団体交渉、労働組合対策

労働組合から団体交渉の申込みがあったにもかかわらず、これを正当な理由なく無視することは極めて危険です。また、団体交渉の場において、高圧的な物言いや怒声・罵声を浴びせる、物を投げつける・机を不必要に強く叩く、資料の開示が必要であるにもかかわらず一切の説明も行わない等、企業が団体交渉に誠実に応じない場合には、違法行為と評価されます。

1 団体交渉の意義

団体交渉とは、労働者が労働組合を結成し、使用者又は使用者団体と労働条件をはじめとする使用者と労働者との関係に関するルールについて交渉を行うものです。

労働組合法6条は、「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する」と規定しており、組合等に対して団体交渉権を付与しているため、企業は団体交渉の申出があった場合、これに対応する必要があります。

2 団体交渉の流れ及び留意点

団体交渉の流れは、①組合の方から団体交渉の申入があり、②当該申し入れに対する回答をし、③団体交渉を行い、④合意が成立した場合には協定書が作成されることになります。また、④´合意が成立しない場合には、交渉を打ち切る場合もあります。

(1)①について

まず、労働組合から組合の結成通知書と団体交渉申入書が送付されます(送付方法は様々であり、FAXや郵便のみならず、企業に組合が来訪し直接交付されることもあります。)。申入書には協議事項や組合の担当者の氏名・連絡先等の様々な情報が記載されているため、企業はこれを十分に精査する必要があります。また、当該情報から、どのような組合なのか、交渉事項は何なのか、企業の担当者を誰にすることが適当か、弁護士との打合せ等の調査・検討をすることになります。

そして、団体交渉の申入れがあった場合、企業は最初に当該団体交渉を応じるか否かの決断をしなければなりません。下記記載のとおり、正当な理由なく団体交渉に応じないことは、不当労働行為や不法行為に該当します。また、義務的断交事項(企業が必要的に団体交渉に応じなければならない事項)か任意的断交事項(純粋な経営権に関する事項であり、企業が団体交渉に応じるか否かを任意的に決定できる事項)かを峻別することは非常に難しいと言わざるを得ません。更に、当該組合が適法に組織されたものか否かの明確に判断することも、交渉の初期段階では難しいのが実情です。ゆえに、企業の基本的な方針としては、団体交渉の申し入れがあった場合、当該団体交渉に応じる方向で検討することが妥当です(仮に、任意的な断交事項に関する団体交渉の申し入れがあった場合でも、まずは団体交渉に応じ、交渉の場で組合に対し任意的断交事項に関する事項であると説明することで足ります。)。

(2)②について

回答書は、まずは、団体交渉に応じるか否かの回答をします。また、団体交渉の日時・場所を調整し、出席者を明らかにします。更に、断交申入書に記載された断交事項が漠然としており不明確な場合、組合に対して、明らかにするように求めることも必要です。

特に、団体交渉の日時や場所の調整は大切なポイントとなります。組合の事務所で行う場合、企業にとってアウェーでの交渉となるため、萎縮効果が生じる可能性があります。また、交渉が決裂し、企業が退室を求めたにも関わらず、組合員が担当者の退室を阻害してくることもあります。他方で、企業の事務所で行う場合、交渉中は当該事務所の施設が使用できなくなったり、予定していた交渉時間が過ぎても組合員が退室せず、交渉時間が徒に延長される可能性もあります。ゆえに、必要がある場合には、貸会議室等を予約し、当該場所にて交渉を行うことも有効です(貸会議室等の場合、利用時間を指定することで、交渉時間が徒に延長することを防ぐことも可能です。)。

(3)③について

団体交渉をするにあたって、録音機器を用意すること、想定問答を行うこと、弁護士と役割分担の打合せ等の事前の準備を怠ってはいけません。また、企業には誠実に交渉を行う義務があることから、事前に組合から資料の提出を求められていた場合には、当該資料を持参することも忘れてはなりません。

断交の当日、発言や態度には十分に留意する必要があります。更に、議事録を作成することも必要です。なお、議事録作成にあたっては、双方で認識を共有するためにも、その場で確認をすることを怠ってはいけません。

仮に、協議の継続が必要になった場合、次回の協議期日を決めることになります。

(4)④、④´について

協議がまとまり、合意が成立した場合、組合と企業との間で協定書を作成し、合意事項を書面化することが必要です。仮に、協議を続けても平行線であった場合、協議を打ち切ることを検討する必要があります。そして、協議を打ち切るタイミングをいつにするかは非常に難しいと言わざるを得ません。十分に協議がされていないにも関わらず、企業が一方的に協議を打ち切った場合、誠実交渉義務に違反したとして、損害賠償の対象になりかねません。他方で、組合員から企業の担当者が監禁されたり、暴行・脅迫を受けた場合には、即座に協議を打ち切る必要があります。かかる協議の打ち切りのタイミングは、弁護士と打合せする必要があります。

3 団体交渉における留意点

(1)団体交渉を無視した場合のリスクについて

労働組合法7条2号は、「労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由なく拒むこと」を不当労働行為と規定しています。仮に、企業が正当な理由なく団体交渉を拒否する場合、労働組合は各都道府県労働委員会に対して、救済申し立てを行います。そして、労働委員会において、不当労働行為に該当すると判断された場合、救済命令が発せられることになります。そして、使用者が確定した救済命令に違反した場合、「五十万円(当該命令が作為を命ずるものであるときは、その命令の日の翌日から起算して不履行の日数が五日を超える場合にはその超える日数一日につき十万円の割合で算定した金額を加えた金額)以下の過料に処」(労働組合法32条)されることになります。更に、救済命令が行政訴訟により確定し、使用者が救済命令に違反した場合は、「一年以下の禁錮若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれに併科」(労働組合法28条)されることになります。加えて、使用者による不当な団体交渉を拒否する行為が不法行為(民法709条)にあたるとして、使用者は損害賠償責任を負うことになります(東京地方裁判所平成21年3月27日判決は、「使用者が、労使間の団体交渉において、労働者の団体交渉権を尊重して誠意をもって団体交渉に当たるべき義務に違反したことが、団体交渉権の侵害に該当する場合には、使用者の労働組合に対する不法行為(民法709条)が成立し得る」と判断しています。)。

また、例えば、労働組合が団体交渉を不当に拒否する会社につき糾弾する内容のビラを配ったり、インターネットを通じて配信することもあります。このようなビラや記事を見た一般人からすれば、当該企業に対して偏見を持ち、結果的に企業価値を毀損することになりかねません。

(2)団体交渉の場におけるリスクについて

団体交渉の場において、交渉がヒートアップし、使用者が組合員に対し、暴言や失言をしてしまったり、机を不必要に強く叩き威圧することがあります。そして、このような使用者側の団体交渉における態度は、民事訴訟において損害賠償の対象になりかねません。特に、組合は、団体交渉の席において録音を行うことがよくあるため、使用者は発言に十分に留意する必要があります。

また、企業に誠実交渉義務があります。そして、組合に資料等の提出を求められていたにも関わらず、正当な理由なく、これを開示しない場合には、誠実交渉義務に違反したとして、損害賠償の対象になりかねません。

4 最後に

団体交渉の申込みを不当に無視することは、前記のとおり、不当労働行為や不法行為に該当します。かかる行為は、紛争を拡大するだけであり、企業にとって著しい不利益になります。ゆえに、企業は、団体交渉について、誠実に対応する必要があります。また、使用者が団体交渉の場において誠実に交渉を行なわない場合、損害賠償の対象や企業価値を毀損する結果になりかねません。

他方で、企業に法律上課されている義務は、団体交渉に誠実に応じる義務のみで、組合が提示した条件に応じる義務や譲歩しなければならない義務は法律上ありません。企業にとって著しい不利益な条件を組合から提示された場合、かかる条件について応じないとの決断をする必要があります。

労働組合から団体交渉を申し込まれた場合には、弊所までご相談下さい。

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