監修弁護士 井本 敬善弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士
今回は交通事故について弁護士を依頼する場合によく使われる「弁護士特約」についてご説明いたします。
近年では、弁護士費用についての保険が注目されることもありますが、この弁護士費用についての保険が最も使われている分野が交通事故になります。
今回は交通事故の弁護士特約についてご説明します。
弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、交通事故(保険内容によってはそれ以外の事件の弁護士費用に対応しているケースもあります)の示談交渉等における弁護士費用を支払ってくれる保険の特約のことです。
この弁護士費用特約を使えば、交通事故において、費用の負担をせずに、あるいは一部だけ負担することで弁護士を利用することができます。
法律相談費用は10万円まで補償
弁護士費用特約の対象となる弁護士費用の一つに、法律相談の費用があります。
通常、上限金額を10万円として保障されるものです。
この特約を利用すれば、多くの場合、自己負担なしで弁護士に対し、交通事故についての法律相談を行うことができます。
弁護士費用は最大300万円まで補償
次に、弁護士特約の最もメインの内容としては、通常300万円までを上限として支払いを受けられる弁護士費用そのものの補償があります。
先ほどの10万円を上限とする相談費用に関する補償は、弁護士と契約する前の法律相談を対象としていますが、こちらの弁護士費用の補償は基本的に、弁護士に依頼してからの費用の補償です。
そのため、こちらでは、弁護士の着手金、成功報酬、訴訟等のための費用などが対象となります。
300万円を超えるケースってどんな事故?
先ほどお話ししたように、弁護士費用そのものの補償は通常300万円が上限となっています。
交通事故におけるほとんどのケースでは、弁護士費用がこの300万円の金額を超えることはありませんが、重い後遺症が残ったケースや不幸にして亡くなられたケースなど、相手方保険会社等から支払われる金額が高額になるケースでは、弁護士費用が300万円を超えるケースもあります。
ただし、そのようなケースでも、多くの場合は、相手方保険会社等から支払われる金額から、成功報酬の一部が差し引かれる形となり、手出しでの負担が生じることはありません。
もっとも、各弁護士の設定する報酬金額と、保険会社が弁護士特約として支払うことのできる金額とでは、基準が異なるケースもあり、弁護士費用自体が300万円以下でも、当該弁護士の設定している報酬金額の一部を保険会社が支払うことができないケースもあり、自己負担が生じるケースありえますので、委任する弁護士とよく打ち合わせや確認を行う必要があります。
あなたも加入しているかも?弁護士費用特約は加入率が高い
自動車保険における弁護士特約の加入率については、正確な資料はないものの、一部公開されている資料等によれば、少なくとも50%を超えているといわれています。
また、弁護士費用特約は、自動車保険以外にもついていることがあり、このことも踏まえれば、自動車の任意保険に加入している人に限れば、何らかの形で弁護士費用特約に加入している人はやはり半数を超えているのではないかと考えられます。
クレジットカードなど、自動車保険以外で加入しているケースもある
先ほどもお話ししたように、弁護士費用特約は、自動車保険以外にもついている場合があります。
例えば、クレジットカード(についている保険)、医療保険、火災保険などです。
これらの保険については、保険に入っているが、弁護士特約が付いているのかどうかわからないという方も多いのではないでしょうか。
特に交通事故にあった場合などには、自動車保険に弁護士特約が付いていなかったという場合でも、他の保険に加入している場合には、その保険に弁護士費用特約がついていないか確認してみることをお勧めします。
弁護士費用特約の適用範囲
交通事故にあった方が、自動車保険の被保険者自身ではないというケースもあるかと思います。しかし、この場合でも、弁護士費用特約による補償を受けられるケースがあります。
これは、弁護士特約の定める対象者の範囲によります。
一例としては、被保険者の配偶者、同居の親族、別居の未婚の子(婚姻歴がある場合を除く)、契約車両の搭乗者、所有者なども、弁護士特約による補償を受け入れられる場合があります。
弁護士特約を使って弁護士に依頼するメリット
弁護士費用を気にせず依頼できる
先ほどもご説明したように、弁護士費用特約を利用すると、多くの場合、上限金額までは、自己負担なしで、弁護士利用できます。
そのため、弁護士費用を気にせずに弁護士に依頼することができます。
ただし、弁護士費用特約による支払い基準と、各弁護士の報酬の基準とが異なる場合、自己負担額が発生する可能性もありますので、依頼する予定の弁護士によく確認する必要があります。
慰謝料を含む損害賠償金額の増額
多くの場合、弁護士依頼することによって、入通院慰謝料を含む相手方保険会社からの支払金額が増額します。
これは、被害状況や過失割合等によっても異なりますが、多くの場合、弁護士が介入することにより、相手方保険会社からの支払基準を引き上げることができることができ、事件によっては、大幅に金額が増加することもあります。
保険の等級は変わらない
通常、弁護士特約を使いだけでは、保険の等級がダウンすることはありません。
そのため、交通事故において、自分の自動車保険を(等級をダウンさせて)使う場合だけでなく、等級をダウンさせたくないから自分の保険は使わないというケースでも問題なく弁護士特約を使うことができます。
弁護士費用特約の使い方
交通事故が得意な弁護士を探す
弁護士特約を使うにあたっては、交通事故についてきちんと対応してくれる弁護士を探すこととなります。
交通事故においては、自賠責保険の制度、任意保険の制度、実務、後遺障害に関する実務や制度、怪我の知識など様々な知識が必要となるため、これについて適切に判断できる弁護士に依頼するのが良いといえます。
保険会社に連絡し、弁護士費用特約利用の同意を得る
弁護士特約を使って、弁護士に依頼する場合には、正式に弁護士に依頼する前に、あらかじめ、ご自身の保険会社にその旨を相談しておき、実際に依頼する弁護士が決まった際にもその旨を連絡するのが良いでしょう。
弁護士に弁護士費用特約を使いたいと伝える
依頼を受ける弁護士としても、弁護士特約を使うかどうかで、弁護士から弁護士特約の保険会社に連絡を取るなど、弁護士取るべき対応が変わる部分があるため、弁護士に依頼する際にも、弁護士特約を使うことを伝える必要があります。
この際、自己負担が生じるかどうかについても念のため確認しておくのがよいでしょう。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士を変更したくなった場合
弁護士特約を利用して弁護士に依頼した後でも、弁護士を変更することが可能です。
ただし、弁護士特約の内容によっては、弁護士の変更について、補償の制限がある(弁護士を変更することは可能だが弁護士特約による補償の全部ないし一部が受けられなくなるなど)場合があり、確認が必要です。
また、基本的に変更前の弁護士への着手金などは返金されません。
新しい弁護士に着手金を支払う際には、弁護士特約による補償が受けられるか、上限金額がどうなるのかなどを保険会社にきちんと確認する必要があります。
弁護士費用特約が特に効果的なケース
被害者に過失がないケース
被害者に過失がない(0対100)の場合、被害者側の保険会社は加害者側に賠償をする必要がないため、被害者に代わって示談交渉を行うことができません。
このようなケースでは、特に弁護士に依頼する必要性が高く、弁護士費用特約が効果的であるといえます。
後遺症が残りそうなケース
後遺症が残りそうなケースでは、いろいろな場面で難しい判断が必要となるケースも多く、弁護士の必要性が高いといえます。
また、比較的賠償金額も高額となるため、弁護士が介入することで、相手方保険会社の支払基準を引き上げられるかどうかによって、賠償金額に大きな差額が生じることも多くなります。
加害者が無保険のケース
加害者が無保険の場合、通常行われているような相手方保険会社との交渉や、その結果としての示談ができず、相手方保険会社からの支払いを受けることもできません。
相手方と直接交渉する必要があり、弁護士の必要性が高まります。
また、訴訟となる可能性も高くなるため、その点でも弁護士に必要性が高くなります。
加えて、特に自賠責保険にも加入していないというケースでは、相手方の資力に不安があるケースもあり、最終的に十分賠償が受けられないケースもありますが、弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用で赤字になってしまったということ避けられます。
請求できる損害賠償金額が小さい事故のケース
この場合も、先ほど同じく、せっかく賠償を受けたのに弁護士費用で赤字になってしまったということを避けられます。
弁護士費用特約に関するQ&A
保険会社が弁護士特約の利用を嫌がります。諦めるしかないでしょうか?
保険会社が弁護士特約の利用を嫌がっているように感じられる場合、保険会社が弁護士特約の規約上利用できないケースであるとか困難なケースであると考えているのか、単に嫌がっているだけなのか確認する必要があります。
後者のケースは少ないとも考えられますが、単に嫌がっているだけであれば、契約上きちんと使えることを確認し、利用する旨を伝えましょう。
反対に、保険会社が、弁護士特約の規約上利用できないケースであるとか困難なケースであると考えている場合にはその根拠を教えてもらい、疑念が残るようであれば弁護士に相談することが考えられます。
弁護士特約のデメリットはありますか?
既に弁護士特約を契約している場合、利用することに特にデメリットはありません。
弁護士特約を使うタイミングはいつがいいですか?
原則として、早めに弁護士に依頼した方が依頼者の負担が少なくなり、手続き等もスムーズに進むため、早めに使うのがよいでしょう。
弁護士を早めに使ったとしても、特に弁護士特約を使うのであれば、費用の負担が大きくなるわけではありません。
具体的なタイミングとしては依頼する予定の弁護士に相談するのがよいと考えられます。
事故後に加入しても弁護士費用特約を使えますか?
この場合は使えません。
弁護士費用特約は、事故時に契約している必要があります。
1事故1名当たりの補償ということは、1事故2名なら補償も2倍になるのですか?
弁護士費用特約の対象となるのであれば、1事故について2名の被害者がいる場合、それぞれについて上限金額(通常300万円)の補償を受けることができます。
ただし、補償額の上限は一人当たりにそれぞれ個別に設定されているものであり、2人のうち、1人が300万円を超過した場合に、もう一人の余っている枠を利用できるというわけでありません。
まずは弁護士にご相談ください
上記のように、交通事故にあった場合でも、弁護士特約があれば、費用のことを気にせずに弁護士に相談することができます。
弁護士に依頼した後も、多くの場合では費用の負担なく、弁護士を利用することができ、仮に弁護士300万円を超過する場合でも、補償の範囲外の金額だけ負担すればよい(多くの場合は相手方保険会社からの支払から弁護士の成功報酬が引かれる形)形になります。
そのためほかの事件と比べても、弁護士に相談しやすいケースが多く、また、弁護士に依頼することで受けられる賠償金額が増額することが比較的多い分野でもあります。
交通事故にあった場合には、一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。
離婚時に親子交流(面会交流)に関して取り決めたのに、離婚した後、子どもに一切会わせてもらえないというケースがあります。
このように、子どもと生活している親(監護親)に親子交流(面会交流)を拒まれている場合、子どもと離れて生活している親(非監護親)は、子どもとの親子交流(面会交流)を実現できるように監護親に間接的に働きかける方法(制度)があります。
以下では、その制度が認められる要件や、手続方法などについて解説します。
親子交流(面会交流)の間接強制とはどんなもの?
前述の、非監護親が監護親に対して、親子交流(面会交流)を実施するように間接的に働きかける手続きは「間接強制」というものです。
親子交流(面会交流)の間接強制とは、当事者間で親子交流(面会交流)に関する取り決めをしたにもかかわらず、非監護親に子どもを会わせない(親子交流(面会交流)に応じない)監護親に対し、裁判所が、「親子交流(面会交流)に応じない場合は、1回あたり●万円支払え」と金銭(間接強制金)を支払うように命じるものです。
このようにすることで、監護親に「お金を払いたくない」という心理的なプレッシャーを生じさせ、間接的に親子交流(面会交流)を促すことになります。
間接強制は、裁判所から監護親に対し、親子交流(面会交流)に関する取り決めを守るように説得したり、親子交流(面会交流)を実施するように勧告したりする「履行勧告」をしてもなお、監護親が非監護親に子どもを会わせない(親子交流(面会交流)に応じない)場合の次の手段です。
間接強制があるなら直接強制もある?
一般的に、強制執行の方法には、間接強制と直接強制があります。
しかし、親子交流(面会交流)の場合には、直接強制はできないとされています。
理由としては、直接強制するとなると、執行官が非監護親(子どもと離れて生活する親)の下に子どもを力尽くで連れてくることにもなりかねないため、子どもの福祉の観点から不適当であると考えられるからです。
間接強制が認められるための2つの要件
間接強制は、申立てさえすれば必ず実施されるというものではありません。
裁判所によって間接強制が認められるためには、以下の2つの要件を充たす必要があります。
- ➀調停や審判で親子交流(面会交流)の取り決めがあること
- ➁親子交流(面会交流)の内容が具体的に特定されていること
①調停や審判で親子交流(面会交流)の取り決めがあること
間接強制を申し立てるにあたっては、調停や審判などの家庭裁判所の手続きを利用して親子交流(面会交流)に関する取り決めをしており、親子交流(面会交流)の取り決めが記載されている調停調書や審判書があることが必要となります。
なお、裁判所の手続きは使わず、当事者間の話合いで合意して作成した公正証書がある場合であっても、間接強制を申し立てることはできません。
②親子交流(面会交流)の内容が具体的に特定されていること
単に調停調書や審判書において親子交流(面会交流)に関する取り決めがされていればよいということではなく、その内容が具体的に特定されて記載されていることが求められます。
親子交流(面会交流)の内容が具体的に特定されているかを判断するにあたっては、以下の3要素を中心に考えることになります。
- ➀親子交流(面会交流)の日時又は頻度
- ➁各回の親子交流(面会交流)時間の長さ
- ➂子の引渡しの方法
たとえば、「月1回、毎月第3土曜日の午前10時から午後5時までの7時間、長女の受け渡し場所は、所定の駅の改札口付近とすること、監護親は親子交流(面会交流)開始時に受け渡し場所において長女を非監護親に引き渡し、非監護親は、親子交流(面会交流)終了時に受け渡し場所において長女を監護親に引き渡すこと」というような内容で取り決めておけば、間接強制が認められる可能性は高いです。
一方で、「1ヶ月に1回、休日に1回につき7時間、親子交流(面会交流)を実施する」というような曖昧な内容での取り決めだと、間接強制が認められません。
理由としては、前述の3要素がいずれも抽象的で、特定されていないからです。
そのため、調停や審判において親子交流(面会交流)について取り決める際は、監護親に親子交流(面会交流)を拒否された場合に備え(間接強制を申し立てる可能性があることを見据え)、親子交流(面会交流)を実施する日時や頻度、親子交流(面会交流)の時間の長さ、子の引渡し方法について、具体的に特定して、明確にしておくことが重要です。
子供が親子交流(面会交流)を拒否している場合、間接強制は認められないのか?
原則としては、調停調書や審判書において親子交流(面会交流)に関する取り決めが具体的にされていれば、たとえ子が非監護親との親子交流(面会交流)を拒否しているという場合であっても、このことを理由にして親子交流(面会交流)の間接強制を免れることはできません。
これは、子が本当に非監護親に会いたくなくて拒否しているのかどうかという子の真意については、非常に慎重に判断されるものだからとされています。
したがって、子が非監護親との親子交流(面会交流)を拒否しているということは、新たな親子交流(面会交流)の条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得るとしても、間接強制を免れる理由とはならないとされています。
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間接強制の手続き方法と流れ
間接強制は以下のような手続き、流れで行われます。
申し立ての流れ
- ➀家庭裁判所に申し立てる 調停や審判をした裁判所に必要書類を提出し、間接強制の申立てをします。
- ➁監護親への審尋 間接強制の申立てが受理されたら、家庭裁判所が監護親に対し、「審尋」という監護親の意見を聞く手続きを行います。 家庭裁判所はこの審尋で得られた情報を基に、間接強制が適切かを判断します。
- ➂家庭裁判所の決定 家庭裁判所が非監護親の親子交流(面会交流)の間接強制の申立てを認めるか否かの判断をします。 親子交流(面会交流)の間接強制の申立てを認容する決定を出す場合は、「親子交流(面会交流)をさせなかった場合は1回あたり●万円支払え」という内容の間接強制金(制裁金)を課す命令を出します。
申し立てに必要な書類・費用
【必要書類】
- 申立書
- 執行力のある債務名義の正本(調停調書、審判書、判決書)
- 債務名義の正本送達証明書 ※事案によって、このほかの資料の提出が必要な場合があります。
【費用】
- 収入印紙:2000円
- 連絡用の郵便切手(連絡用の郵便料は裁判所ごとに異なります。)
間接強制しても親子交流(面会交流)が実現するとは限らない点に注意
間接強制は、前述のとおり、子を非監護親に無理やり連れてくるというようなものではないので、親子交流(面会交流)を実現させる直接的な効力はありません。
そのため、間接強制の申立てが認容され、間接強制金が課せられても、それでも監護親が非監護親に子を会わせない(親子交流(面会交流)に応じない)という対応をした場合には、子どもとの親子交流(面会交流)は実現しません。
離婚問題や親子交流(面会交流)に詳しい弁護士が、親身になってあなたをサポートいたします
子どもとの親子交流(面会交流)を実現するためには、相手方(監護親)と交渉しつつ、場合によっては間接強制を申し立てるなど、戦略的に進めていく必要がありますが、当事者間で話合いをすると、感情的になってなかなか話が進まないことも多いです。
また、親子交流(面会交流)は、ご自身はもちろん、相手方も納得できる内容でなければ、せっかく取り決めても、取り決めどおりに子どもと会わせないということもあり、そうなれば、子どもとの面会が実現しないのが現状です。
弁護士であれば、父母双方が納得するような条件を目指し、相手方との合意に向けて交渉を進めていくことができます。
また、調停を申し立てる場合、間接強制をする場合に備えて、親子交流(面会交流)に関する取り決めが間接強制の申立てが認められる程度に特定されているかという観点から、親子交流(面会交流)の実施に関する内容を取り決めることができます。
これから親子交流(面会交流)の取り決めをしようと考えているが、取り決める内容にご不安がある方や、親子交流(面会交流)の取り決めはないものの、子どもとの親子交流(面会交流)をご希望の方、親子交流(面会交流)の取り決めをしたのに守られず困っている方は、弁護士にご相談ください。
兄弟姉妹の間で不和が生じた、また、遠方への引っ越し等により自然に連絡の機会が減少していったなど、様々な事情のもとで兄弟姉妹と絶縁状態になることも少なくありません。
絶縁した兄弟姉妹がいる中で相続が発生すれば、その兄弟姉妹にも連絡をするべきなのか、どのように遺産分割を進めていけばいいかなど、疑問や不安もたくさん生じると思います。
そして、絶縁した兄弟に対して適切な対応を取らなかった場合、さらなるトラブルが生じる危険もあります。
本記事では、絶縁した兄弟姉妹がいる場合の手続の進め方や、相続させたくない場合の対処法、弁護士に相談するメリットを解説するとともに、よくある疑問についても回答いたします。
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続はどうなる?
そもそも、兄弟姉妹が相続人となるのは、大きく分けて2パターンあります。
1パターン目は、亡くなった方(被相続人と言われます。)が親の場合です。
この場合は、被相続人の子であるあなたや他の兄弟姉妹は当然に相続人になります。
2パターン目は被相続人が兄弟姉妹の場合です。
この場合にあなたや他の兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人に子・孫・ひ孫がおらず、かつ親・祖父母などの尊属もいない場合に限定されます(民法889条、887条)。
もっとも、上の状況を満たす場合には、仮に絶縁状態の兄弟姉妹がいたとしても、その兄弟姉妹は相続人になります。
法律上は、絶縁状態になっていたとしても、その者と兄弟姉妹関係が喪失することはないからです。
絶縁した兄弟姉妹がいる場合の遺産相続の進め方
相手の連絡先を知っているケース
絶縁した兄弟姉妹の連絡先を知っている場合、遺産分割を有効に成立させるために、その相手に遺産分割協議を行う必要があることを連絡し、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。
絶縁した兄弟姉妹と連絡をとれたとしても、その相手が遠方に居住していることもあると思います。この場合は、手紙やメール、LINEなどによって遺産分割協議を進めていけばよいでしょう。
なお、相手と感情的に対立していて、連絡を取ることに不安を感じている方もいらっしゃると思います。この場合は、弁護士に代理人となってもらうことで、相手との直接の交渉を弁護士に行ってもらうことができます。
相手の連絡先を知らないケース
絶縁した兄弟姉妹の連絡先を知らない場合、その相手と連絡を取るために、相手の現住所を知る必要があります。
相手の現住所は、まず被相続人の戸籍の附票を取得してその相手の本籍を把握した上で、相手の本籍が置かれている自治体から相手の住民票を取得することで、知ることが可能です。
相手の現住所を知ることができたら、遺産分割協議を行う旨の連絡文を相手の住所に送り、遺産分割協議を進めましょう。
それでも相手の住所がわからない場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申立てを行い、その相手の代わりに不在者財産管理人に遺産分割協議に参加してもらうことで、有効に遺産分割協議を行うことができます。
なお、上記の所在調査をしても相手の住所がわからない場合や、こういった手続を行うことが大変と感じる場合は、一度弁護士に相談するとよいでしょう。
相手の生死が7年以上不明のケース
相手の現住所がわからず、その生死が7年以上不明な場合、失踪宣告(民法30条)をすることで、その相手が死亡したものとみなして、相手を相続人ではなくすることができます。
この場合、相手を遺産分割協議に参加させなくても、有効な遺産分割協議を行うことができるようになります。
なお、相手を失踪宣告した場合に、相手が死亡したものとみなされる時点は、相手の生死が不明になってから7年が経過した時点になります。
失踪宣告の申立てにおいて、被相続人がなくなった時点より7年以上前の時点から相手の生死が不明である旨主張すると、被相続人の死亡以前にその相手が死亡したとみなされることになります。
このとき、相手の子が存在していれば、その相手の子が相手に代襲して相続人になり、相手の子を遺産分割協議に参加させる必要が生じます。
そのため、失踪宣告の申立てを行う際は、相手の生死が不明になった時点に注意して申し立てるようにしましょう。
絶縁した兄弟姉妹に相続させたくない場合の対処法
まず、絶縁した兄弟姉妹と連絡を取ることができるのであれば、その兄弟姉妹に相続放棄をしてほしいとお願いをし、相続放棄をしてもらうという方法があります。
もっとも、相続放棄は放棄を行う相続人が自ら家庭裁判所で手続を行わなければできないため、その兄弟姉妹に相続させないことができるのは、その兄弟姉妹が相続放棄の手続を行ってくれた場合に限られます。
その兄弟姉妹が相続放棄の手続を行ってくれるかわからない場合や、相続放棄をしてほしいという連絡をしたくない場合、またそもそも連絡が取れない場合には、被相続人にお願いをして、その兄弟姉妹には相続させないという内容の遺言書を被相続人に作成してもらうという方法もあります。
なお、被相続人が親であり子が相続人である場合、子の兄弟姉妹は相続人の子として遺留分が認められます。
そのため、遺留分を侵害するような遺言は認められないので、この点は相続放棄がされた場合と異なる点に注意が必要です。
一方、被相続人に配偶者・子・直系尊属がおらず、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となる場合には、兄弟姉妹には遺留分はありません。
また、被相続人を騙したり脅したりして上記の遺言書を作成してもらった場合、相続欠格に該当して相続人になることができなくなることにも気を付けましょう。
絶縁した兄弟姉妹との遺産相続を弁護士に相談するメリット
絶縁した兄弟姉妹と連絡をとることは、絶縁の理由にかかわらず負担が大きいものと思います。
弁護士に相談をすれば、絶縁した兄弟姉妹と直接連絡を取らずに遺産相続を行う方法を知ることができる点が大きなメリットになると考えます。
また、不在者財産管理人や失踪宣告の申立て、所在調査などの手続は難しいものです。
弁護士に相談すれば、これらの手続を行うべきか、どのように行うかを知ることができる点もメリットかと思います。
さらに、弁護士に事前に遺産分割の相談をしていれば、法的な知見から他の相続人と法的な紛争をあらかじめ避けることができたという可能性もあります。
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絶縁した兄弟姉妹との遺産相続についてのQ&A
絶縁した兄弟に遺産相続の連絡をしましたが返事がありません。放っておいて手続きを進めても良いですか?
遺産分割協議は相続人全員が同意しなければ有効に成立しません。
そのため、絶縁した兄弟姉妹にも遺産分割協議に参加してもらわなければ有効な協議とは認められません。
これは、絶縁した兄弟姉妹から返事がなかったとしても変わらないので、返事がなかったとしても、その兄弟姉妹を除いて手続を進めることはやめるべきでしょう。
返事がない場合には、内容証明郵便や特定記録郵便を送るなどして再度の連絡を試みましょう。
それでも返事がないときは、遺産分割調停を申し立てることも視野に入れるべきでしょう。
遺言書に絶縁した兄弟の名前がありませんでした。連絡せずに相続手続きしても良いですか?
遺言書が公正証書遺言の方式で作成されている場合や、自筆証書遺言の方式で作成されていて遺言書保管制度が使用されていない場合には、家庭裁判所から相続人に連絡がされることは通常ありません。
遺言書が存在する場合、基本的に、遺言書の内容に従って遺産分割が行われることになります。
遺言書に絶縁した兄弟姉妹の名前がなかったとしても、その兄弟姉妹には関係のないような遺言書の内容であれば、その兄弟姉妹に連絡を取らないまま手続を行うことも可能ではあります。
もっとも、被相続人が親となる場合には、被相続人の子であるその兄弟姉妹にも遺留分が生じます。
被相続人の子であるその兄弟姉妹に連絡をしないまま手続を進めると、遺留分侵害額請求をされるおそれがあります。
一方で、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合には遺留分がないため、遺言書において全く遺産の相続が認められていない兄弟姉妹については連絡を取らずに手続きを進めても問題はありません。
絶縁状態の兄弟に連絡をせず勝手に遺産分割や相続手続きを行ったらどうなりますか?
上記でも述べました通り、遺産分割協議は相続人全員が同意しなければ有効に成立しません。
そのため、絶縁した兄弟姉妹に連絡せず勝手に遺産分割協議を行ったとしても、相続人全員の合意がないとして、その協議は無効になります。
絶縁した兄弟姉妹を除いて遺産分割や相続手続を進めた場合、その兄弟姉妹から遺産分割の有効性を争うような主張がされかねず、さらには調停や審判が申し立てられる可能性があります。
したがって、絶縁した兄弟姉妹だからといって連絡することなく遺産分割や相続手続をすすめることは避けるべきです。
兄弟姉妹との遺産相続でトラブルにならないためにも弁護士にご相談ください
絶縁した兄弟姉妹がいる場合、感情的な対立があったり、連絡手段がなかったりして、一般的な遺産相続よりもトラブルに発展する可能性があります。
このようなトラブルを回避するためには、適切な手段をとるべきでありますが、適切な手段をとるためには弁護士に相談することが最も確実だと思われます。
弊所の弁護士は、相続事件も取り扱っておりますので、相続を円滑に進めるためのアドバイス・サポートをすることができます。
絶縁した兄弟姉妹がいる場合の相続に直面してお困りの方やもちろん、その他相続に関する相談についても、ぜひ一度、弊所の弁護士にご相談ください。
相続が発生した場合に、相続財産に「農地」が含まれていることが分かり、活用や処分に困るということがあります。
「農地」とは、「耕作の目的に供される土地」(農地法第2条第1項)と定義されます。
農地法の適用を考える際には、この定義が重要となりますが、この記事では、農地法の適用関係だけではなく、広く、「農地」と相続放棄についての法的問題について、説明します。
不要な農地だけを相続放棄することはできない
不要な「農地」が相続財産に含まれるからといって、「農地」だけを相続放棄することはできません。
相続放棄は、相続財産全てを対象として行うものであり、相続放棄をするのであれば、「農地」を含む、一切の相続財産について、相続放棄を行うこととなります。
相続財産に、価値のある資産が含まれている場合でも、うっかり相続放棄をしてしまうと、「農地」だけでなく、価値のある資産までまとめて失うことになる可能性もあるので相続放棄においては慎重な判断が求められます。
相続放棄をしても農地の管理義務は残る
相続放棄をしても直ちに「農地」の管理義務を免れるわけではありません。
民法第940条第1項によれば、「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない」とされ、相続放棄をした場合でも、相続財産に属する「農地」を占有している場合、その管理義務を負うこととなります。
相続土地国庫帰属制度を利用できれば国に引き取ってもらえる
相続放棄をせずに相続して「農地」を取得した場合には、相続土地国庫帰属制度を利用して国に引き取ってもらうことが可能です。
これは、相続土地国庫帰属制度という制度を利用する方法であり、要件を満たす場合に、適正な申請手続をすれば、国が、相続により取得した「農地」を引き取るという仕組みです。
申請にあたっては、法務局に相談をすると手続がスムーズに進みますので、対象となる「農地」の存在する地域の法務局に問い合わせを行うのがよいでしょう。
なお、同制度の利用には負担金の納付なども必要となりますのでご注意ください。
放置すると「耕作放棄地」となり、処分が難しくなる
「農地」を長期間放置すると、いわゆる「耕作放棄地」とみなされる可能性があります。
「耕作放棄地」とは、法令上の用語ではないですが、過去1年間作物が栽培されず、今後も栽培される見込みのない土地をいいます。
このような土地は、管理が行き届いていないため、廃棄物が不法投棄されるなどのリスクがあり、結果的に、買主がいないなどの理由で処分が困難となることがあります。
借り手のいる農地を相続放棄したらどうなる?
被相続人が、「農地」を第三者に賃貸した状態で相続が発生した場合、賃貸借契約は当然には終了せず、相続人と賃借人との間で継続することとなります。
相続放棄をした場合、次順位の相続人がいる場合には、その方が、賃貸人として、賃貸借関係が継続します。
農地を相続放棄する手続きの流れ
相続放棄を行うためには、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に」(民法第915条第1項)、被相続人の最後の住所地が所在する家庭裁判所に相続放棄の申述を行うことが必要です。
相続放棄の申述をするためには、戸籍関係の書類等、必要な添付書類があり、これらの書類をそろえるために一定の時間を要する場合もあるため、「三箇月」という期間は決して長くはありません。
相続放棄を検討する場合には、速やかに、専門家に相談し、余裕をもって準備をすることをお勧めします。
「三箇月」の期間を経過してしまうと、原則として、相続放棄は認められませんので、注意してください。
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相続した農地の使い道
農家に売却する
相続した「農地」を相続人が自身で活用することができないのであれば、農家に売却をするという方法があります。
もっとも、一般の土地と異なり、「農地」を第三者に譲渡するためには、農地法第3条第1項に基づき、農業委員会の許可を受けなければなりません。
この許可を得ずになされた「農地」の譲渡は、単に手続的な瑕疵があるというにとどまらず、私法上も無効とされます。
農地から宅地に転用する
相続した「農地」を宅地など農地以外の土地に転用し、活用するという方法もあります。
しかし、相続した「農地」を農地以外の土地に転用する場合には、農地法第4条第1項に基づき、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。
農地を転用できない場合もある
「農地」の転用は常に認められるわけではありません。
転用の許可は、一般に、立地基準(農地の優良性と周辺の土地状況等による基準)と、一般基準(転用を許可できない事情の有無等による基準)という2つの基準を満たした場合になされます。
このうち、立地基準において、農地の区分によっては原則として転用が不許可とされることも少なくなく、農地の転用が許可されない場合もあります。
農地の相続放棄についてお悩みの方はご相談ください
「農地」は、一般の土地と異なり、譲渡や転用が法律により制限され、無断譲渡、無断転用がなされた場合には、罰則が科されることもあります(農地法第64条第1号)。
したがって、自身の判断で、「農地」の譲渡や転用を検討することは極めて危険です。
また、相続放棄を検討する場合に、そもそも、「三箇月」の期間制限を超えており相続放棄をすること自体が困難であったり、「農地」以外に価値のある資産が相続財産に含まれているため相続放棄以外の方法により、「農地」の処分を検討すべきであったり、相続放棄をすることで、別の親族が新たに相続人となることを失念していたり、相続放棄をしても直ちに「農地」の管理義務を免れるわけではなかったりといった落とし穴もあります。
そのため、 「農地」の相続放棄についてお悩みの方は、「農地」の管理や処分と、相続問題の双方に精通した専門家にご相談いただくことをお勧めします。
車社会において、交通事故の発生は避けて通れないことです。
しかし、ひとたび人身事故が起こると、けがのためにしばらく働けなかったり、そうでなくても治療費が必要になっていきます。
交通事故は、加害者による不法行為(民法第709条)ですので、被害者は、加害者に対して、必要な賠償を請求することができます。
しかし、加害者に十分な資力がない場合、いくら損害賠償請求権があるといっても、被害者は、損害を回復させることができません。
そのため、自賠責保険という強制加入の保険が存在しており、被害者は、自賠責保険会社から最低限の救済を受けられるようになっています。
ここでは、被害者が自賠責保険会社に行う「被害者請求」と呼ばれる手続きについて、ご説明をいたします。
交通事故の被害者請求とは
被害者請求というのは、交通事故の被害者が加害者の自賠責保険会社に対し、被害者自らが直接損害賠償額の請求を行うことをいいます。
後述のとおり、加害者が自賠責保険会社に請求することも可能ですが、加害者の請求がなければ、被害者が自賠責保険会社から賠償を得られないとすれば、被害者救済のための制度として十分に機能しません。
そのため、法は、被害者にも加害者の自賠責保険会社に直接請求できることを認めています。
なお、被害者請求は、自動車損害賠償保障法第16条に根拠があることから、「16条請求」ともいいます。ここでは「被害者請求」に統一して表記します。
加害者請求との違い
被害者が加害者の自賠責保険会社に請求することを「被害者請求」というのに対し、加害者が、自賠責保険会社に請求することを「加害者請求」といいます。
そもそも、自賠責保険は、交通事故の被害者を救済するための制度ですので、加害者が受け取った保険金を被害者のために充てる制度でなければなりません。
そのため、加害者請求を行うには、先に、被害者に損害賠償をする必要があるとされています。もう少し厳密にいうと、加害者は、被害者に対して支払った損害賠償額を限度として保険金の請求が可能とされています。
交通事故で被害者請求できるもの
自賠責保険から支払いがなされる損害の対象には以下のものがあります。
なお、後遺障害慰謝料及び後遺障害逸失利益は後遺障害が認定された場合に、死亡慰謝料、死亡逸失利益及び葬儀費は被害者が交通事故により亡くなった場合に支払いがなされます。
| 損害賠償項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療費関係 | 治療費、付添看護費、交通費など |
| 文書料 | 交通事故証明書、印鑑登録証明書、住民票などの発行手数料 |
| 休業損害 | 事故による傷害のために発生した収入の減少 |
| 入通院慰謝料 | 事故による怪我で入院・通院しなければならなくなった精神的・肉体的苦痛による補償 |
| 後遺障害慰謝料 | 事故により後遺障害が残ったことによる精神的・肉体的苦痛に対する補償 |
| 後遺障害逸失利益 | 後遺障害の影響により将来的な収入が減ったことによる補償 |
| 死亡慰謝料 | 事故により死亡したことによる精神的・肉体的苦痛に対する補償 |
| 死亡逸失利益 | 本人が生きていれば得られた収入から本人の生活費を控除したもの |
| 葬儀費 | 通夜、祭壇、火葬、埋葬、墓石に要する費用 |
請求できる保険金の上限額
自賠責保険では、保険金(賠償金)の上限が定められています(具体的な上限は、以下のとおりです。)。
例えば、傷害部分では120万円が上限となっており、いくら交通事故によって、これを超える損害が発生していたとしても、120万円以上の保険金(賠償金)は支払われません。
| 傷害部分 (治療費、入通院慰謝料、休業損害など) |
120万円 |
|---|---|
| 後遺障害部分 (後遺障害慰謝料、逸失利益など) |
後遺障害等級に 応じて75万~4000万円 |
| 被害者が死亡した場合 (死亡慰謝料・逸失利益など) |
3000万円 |
被害者請求のメリット
①示談を待たずに賠償金がもらえる
通常、事故の加害者から賠償金を得るためには、先に示談をする必要があります。
示談成立のためには、資料収集をし、その後加害者と協議、合意という過程を経る必要がありますので、賠償金を得るためには、どうしても時間がかかります。
一方で、被害者請求は、一定の資料を集める必要があるものの、加害者との示談をすることなく、自賠責の基準に沿った賠償を得ることが可能です。
一般には、加害者と示談をするよりも、必要な資料を集めて自賠責保険会社に請求する方が早いことが多いですから、示談よりも早く賠償金を得られることが被害者請求のメリットの一つです。
②後遺障害等級の認定に有利
後遺障害等級の申請は、加害者側からでも行うことができます。
しかし、加害者が、積極的に被害者のために動くとは考え難いため、十分な資料等を収集せずに後遺障害申請をする可能性が高いと考えられます。
被害者請求では、被害者が自分自身のために後遺障害の申請を行いますので、自分の状態に合わせて必要な資料の収集等を行うことができます。
後遺障害等級認定の結果にどこまで影響を及ぼすのかは不明なところがありますが、被害者請求の方が後遺障害等級の認定には有利であると考えられます。
被害者請求のデメリット
手続きが煩雑
被害者請求を行うためには、交通事故証明書、医師の診断書などの必要資料を収集しなければなりません。
状況によって必要となる資料も異なりますが、交通事故に何度も遭う方は少ないでしょうから、不慣れな資料収集等をして対応をしなければなりません。
けがの痛みがある中で行わなければなりませんから、普段よりも、一層負担は大きいでしょう。このような手続きの煩雑性が被害者請求のデメリットの一つといえます。
被害者請求をした方がいいケース
加害者が任意保険に未加入の場合
多くの場合、加害者は、強制加入の自賠責保険のみならず、任意保険にも加入しています。しかし、中には任意保険に加入していない方もいます。
任意保険に加入していない理由は様々でしょうが、主な理由として考えられるのは資力の問題です。つまり、保険料の負担が厳しいことから、任意保険に加入していないことが想定されます。
この場合、被害者は、加害者から賠償金を得ることは容易ではありません。
そのため、最低限の補償を受けるためにも、被害者請求を行うべきといえます。
示談交渉が長引く可能性がある場合
上述のとおり、示談をするよりも、被害者請求の方が早く賠償金を得ることができます。
通常、事故に遭うと、休業を余儀なくされたり、そうでなくても通院の負担が生じます。
そのため、被害者にとって、賠償金が得られない状況が続くのは辛いことでしょう。
被害者請求をすれば、通常、一定の賠償金を得ることができます。
そのため、示談交渉が長引く可能性が高い場合には、被害者請求を考えても良いでしょう。
後遺障害等級認定の申請をする場合
後遺障害等級認定の申請をする場合には、被害者請求を考えるべきです。
上記でも述べましたが、加害者請求と比較すると、被害者請求の方が適切な資料を基に後遺障害等級認定の審査を受けることができるためです。
そのため、治療を受けてもなお症状が残存し、後遺障害等級の申請を考える場合には、後遺障害に関する被害者請求をした方が良いといえます。
被害者の過失割合が大きい場合
被害者にも過失がある場合、過失相殺が行われます。
例えば、加害者の過失が70、被害者の過失が30とします。
この場合、被害者は、過失相殺によって、加害者に対して、損害額全体のうち7割しか請求できません。
しかし、自賠責保険では特殊なルールが取られており、被害者の過失が7割未満であれば、過失がない場合と同様の損害賠償額を得ることができます。
被害者の過失が大きい場合には、加害者からの賠償金よりも、自賠責保険の賠償金の方が高くなることがあります。
この場合、自賠責保険から賠償金を得た方が有利になりますので、被害者請求をした方が良いと考えられます。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
被害者請求の手続き方法・流れ
被害者請求の流れは、概要は以下のとおりです。
まず、必要な資料(具体的な内容は後述)を収集します。
その後、加害者の自賠責保険会社に、その資料を提出して、申請を行います。
その後、自賠責保険会社は、請求書類に不備がないかを確認し、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所に送付します。
損害保険料率算出機構では、損害の調査を行い、賠償の可否やその金額を判断します。
そして、損害保険料率算出機構は、自賠責保険会社に結果を報告し、自賠責保険会社は、その結果に基づいて被害者に損害賠償額を支払います。
被害者請求に必要な書類
被害者請求に必要な資料は、損害の種類(傷害、後遺障害、死亡)によって異なります。
共通して必要となるのは、以下のものがあります。
- 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書
- 交通事故証明書(人身事故)
- 事故発生状況報告書
- 診断書(死亡の場合には、死体検案書(死亡診断書))
- 診療報酬明細書
- 印鑑登録証明書
そのほか、状況によって、通院交通費明細書(通院に交通費が必要になった場合)、休業損害証明書(休業をしていた場合)といったものが必要となります。
また、後遺障害の申請を考える場合には、後遺障害診断書が必要となります。
支払われるまでの期間はどれくらい?
傷害部分の請求のみであれば、通常、必要書類を提出してから概ね1か月程度の期間で支払いがなされます。
また、後遺障害部分の請求をするためには、後遺障害等級の認定が必要となりますので、必要書類を提出してから、通常、2~3か月程度の期間が必要となります(状況によって、短くなることも、長くなることもあります。)。
もちろん、申請に不備がある場合や、必要書類に不足がある場合、追加の資料収集等が必要となり、その分、支払いがなされるまでの期間も延びます。
支払い時期を考えても適切に申請することが大切です。
加害者の保険会社がわからない場合
通常、交通事故が発生した場合には、警察に届け出ますが、そうすると、自動車安全運転センター発行の交通事故証明書を取得することができます。
この交通事故証明書には、当事者の自賠責保険会社の記載がありますので、交通事故証明書を取得することで、加害者の自賠責保険会社を特定することが可能です。
交通事故証明書は、被害者請求をするためにも必要な書類ですので、早めに取得をしておくのが良いでしょう。
被害者請求には時効がある
自賠責保険会社への請求にも時効があります。
時効は、権利を行使することができるときから3年です。
例えば、傷害部分の時効は、通常、事故日から3年、後遺障害部分であれば症状固定日から3年となります。また、死亡部分の時効は、死亡時点から3年です。
時効が成立すると、自賠責保険から賠償を得られなくなりますので、時効を迎える前に、必要な請求をする必要があります。
また、時効が完成しそうなときは、時効期間の延長(更新)をすることも可能です。
申請が間に合わない場合には、時効の更新手続きを取ることを考えましょう。
なお、民法改正によって、人の生命又は身体を害する不法行為の時効は5年に延長されました(改正前は3年でした。)。
しかし、民法改正後も、自賠責保険の時効は3年のままです。
民法の時効とは異なる期間が定められていますので、ご注意ください。
被害者請求を弁護士に依頼するメリット
①必要書類を自分で集める手間が省ける
上述のとおり、被害者請求をするためには、必要書類の取得が必要となります。
中には、弁護士では取得ができないものもありますが、多くの資料は弁護士においても取得をすることが可能です。また、交通事故に精通している弁護士であれば、状況に応じて必要な資料を把握しているでしょう。
そのため、弁護士に依頼をした場合、資料収集に関する手間が省けることになります。
繰り返しになりますが、交通事故でけがを負っている中で必要資料を収集することは容易ではありません。資料取得の手間が省けるということは、被害者にとって大きなメリットであるといえます。
②後遺障害等級認定の可能性が高まる
けがの内容によって、想定される後遺障害等級は異なりますが、弁護士に依頼をした場合、想定される後遺障害等級に応じた対応が可能となります。
また、弁護士は、法的な観点から、後遺障害に関する意見書を作成することも可能です。
適切な資料、意見がなければ後遺障害等級が認定される可能性が下がるでしょうから、弁護士に依頼することで後遺障害等級認定の可能性が高まると考えられます。
③示談交渉を任せられる
交通事故に関して、弁護士に依頼する場合は、被害者請求のみならず、交通事故全般を依頼することになります。
これは、加害者又は加害者加入の任意保険会社との交渉を含みますので、弁護士への依頼することによって示談交渉を任せることも可能です。
損害賠償に関する交渉は、日常で経験することがないでしょう。
弁護士は、専門家として、法的紛争を取り扱っていますから、弁護士に示談交渉を任せることができる点は大きなメリットといえます。
交通事故の被害者請求は弁護士にお任せください
ここでは、被害者請求に関することを説明いたしました。
しかし、実際に被害者請求を行うべきか否か、被害者請求をするとして、どのような手続きを選択するかは、個々の状況を踏まえて判断する必要があります。
何度も交通事故に遭っているような場合でなければ、交通事故に関する十分な知識がなく、適切な対応を判断することは困難と思われます。
被害者請求も含め、交通事故でお困りのことがあれば、ぜひ、専門家である弁護士にご相談ください。
結婚をしても、お互いの両親との交流は避けて通れません。
その交流の中で、姑との間に摩擦が生じ、その関係が悪化することもあるかと思います。
そして、このような嫁姑問題に疲弊し、離婚を考えている人もいるでしょう。
このような場合に、姑との関係性を理由として離婚することができるのか、また、慰謝料請求をすることもできるのか、これらについて、離婚率や離婚前に考えるべきことにも触れながら解説していきます。
嫁姑問題を理由に離婚できるか
民法763条は、「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と規定しておりますので、嫁姑問題を原因として離婚することを夫婦間で合意できれば、離婚することはできます。
もっとも、上記のような協議での離婚が成立しない場合、離婚するためには、裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
しかし、相手が離婚に合意しない場合には、離婚調停で離婚することはできないでしょう。
離婚調停での離婚ができなかったときは、裁判所に離婚訴訟の提起をすることになります。
ここで、離婚が認められるためには、嫁姑問題が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たることが必要です(民法770条1項4号)。
もっとも、姑との関係が悪化したことで夫とも長期間別居しているといったことがなかったり、夫婦間での固有の紛争がなかったりする場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」はないと判断される可能性があります。
裁判例でも、嫁と姑や夫の姉の間で強いあつれきが生じている場合でも、夫婦間で固有の紛争が生じていないことなどを理由として、「婚姻を継続しがたい重大な事由」の存在を否定し、離婚を認めなかったものがあります(東京高裁昭和60年12月24日判決)。
夫と長期間別居している、姑との関係における夫の立場について夫婦間で紛争が生じて家庭内別居の状態になっている等の事情があれば、嫁姑問題であったとしても離婚が認められる可能性はあります。
嫁姑問題が原因の離婚率はどれくらい?
離婚率それ自体は明らかにされていないですが、離婚調停を申し立てた動機は明らかにされており、そこから推し量ることはできるでしょう。
令和6年度の司法統計年報の「―申立ての動機別申立人別― 全家庭裁判所」によると、離婚調停を申し立てた妻側の動機として、「家族親族と折り合いが悪い」が選択された割合は、申立の動機全体の約4%になります。
令和5年度が約4.6%、令和4年度が約4.7%になりますので、4%前後で推移しているものと思われます。
なお、「家族親族と折り合いが悪い」には、嫁姑問題に限られず、例えば、嫁と夫の父親との間の関係性が悪い場合等も含まれることには注意が必要です。
4%とだけ聞くと少なく感じてしまう方も多いと思います。
しかし、嫁姑問題を理由として協議での離婚が成立している場合も多いと考えられますので、実際の離婚の動機としては4%より多いと考えられます。
そのため、4%の数字だけ見て、嫁姑問題での離婚は難しいと思い至る必要はないのです。
離婚前に考えるべき3つのこと
離婚に踏み切った場合に後悔しないよう、以下の3点を意識しておくといいと思います。
①姑と和解する方法が無いか
もし、姑との間で和解することができれば、平穏な夫婦生活を取り戻すことができ、夫と離れる決断をしなくても済むことができるとおもいます。
和解は、法律的な意味では、当事者の互いの譲り合いです。
もし、こちらも姑に対してよくない言動をしてしまったのであれば、自己の非を認める形で譲ることが、和解の第一歩になると思います。
また、夫の協力が得られるのであれば、夫には、姑との間に直接入ってもらう、注意してもらう等してもらうことで、関係の修復が前進する場合があります。
夫の協力が得られないのであれば、両親に頼ってみてもいいかもしれません。
②離婚後の生活に備えておく
離婚に伴って、居住地や経済状況が変化します。そのため、離婚するにあたっては、離婚後の居住地や収入をどうするかについて考えておく必要があります。
居住地は、離婚後に婚姻時の住居に誰が住むかどうかは、各夫婦間での事情に左右されるものであり、妻が新しい住居に引っ越すことが通常といった一般論はありません。
そのため、まずは夫と妻のどちらが引っ越すかを話し合っておくべきでしょう。
また、専業主婦の場合、離婚後の収入を確保する必要があります。そのため、離婚の話し合いを行っている段階で、離婚後の支出に見合った就職先を見つけておくべきでしょう。
もっとも、姑との関係で離婚を選択せざるを得なくなっている状況で、さらに離婚後の居住地や収入をどうするかを考えることは、精神的に非常につらいものがあると思います。
もし、実家からの協力が得られるのであれば、実家を頼ることも一つの方法になります。
③子供の親権をどうするか
子が未成年である場合、親権者を誰とするかについては必ず決めなければなりません。
親権には、夫と妻のどちらかだけが親権者となる単独親権と、離婚後もその双方が親権者となる共同親権があります。
このうち、共同親権は、親の一方が子を虐待している場合や、親の一方が他方に対して暴力等を行っている場合には、行うことができない可能性があります。
子の育て方に対する考え方の違いから、姑との関係が悪化してしまったケースもよくあると思います。
夫が親権者になる可能性はあっても、姑が親権者になることは法律上認められていませんので、親権者を姑にとられるといった心配はしなくても問題ありません。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
嫁姑問題による離婚の慰謝料請求と相場
姑や夫の言動に精神的な苦痛を被った場合、慰謝料請求をしたいと考える人もいるかもしれません。
以下では、姑や夫に慰謝料請求ができるのか、できたとしてその相場はいくらかについて触れていきます。
姑への慰謝料請求
姑との間で、姑が慰謝料を支払うことの合意をすることができた場合には、合意された慰謝料額を姑から払ってもらうことができます。
もっとも、実際には、姑との間でこのような合意をすることは難しいでしょう。
裁判で、姑に対して慰謝料請求をする場合、慰謝料請求が認められるのは「姑の言動」を理由とする場合に限られ、「離婚」を理由として姑に慰謝料請求することは認められておりません。
そのため、慰謝料請求をするためには、「姑の言動」が「不法行為」であることを立証する必要があります。
もっとも、姑の言動を理由に慰謝料請求が認められるのは、姑の言動が客観的に見て限度を超えたと判断される場合です。そのため、姑の言動が軽微なものにとどまる場合は、慰謝料請求が認められない可能性があります。
上記を踏まえて、不法行為に該当しうる姑の言動の例としては、姑による過度な暴言・暴力があったことなどがあげられます。
そして、姑の暴言を記録したボイスレコーダーやLINE等の履歴、姑の暴力によって生じた痣等の写真、診療記録などが、その証拠になりうると思います。
また、姑の言動に精神的に疲労したことで心療内科や精神科に通ったことがある場合には、その診療記録も有益な証拠になります。
慰謝料の額は、300万円以下になることがほとんどであると思われます。
夫への慰謝料請求
夫についても、夫との間で慰謝料の合意がされれば、その合意に基づいて慰謝料請求をすることができます。
また、裁判で慰謝料請求する場合も、離婚の原因となった夫の言動が「不法行為」にあたることを立証する必要があります。
夫も姑と一緒になって過度な暴言・暴力を行っていた場合には、その夫の言動は「不法行為」に該当しうるでしょう。
これに対し、姑の暴言・暴力を止めなかった、嫁の味方をしなかっただけでは、「不法行為」に該当しない可能性があります。
慰謝料の額も、同様に300万円以下になることがほとんどであると思います。
嫁姑問題で離婚をお考えなら離婚弁護士ALGにご相談ください
現在の夫婦の状況から離婚事由を満たす場合もありますし、姑や夫の言動を立証することができるのであれば、慰謝料請求をすることも可能になります。
もっとも、上記のような判断は個人では判断が難しいものでもありますので、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
また、弁護士が交渉に携わることによって、姑との関係等を理由とした有利な財産分与ができる場合もあります。
弊所には、離婚問題に精通した弁護士が数多く在籍しておりますので、一度ご気軽にご相談ください。
配偶者からのDV(ドメスティック・バイオレンス)に悩み、離婚や慰謝料請求を考えている方にとって、最も重要なのが「証拠」の確保です。
DVは密室で行われることが多く、証拠がなければ相手が事実を否定した際に、法的手段を進めることが難しくなるためです。
本記事では、DVの証拠として有効なものの種類や具体的な集め方、証拠が不十分な場合の対処法について詳しく解説します。
DVで離婚・慰謝料請求するには証拠が必要
DVを理由に離婚を成立させたり、慰謝料を請求したりするためには、客観的な証拠が不可欠です。
裁判などで離婚を認めてもらうには、民法770条1項4号に規定される「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があることを立証しなければなりません。
証拠がなければ、相手が「暴力は振るっていない」と主張した場合に、第三者である裁判所が事実を認定することが困難になります。
DVの証拠になるのはどんなもの?集める方法は?
DVの証拠といっても、その内容は多岐にわたります。
身体的な暴力だけでなく、精神的な嫌がらせや経済的な制限もDVに含まれるため、それぞれの被害形態に合わせた記録を残すことが重要です。
ここでは、法的に有効と認められやすい具体的な証拠の種類とその収集方法をご紹介します。
怪我の写真
暴力によって生じた怪我(痣、切り傷、腫れなど)は、視覚的に被害を証明できる強力な証拠です。
写真は、怪我の箇所がはっきりと分かる「接写」と、本人の顔と怪我の部位が一緒に写っている「引き」の両方を撮影しておきましょう。
撮影日を記録するため、日付が表示される設定にするか、その日の新聞などと一緒に写すのも効果的です(もっとも、新聞の場合、その日付以降に撮影されたことは立証できても、その日付に撮影されたことまでは立証できません。公証役場で写真撮影報告書に確定日付を得ることで撮影日を立証することが可能となります。)
医師の診断書や受診歴
怪我をして病院を受診した際の診断書は、専門家による客観的な記録として非常に高い証拠能力を持ちます。
受診時には、医師に対して「配偶者に付けられた傷である」という経緯を正確に伝えることが重要です。これにより、カルテに被害状況が記録されます。
また、怪我が完治するまでの通院歴や領収書も、被害の継続性を裏付ける材料となります。
DVの様子を記録した音声・動画
暴言を吐かれている場面や、暴力を振るわれている最中の音声・動画は、当時の緊迫した状況を伝える直接的な証拠になります。
スマートフォンやICレコーダーを隠して録音・録画する方法が一般的です。
相手の怒鳴り声、物が壊れる音、自身の助けを求める声などが鮮明に入っているほど、被害の実態を証明しやすくなります。
DVを受けたことが記載してある日記やメモ
日々の被害状況を記録した日記やメモも、継続的に記録されていれば証拠として認められます。
- いつ(日時)
- どこで(場所)
- どのような理由で、どのような暴力を受けたか
- その時の気持ちや体調の変化
これらを詳細に、手書きで残しておくことが望ましいです。
内容が具体的であるほど、信憑性が高まります。
警察や配偶者暴力相談支援センター等への相談記録
警察や自治体の配偶者暴力相談支援センターへ相談したという事実は、公的機関による記録として残ります。
これらの機関に相談に行くと、相談日時や内容が「相談実績」として保管されるため、後に裁判所が事実確認を行う際の強力な裏付けとなります。
身の危険を感じる場合は、まずこれらの窓口に繋がっておくことが身を守ることにも直結します。
荒れた部屋など被害状況の写真
暴力によって壊された家具や家電、破かれた衣類、散乱した部屋の様子などは、その場の激しさを証明する証拠となります。
片付ける前に必ず写真を撮影してください。壊れた物の修理代の領収書や、買い替えた際の明細などもあわせて保管しておくと、損害の大きさを具体的に示すことができます。
モラハラ(精神的DV)を受けている場合
無視、侮辱、執拗な非難といった精神的DV(モラハラ)の場合、身体的な怪我のような目に見える痕跡が残りません。
そのため、相手から送られてきた誹謗中傷メールやLINE、人格を否定するような発言の録音が主たる証拠となります。
また、モラハラが原因でうつ病などの精神疾患を患った場合は、心療内科の診断書も有力な証拠になり得ます。
経済的DVを受けている場合
生活費を渡さない、自由にお金を使わせないといった経済的DVについては、家計の状況を客観的に示す資料が必要になります。
- 給与明細や通帳のコピー(相手の収入と渡されている金額の差を示す)
- 家計簿の記録
- 生活費を要求しても拒否された際のメールやLINEのやり取り
これらを整理し、不当に経済的自由が奪われている状況を立証します。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVの証拠が不十分、または証拠がない場合は離婚できない?
「決定的な証拠がないから離婚は無理だ」と諦める必要はありません。
証拠が不十分であっても、別居を継続して「婚姻関係の破綻」を証明したり、複数の小さな証拠(日記や親族の証言など)を積み重ねたりすることで、離婚が認められるケースはあります。
ただし、相手が離婚を拒否している場合に有利に進めるためには、やはり少しでも多くの記録を集めておくことが推奨されます。
DVの証拠を集めるポイント
証拠集めにおいて大切なのは、日常生活の中での「些細な記録」を疎かにしないことです。
軽微な怪我でも病院に行く
「これくらいの痣ならすぐ治る」と思わず、必ず病院を受診してください。
一度きりの受診であっても、それが「暴力が存在した」という公的な証明になります。
通院をためらわず、医師に事実を伝えることが、将来の自分を守る一歩となります。
メールは消さずに残しておく
相手からの脅迫的なメールや、謝罪の言葉が入ったメールは、消さずに保存しておきましょう。特にDV加害者は、暴力を振るった後に「二度としない」「自分が悪かった」といった謝罪メールを送ることがありますが、これは暴力を認める重要な証拠になります。
LINE等のメッセージアプリはスクリーンショットを残しておく
LINEなどのメッセージは、相手が送信を取り消したり、アカウントを削除したりする可能性があります。そのため、重要なやり取りは必ずスクリーンショットを撮り、画像データとして保存しておきましょう。
端末の故障に備え、クラウドストレージや信頼できる知人への送信など、バックアップを取っておくと安心です。
DV加害者と離婚したいときは弁護士に相談してください
DV被害を受けている中での証拠集めや離婚協議は、精神的・身体的に多大な負担がかかります。また、相手に知られると被害がエスカレートする危険もあります。
弁護士に相談することで、安全を確保しながらの証拠収集のアドバイスや、代理人としての交渉を任せることが可能です。
法的な観点から最適な戦略を立てるためにも、まずは専門家のサポートを受けることをご検討いただき、まずは是非一度、弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。
相続放棄した場合には、相続財産を一切受け取らないため、原則として相続放棄をした人に相続税の支払義務は発生しません。
しかし、事情によっては相続税を支払わなければならない場合があります。
以下では、相続税の基礎控除額や相続税の計算等について解説します。
相続放棄したら相続税はかからない?
相続放棄をした場合には、原則として相続財産を一切受け取らないため、相続税は発生しません。しかし、相続放棄した者であっても、亡くなった方の死亡保険金等は、受け取ることが可能です。
死亡保険金や死亡退職金は、相続財産には含まれず、受取人固有の財産として扱われますが、相続税がかかる場合があります。
そのため、相続放棄をしたとしても、これらの金銭を受け取った場合には、相続税が発生することがあるのです。
相続放棄しても基礎控除額には影響しない
相続税の基礎控除額とは、相続税の計算の際に、相続財産全体から差し引くことができる金額のことであり、相続財産全体から相続税の基礎控除額を差し引いた金額が相続税の対象となります。
相続税の基礎控除額は、以下の式で求めることができます。
相続税の基礎控除額
=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
そのため、たとえば、相続財産が7000万円、法定相続人が2人の場合は、以下のとおり、相続税の対象となるのは、2800万円の財産です。
相続税の基礎控除額
=3000万円+(600万円×2)
=4200万円
相続税の対象となる相続財産
=7000万円-4200万円
=2800万円
相続放棄した者は、「初めから相続人とならなかったものとみな」されますが(民法939条)、基礎控除額の計算においては、法定相続人として数えることになります(相続税法15条2項、相続税法基本通達15-2)。
相続放棄しなかった人の相続税額には影響あり
相続放棄した者がいたとしても、相続財産の全体は変わらないため、相続税の総額は変わりません。
そのため、相続放棄しなかった相続人は、相続放棄をする者がいなかった場合に比べて、相続税を多く支払うことになる可能性があります(法定相続人が4人、相続税が120万円であった場合、法定相続人全員が均等に相続すれば、1人あたり30万円の相続税を支払うことになる一方で、法定相続人のうち1人が相続放棄した場合には、1人あたり40万円の相続税を支払うことになります)。
上記のように、相続放棄した者がいることによって、自身の相続する財産が増える場合には、増加分に応じて相続税額も増額となります。
自身の相続する財産が変わらない相続人は、相続放棄した者がいるかどうかによって、相続税額に変動はありません。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
【ケース別】相続放棄があった場合の相続税の計算
みなし相続財産に対する非課税枠
みなし相続財産とは、本来、民法上の相続財産ではないものの、その財産を取得することが実質的に相続又は遺贈によって取得したことと同様の経済的効果をもたらすため、その刑事的効果に着目して、相続税の計算上、相続財産とみなす財産のことです。
みなし相続財産には、死亡保険金、死亡退職金、生命保険契約に関する権利等が該当します。
みなし相続財産には、以下のような非課税枠が設けられています。
500万円×法定相続人の人数
みなし相続財産は、相続税の課税対象ですが、相続税の基礎控除額とは別で、特定の非課税枠が適用されることになります。
また、みなし相続財産の場合も、相続放棄した者がいても、法定相続人の数は減らしませんが、非課税枠を利用できるのは相続人だけであるため、相続放棄した者は非課税枠を利用できません。
配偶者の税額軽減
配偶者の相続については、相続税が軽減される制度(配偶者の税額の軽減)があります。
配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した遺産額が、1億6000万円か、配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは、配偶者に相続税が発生しないという制度です。
もっとも、この制度は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになりますので、相続税の申告期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内)までに分割されていない遺産は、税額軽減の対象とはならないことに注意が必要です。
配偶者が相続放棄した場合であっても、配偶者が遺贈により取得した財産があるときは、この制度の適用があります。
未成年者控除・障害者控除
相続人が未成年者の場合には、相続税の額から一定の金額を差し引くことができます。
未成年者控除の額は、当該未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額です。
また、相続人が85歳未満の障がい者のときは、相続税の額から一定の金額を差し引くことができます(対象となる障がい者の定義は税法により定められています)。
障がい者控除の額は、一般障がい者の場合は満85歳になるまでの年数1年につき10万円、特別障がい者の場合は1年につき20万円です。
また、障がい者控除額が、当該障がい者本人の相続税額より大きく、控除額の全額が差し引き切れない場合には、その差し引き切れない金額を、当該障がい者の扶養義務者の相続税額から差し引くことになります。
どちらの控除も、未成年者や障がい者が相続放棄をしていても、条件を満たせば、控除を適用することが可能です。
生前贈与の加算対象
原則として、相続放棄をした法定相続人は、生前贈与を受けていたとしても、生前贈与加算の対象とはなりません。
もっとも、みなし相続財産(生命保険金等)を受け取っている場合には、生前贈与加算の対象となります。
加算対象となる期間は、被相続人の相続開始日が令和8年12月31日までの場合は、相続開始前3年間、令和9年1月1日~令和12年12月3日までの場合は、令和6年1月1日から死亡までの間、令和13年1月1日~の場合は、相続開始前7年以内の生前贈与が対象となります。
ただし、合計100万円以下の生前贈与から3年以上が経過している場合は、加算対象外となります。
債務控除
被相続人が死亡したときに現に存在した被相続人の債務の中で確実と認められるものについては、原則として、遺産総額から差し引くことができます(債務控除)。
もっとも、相続放棄をした場合には、正の財産も負の財産も相続しないので、基本的には債務控除の対象とはなりません。
ただし、相続放棄した者であっても、被相続人の葬儀費用を支払ったという場合には、当該葬儀費用を控除してもらうことが可能です。
2割加算
被相続人の配偶者や子、両親、代襲相続人以外の人が相続税を納める場合、相続税額が2割加算されます。これを相続税額の2割加算といいます。
これは、法律上の関係や血縁関係によって規定されているため、配偶者や子、両親は、相続放棄をしたとしても2割加算の対象とはなりません。
しかし、代襲相続人が相続の放棄をした場合には、当該代襲相続人は相続人ではなくなるため、2割加算の対象となります。
相続税が発生する場合はトラブル回避のためにもご相談ください
相続放棄をしても死亡保険金等を受け取れることや、相続放棄をしても相続税を納めなければならない場合があること、相続税の控除制度等については、それほど知られていません。
また、相続は複雑で、思いもよらないトラブルが発生したり、親族間で揉め事が起きるリスクもあります。
弁護士であれば、想定されるトラブルやその対処法をお伝えすることができます。
相続が発生する場合は、トラブルを未然に防ぐためにも、弁護士にご相談ください。
交通事故によって怪我をしてしまい、その怪我の療養のために働くことができなくってしまうことがあるかもしれません。
この場合、働くことで得られたはずのお給料を休業損害として、加害者側にその賠償を請求することになりますが、その損害を証明する資料として休業損害証明書が必要になります。
本記事では、休業損害証明書とは何なのか、どのように準備するのか、どのように記入してもらうかについて解説していきます。
休業損害証明書とは
休業損害証明書とは、会社員やパート、アルバイトの方といったお給料をもらっている人が休業損害を証明するための書類です。
ここで、休業損害とは、交通事故で生じた怪我の療養がなければ得られたはずが、療養が必要になったことで得られなくなった収入に対応する損害をいいます。
休業損害証明書には、欠勤・遅刻早退の回数や、欠勤等をした日、欠勤日の給与の支給の有無等、休業がない直近3カ月間の給与などが記載されています。
休業損害証明書はどこでもらえばいい?
休業損害証明書は、加害者側の保険会社からの送付によって手に入れることができます。
加害者側の保険会社から送られてこないということもあるかもしれません。その場合には、加害者側の保険会社に休業損害証明書を送ってほしい旨を伝えるといいでしょう。
また、弁護士は休業損害証明書の雛形を持っていることが多いので、弁護士に頼んで休業損害証明書の雛形をもらうこともできます。
休業損害証明書は自分で記入してもいい?
休業損害証明書は、会社が作成すべき書類です。
そのため、休業損害証明書は会社に書いてもらわなければならず、自分で記入してはいけません。
間違えて自分で書いてしまった方は、加害者側の保険会社に対して、もう1枚休業損害証明書が欲しいといえば、送ってもらえます。
休業損害証明書の記入例
事故に遭った人の氏名等
休業損害証明書の記載欄の最上部には、職種・役職、氏名、採用日を書く欄があります。
この欄は、休業損害を請求したい人、つまり被害者の情報を記載します。
職種・役職については、「正社員」、「アルバイト」、「パート」といった記載でも、「営業職」、「人事」、「法務」など具体的な役職の記載でも構いません。
休業期間
休業期間は、欠勤した日だけでなく、遅刻した日や早退した日をあわせてカウントします。
もし、実際の休業期間より短い期間が記載されている場合、もらうことのできる休業損害の額が減少してしまう可能性があるため、休業期間が正しいかはしっかりと確認するようにしましょう。
休業損害証明書1枚で記載できる休業期間は3カ月までです。
そのため、休業期間が3カ月を超える場合には2枚の休業損害証明書を用意して、2枚目に4か月目以降の欠勤等の日数を記載するようにしましょう。
3か月間の勤怠状況
事故によるけがの療養のため、欠勤等をした日を記載します。
3カ月以上欠勤や遅刻早退が必要になった場合には、2枚目の休業損害証明書に4か月目以降の勤怠状況を記載してください。
記載の仕方は、欠勤等の表し方に関する凡例が休業損害証明書に記載されていますので、それに従って、欠勤等した日にマークをしていけば大丈夫です。
マークが終わったら、欠勤等の日数が休業期間の日数と一緒になっているかを確認するようにしましょう。
休んだ期間の給与
「ア 全額支給した」、「イ 全額支給しなかった」、「ウ 一部支給・減給した」の3つのうち、該当するものを選択します。
「ウ 一部支給・減給した」が選択される際には、支払いがされた給与の額と、その給与の内訳(本給の額及び付加給の額)の記載が必要になります。
給与の額と内訳の合計にズレがないかを確認するようにしましょう。
本給と付加給については、こちらを参照してください。
事故前3ヶ月の支給された給与額
先ほど述べた通り、休業損害は怪我の療養がなければ本来得られたはずの収入から、現実に得られた収入の差額ですので、事故がなければ本来得られたはずの収入を明らかにする必要があります。
本来得られたはずの収入は、事故前3カ月間に支給された給与額を記載することで、日額を算定でき、その日額に休業日数を踏まえることで算定が可能になります。
詳しい計算方法については、こちらの記事もご確認ください。
給与額の記載の方法としては、稼働日数や支給金額の内訳(本給or付加給)、社会保険料の額、所得税額、差引支給額、所定労働時間、時給を正確に書き込んでいくことになります。
社会保険や労災保険からの給付の有無
健康保険の被保険者が交通事故で怪我をし、療養のために休業した場合、傷病手当金を受領することができます。また、交通事故が業務中、通勤中のものであった場合、労災保険の休業補償の給付を受けることができる場合があります。
これら傷病手当金や、休業補償をすでに受領していた場合、さらに休業損害全額を受領することはできません。これらはともに休業による減収分を填補するものであり、合わせて受領することは二重取りになるからです。
そのため、既に傷病手当金や休業補償給付を受領している場合は、その旨、またその保険名と連絡先を記載する必要があります。
なお、傷病手当金や休業補償給付を受けている場合には、受領した分が考慮されて休業損害が調整されることになります。
作成日、勤務先情報、社印等
休業損害証明書の最下部には、記入日、所在地、商号又は名称、代表者氏名、会社の電話番号、担当者名、担当者連絡先を記載する欄があります。また、社印を押印してもらう必要もあります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
休業損害証明書を作成するときの注意点
記載漏れや間違いがないか確認する
これまでにも触れてきましたが、記載漏れや記載に間違いがないかを必ず確認するようにしましょう。
もし記載漏れや記載に間違いがあった場合、適切な額の休業損害を受け取れなくなってしまったり、最悪の場合にはそもそも休業損害を受け取ることができなくなったりしてしまいます。
そのため、勤務先に作成してもらった後は、ご自身で記載内容に目を通すようにしましょう。記載間違いを発見した場合には、担当者に報告した上、二重線で消して訂正印を押してもらうようにしましょう。
本給と付加給について
本給と付加給という単語にはなじみのない人も多いかもしれません。
本給とは基本給のことです。
また、付加給とは基本給以外に受け取るもの、すなわち諸手当の合計です。
休業損害の算定の基礎となる収入(基礎収入)は、事故以前の本給だけではなく、本給と付加給の合計額になります。
休業損害証明書を書いてもらえないときの対処法
会社が休業損害証明書を書いてくれない場合の理由の一つに、会社が書き方を知らないということが考えられます。
この場合には、本記事や保険会社等があげているサンプルを見せたり、本記事の内容を伝えたりすることで、書いてもらえる可能性があります。
しかし、会社が紛争に巻き込まれることを避けようとしている場合など、それでも休業損害証明書を書いてくれない可能性があります。
その場合でも、休業損害証明書なしで休業損害を請求することはできます。
しかし、請求に当たっては給与明細やタイムカードなどの資料を被害者自ら集めなければならなくなる上、請求が認められるためのハードルもあがります。
この場合は、弁護士が間に入ることで資料を集めやすくなり、請求が認められる可能性も高くなりますので、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
休業損害証明書を正しく書いてもらうためにも弁護士に依頼してみませんか?
休業損害証明書が必要になる場合には、被害者の方は怪我で本調子ではないことが多く、休業損害証明書を準備することが非常に負担になることが多いと思います。
また、そもそも休業損害証明書はなじみの薄い書類であるため、本記事を見て書き方が分かったとしても、それが本当に正しいか不安に思う方も少なくないと思います。
弁護士法人ALG&Associates名古屋法律事務所の弁護士は、交通事故案件を多く取り扱っているため、休業損害証明書それ自体や、休業損害証明書を会社に書いてもらうための方法などに精通しております。
休業損害証明書の準備に負担を感じる方や適切な休業損害を受領できるかに不安を感じる方はもちろん、その他交通事故に関するお悩みについても、一度弊所の弁護士にご相談ください。
労働者が、仕事中や通勤途中に交通事故に遭ってしまった場合、労災保険に対して保険金を請求できるときがあります。
この労災から受けられる保険金の中には、交通事故によるケガで休業を余儀なくされたために受け取れなかった収入に対する補償があり、これは休業補償と呼ばれています。
この記事では、休業補償の制度・特徴や活用方法について説明していきます。
交通事故の休業補償とは
会社に雇用され、労災保険に加入している労働者が労災にあった場合、労災保険に対して保険金を請求出来ることがあり、業務中や通勤中の交通事故も労災に該当することがあります。
このとき、業務中に生じた交通事故は業務災害、通勤中の場合は通勤災害と呼ばれて区別されています。
休業に対する補償に関して、この分類に応じて、業務災害のときが「休業補償給付」、通勤災害のときが「休業給付」と名称の違いはありますが、支給要件は同じです。
その支給要件とは、①業務上の事由または通勤による負傷や疾病のため、②労働することができないため、③賃金を受けていない、という3要件とされています。
休業補償はいつもらえる?
休業補償には待機期間が存在し、事故の初日から3日目までは支給がされません。
業務中・通勤中の交通事故によるケガで仕事を休んでから、4日目以降の休業について支給対象となってきます。
この初日から3日目の休業については、業務災害であれば事業主に対して休業補償を請求できます。
他方で、通勤災害の場合は、事業主の補償責任を定めた法令上の規定はないため、加害者側に休業損害として請求することを検討することになります。
休業補償はいつまでもらえる?
休業補償は、上記の3要件を満たす期間の間はずっともらい続けることができます。
そのため、ケガが完治したり、症状固定(適切な治療を受け、これ以上は改善を見込むことができない状態)に至って治療が終了したりしたときには、①の要件を満たさなくなるため、終了となるでしょう。
ただし、療養開始後1年6ヶ月が経過しても、その負傷又は疾病が治っておらず、労基署が定める傷病等級表に該当する程度の障害がある場合は、休業補償ではなく、傷病(補償)等年金に切り替わることがあります。
交通事故の休業補償と休業損害の違い
これまで解説してきたとおり、休業補償とは、労災保険の制度の一つです。
そのため、交通事故の加害者側に対して請求できる休業損害とは、休業によって得られなかった収入を補填するものである点が共通しますが、請求先や対象となる事故が異なります。
下記の表では、両者の違いについてまとめています。
| 休業補償 | 休業損害 | |
|---|---|---|
| 請求先 | 労災保険 | 加害者本人、加害者加入の自賠責保険又は任意保険 |
| 対象となる事故 | 業務中又は通勤中に生じた交通事故 | 人身事故全般 (自身が100%の過失を負う自己を除く) |
| 貰える金額 | 平均賃金に相当する額の60%を給付基礎日額と定めています。 この給付基礎日額×休業日数(但し、初日から3日目までを除く)で計算。 |
自賠責保険では、原則として6100円×休業日数で計算。 弁護士を介した交渉では、休業損害証明書より日額を算定し、その額×休業日数で請求を行うこともあります。 |
| 過失割合の影響 | なし | あり |
| 有給休暇の取り扱い | 休業保障の対象外となる | 損害として請求できる |
| 待機期間 | 初日から3日目までの3日間 | なし |
| いつ貰えるか | 請求してから審査の終了後 その後は、1か月ごとに支給 |
原則、示談成立後 |
| 貰える期間 | ①業務上の事由または通勤による負傷や疾病のため、②労働することができないため、③賃金を受けていない、の3要件を満たしている期間。 | 休業の必要性・相当性が認められる期間 |
休業補償と休業損害はどちらを請求する?
休業補償と休業損害は、請求先などの違いはあれども、休業によって得られなかった収入を補填するものである点は共通しています。
どちらを先に請求するかは、被害者の意思に委ねられています。
このとき、過失割合が低ければ休業損害の方が高い計算結果となりやすい反面、休業補償には比較的早めに受け取れるメリットがあります。
そのため、休業補償を先に受け取っておき、治療終了後に加害者側へ差額分を請求するといったように、両方への請求を使い分けることが可能です。
ただし、重複して支払いを受けることはできないため、両方を満額受け取ることは不可能です。また、両方に請求を行うメリットはもう一つあります。
労災保険には、休業補償のほかに、「休業特別支給金」という制度が設けられており、休業補償と合わせて平均給与の20%を追加で受け取ることが可能です。
この休業特別支給金は、損害の補填ではなく、労働者の福祉のために支給される労災独自の制度であるため、休業損害の請求額にも影響しません。
そのため、休業損害を満額受け取っている場合でも、休業特別支給金を申請することで、おおよお120%の額の金額を受け取ることができるため、両方に申請を行った方がよいでしょう。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の休業補償の特徴
以下の項目では、休業補償の制度の特徴について、詳細にまとめています。
待機期間がある
休業補償には、待機期間が設けられており、初日から3日目までは、労災保険からの保険金給付がなされません。
加害者の加入する自賠責保険や任意保険には待機期間がないため、1日目の分から請求をしていくことができます。
このとき、業務災害の場合は、あくまで労災保険から支給がないだけであるため、この3日間については、自賠責等への請求のほか、勤務先の事業主へ直接休業補償を行うように求めることもできます。
他方で、通勤災害の場合には、事業主が保障をすべきとの法令上の定めはないため、この3日分は、加害者側に対する請求で対応することになります。
支払いに過失割合の影響・上限はない
休業補償では、過失割合に応じた減額をしないため、常に満額を受け取ることができます。
また、支払い額に上限がないため、要件を満たす限りは、保険金の受け取りをすることができます。
一方で、加害者本人や任意保険への請求では、被害者に過失がつく事故に場合、その被害者の過失分だけ賠償額を減額するという過失相殺を行うことがほとんどです。
また、自賠責保険では、被害者側の過失による調整は、重過失(7割以上の過失の場合)のみに限定されていますが、ケガに関する賠償は120万円が上限となっています。
そのため、休業損害だけではなく、治療費や入通院慰謝料等の損害総額として120万円を超える分は、自賠責では対応できません。
そのため、過失割合が多いときにも活用しやすいのが、労災保険のメリットと言えるでしょう。
自営業者や専業主婦(夫)は対象とならない
休業補償は、労災保険の制度であるため、労働者ではない個人事業主(特別加入制度によって任意加入している人を除く)や専業主婦(主夫)といった加入者ではない者は、申請ができません。
有給休暇を取得した日は対象外
休業補償の要件の一つとして「③賃金を受けていない」を満たす必要があります。
このとき、ケガで休業を要するときに、有給休暇で対応した場合、その日は労働をしていなくても、会社から賃金が払われます。すると、上記要件を満たさないこととなり、休業補償の対象日から外れます。
一方で、休業損害の考え方では、有給休暇が取得できるという権利を、交通事故のケガのために消費させられたことを損害として考え、加害者側に請求することが認められています。
所定休日は要件を満たせば対象となる
休業補償は、上記の3要件を満たしている限り、会社の所定休日分も含めて休業日数として計算されます。
また、事故直前の勤務日数に関わらず、交通事故のケガなどで労働できない日であれば、待機期間の3日を除いた全日数で計算をします。
休業損害は、あくまで交通事故のせいで会社を休んだ日のみが対象となりうるので、もともと会社が休みの日は、含めません。
交通事故における休業補償の計算方法
交通事故における休業補償は、休業1日につき、給付基礎日額の80%(休業(補償)等給付の60%+休業特別支給金の20%をどちらも請求する場合)で計算されています。
この給付基礎日額は、事故が発生した日の直前3か月間に、その労働者に対して支払われた賃金総額を、その期間の歴日数で割った、一日当たりの賃金額を指します。
但し、この算定基礎となる「賃金」には、臨時的支払われるものや、賞与などは含まれません。また、休業日数は、上述のとおり、初日から3日目までを除いた、4日目以降から起算します。
休業補償の請求方法
休業補償の申請書類は、勤務先を管轄する労働基準監督署(労基署)に提出します。
法律上は労働者個人が申請者であり、勤務先には申請の協力義務が定められています。
しかし、多くの会社では、労災保険の申請を代わりにやってくれることも多いので、一度ご相談してみることをお勧めします。
申請書には、会社の証明欄のほか、通院先の担当医の証明欄もあるため、病院にも協力を依頼する必要があります。
会社が非協力的な場合は、自らが請求する必要があります。
申請書は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。
請求の時効に注意
休業補償には、時効があります。休業補償の場合、賃金を受けない日ごとに請求権が発生していますので、その翌日から2年間が経過すると申請ができなくなります。
早く受け取りたい場合は受任者払い制度を利用する
休業補償を申請すると、労基署での審査が行われ、支給の決定が出てから支払いがなされます。
この申請から支給までは、1か月程度かかりますが、事案によってはより長期間を要します。しかし、毎月の給与から生活費を工面している方がほとんどであると思いますので、この支払いまでの期間が長引くと、生活に大きな支障が出ます。
このような場合、会社に、休業補償に相当する金額を立て替えて支払ってもらい、労災保険から支給される休業補償については会社に直接払ってもらうという受任者払い制度というものがあります。
この受任者払い制度は、会社に強制できないため、あくまで会社の協力が得られる場合に限られるものの、早めに受け取ることができる場合があるので、利用したい場合は、一度会社にご相談してみることをお勧めします。
休業補償の請求が認められなかった場合の対処法
休業補償の申請をしても、労基署での審査により、要件を満たしていないなどの理由で、保険金の不支給決定が出ることがあります。
この決定に対して不服がある場合には、都道府県労働局に置かれている労働者災害補償保険審査官に不服申立てをすることができます。これを「審査請求」と呼びます。
この審査請求は、監督署長の決定の通知を受けた日の翌日から3か月以内に行う必要があります。
勤務中・通勤中の交通事故の休業補償・休業損害請求は弁護士にご相談ください
休業補償は、労災の制度の一つであり、加害者側への休業損害にかかる賠償請求とは、様々な点で相違点があります。
労災保険の休業補償には、特別支給金を併せて申請することで100%以上の額を受け取れる可能性があるほか、加害者への請求が認められる範囲よりも休業期間が長めに認められやすい点や比較的早めに受け取ることが出来るという点でメリットがあります。
また、過失割合に応じた減額がなされないので、こちらにも過失が大きく認められる事故の場合には、特に労災を活用することのメリットが大きいと言えます。
要件を満たす場合は、休業補償も休業損害の両方を支給していくべきですが、重複した受け取りができないため、過失割合などが絡んでくると、最終的にいくらを受け取りできるのかの予想がつかないケースも多いところです。
交通事故の休業補償について、自分の事故が対象となるのか、加害者からの賠償金よりも先に請求した方がよいのかといった点でお困りの方は、弁護士法人ALGにご相談ください。

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保有資格弁護士(愛知県弁護士会所属・登録番号:45721)
