者からお詫びがありません。謝罪してもらうことは可能ですか?
加害者に謝罪を求めることはできます。
しかしながら、加害者側に謝罪を義務付けることまではできません。
加害者から一向に謝罪がないとき、その加害者の態度に納得できないことも多いと思います。
しかし、弁護士が間に入ったとしても、加害者からの任意の謝罪を十分に見込めるとは限りません。
交通事故の示談後、慰謝料が振り込まれるまでの期間はどれくらいですか?
相手方との示談が成立した後の流れは以下になります。
①相手方から示談書(免責証書)が郵送される。
②示談書の内容を確認し、署名押印をしたうえで、相手方に返送する。
③相手方が返送された示談書を確認し、慰謝料を振り込む。
上記のとおり、郵送が数回行われることが多いので、示談後に慰謝料が振り込まれるまで2週間程度かかることがあります。また、慰謝料の金額や示談の時期などによっては、2週間以上かかることもあります。
示談成立後に嫌がらせをされています。どうすればいいですか?
示談が成立した場合であっても、その後に加害者が、被害者についてSNS等で誹謗中傷をしたり、電話等で繰り返し連絡をしてきたり、脅迫をしたり、突然被害者の住居等に押し掛けてきたりといった嫌がらせを行うことも、残念ながらあります。
この場合、自身の身を守るためにも、弁護士や警察に相談するのが良いでしょう。また、加害者が嫌がらせを行ってきたがわかるような証拠があるのであれば、その証拠を保管しておくと、警察も動きやすくなると思います。
示談後に後悔しないためにも交通事故に強い弁護士にご相談ください
示談が成立した後に示談のやり直しや追加請求することはできないことが通常であり、例外的にできるケースも限定されております。
そのため、示談後に不備や抜けが発覚した場合、示談のやり直しや追加請求をすることができず、満足のいく示談ができなかったとなることが多いです。
このような事態を避けるためにも、示談の内容に抜けがないようにし、示談書の作成がされた段階でも不備・漏れの有無をしっかり確認した上で、示談後のやり直しや追加請求ができるように対応できるようにしておくと良いでしょう。
交通事故に精通した弁護士であれば、上記の事態を避けられるような適切な行動を行うことができますので、安心して示談をすることができるでしょう。
弁護士法人ALG&Associatesには交通事故に精通した弁護士が多数在籍しておりますので、示談について相談がありましたら、一度弊所の弁護士にご相談ください。
自分にとって著しく不利な内容や、不自然な遺言書が残されていた場合、その効力を否定したいと考えるのは自然なことです。
しかし、一度作成された遺言書を無効にするには、法的に適切な手続きを経なければなりません。
本記事では、遺言の無効を主張するための不服申し立ての手順や費用、時効、判例などをわかりやすく整理して解説します。
遺言書を無効にしたい!どうすれば無効にできる?
遺言書を無効にするには、まず相続人全員で話し合い、全員が無効に合意できれば、そのまま遺産分割協議へ進むことが可能です。
しかし合意できない場合は、法的手続きをとる必要があります。
家事事件では「調停前置主義」(訴訟を行う前に、まず調停を申し立て、家事調停手続を経なければならないとする原則)が採用されているため、原則としていきなり裁判はできず、まずは遺言無効確認調停で裁判所を交えて話し合います(もっとも、実務上は調停に付するのが相当でないとして遺言無効確認請求訴訟の提起が認められる場合が大多数といえます。)
それでも解決しない場合、遺言無効確認請求訴訟を起こし、客観的証拠をもとに当該遺言の無効を主張していく流れとなります。
形式の不備など、明らかに無効な場合でも申し立ては必要?
遺言書には署名・押印や特定の年月日の記載が必要といった法的要件が定められており、これらの記載がない場合や、「〇月吉日」のような日付が特定できない記載がされている場合等は形式的不備があることになります。
このように一目で不備があると分かる場合でも、相続人全員が「無効」と合意できれば法的手続きは不要です。
しかし、一部の相続人が有効性を主張するなど意見が対立している場合は、裁判所に調停や訴訟を提起して確定させる必要があります。
遺言書の無効の申し立て方法
相続等の家事事件では、裁判を起こす前に裁判所で話し合う「調停前置主義」というルールが採用されています。
そのため遺言の無効を求めたい時は、原則としてまず家庭裁判所へ「遺言無効確認調停」を申し立てる必要があります。
調停を通じて当事者間での合意を目指しますが、意見が折り合わず調停が不成立に終わった場合には、次の段階として地方裁判所へ「遺言無効確認請求訴訟」を提起することになります。
遺言無効確認調停
遺言無効確認調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。
調停手続きは調停委員らを交えた当事者同士の話し合いであるため、全員の合意が得られなければ成立しません。
もし当事者全員が合意して調停が成立した場合は「調停調書」が作成され、裁判の確定判決と同じ法的効力を持ちます。
一方で、意見が折り合わなかった場合は、調停不成立となって同手続きは終了します。
遺言無効確認訴訟
相手方が遺言の無効を認めない場合、遺言無効確認訴訟を提起します。
裁判所の判決によって遺言が無効と確定した後は、遺言が存在しなかったものとして、改めて遺産分割調停などを申し立てて解決を図ります。
遺言無効確認訴訟について遺言書の無効を申し立てる場合の費用
申し立てに必要な実費は、調停と訴訟で異なります。
調停の場合は収入印紙代(遺言書1通につき1,200円)と連絡用の切手代がかかります。
一方、訴訟の場合は切手代に加え、当該遺言が無効になることで原告が得られる利益(金額)に応じた収入印紙代が必要となり、その金額によって、数千円から数十万円と変動します。
なお、これらは裁判所に納める費用であり、弁護士へ手続きを依頼する場合は別途弁護士費用(着手金や成功報酬など)が発生します。
遺言書の無効申し立てに時効はある?
遺言無効確認の訴え自体に法律上の時効はありません。しかし、時間が経過することによって、当該遺言の有効性に関する証拠が失われるリスクがあります。
また、当該遺言が有効だった場合の保険として行う、遺留分侵害額請求の時効が1年間であることから、早く訴訟提起することが望ましいです。
なお、遺言無効確認請求訴訟を提起するだけでは遺留分侵害額請求の時効は中断しません。
遺言無効確認請求訴訟の結果が出るまでには時間がかかるため、これを待っていては、遺留分侵害額請求権が行使できなくなる可能性があります。
そのため、万が一に備えて、同請求訴訟提起と同時に、予備的に遺留分侵害額請求の意思表示をしておくことが重要です。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
遺言書が無効と認められた事例・判例
被相続人Aの公正証書遺言に対し、遺言能力の欠如を理由に無効が主張された事例で、裁判所は、Aが当時アルツハイマー型認知症により短期記憶障害や徘徊等の症状があり、症状が初期〜中期程度に進行していて遺言内容を理解・記憶できる状態になく、さらに遺言内容自体も複雑で実現が容易でない点を指摘し、Aには遺言能力が欠けていたとして、本件遺言を無効とする判決を言い渡した裁判例があります。
遺言書の無効が認められた後にすること
法定相続人全員で遺産分割協議を行う
裁判等で遺言書の無効が確定した場合、その遺言は当初から効力を有していなかったものとして扱われます。そのため、遺言に沿って進められるはずだった財産の配分はすべて白紙に戻り、ゼロからのスタートとなります。
その後は、法定相続人全員で「遺産分割協議」を開き、誰が・どの遺産を・どのような割合で承継するのかを改めて協議し、相続人全員の合意のもとで決定していくことになります。
遺産分割協議について遺産分割協議がまとまらなければ別途調停や審判で解決する
法定相続人全員での話合い(遺産分割協議)では意見がまとまらなかった場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて解決を目指します。
調停でも当事者間での合意に至らなかった場合(調停不成立)には、裁判所の判断に委ねる「審判」手続きへと自動的に移行し、裁判官が、遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して、分割方法等を決定する「審判」を出すことになります。
遺言が無効にならなかった場合の対応策
もし遺言の内容によって自身の遺留分(法律上、最低限保障された取り分)が侵害されているのであれば、受遺者や受贈者に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の支払いを求める「遺留分侵害額請求」をすることができます。
また、当該遺言書では、被相続人の全財産ではなく一部の財産の処分しか記載されていない場合は、当該遺言書に記載のない残りの相続財産について、別途相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。
遺留分侵害額請求について遺言書の無効申し立ては弁護士にご相談ください
遺言の無効を主張するには、当時の医療データや生活状況の分析など、高度な専門知識と綿密な証拠収集が欠かせません。
個人だけで裁判所に認められるレベルの主張を組み上げるのは非常に困難です。
相続トラブルに精通した弁護士に相談することで、無効にできる見込みの有無を的確に見極め、複雑な裁判手続きやその後の遺産分割交渉までスムーズに進めることができます。
不安を感じたらまずは専門家に相談してみましょう。
普通に生活していたら、突然弁護士から「受任通知」と題された書面が届き、配偶者が離婚を望んでいる等と言う内容が書いてあると、混乱してしまうのが一般的かと思います。
離婚したくない場合はもちろん、離婚に応じるという場合でも、相手方に有利な条件を無理やり合意されてしまうのではないか、本当は請求できるものがあるのではないかと考えて不安になってしまうと思います。
本記事では、配偶者が弁護士を立てて離婚を求めてきたときにどうするべきか、解説します。
離婚相手が弁護士を立ててきた!最初にすべきことは何?
「受任通知」と題された書面が届いた場合(最近では電話やメールのこともあるようですが)、最初にしていただきたいのは、内容を確認することです。
なお、直ちに回答する必要はありません。ただ、離婚に応じるつもりは一切ないからといって、見るのも嫌だから放置するのは問題です。
書面には、相手方の要求が書いてあることも多く、これが分からなければ、弁護士に相談したとしても、どのような対応をすべきかアドバイスを受けることができません。
そのため、自分がどう動くべきかを考えるためにも、まずは相手方が何を求めているのか、内容を確認してください。
弁護士からの連絡を無視するとどうなる?
単に弁護士からの通知書を無視したからといって、法的なペナルティを受けることはありません。しかし、相手方の離婚の意思が強固であれば、相手方の代理人となった弁護士は、離婚調停や離婚訴訟等の手続に進む準備に入ります。
特に、離婚訴訟に移行してしまった場合、裁判所への呼び出しを放置してしまうと、離婚が認められるだけではなく、離婚に伴う諸条件(親権・養育費・財産分与・慰謝料等)も相手方の請求通り認められてしまうリスクも生じます。
相手に弁護士がついたら直接連絡はNGって本当?
相手方に弁護士がついた場合、配偶者本人に直接連絡をすることは原則として厳禁です。
受任通知には、通常「今後は本人への直接の連絡を控えるように」との記載があります。
これに反して直接連絡や交渉をしようとすると、相手方から警察等に相談され、迷惑防止条例違反やストーカー規制法違反を主張されるリスクがあるほか、相手方の態度が強硬になり、交渉の妨げになる可能性もあります。
そのため、連絡や交渉が必要な場合には、必ず相手方の弁護士を通すようにしてください。
離婚問題で相手にだけ弁護士がつくリスク
相手方だけに弁護士がついている状況で、離婚に向けて協議(調停・訴訟も)をすることには、リスクがあります。
昨今は、AIやインターネットである程度知識を得ることが可能ではあります。
しかし、夫婦関係は個々の事情により請求できるもの、できないもの、請求できるとしてどのくらい請求できるのかは変わってしまいます。
そのため、AIに聞いただけでは不正確な点や、見落としがある可能性があります。
具体的には
- そもそも、相手方からの離婚の要求に応じなければならない状況なのか(拒否してもいいのではないか)
- 離婚をすること自体が著しく不利益な状況になる可能性はないか
- 相手方の要求している離婚条件は妥当なものなのか
- 妥当なものであるとしても、支払い方等条件の調整をすることはできないのか
- 自分が請求できる権利が見逃されていないか
等が考えられます。
相手が弁護士を立てたら自分も弁護士を立てるべき?
相手方が弁護士を立てて離婚を申入れて来た場合には、ご自身も弁護士に交渉を依頼することをお勧めします。
上記のように、離婚をするべきかせざるべきか、どのように交渉を進めるべきか、何を請求でき、どのような請求をされる可能性があるのかといった点について、相手方は弁護士から適切なアドバイスを受けられるのに、ご自身がアドバイスを受けられないとなれば、当然交渉において不利になります。
相手方の弁護士は、中立な立場ではなく相手方の味方でしかありませんので、こちらに有利になるようなアドバイスはしてくれません。
そのため、自分の味方をつけることが、ご自身の身を守るための最善策となります。
弁護士を立てるメリット
弁護士を立てることで、妥当な条件がどの程度なものなのか、ご自身はどのような請求ができるのか、あるいは、離婚後の生活に困らないようにするためにはどのような条件調整をするべきなのか等について、適切なアドバイスを得ることができます。
併せて、これらの条件調整は、ご自身が依頼した弁護士が対応してくれます。
紛争が生じたときに相手方と直接交渉する場合には、ストレスを感じることが多いため、このストレスを回避することができます。
弁護士を立てるタイミング
弁護士を立てるタイミングとしては、「なるべく早く」をお勧めしています。
というのも、弁護士をつけないまま自分で相手方とやり取りをしていると、してもいない暴力をした等という言質を取られてしまうことがあり、その後の交渉に悪影響となります。
また、自分で相手方の代理人に連絡しようと思っていたが、仕事で忙しくて連絡を後回しにしていたら、いつの間にか離婚調停を申し立てられていた、という事態も避けられます。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚に強い弁護士を選ぶポイント
離婚問題を適切に解決するためには、弁護士の選び方も重要になります。
離婚問題の相談・実績が豊富
離婚問題は、民法の知識があることを前提として、直近の実務上の運用や感情的な配慮が必要となります。
そのため、「弁護士経験が長い」というだけでは足りず、「どれだけ最近の離婚案件を取り扱っているか」ということは重要となります。
相談者の話を聞き、分かりやすい言葉で適切な意見を述べてくれる
離婚事件で決めなければならないことは、①離婚をするかしないか、②親権をどうするか、③養育費の金額、④財産分与の金額、⑤慰謝料の支払いが生じるか、⑥面会交流はどうするか、⑦年金分割、といった点であることに変わりはありません。
しかし、①~⑦のどれを重視しているかは人によって異なります。そのため、ご自身の話や希望を聞き取った上で交渉方針を決めてくれる弁護士を選ぶことをお勧めします。
費用についてしっかり説明してくれる
弁護士費用は、決して安くはありません。そのため、どんな費用が掛かるのか、総額でどの程度の費用になりそうなのか、説明してくれるかどうかについても重要となります。
弁護士法人ALGが離婚問題に強い理由
弁護士法人ALG&Associatesでは、各弁護士がこれまでに培った豊富な相談実績と解決ノウハウを活かし、複雑な財産分与や親権の争い、高額な慰謝料請求をされた事案など、あらゆる離婚問題に対応可能です。
組織力を活かした多角的な視点から、依頼者の希望を最大限叶える法的構成を追求し、最適な解決策をご提案いたします。
離婚問題で相手が弁護士を立てた場合はお早めにご相談ください
配偶者が弁護士を立ててきた場合、時間の経過とともに相手方のペースで手続きが進んでしまう恐れがあります。
一人で悩んだり、不安のあまり不適切な回答をしてしまう前に、できるだけ早く弁護士へご相談ください。
早期にご相談いただくことで、ご自身の権利を守り、納得のいく解決に向けた最適なアクションプランをご提示いたします。まずは気軽にお問い合わせください。
交通事故事案でよく使われる「弁護士費用特約」について、みなさんはどれくらいご理解されていますでしょうか。
今回は、「弁護士費用特約」について、その内容やメリットなどについて、解説をしていきます。
弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、交通事故が発生した際の保険会社とのやり取りやその後の示談交渉などについてかかる弁護士費用を保険で支払ってくれる特約です。
これにより、通常、依頼者の方が支払う必要のある弁護士費用を負担することなく、弁護士に依頼をすることができるようになります。
法律相談費用は10万円まで補償
弁護士費用のうち、通常最初にかかるのが、法律相談費用です。
法律相談費用は、弁護士に依頼するか否かにかかわらず、弁護士に相談をすることで発生する費用になります。
弁護士費用特約では、法律相談費用については、通常、10万円を上限として補償されています。
弁護士費用は最大300万円まで補償
弁護士に依頼をしてからは、着手金・成功報酬などが発生しますが、この費用については、通常、300万円が上限とされています。
もっとも、後述しますように、交通事故事案で弁護士費用が300万円を超えるケースというのは、かなり限られています。
300万円を超えるケースってどんな事故?
弁護士費用は、通常、依頼者の方が受け取る賠償金の金額に応じて変わってきます。
つまり、賠償金が高ければ、弁護士費用もそれに応じて高くなっていきます。
そして、弁護士費用が300万円を超えるケースというのは、交通事故により被害者の方がなくなった場合や、交通事故により重篤な後遺障害が残った場合などです。
そのため、このような事案の場合には、弁護士費用が300万円以内に収まるか否か、また、収まらなかった場合にどうなるか(どのように精算するか)については、担当弁護士にしっかりと確認をするようにしましょう。
あなたも加入しているかも?弁護士費用特約は加入率が高い
弁護士費用特約の加入率に関しては、公式のデータがあるわけではありません。
ただ、一部公開されている資料等によると、50%を超えているのではないかと言われています(60%超えとも言われています。)。
もっとも、上記については、公式の資料に基づく数字ではありませんので、参考データとしてご理解ください。
クレジットカードなど、自動車保険以外で加入しているケースもある
弁護士費用特約については、通常、自動車保険の特約として付いているケースが多いのですが、クレジットカードに付いていることもあります。
クレジットカードの場合、特約として付いているか否かが分からないことも多いかと思いますので、一度確認をすると良いでしょう。
弁護士費用特約の適用範囲
弁護士費用特約は、必ずしも自動車保険の被保険者でないと使えないというわけではありません。
例えば、被保険者の同居の親族なども対象になることがあります。
そのため、交通事故にあったとき、ご自身に弁護士費用特約がない場合でも、ご親族等が同特約に入っていないかを確認していただくことをお勧めいたします。
弁護士特約を使って弁護士に依頼するメリット
弁護士費用を気にせず依頼できる
弁護士費用特約に入っていると、金額の上限はあるものの、ほとんどの場合、ご自身の手出しがなく弁護士に依頼をすることができます。
交通事故の場合、保険会社とのやり取りも生じますので、弁護士に依頼をすることで経済的な利益(賠償金の増額など)がないケースであっても、費用の負担なく窓口として任せられるという意味で、依頼をすることのメリットはあるかと思います。
慰謝料を含む損害賠償金額の増額
交通事故事案で弁護士に依頼をすると、慰謝料の算定方法が変わるなどで、賠償金が増加するケースが多いです。
また、事故の規模が大きく、重篤な後遺障害が残るようなケースであれば、増額幅がより大きくなりますので、弁護士に依頼をするメリットは大きいと言えます。
いずれにしても、賠償金がどの程度増額するかについて、まずは弁護士に相談をすることをお勧めいたします。
保険の等級は変わらない
弁護士費用特約を使う場合でも、通常は保険の等級は変わりません。
その場合、保険料が上がることはありませんので、軽微事故の場合などでも、気にせず弁護士費用特約を使うことができます。ただ、念のため、保険の内容を必ずご確認ください。
弁護士費用特約の使い方
交通事故が得意な弁護士を探す
弁護士が交通事故事案を対応するにあたっては、法律知識のみならず、保険の基本的な内容も把握している必要があります。そのため、交通事故事案の経験が豊富な弁護士を探して相談することをおすすめいたします。
保険会社に連絡し、弁護士費用特約利用の同意を得る
弁護士費用特約を使って弁護士に相談・依頼をする場合、まずは、ご自身が加入する保険会社にその旨を連絡しましょう。
実際に依頼をして進める場合については、依頼をした弁護士から保険会社に連絡を入れることがほとんどかとは思いますが、事前にご自身で連絡をしておくとスムーズかと思われます。
弁護士に弁護士費用特約を使いたいと伝える
上記のとおり、弁護士としては、依頼者が弁護士費用特約を使う場合には、その保険会社に連絡をするなど、通常の事件とは異なる対応が必要になります。
そのため、弁護士費用特約を使う場合には、必ず担当弁護士にその旨を伝えるようにしましょう。
弁護士を変更したくなった場合
弁護士費用特約を使って弁護士に依頼をしたとしても、その後、弁護士を変更したいと思うことがあるかと思います。そのような場合でも、基本的には、変更後の弁護士費用についても補償の対象にはなります。
ただし、前任の弁護士に支払われた弁護士費用については、返金されませんので、その分上限金額には影響が出ることになります。そのため、弁護士の変更を検討される場合には、一度保険会社に相談をするようにしましょう。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士費用特約が特に効果的なケース
被害者に過失がないケース
交通事故事案で、被害者にも一定の過失がある場合には、被害者側の保険会社が示談代行をすることが多いですが、被害者に過失がない場合には、保険会社がそのような対応ができません。
そうすると、被害者の方がご自身で相手方保険会社と話をする必要がありますが、そのようなときこそ、弁護士に依頼をして対応を任せられるという意味で、効果的といえます。
後遺症が残りそうなケース
前記のとおり、後遺症が残るケースでは、弁護士に依頼をすることで賠償金の増額幅が大きくなる傾向にありますので、弁護士に依頼をするメリットは大きいといえます。
また、後遺症に関しては、示談交渉前に後遺障害等級申請を行いますが、その際の手続きについて、弁護士のサポートを受けることは有用です。
加害者が無保険のケース
交通事故に遭って、加害者が無保険の場合、その加害者と直接交渉をする必要があります。そして、その加害者が真摯に対応をしない場合や、そもそも連絡が取れないような場合もあります。
そのような場合、訴訟を余儀なくされることになりますが、ご自身での対応は難しく、弁護士への依頼は避けられないかと思います。
また、弁護士費用特約を使うことで、仮に賠償金の回収ができなかったとしても、弁護士費用の面でご自身が損をするということにはなりません。
請求できる損害賠償金額が小さい事故のケース
交通事故事案で、請求できる賠償額が小さいとき、仮に弁護士費用特約がない場合、支払う弁護士費用と回収が見込まれる賠償額とを比較して損になることがあります。
そのような場合には、弁護士への依頼を断念せざるを得ないという判断もあり得るところですが、弁護士費用特約が利用できる場合には、そのような心配はありません。
弁護士費用特約に関するQ&A
保険会社が弁護士特約の利用を嫌がります。諦めるしかないでしょうか?
弁護士費用特約の利用を保険会社が嫌がっている場合でも、契約上利用できるのであれば、保険会社がそれを拒否することはできません。
そのため、しっかりと、使用したい旨を伝えて、それでも保険会社が嫌がる場合には、契約上利用できないのか否かを確認するなどして、諦めずに話をするようにしましょう。
契約上利用できないと言われた場合でも、本当に利用できないのか、一度弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士特約のデメリットはありますか?
弁護士費用特約を付ける場合、当然ながら保険料が発生します。
ですので、保険料の負担があるという点では、デメリットかもしれません。
一方、弁護士費用特約を付けている場合で、それを利用することについてのデメリットというのは、特にありません。
弁護士特約を使うタイミングはいつがいいですか?
保険会社とのやり取りの負担を考えますと、可能な限り早いタイミングが良いといえます。また、基本的に、弁護士への依頼が早いことで費用が大幅に高くなるということはありません。
そのため、まずは早めにご相談されることをお勧めします。
事故後に加入しても弁護士費用特約を使えますか?
交通事故で弁護士費用特約を利用するには、事故時に既に加入をしている必要があります。そのため、事故後に加入しても利用はできません。
1事故1名当たりの補償ということは、1事故2名なら補償も2倍になるのですか?
1事故2名(例:夫婦で同乗していた際の事故)の場合で、2名とも弁護士費用特約が利用できるのであれば、合計の補償額も倍の600万円になります。
ただし、補償の上限(1人300万円)については、人ごとになりますので、1名について補償の枠が余っていても、もう1人の上限が増えるわけではありません。
まずは弁護士にご相談ください
以上のとおり、弁護士費用特約について解説してきましたが、弁護士費用特約を利用するか否か、また、事故によっては上限の範囲内となるか否かなど、判断が難しい場面に遭遇することがあります。
そのため、まずは専門家である弁護士に相談をして、より良い解決に向けて進めていただければと思います。
弁護士法人ALGでは、交通事故(弁護士費用特約案件)を多数扱っておりますので、交通事故に遭われた方は、ぜひ一度ご相談ください。
養子縁組を行うと、血縁関係のない二人の間でも、法的な親子関係が成立するため、相続権が発生します。そして、法定相続人が増えることになりますので、基礎控除が多く受けられるようになるなど、相続税が低くなることもあります。
しかし、相続税における控除には一定のルールがありますし、その他トラブルの要因になることもあります。
この記事では、養子縁組を行った場合の相続について説明しつつ、注意すべき点について解説します。
養子は法定相続人に含まれる?実子との違いは?
養子縁組は、法律上の親子関係を発生させる制度であるため、養親の相続においても、実の親子と同様に扱われます。
そのため、養親が亡くなった場合、養子は第1順位の相続人となります。
他方で、実親の相続に関しては、普通養子縁組の場合と特別養子縁組の場合で結論が異なります。
普通養子縁組
普通養子縁組は、実親との関係も継続しながら、養親との法律上の親子関係も並立して発生させる制度です。
そのため、養子となった人は、縁組によって養親の相続人となりますが、実親の相続においても相続人となります。
普通養子縁組は、基本的に、養親となる者と養子になる者の合意に基づく届出を行うことで成立します。通常、養子縁組といえば、こちらを指すことが多いです。
特別養子縁組
特別養子縁組は、その成立によって実の両親との親族関係を終了させる効果があります。
そのため、特別養子縁組の場合は、その養子は、実親の相続人にはなりません。
縁組によって養親の相続人となる点は、普通養子縁組と同様です。
しかし、特別養子縁組の要件は厳しく、下記のような要件を満たす必要があります。
まず、養親について、①養親となる者に配偶者があり、②養子となる者が夫婦の一方の嫡出である子である場合を除き、夫婦の双方が養親になる必要があり、③養親となる者の年齢が25歳以上(ただし、夫婦の一方が25歳に達していない場合でも、その者が20歳に達していれば足ります)という要件を満たす必要があります。
また、養子になる者についても、請求時に15歳、特別養子縁組が成立する時点で18歳になっている場合には、特別養子縁組による養子になることはできません。
これらの要件を満たしたうえで、実親による子の監護ができない場合で、子の利益のために特に必要があると認められる場合にのみ成立します。
実親が、過度な貧困に陥っていたり、子を虐待したりしているような、ごく例外的な場合にのみ成立するものです。
養子の法定相続分はどれぐらい?
養子は、実子と同じく第1順位の相続人となります。
そのため、法定相続分は実子と同じです。
例えば、実子が二人、養子が一人の場合の法定相続分は、それぞれ3分の1ずつとなります。他には、配偶者がいる場合で、実子と養子が一人ずついる場合、配偶者が2分の1、実子と養子がそれぞれ4分の1(=2分の1÷2)となります。
養子縁組できる人数に上限はある?
法定相続人に含まれる養子の数に制限はない
養子縁組によって養子にできる人数に限界はありません。
養子が何人増えたとしても、それぞれが実子と同じ扱いを受け、それぞれが同じ法定相続分を持ちます。
他方で、相続税の基礎控除額などの場面において、法定相続人の数に含めることができる養子の数は一定数に制限されています。
そのため、養子を増やすこと自体は可能ですが、養子の人数に応じて無制限に相続税が減るわけではありません。
相続税の基礎控除額の計算において制限がある
相続税の計算において、法定相続人の数に応じて基礎控除を受けることができます。
このとき、養子がいる場合は、下記のようなルールがあります。
- ① 被相続人に実の子どもがいる場合 養子は一人まで法定相続人に含めることができます。
- ② 被相続人に実の子どもがいない場合 養子は二人まで法定相続人に含めることができます。
- ③ 特別養子縁組によって養子となった場合 普通縁組と異なり、実の子として扱われます。そのため、①と②のルールが適用されず、その全員が法定相続人に含まれます。
- ④ 配偶者の連れ子を養子にした場合 民法上はあくまで養子ですが、税金の計算上は実の子として扱います。そのため、③と同様に全員が法定相続人に含まれます。 なお、配偶者に、結婚前に行った特別養子縁組による養子がおり、結婚後に被相続人の養子となった場合も同様です。
なお、上記にかかわらず、相続税を減らすためだけに縁組をしたなど、相続税の負担を不当に減少させるものと判断された場合には、法定相続人に含めることが認められないことがあるため、この点には注意が必要です。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
養子がいる場合の相続でのデメリットや注意点
他の親族と遺産の取り分でトラブルになりやすい
養子縁組がなされると相続人が増えるため、実子の法定相続分が減ることになります。
そのため、実子と養子の間で、遺産の取り分に関してトラブルに発展する例は、少なくありません。
縁組の存在を事前に伝えていない場合、実子は、相続が開始した後になって初めて知ることになります。それに大きなショックを受けて、養子が相続分を得ることに対する心理的な反発が大きくなると、紛争が長引くこともあります。
養子縁組をする場合は、親族には事前の相談をして了解を得ておくことが望ましいです。
養子の子が代襲相続人になれないことがある
被相続人が死亡する前に、相続人となる子が先に死亡している場合、代襲相続が発生し、相続人となる子の子、すなわち孫に相続権が発生します。
養子についても、法律上は実子と同じ扱いとなるため、養子縁組後に養子の子が出生した場合は、その子は、養親とも親族関係を持ちます。
この場合に、養子が、養親よりも先に死亡している場合は、代襲相続が生じて、養子の子が養親の相続人となります。
一方で、養子の子が出生した時期が、養子縁組を結ぶ前である場合、養子縁組はあくまで養親と養子の間で法律上の親子関係が生じさせるものであるため、すでに生まれている養子の子に影響はありません。
この場合は、養親と、養子の子に親族関係は生じないため、代襲相続は生じません。養子の子については、出生が養子縁組の前か後かによって、結論が異なるので注意が必要です。
孫を養子にすると相続税が2割加算される場合がある
孫を養子にすることも可能です。
法定相続分と基礎控除については、上述したルールと同様です。
ただし、相続税には、配偶者及び一親等の血族以外の者が相続又は遺贈により財産を取得した場合に、その者の相続税額に2割に相当する金額が加算されるルールがあります。
孫が代襲相続によって相続人となった場合は、この加算はありません。
しかし、孫が養子として相続を受けた場合は、一親等の血族以外の相続人となるため、この2割加算の対象となります。
もっとも、孫が養子になることで基礎控除が増え、納めるべき税金自体が大きく減ることもあるため、2割加算を加味しても、養子縁組を行った方が相続税を抑えられる可能性はあります。
なお、孫が養子となっている際に、代襲相続も同時に発生することがあります。
この場合、孫は、養子としての相続分と、代襲相続人としての相続分の両方を重複して得ることになります。
養子縁組に関する相続トラブルは弁護士にご相談ください
養子縁組を行うと、その養子は法定相続人となります。
実子や配偶者以外に財産を遺す方法は、遺贈もありますが、養子縁組の場合は、相続税の基礎控除が増えることがあるため、相続税が抑えられる可能性があります。
しかし、養子縁組により相続分が減る実子が、不満を抱くなどして、親子間や実子と養子の間でトラブルが生じることもあります。
そのため、養子縁組を行う際には、親族に事前の了承を取ったり、専門家である弁護士に相談をしたりして準備してから行うことをお勧めします。
養子縁組や相続のことでお困りごとがありましたら、まずは、お気軽にご相談いただければと思います。
日本の離婚制度において長年議論されてきた「共同親権」が2026年4月1日に施行され、すでに運用が始まっています。
法改正により離婚後の子育ての形が大きく変化することが予想されていますが、「具体的に生活や手続きで何が変わるのか」「自分や子供にとってどのようなメリット・デメリットがあるのか」と不安や疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
本記事では、共同親権の基本的な概要から、海外の状況、導入によるメリット・デメリット、注意点やよくある質問まで分かりやすく解説します。
共同親権とは
共同親権とは、父母が離婚した後も、双方が共同で子供の親権を行使する制度のことです。
従来の日本の民法では、離婚後は父母のどちらか一方のみを親権者とする「単独親権制度」が採用されていました。
共同親権のもとでは、離婚後も父母双方が子供の親権者として、教育方針の決定、財産管理、居所の指定など、子供の発達や生活に関わる重要な事項を共同で判断・決定していくことになります。
共同親権になると何が変わるのか
共同親権が導入されると、これまで一方の親に偏っていた子育ての権利や義務が父母双方に分散・共有されるようになります。
具体的には、学校の進学先の決定、医療行為(重大な手術など)の同意、引越しによる居所変更といった重要な事項において、原則として離婚後も父母双方の合意が必要となります。
一方で、日常生活における食事の用意や習い事の送迎などの「日常の身の回りの世話」や緊急時の応急処置などについては、父母の一方が単独で決定・判断できる形となります。
海外の共同親権の導入状況は?
欧米諸国をはじめとする多くの先進国では、すでに離婚後の共同親権(あるいは共同親責任)制度が一般的に導入されています。
例えば、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどでは、離婚後も原則として父母双方が親権を持つ制度が定着しており、子供の成長において父母双方との交流を継続することが子供の福祉に叶うという考え方が基本となっています。
一方、DVや虐待などの危険がある特別な事情が存在する場合には、例外的に単独親権が認められる仕組みが整備されています。
日本ではいつから共同親権が導入されるのか?
日本では、共同親権の導入を盛り込んだ改正民法が2024年5月に成立し、2026年4月1日より施行・スタートしました。
制度の導入に伴い、離婚時には父母の協議によって「共同親権」か「単独親権」を選択できるようになっています。
父母間で意見がまとまらない場合は、家庭裁判所が「子の利益」や個別の事情を考慮した上で、どちらの親権形式が適しているかを判断することになります。
共同親権を導入するメリット
共同親権の導入には、離婚後の子育て環境や親同士の関係性において、さまざまなメリットが期待されています。
離婚時の親権争いを回避しやすい
単独親権制度のもとでは、離婚時にどちらか一方しか親権者になれないため、「親権をとられたら子供と会えなくなるのではないか」という焦りから、激しい親権争いへ発展するケースが多く見られました。
共同親権が選択肢に加わることで、離婚後も双方が親として関わり続けられる安心感が生まれ、不要な衝突や泥沼の親権争いを回避しやすくなると期待されています。
双方の妥協点を見つけやすくなり、スムーズな協議離婚の成立につながる可能性があります。
離婚後でも両親ともに子育てに関われる
共同親権では、離婚後も父母双方が法的な親権者としての立場を保持するため、子供の成長に対して責任を持ち続けやすくなります。
別居親にとっても「自分は親である」という自覚を持ちやすく、学校行事への参加や進路相談などを通じて、成長の過程に深く関わり続けることができます。
子供にとっても、両親からの愛情を感じながら健やかに成長できる環境が整いやすくなります。
養育費の不払いを防ぎやすい
日本の単独親権制度においては、離婚後の養育費の不払いが大きな問題となっていました。
別居親が子育てから孤立し、責任感が薄れてしまうことが一因とされています。
共同親権が導入され、離婚後も子育てに直接関与する機会が増えることで、別居親側の「親としての当事者意識」が維持されやすくなります。
その結果、養育費支払いの継続率が高まり、不払いを防ぐ効果が期待されています。
親子交流(面会交流)が実施されやすい
単独親権下では、同居親の意向や感情によって親子交流(面会交流)が拒否されたり、不定期になったりするケースが少なくありませんでした。
共同親権のもとでは、双方が親権者として権利と義務を有するため、親子交流(面会交流)の実施が円滑化されやすくなります。
定期的な親子交流(面会交流)が定着することで、子供と別居親との親子関係が断絶されるリスクが大幅に減少し、子供の情操教育や心の安定にも良い影響を与えます。
共同親権を導入するデメリット・問題点
メリットの一方で、共同親権には懸念されるデメリットや問題点も指摘されています。
DVやモラハラが継続するおそれがある
最も強く懸念されているのが、配偶者からのDV(配偶者暴力)やモラハラ(精神的虐待)が存在していたケースです。
共同親権になると、離婚後も子供の重要事項の決定において元配偶者と連絡や協議を行う必要があります。
そのため、離婚後もDVやモラハラの関係性や支配関係が断ち切れず、被害を受けた側の親が精神的に追い詰められたり、危険に晒され続けたりするおそれがあります。
子供の負担が増える可能性がある
父母が離婚後も対立状態にある場合、共同親権となることで子供が板挟みになり、大きな精神的ストレスを抱える可能性があります。
進路選択や習い事など、自分に関する事柄について親同士が意見を衝突させ、議論が平行線をたどる姿を間近で見続けることは、子供にとって大きな負担です。
両親の顔色を伺うようになり、自分の本当の気持ちを言えなくなってしまうリスクも懸念されます。
教育方針などの決定に時間がかかりやすい
子供の進学先の選定、留学、医療行為の同意など、重要な判断を行う際に父母双方の合意が必要となるため、意思決定に時間がかかるというデメリットがあります。
特に父母の意見や価値観が大きく異なる場合、協議が難航してタイムリーな決定ができず、出願期日に間に合わないなどの不利益が子供に及ぶリスクがあります。
遠方への引っ越しが制限される場合がある
共同親権下では、子供の居所(住む場所)を変更する際にも父母の合意が必要とされる場合があります。
そのため、同居親が仕事の都合による転勤、再婚、実家への帰省などを理由に遠方へ引っ越そうとしても、別居親の反対によって転居が制限される可能性があります。生活環境の変更やキャリア形成において柔軟な対応が難しくなる場面が生じる恐れがあります。
もっとも、父母の一方を監護者と定めている場合には、監護者は単独で子の居所の指定や変更を行うことができるので、引っ越しが制限されることはありません。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
共同親権を取るためのポイント
離婚後に共同親権を選択・維持するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
まず前提となるのは、「離婚後も冷静かつ建設的に意思疎通ができる関係性を保てるか」という点です。
父母間のコミュニケーションが完全に断絶している場合、共同親権の運用は困難になります。また、感情的な対立を排除し、「子供の利益(子どもの福祉)」を最優先に考えられる姿勢が必要です。
具体的には、離婚協議の段階で、連絡方法や面会の頻度、教育費の分担ルールなどをまとめた離婚協議書を作成しておくことが大切です。
共同親権が認められないケース
法改正後も、すべてのケースで共同親権が認められるわけではありません。
特定の問題がある場合には、子供の安全と福祉を守るために「単独親権」と定められます。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
- 配偶者に対するDV(身体的・精神的暴力)やモラハラが存在する場合
- 子供に対する虐待(身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待)がある場合
- 一方の親が激しい精神的対立状態にあり、共同で意思決定を行うことが著しく困難と判断される場合
家庭裁判所がこれらの事実を認定した場合、共同親権は認められず、一方の親による単独親権となります。
共同親権が取れない場合の対処法
相手方の拒否や裁判所の判断によって共同親権が取れず、単独親権となった場合でも、別居親が子供との関わりを完全に失うわけではありません。
親権者になれなかった場合でも、適切な「親子交流(面会交流)」の条件を設定することで、定期的に子供と会い、成長を見守ることができます。
また、離婚協議書や調停調書において、「進路や重大な病気の際には事前に通知・相談を受ける」といった条項を定めておくことも可能です。
さらに、事情の変化(同居親側の事情変更やDVの解消など)があれば、後から親権者の変更を申し立てることも検討できます。
共同親権についてのQ&A
共同親権導入後に離婚した場合、自動的に共同親権になるのでしょうか?
自動的に共同親権になるわけではありません。
制度導入後に離婚する場合であっても、父母の協議によって「共同親権」か「単独親権」を選択することになります。
協議が整わない場合は家庭裁判所に調停や審判を申し立て、裁判所が子供の利益を考慮してどちらを指定するか判断します。
既に離婚している場合、共同親権になった後の親権はどうなるのでしょうか?
制度導入前に離婚した場合は、原則として従来の単独親権のまま維持されます。ただし、制度導入後に家庭裁判所へ「親権者変更」の申立てを行うことで、単独親権から共同親権へと変更することが可能です。
家庭裁判所が子供の意向や父母の関係性を考慮し、変更が妥当であると判断した場合に共同親権へ移行します。
共同親権で再婚した場合、子供の親権者は誰になりますか?
再婚相手と子供が「養子縁組」をするかどうかで親権者が変わります。
再婚相手と子供が養子縁組をしない場合、親権者は離婚時と変わらず「実父と実母」のままです。
一方、再婚相手と子供が養子縁組をした場合、親権者は「実母と再婚相手(養親)」の共同親権となり、実父は親権を失うことになります。
共同親権は拒否できますか?
相手から共同親権を求められた場合でも、拒否することは可能です。
協議離婚において自身が同意しなければ、共同親権が成立することはありません。相手が譲らず協議が難航した場合は裁判所の調停・審判へ移行します。
DVや虐待の事実、意思疎通が不可能な事情などを主張・立証できれば、裁判所によって単独親権が認められる可能性が高くなります。
共同親権から単独親権への変更はできますか?
離婚後に共同親権となった後でも、単独親権への変更は可能です。
離婚後に相手方からDV・虐待が発生した場合や、意見の対立が激化して子供の進路決定などに重大な支障が出ている場合、家庭裁判所に「親権者変更の調停・審判」を申し立てることができます。
子供の利益を著しく害すると認められれば、単独親権への変更が認められます。
共同親権について不明点があれば弁護士へご相談ください
共同親権の導入により、今後の離婚協議や子育てのあり方は大きく変わります。
共同親権を選択すべきか単独親権を目指すべきかは、それぞれの家庭環境、父母の関係性、DVの有無、そして何より子供の意向や幸せによって異なります。
自分にとってどの選択が最適なのか判断に迷う場合や、相手方との交渉に不安がある場合は、早期に離婚問題や親権問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
法的なアドバイスを受けることで、適切な手続きを進め、自分と子供の権利と未来を守ることができます。
離婚時に親子交流(面会交流)に関して取り決めたのに、離婚した後、子どもに一切会わせてもらえないというケースがあります。
このように、子どもと生活している親(監護親)に親子交流(面会交流)を拒まれている場合、子どもと離れて生活している親(非監護親)は、子どもとの親子交流(面会交流)を実現できるように監護親に間接的に働きかける方法(制度)があります。
以下では、その制度が認められる要件や、手続方法などについて解説します。
親子交流(面会交流)の間接強制とはどんなもの?
前述の、非監護親が監護親に対して、親子交流(面会交流)を実施するように間接的に働きかける手続きは「間接強制」というものです。
親子交流(面会交流)の間接強制とは、当事者間で親子交流(面会交流)に関する取り決めをしたにもかかわらず、非監護親に子どもを会わせない(親子交流(面会交流)に応じない)監護親に対し、裁判所が、「親子交流(面会交流)に応じない場合は、1回あたり●万円支払え」と金銭(間接強制金)を支払うように命じるものです。
このようにすることで、監護親に「お金を払いたくない」という心理的なプレッシャーを生じさせ、間接的に親子交流(面会交流)を促すことになります。
間接強制は、裁判所から監護親に対し、親子交流(面会交流)に関する取り決めを守るように説得したり、親子交流(面会交流)を実施するように勧告したりする「履行勧告」をしてもなお、監護親が非監護親に子どもを会わせない(親子交流(面会交流)に応じない)場合の次の手段です。
間接強制があるなら直接強制もある?
一般的に、強制執行の方法には、間接強制と直接強制があります。
しかし、親子交流(面会交流)の場合には、直接強制はできないとされています。
理由としては、直接強制するとなると、執行官が非監護親(子どもと離れて生活する親)の下に子どもを力尽くで連れてくることにもなりかねないため、子どもの福祉の観点から不適当であると考えられるからです。
間接強制が認められるための2つの要件
間接強制は、申立てさえすれば必ず実施されるというものではありません。
裁判所によって間接強制が認められるためには、以下の2つの要件を充たす必要があります。
- ➀調停や審判で親子交流(面会交流)の取り決めがあること
- ➁親子交流(面会交流)の内容が具体的に特定されていること
①調停や審判で親子交流(面会交流)の取り決めがあること
間接強制を申し立てるにあたっては、調停や審判などの家庭裁判所の手続きを利用して親子交流(面会交流)に関する取り決めをしており、親子交流(面会交流)の取り決めが記載されている調停調書や審判書があることが必要となります。
なお、裁判所の手続きは使わず、当事者間の話合いで合意して作成した公正証書がある場合であっても、間接強制を申し立てることはできません。
②親子交流(面会交流)の内容が具体的に特定されていること
単に調停調書や審判書において親子交流(面会交流)に関する取り決めがされていればよいということではなく、その内容が具体的に特定されて記載されていることが求められます。
親子交流(面会交流)の内容が具体的に特定されているかを判断するにあたっては、以下の3要素を中心に考えることになります。
- ➀親子交流(面会交流)の日時又は頻度
- ➁各回の親子交流(面会交流)時間の長さ
- ➂子の引渡しの方法
たとえば、「月1回、毎月第3土曜日の午前10時から午後5時までの7時間、長女の受け渡し場所は、所定の駅の改札口付近とすること、監護親は親子交流(面会交流)開始時に受け渡し場所において長女を非監護親に引き渡し、非監護親は、親子交流(面会交流)終了時に受け渡し場所において長女を監護親に引き渡すこと」というような内容で取り決めておけば、間接強制が認められる可能性は高いです。
一方で、「1ヶ月に1回、休日に1回につき7時間、親子交流(面会交流)を実施する」というような曖昧な内容での取り決めだと、間接強制が認められません。
理由としては、前述の3要素がいずれも抽象的で、特定されていないからです。
そのため、調停や審判において親子交流(面会交流)について取り決める際は、監護親に親子交流(面会交流)を拒否された場合に備え(間接強制を申し立てる可能性があることを見据え)、親子交流(面会交流)を実施する日時や頻度、親子交流(面会交流)の時間の長さ、子の引渡し方法について、具体的に特定して、明確にしておくことが重要です。
子供が親子交流(面会交流)を拒否している場合、間接強制は認められないのか?
原則としては、調停調書や審判書において親子交流(面会交流)に関する取り決めが具体的にされていれば、たとえ子が非監護親との親子交流(面会交流)を拒否しているという場合であっても、このことを理由にして親子交流(面会交流)の間接強制を免れることはできません。
これは、子が本当に非監護親に会いたくなくて拒否しているのかどうかという子の真意については、非常に慎重に判断されるものだからとされています。
したがって、子が非監護親との親子交流(面会交流)を拒否しているということは、新たな親子交流(面会交流)の条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得るとしても、間接強制を免れる理由とはならないとされています。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
間接強制の手続き方法と流れ
間接強制は以下のような手続き、流れで行われます。
申し立ての流れ
- ➀家庭裁判所に申し立てる 調停や審判をした裁判所に必要書類を提出し、間接強制の申立てをします。
- ➁監護親への審尋 間接強制の申立てが受理されたら、家庭裁判所が監護親に対し、「審尋」という監護親の意見を聞く手続きを行います。 家庭裁判所はこの審尋で得られた情報を基に、間接強制が適切かを判断します。
- ➂家庭裁判所の決定 家庭裁判所が非監護親の親子交流(面会交流)の間接強制の申立てを認めるか否かの判断をします。 親子交流(面会交流)の間接強制の申立てを認容する決定を出す場合は、「親子交流(面会交流)をさせなかった場合は1回あたり●万円支払え」という内容の間接強制金(制裁金)を課す命令を出します。
申し立てに必要な書類・費用
【必要書類】
- 申立書
- 執行力のある債務名義の正本(調停調書、審判書、判決書)
- 債務名義の正本送達証明書 ※事案によって、このほかの資料の提出が必要な場合があります。
【費用】
- 収入印紙:2000円
- 連絡用の郵便切手(連絡用の郵便料は裁判所ごとに異なります。)
間接強制しても親子交流(面会交流)が実現するとは限らない点に注意
間接強制は、前述のとおり、子を非監護親に無理やり連れてくるというようなものではないので、親子交流(面会交流)を実現させる直接的な効力はありません。
そのため、間接強制の申立てが認容され、間接強制金が課せられても、それでも監護親が非監護親に子を会わせない(親子交流(面会交流)に応じない)という対応をした場合には、子どもとの親子交流(面会交流)は実現しません。
離婚問題や親子交流(面会交流)に詳しい弁護士が、親身になってあなたをサポートいたします
子どもとの親子交流(面会交流)を実現するためには、相手方(監護親)と交渉しつつ、場合によっては間接強制を申し立てるなど、戦略的に進めていく必要がありますが、当事者間で話合いをすると、感情的になってなかなか話が進まないことも多いです。
また、親子交流(面会交流)は、ご自身はもちろん、相手方も納得できる内容でなければ、せっかく取り決めても、取り決めどおりに子どもと会わせないということもあり、そうなれば、子どもとの面会が実現しないのが現状です。
弁護士であれば、父母双方が納得するような条件を目指し、相手方との合意に向けて交渉を進めていくことができます。
また、調停を申し立てる場合、間接強制をする場合に備えて、親子交流(面会交流)に関する取り決めが間接強制の申立てが認められる程度に特定されているかという観点から、親子交流(面会交流)の実施に関する内容を取り決めることができます。
これから親子交流(面会交流)の取り決めをしようと考えているが、取り決める内容にご不安がある方や、親子交流(面会交流)の取り決めはないものの、子どもとの親子交流(面会交流)をご希望の方、親子交流(面会交流)の取り決めをしたのに守られず困っている方は、弁護士にご相談ください。
兄弟姉妹の間で不和が生じた、また、遠方への引っ越し等により自然に連絡の機会が減少していったなど、様々な事情のもとで兄弟姉妹と絶縁状態になることも少なくありません。
絶縁した兄弟姉妹がいる中で相続が発生すれば、その兄弟姉妹にも連絡をするべきなのか、どのように遺産分割を進めていけばいいかなど、疑問や不安もたくさん生じると思います。
そして、絶縁した兄弟に対して適切な対応を取らなかった場合、さらなるトラブルが生じる危険もあります。
本記事では、絶縁した兄弟姉妹がいる場合の手続の進め方や、相続させたくない場合の対処法、弁護士に相談するメリットを解説するとともに、よくある疑問についても回答いたします。
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続はどうなる?
そもそも、兄弟姉妹が相続人となるのは、大きく分けて2パターンあります。
1パターン目は、亡くなった方(被相続人と言われます。)が親の場合です。
この場合は、被相続人の子であるあなたや他の兄弟姉妹は当然に相続人になります。
2パターン目は被相続人が兄弟姉妹の場合です。
この場合にあなたや他の兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人に子・孫・ひ孫がおらず、かつ親・祖父母などの尊属もいない場合に限定されます(民法889条、887条)。
もっとも、上の状況を満たす場合には、仮に絶縁状態の兄弟姉妹がいたとしても、その兄弟姉妹は相続人になります。
法律上は、絶縁状態になっていたとしても、その者と兄弟姉妹関係が喪失することはないからです。
絶縁した兄弟姉妹がいる場合の遺産相続の進め方
相手の連絡先を知っているケース
絶縁した兄弟姉妹の連絡先を知っている場合、遺産分割を有効に成立させるために、その相手に遺産分割協議を行う必要があることを連絡し、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。
絶縁した兄弟姉妹と連絡をとれたとしても、その相手が遠方に居住していることもあると思います。この場合は、手紙やメール、LINEなどによって遺産分割協議を進めていけばよいでしょう。
なお、相手と感情的に対立していて、連絡を取ることに不安を感じている方もいらっしゃると思います。この場合は、弁護士に代理人となってもらうことで、相手との直接の交渉を弁護士に行ってもらうことができます。
相手の連絡先を知らないケース
絶縁した兄弟姉妹の連絡先を知らない場合、その相手と連絡を取るために、相手の現住所を知る必要があります。
相手の現住所は、まず被相続人の戸籍の附票を取得してその相手の本籍を把握した上で、相手の本籍が置かれている自治体から相手の住民票を取得することで、知ることが可能です。
相手の現住所を知ることができたら、遺産分割協議を行う旨の連絡文を相手の住所に送り、遺産分割協議を進めましょう。
それでも相手の住所がわからない場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てを行い、その相手の代わりに不在者財産管理人に遺産分割協議に参加してもらうことで、有効に遺産分割協議を行うことができます。
なお、上記の所在調査をしても相手の住所がわからない場合や、こういった手続を行うことが大変と感じる場合は、一度弁護士に相談するとよいでしょう。
相手の生死が7年以上不明のケース
相手の現住所がわからず、その生死が7年以上不明な場合、失踪宣告(民法30条)をすることで、その相手が死亡したものとみなして、相手を相続人ではなくすることができます。
この場合、相手を遺産分割協議に参加させなくても、有効な遺産分割協議を行うことができるようになります。
なお、相手を失踪宣告した場合に、相手が死亡したものとみなされる時点は、相手の生死が不明になってから7年が経過した時点になります。
失踪宣告の申立てにおいて、被相続人がなくなった時点より7年以上前の時点から相手の生死が不明である旨主張すると、被相続人の死亡以前にその相手が死亡したとみなされることになります。
このとき、相手の子が存在していれば、その相手の子が相手に代襲して相続人になり、相手の子を遺産分割協議に参加させる必要が生じます。
そのため、失踪宣告の申立てを行う際は、相手の生死が不明になった時点に注意して申し立てるようにしましょう。
絶縁した兄弟姉妹に相続させたくない場合の対処法
まず、絶縁した兄弟姉妹と連絡を取ることができるのであれば、その兄弟姉妹に相続放棄をしてほしいとお願いをし、相続放棄をしてもらうという方法があります。
もっとも、相続放棄は放棄を行う相続人が自ら家庭裁判所で手続を行わなければできないため、その兄弟姉妹に相続させないことができるのは、その兄弟姉妹が相続放棄の手続を行ってくれた場合に限られます。
その兄弟姉妹が相続放棄の手続を行ってくれるかわからない場合や、相続放棄をしてほしいという連絡をしたくない場合、またそもそも連絡が取れない場合には、被相続人にお願いをして、その兄弟姉妹には相続させないという内容の遺言書を被相続人に作成してもらうという方法もあります。
なお、被相続人が親であり子が相続人である場合、子の兄弟姉妹は相続人の子として遺留分が認められます。
そのため、遺留分を侵害するような遺言は認められないので、この点は相続放棄がされた場合と異なる点に注意が必要です。
一方、被相続人に配偶者・子・直系尊属がおらず、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となる場合には、兄弟姉妹には遺留分はありません。
また、被相続人を騙したり脅したりして上記の遺言書を作成してもらった場合、相続欠格に該当して相続人になることができなくなることにも気を付けましょう。
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続を弁護士に相談するメリット
絶縁した兄弟姉妹と連絡をとることは、絶縁の理由にかかわらず負担が大きいものと思います。
弁護士に相談をすれば、絶縁した兄弟姉妹と直接連絡を取らずに遺産相続を行う方法を知ることができる点が大きなメリットになると考えます。
また、不在者財産管理人や失踪宣告の申立て、所在調査などの手続は難しいものです。
弁護士に相談すれば、これらの手続を行うべきか、どのように行うかを知ることができる点もメリットかと思います。
さらに、弁護士に事前に遺産分割の相談をしていれば、法的な知見から他の相続人と法的な紛争をあらかじめ避けることができたという可能性もあります。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続についてのQ&A
絶縁した兄弟に遺産相続の連絡をしましたが返事がありません。放っておいて手続きを進めても良いですか?
遺産分割協議は相続人全員が同意しなければ有効に成立しません。
そのため、絶縁した兄弟姉妹にも遺産分割協議に参加してもらわなければ有効な協議とは認められません。
これは、絶縁した兄弟姉妹から返事がなかったとしても変わらないので、返事がなかったとしても、その兄弟姉妹を除いて手続を進めることはやめるべきでしょう。
返事がない場合には、内容証明郵便や特定記録郵便を送るなどして再度の連絡を試みましょう。
それでも返事がないときは、遺産分割調停を申し立てることも視野に入れるべきでしょう。
遺言書に絶縁した兄弟の名前がありませんでした。連絡せずに相続手続きしても良いですか?
遺言書が公正証書遺言の方式で作成されている場合や、自筆証書遺言の方式で作成されていて遺言書保管制度が使用されていない場合には、家庭裁判所から相続人に連絡がされることは通常ありません。
遺言書が存在する場合、基本的に、遺言書の内容に従って遺産分割が行われることになります。
遺言書に絶縁した兄弟姉妹の名前がなかったとしても、その兄弟姉妹には関係のないような遺言書の内容であれば、その兄弟姉妹に連絡を取らないまま手続を行うことも可能ではあります。
もっとも、被相続人が親となる場合には、被相続人の子であるその兄弟姉妹にも遺留分が生じます。
被相続人の子であるその兄弟姉妹に連絡をしないまま手続を進めると、遺留分侵害額請求をされるおそれがあります。
一方で、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合には遺留分がないため、遺言書において全く遺産の相続が認められていない兄弟姉妹については連絡を取らずに手続きを進めても問題はありません。
絶縁状態の兄弟に連絡をせず勝手に遺産分割や相続手続きを行ったらどうなりますか?
上記でも述べました通り、遺産分割協議は相続人全員が同意しなければ有効に成立しません。
そのため、絶縁した兄弟姉妹に連絡せず勝手に遺産分割協議を行ったとしても、相続人全員の合意がないとして、その協議は無効になります。
絶縁した兄弟姉妹を除いて遺産分割や相続手続を進めた場合、その兄弟姉妹から遺産分割の有効性を争うような主張がされかねず、さらには調停や審判が申し立てられる可能性があります。
したがって、絶縁した兄弟姉妹だからといって連絡することなく遺産分割や相続手続をすすめることは避けるべきです。
兄弟姉妹との遺産相続でトラブルにならないためにも弁護士にご相談ください
絶縁した兄弟姉妹がいる場合、感情的な対立があったり、連絡手段がなかったりして、一般的な遺産相続よりもトラブルに発展する可能性があります。
このようなトラブルを回避するためには、適切な手段をとるべきでありますが、適切な手段をとるためには弁護士に相談することが最も確実だと思われます。
弊所の弁護士は、相続事件も取り扱っておりますので、相続を円滑に進めるためのアドバイス・サポートをすることができます。
絶縁した兄弟姉妹がいる場合の相続に直面してお困りの方やもちろん、その他相続に関する相談についても、ぜひ一度、弊所の弁護士にご相談ください。
相続が発生した場合に、相続財産に「農地」が含まれていることが分かり、活用や処分に困るということがあります。
「農地」とは、「耕作の目的に供される土地」(農地法第2条第1項)と定義されます。
農地法の適用を考える際には、この定義が重要となりますが、この記事では、農地法の適用関係だけではなく、広く、「農地」と相続放棄についての法的問題について、説明します。
不要な農地だけを相続放棄することはできない
不要な「農地」が相続財産に含まれるからといって、「農地」だけを相続放棄することはできません。
相続放棄は、相続財産全てを対象として行うものであり、相続放棄をするのであれば、「農地」を含む、一切の相続財産について、相続放棄を行うこととなります。
相続財産に、価値のある資産が含まれている場合でも、うっかり相続放棄をしてしまうと、「農地」だけでなく、価値のある資産までまとめて失うことになる可能性もあるので相続放棄においては慎重な判断が求められます。
相続放棄をしても農地の管理義務は残る
相続放棄をしても直ちに「農地」の管理義務を免れるわけではありません。
民法第940条第1項によれば、「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」とされ、相続放棄をした場合でも、相続財産に属する「農地」を占有している場合、その管理義務を負うこととなります。
相続土地国庫帰属制度を利用できれば国に引き取ってもらえる
相続放棄をせずに相続して「農地」を取得した場合には、相続土地国庫帰属制度を利用して国に引き取ってもらうことが可能です。
これは、相続土地国庫帰属制度という制度を利用する方法であり、要件を満たす場合に、適正な申請手続をすれば、国が、相続により取得した「農地」を引き取るという仕組みです。
申請にあたっては、法務局に相談をすると手続がスムーズに進みますので、対象となる「農地」の存在する地域の法務局に問い合わせを行うのがよいでしょう。
なお、同制度の利用には負担金の納付なども必要となりますのでご注意ください。
放置すると「耕作放棄地」となり、処分が難しくなる
「農地」を長期間放置すると、いわゆる「耕作放棄地」とみなされる可能性があります。
「耕作放棄地」とは、法令上の用語ではないですが、過去1年間作物が栽培されず、今後も栽培される見込みのない土地をいいます。
このような土地は、管理が行き届いていないため、廃棄物が不法投棄されるなどのリスクがあり、結果的に、買主がいないなどの理由で処分が困難となることがあります。
借り手のいる農地を相続放棄したらどうなる?
被相続人が、「農地」を第三者に賃貸した状態で相続が発生した場合、賃貸借契約は当然には終了せず、相続人と賃借人との間で継続することとなります。
相続放棄をした場合、次順位の相続人がいる場合には、その方が、賃貸人として、賃貸借関係が継続します。
農地を相続放棄する手続きの流れ
相続放棄を行うためには、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に」(民法第915条第1項)、被相続人の最後の住所地が所在する家庭裁判所に相続放棄の申述を行うことが必要です。
相続放棄の申述をするためには、戸籍関係の書類等、必要な添付書類があり、これらの書類をそろえるために一定の時間を要する場合もあるため、「三箇月」という期間は決して長くはありません。
相続放棄を検討する場合には、速やかに、専門家に相談し、余裕をもって準備をすることをお勧めします。
「三箇月」の期間を経過してしまうと、原則として、相続放棄は認められませんので、注意してください。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続した農地の使い道
農家に売却する
相続した「農地」を相続人が自身で活用することができないのであれば、農家に売却をするという方法があります。
もっとも、一般の土地と異なり、「農地」を第三者に譲渡するためには、農地法第3条第1項に基づき、農業委員会の許可を受けなければなりません。
この許可を得ずになされた「農地」の譲渡は、単に手続的な瑕疵があるというにとどまらず、私法上も無効とされます。
農地から宅地に転用する
相続した「農地」を宅地など農地以外の土地に転用し、活用するという方法もあります。
しかし、相続した「農地」を農地以外の土地に転用する場合には、農地法第4条第1項に基づき、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。
農地を転用できない場合もある
「農地」の転用は常に認められるわけではありません。
転用の許可は、一般に、立地基準(農地の優良性と周辺の土地状況等による基準)と、一般基準(転用を許可できない事情の有無等による基準)という2つの基準を満たした場合になされます。
このうち、立地基準において、農地の区分によっては原則として転用が不許可とされることも少なくなく、農地の転用が許可されない場合もあります。
農地の相続放棄についてお悩みの方はご相談ください
「農地」は、一般の土地と異なり、譲渡や転用が法律により制限され、無断譲渡、無断転用がなされた場合には、罰則が科されることもあります(農地法第64条第1号)。
したがって、自身の判断で、「農地」の譲渡や転用を検討することは極めて危険です。
また、相続放棄を検討する場合に、そもそも、「三箇月」の期間制限を超えており相続放棄をすること自体が困難であったり、「農地」以外に価値のある資産が相続財産に含まれているため相続放棄以外の方法により、「農地」の処分を検討すべきであったり、相続放棄をすることで、別の親族が新たに相続人となることを失念していたり、相続放棄をしても直ちに「農地」の管理義務を免れるわけではなかったりといった落とし穴もあります。
そのため、 「農地」の相続放棄についてお悩みの方は、「農地」の管理や処分と、相続問題の双方に精通した専門家にご相談いただくことをお勧めします。
車社会において、交通事故の発生は避けて通れないことです。
しかし、ひとたび人身事故が起こると、けがのためにしばらく働けなかったり、そうでなくても治療費が必要になっていきます。
交通事故は、加害者による不法行為(民法第709条)ですので、被害者は、加害者に対して、必要な賠償を請求することができます。
しかし、加害者に十分な資力がない場合、いくら損害賠償請求権があるといっても、被害者は、損害を回復させることができません。
そのため、自賠責保険という強制加入の保険が存在しており、被害者は、自賠責保険会社から最低限の救済を受けられるようになっています。
ここでは、被害者が自賠責保険会社に行う「被害者請求」と呼ばれる手続きについて、ご説明をいたします。
交通事故の被害者請求とは
被害者請求というのは、交通事故の被害者が加害者の自賠責保険会社に対し、被害者自らが直接損害賠償額の請求を行うことをいいます。
後述のとおり、加害者が自賠責保険会社に請求することも可能ですが、加害者の請求がなければ、被害者が自賠責保険会社から賠償を得られないとすれば、被害者救済のための制度として十分に機能しません。
そのため、法は、被害者にも加害者の自賠責保険会社に直接請求できることを認めています。
なお、被害者請求は、自動車損害賠償保障法第16条に根拠があることから、「16条請求」ともいいます。ここでは「被害者請求」に統一して表記します。
加害者請求との違い
被害者が加害者の自賠責保険会社に請求することを「被害者請求」というのに対し、加害者が、自賠責保険会社に請求することを「加害者請求」といいます。
そもそも、自賠責保険は、交通事故の被害者を救済するための制度ですので、加害者が受け取った保険金を被害者のために充てる制度でなければなりません。
そのため、加害者請求を行うには、先に、被害者に損害賠償をする必要があるとされています。もう少し厳密にいうと、加害者は、被害者に対して支払った損害賠償額を限度として保険金の請求が可能とされています。
交通事故で被害者請求できるもの
自賠責保険から支払いがなされる損害の対象には以下のものがあります。
なお、後遺障害慰謝料及び後遺障害逸失利益は後遺障害が認定された場合に、死亡慰謝料、死亡逸失利益及び葬儀費は被害者が交通事故により亡くなった場合に支払いがなされます。
| 損害賠償項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療費関係 | 治療費、付添看護費、交通費など |
| 文書料 | 交通事故証明書、印鑑登録証明書、住民票などの発行手数料 |
| 休業損害 | 事故による傷害のために発生した収入の減少 |
| 入通院慰謝料 | 事故による怪我で入院・通院しなければならなくなった精神的・肉体的苦痛による補償 |
| 後遺障害慰謝料 | 事故により後遺障害が残ったことによる精神的・肉体的苦痛に対する補償 |
| 後遺障害逸失利益 | 後遺障害の影響により将来的な収入が減ったことによる補償 |
| 死亡慰謝料 | 事故により死亡したことによる精神的・肉体的苦痛に対する補償 |
| 死亡逸失利益 | 本人が生きていれば得られた収入から本人の生活費を控除したもの |
| 葬儀費 | 通夜、祭壇、火葬、埋葬、墓石に要する費用 |
請求できる保険金の上限額
自賠責保険では、保険金(賠償金)の上限が定められています(具体的な上限は、以下のとおりです。)。
例えば、傷害部分では120万円が上限となっており、いくら交通事故によって、これを超える損害が発生していたとしても、120万円以上の保険金(賠償金)は支払われません。
| 傷害部分 (治療費、入通院慰謝料、休業損害など) |
120万円 |
|---|---|
| 後遺障害部分 (後遺障害慰謝料、逸失利益など) |
後遺障害等級に 応じて75万~4000万円 |
| 被害者が死亡した場合 (死亡慰謝料・逸失利益など) |
3000万円 |
被害者請求のメリット
①示談を待たずに賠償金がもらえる
通常、事故の加害者から賠償金を得るためには、先に示談をする必要があります。
示談成立のためには、資料収集をし、その後加害者と協議、合意という過程を経る必要がありますので、賠償金を得るためには、どうしても時間がかかります。
一方で、被害者請求は、一定の資料を集める必要があるものの、加害者との示談をすることなく、自賠責の基準に沿った賠償を得ることが可能です。
一般には、加害者と示談をするよりも、必要な資料を集めて自賠責保険会社に請求する方が早いことが多いですから、示談よりも早く賠償金を得られることが被害者請求のメリットの一つです。
②後遺障害等級の認定に有利
後遺障害等級の申請は、加害者側からでも行うことができます。
しかし、加害者が、積極的に被害者のために動くとは考え難いため、十分な資料等を収集せずに後遺障害申請をする可能性が高いと考えられます。
被害者請求では、被害者が自分自身のために後遺障害の申請を行いますので、自分の状態に合わせて必要な資料の収集等を行うことができます。
後遺障害等級認定の結果にどこまで影響を及ぼすのかは不明なところがありますが、被害者請求の方が後遺障害等級の認定には有利であると考えられます。
被害者請求のデメリット
手続きが煩雑
被害者請求を行うためには、交通事故証明書、医師の診断書などの必要資料を収集しなければなりません。
状況によって必要となる資料も異なりますが、交通事故に何度も遭う方は少ないでしょうから、不慣れな資料収集等をして対応をしなければなりません。
けがの痛みがある中で行わなければなりませんから、普段よりも、一層負担は大きいでしょう。このような手続きの煩雑性が被害者請求のデメリットの一つといえます。
被害者請求をした方がいいケース
加害者が任意保険に未加入の場合
多くの場合、加害者は、強制加入の自賠責保険のみならず、任意保険にも加入しています。しかし、中には任意保険に加入していない方もいます。
任意保険に加入していない理由は様々でしょうが、主な理由として考えられるのは資力の問題です。つまり、保険料の負担が厳しいことから、任意保険に加入していないことが想定されます。
この場合、被害者は、加害者から賠償金を得ることは容易ではありません。
そのため、最低限の補償を受けるためにも、被害者請求を行うべきといえます。
示談交渉が長引く可能性がある場合
上述のとおり、示談をするよりも、被害者請求の方が早く賠償金を得ることができます。
通常、事故に遭うと、休業を余儀なくされたり、そうでなくても通院の負担が生じます。
そのため、被害者にとって、賠償金が得られない状況が続くのは辛いことでしょう。
被害者請求をすれば、通常、一定の賠償金を得ることができます。
そのため、示談交渉が長引く可能性が高い場合には、被害者請求を考えても良いでしょう。
後遺障害等級認定の申請をする場合
後遺障害等級認定の申請をする場合には、被害者請求を考えるべきです。
上記でも述べましたが、加害者請求と比較すると、被害者請求の方が適切な資料を基に後遺障害等級認定の審査を受けることができるためです。
そのため、治療を受けてもなお症状が残存し、後遺障害等級の申請を考える場合には、後遺障害に関する被害者請求をした方が良いといえます。
被害者の過失割合が大きい場合
被害者にも過失がある場合、過失相殺が行われます。
例えば、加害者の過失が70、被害者の過失が30とします。
この場合、被害者は、過失相殺によって、加害者に対して、損害額全体のうち7割しか請求できません。
しかし、自賠責保険では特殊なルールが取られており、被害者の過失が7割未満であれば、過失がない場合と同様の損害賠償額を得ることができます。
被害者の過失が大きい場合には、加害者からの賠償金よりも、自賠責保険の賠償金の方が高くなることがあります。
この場合、自賠責保険から賠償金を得た方が有利になりますので、被害者請求をした方が良いと考えられます。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
被害者請求の手続き方法・流れ
被害者請求の流れは、概要は以下のとおりです。
まず、必要な資料(具体的な内容は後述)を収集します。
その後、加害者の自賠責保険会社に、その資料を提出して、申請を行います。
その後、自賠責保険会社は、請求書類に不備がないかを確認し、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所に送付します。
損害保険料率算出機構では、損害の調査を行い、賠償の可否やその金額を判断します。
そして、損害保険料率算出機構は、自賠責保険会社に結果を報告し、自賠責保険会社は、その結果に基づいて被害者に損害賠償額を支払います。
被害者請求に必要な書類
被害者請求に必要な資料は、損害の種類(傷害、後遺障害、死亡)によって異なります。
共通して必要となるのは、以下のものがあります。
- 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書
- 交通事故証明書(人身事故)
- 事故発生状況報告書
- 診断書(死亡の場合には、死体検案書(死亡診断書))
- 診療報酬明細書
- 印鑑登録証明書
そのほか、状況によって、通院交通費明細書(通院に交通費が必要になった場合)、休業損害証明書(休業をしていた場合)といったものが必要となります。
また、後遺障害の申請を考える場合には、後遺障害診断書が必要となります。
支払われるまでの期間はどれくらい?
傷害部分の請求のみであれば、通常、必要書類を提出してから概ね1か月程度の期間で支払いがなされます。
また、後遺障害部分の請求をするためには、後遺障害等級の認定が必要となりますので、必要書類を提出してから、通常、2~3か月程度の期間が必要となります(状況によって、短くなることも、長くなることもあります。)。
もちろん、申請に不備がある場合や、必要書類に不足がある場合、追加の資料収集等が必要となり、その分、支払いがなされるまでの期間も延びます。
支払い時期を考えても適切に申請することが大切です。
加害者の保険会社がわからない場合
通常、交通事故が発生した場合には、警察に届け出ますが、そうすると、自動車安全運転センター発行の交通事故証明書を取得することができます。
この交通事故証明書には、当事者の自賠責保険会社の記載がありますので、交通事故証明書を取得することで、加害者の自賠責保険会社を特定することが可能です。
交通事故証明書は、被害者請求をするためにも必要な書類ですので、早めに取得をしておくのが良いでしょう。
被害者請求には時効がある
自賠責保険会社への請求にも時効があります。
時効は、権利を行使することができるときから3年です。
例えば、傷害部分の時効は、通常、事故日から3年、後遺障害部分であれば症状固定日から3年となります。また、死亡部分の時効は、死亡時点から3年です。
時効が成立すると、自賠責保険から賠償を得られなくなりますので、時効を迎える前に、必要な請求をする必要があります。
また、時効が完成しそうなときは、時効期間の延長(更新)をすることも可能です。
申請が間に合わない場合には、時効の更新手続きを取ることを考えましょう。
なお、民法改正によって、人の生命又は身体を害する不法行為の時効は5年に延長されました(改正前は3年でした。)。
しかし、民法改正後も、自賠責保険の時効は3年のままです。
民法の時効とは異なる期間が定められていますので、ご注意ください。
被害者請求を弁護士に依頼するメリット
①必要書類を自分で集める手間が省ける
上述のとおり、被害者請求をするためには、必要書類の取得が必要となります。
中には、弁護士では取得ができないものもありますが、多くの資料は弁護士においても取得をすることが可能です。また、交通事故に精通している弁護士であれば、状況に応じて必要な資料を把握しているでしょう。
そのため、弁護士に依頼をした場合、資料収集に関する手間が省けることになります。
繰り返しになりますが、交通事故でけがを負っている中で必要資料を収集することは容易ではありません。資料取得の手間が省けるということは、被害者にとって大きなメリットであるといえます。
②後遺障害等級認定の可能性が高まる
けがの内容によって、想定される後遺障害等級は異なりますが、弁護士に依頼をした場合、想定される後遺障害等級に応じた対応が可能となります。
また、弁護士は、法的な観点から、後遺障害に関する意見書を作成することも可能です。
適切な資料、意見がなければ後遺障害等級が認定される可能性が下がるでしょうから、弁護士に依頼することで後遺障害等級認定の可能性が高まると考えられます。
③示談交渉を任せられる
交通事故に関して、弁護士に依頼する場合は、被害者請求のみならず、交通事故全般を依頼することになります。
これは、加害者又は加害者加入の任意保険会社との交渉を含みますので、弁護士への依頼することによって示談交渉を任せることも可能です。
損害賠償に関する交渉は、日常で経験することがないでしょう。
弁護士は、専門家として、法的紛争を取り扱っていますから、弁護士に示談交渉を任せることができる点は大きなメリットといえます。
交通事故の被害者請求は弁護士にお任せください
ここでは、被害者請求に関することを説明いたしました。
しかし、実際に被害者請求を行うべきか否か、被害者請求をするとして、どのような手続きを選択するかは、個々の状況を踏まえて判断する必要があります。
何度も交通事故に遭っているような場合でなければ、交通事故に関する十分な知識がなく、適切な対応を判断することは困難と思われます。
被害者請求も含め、交通事故でお困りのことがあれば、ぜひ、専門家である弁護士にご相談ください。

-
保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
