新型コロナウイルスによる自宅待機命令

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現時点において、新型コロナウイルスの流行は、いつ終息するのかわからない状況が続いています(2020年3月現在)。このような状況下においては、貴社で、新型コロナウイルスの感染を防ぐために、従業員に対して、自宅待機を命ずる必要がいつ生ずるかわかりません。
以下では、新型コロナウイルスの感染防止のために従業員に自宅待機命令を出す際に知っておくべき事柄を解説していきます。

目次

新型コロナウイルス流行に伴う自宅待機命令

新型コロナウイルスの感染防止策として、テレワークを導入される企業が増えてきました。このような全社的な取り組みのほかに、個別の従業員に対し、自宅待機命令を出すことによっても、感染防止を図ることができます。

自宅待機命令の効力について

会社が、従業員に対して自宅待機命令を出した場合、その自宅待機命令が業務命令として有効であるならば、従業員はこれに従う必要があります。自宅待機に伴い従業員が休業をすることになるので、その自宅待機命令を下した理由が、会社の都合によるものであると判断される場合には、会社は従業員に対して、休業補償をする必要があります。

業務命令としての自宅待機命令とは

会社は、雇用契約上、従業員に対し労務指揮権を有しています。従業員に対し、自宅待機命令を出す必要性が認められる場合には、就業規則の定めがなくとも、自宅待機を命ずることは労務指揮権に基づく業務命令として行うことができます。ただし、従業員に就労請求権が認められる場合や、自宅待機中に賃金を支払わなければならないにもかかわらず支払いを行わない場合などには、自宅待機命令そのものが無効と判断される可能性があります。

新型コロナウイルスによる就業制限は可能か?

従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、当該従業員は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律により、就労を制限されます。

安全衛生法上の就業禁止に関する解説は、以下のリンクをご覧ください。

従業員の疾病による「就業禁止」

感染が疑われる段階での自宅待機命令

従業員が、新型コロナウイルスに感染したと判明していないものの、感染が疑われる症状を発症しているような場合などには、他の従業員への感染を防止するために、会社は当該従業員に対し、自宅待機を命ずることは、必要かつ相当な業務命令であるといえます。

自宅待機中の給与を支払う義務

自宅待機により従業員が就労していないので、会社は休業中の給与を支払う義務はありません(ノーワークノーペイの原則。ただし、完全月給制など雇用契約による例外は除く。)
ただし、労働基準法は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」(法26条)の場合には、使用者は従業員に対し、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければならないと定めています。

新型コロナウイルスにおける労働者への対応

「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは

労働基準法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」については、不可抗力(①その原因が事業の外部より発生した事故であること、かつ、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること)以外は、「使用者の責めに帰すべき事由」にあたると考えられています。

感染者を自宅待機させる場合は、「使用者の責めに帰すべき事由」による休業にあたらないことは明らかです。

感染の疑いのある方を自宅待機させる場合には、上記②の要件を満たすかどうかが問題となりますが、厚労省のガイドラインにおいては、「帰国者・接触者相談センター」の結果を踏まえても、職務の継続が可能である方について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に当てはまるとされていますので、ご注意ください。

休業手当の支給事由については、下記のリンクも参照ください。

休業手当の支給事由

自宅待機期間の終了について

WHOが、新型コロナウイルス感染症に関して、健康状態の観察期間として最低14日間としていることを踏まえると、自宅待機命令においても、最低14日間の自宅待機を命ずるのが相当であると考えます。

新型コロナウイルスの感染と治癒後の職場復帰に関しては、下記のリンクも参照ください。

新型コロナウイルスの感染と治癒後の職場復帰

派遣社員への自宅待機命令

派遣社員は、派遣先で労務の提供は行いますが、派遣元と雇用契約を締結しています。派遣先も通常業務の遂行に必要な指示や命令を派遣社員に下すことはできますが、労働者の労務の提供を全面的に行わせない自宅待機命令については、原則として、雇用主である派遣元でなければ命ずることができないものと考えます。

自宅待機の要否は派遣元、派遣先のどちらが判断するのか?

派遣労働者が実際の就労しているのは、派遣先であるので、派遣先が自宅待機が必要であると判断した場合には、派遣元に自宅待機命令を下すことを要請して、最終的には派遣元がその命令の要否を判断することとなると考えられます。

労働基準法における派遣元・派遣先の責任分担

高年齢者を雇用している場合の対応

新型コロナウイルスに高齢者が感染した場合、若年者と比較して重症化しやすく、死亡率も高くなっています。企業が、高齢者を雇用している場合、当該従業員が新型コロナウイルスに感染した場合に重症化するリスクは予見可能であると考えます。高齢者の従業員に対して感染するリスクが高い職場である場合、重大な被害を回避する必要性から、そうでない職場よりも、自宅待機命令を出す必要性が高くなる可能性があります。

高齢者雇用

高年齢労働者のみに自宅待機を命じることは可能か?

高年労働者のみに自宅待機を命ずるのは、高年齢労働者の重症化リスクが高いことを踏まえると、状況によっては、自宅待機命令の必要性や相当性が認められる可能性はあります。

自宅待機命令に関するQ&A

緊急時の連絡手段として、社内連絡網を作成することは問題ないでしょうか?

連絡先は個人情報に該当しますので、緊急時の連絡手段に用いるという目的を明示したうえで情報を取得し、その範囲内で社内連絡網を作成して利用することに問題はありません。

就業規則に規程がなくても自宅待機を命じることは可能ですか?

自宅待機を命ずる必要性と相当性が認められる場合には、就業規則の定めがなくとも有効な業務命令として命ずることは可能です。

就業規則

社員の家族に風邪の症状がある場合、自宅待機を命じるべきでしょうか?

社員本人ではなく、家族に風邪の症状があるという事実だけでは、当該社員の新型コロナウイルス感染が疑われる状況にあるとは認めがたいと考えます。自宅待機命令の必要性や相当性に疑問が生じうるので、仮に、念のため、自宅待機を命ずるのであれば、賃金は100%支払うなどの対応が望ましいと考えます。

自宅待機中に有給休暇を取得してもらうことは可能ですか?

有給休暇の取得は、原則として労働者に自由に取得時期を定めさせねばなりません。そのため、会社が、労働者に対し、自宅待機中に有給休暇の取得を命ずることはできません。しかし、一方的に取得を命ずるのではなく、会社と労働者と協議し、労働者の判断で有給休暇を取得するのであれば問題はありません。

労働基準法で定められる年次有給休暇の基礎知識

在宅勤務が可能な社員に自宅待機を命じた場合、休業手当の支払いは必要ですか?

在宅勤務が可能であるにもかかわらず、これをしないのであれば、「事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること」とはいえず、休業理由は、労働基準法26条の「使用者の責めに帰すべき事由」にあたります。そのため、休業手当の支払いは必要となります。

休業手当の支給事由

自宅待機中の社員に、定期的に病状の報告をさせることは可能でしょうか?

社員の病状は、自宅待機命令の延長の判断などに必要な情報であると考えますので、報告を求めることは可能であると考えます。

新入社員を自宅待機させる場合、休業手当の支払いは必要ですか?

新入社員であっても、他の社員と同様に扱う必要があります。他の社員に対し、休業手当の支払いが必要な状況(本人が感染者ではない等)であれば、当然、休業手当を支払う必要があります。

    
新型コロナウイルスにおける労働者への対応
休業手当の支給事由

自宅待機中に新型コロナウイルスに感染した場合、労災は適用されますか?

自宅待機中に、新型コロナウイルスに感染したことが明らかな場合には、業務に起因して新型コロナウイルスに感染したとは認められないので、労災の適用はないと考えます。

自宅待機命令に関する様々なご質問に弁護士がお答えします。お気軽にご相談ください。

同じ自宅待機命令であっても、その発令の状況で、様々な違いが生じます。トラブルを回避するためにも、実際に命令を下す前に、弁護士にお気軽にご相談ください。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長 弁護士 井本 敬善
弁護士法人ALG&Associates 名古屋法律事務所 所長弁護士 井本 敬善
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
愛知県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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